第九章時点
【各陣営及び目的一覧】
〈色護衆・直武一行〉……利毒の大規模な呪詛研究により江営に被害が及ぶのを防ぐため、監視と防止を目的として派遣される。また、兼久隊も後発として、直武一行とは別経路で江営に入っている。
〈雷雅陣営〉……利毒の研究成果を見ることが目的。研究関連の協力もしているが、研究による被害が出ると目的が達成できなくなるため、監視及び被害防止のために色護衆、青柳座の両名とも協力関係を築いている。
〈青柳座〉……利毒による忘花楼建設により、状況が悪化した裏舟吉を鑑みて、雷雅に助力を請うていた。利毒陣営の撤退が最終目的なものの、それ以前に利毒の研究に裏舟吉が巻き込まれないようにするため、雷雅を通して色護衆にも協力する。
〈利毒陣営・忘花楼〉……負の感情を収集し、強大な呪詛を作り上げる研究をする利毒と、利毒が封印を解いて呼び出した白雨が共同経営している巨大娯楽施設。研究の結実まで監視されるだけのため、着々と計画を進めていく。
【直武一行】
橙路府逢松郡若鶴から南下、碧原府留井原郡を経て、武咲郡江営に入る。その際、雷雅から遣わされた青柳亭青鷺に案内されるも、幽世に入ると同時に分断された。
志乃……青鷺に連れられ、雷雅陣営に加入(強制)。雷雅が長期滞在している老舗旅館・龍爪亭の部屋に軟禁状態となってしまう他、外出時も雷雅の豪遊に付き合わされ、逃げ道を塞がれる。
芳親・紀定……忘花楼の従業員が暮らす住居楼へ飛ばされ、青鷺が事前に忍び込ませていた五井鷺・小鷺と合流。忘花楼の従業員として紛れ込む。志乃の安否は分かったが直武の所在が不明なため、利毒の研究監視と並行して直武捜索に乗り出す。
直武……忘花楼のどこかと思わしき場所に監禁。力を奪う枷を嵌められ、武器も剥奪されてしまったため、自力での脱出が不可能になってしまった。しかし呪詛持ちであるため、利毒から調査という利益も含め、専属医のような存在として接触されることとなる。
また、呪詛を掛けた相手が「明掛の物の怪」であること、物の怪によって見させられる悪夢の内容が、兄に殺されかける内容であることが判明した。
【青柳座】
裏舟吉にて活躍している興業組織。鷺の妖怪たちで構成されている。裏舟吉の治安悪化、経済状況の悪化、強引に奪われた座員の奪還を目的に、雷雅陣営及び色護衆に協力する。
青柳亭青鷺
アオサギの妖怪。人型を取っている。髪の色は青鷺の顔周辺の羽毛色である白と青の二色、服装の参考は噺家で扇子を持参している。留井原郡にて直武一行に接触し、江営まで案内した。
話し方や身振り手振りが大仰なため胡散臭いが、ひとたび真剣になれば頭の気迫を醸し出す。平常時でも肝が据わっている片鱗を覗かせる。裏舟吉と座員のことを大切に思っており、それらに対する蹂躙は許さない。
青柳亭五井鷺
忘花楼に忍び込んだ座員の片方。ゴイサギ/五位鷺の妖怪(名前の井は種族と個を区別する目的で変更している)で、髪の色は濃藍、目の色は赤。それなりの年長者だが、協力者である芳親と紀定には敬意を払い接している。主な説明役も担う。
座長である青鷺とは長い付き合い。また釣り好きで笑顔が若干へたくそ。
小鷺
忘花楼に忍び込んだ座員の片方。コサギの妖怪。髪と目の色はどちらも生成り色。まだ一人前と認められていないため、「青柳亭」を名乗ることができない。
五井鷺より年下であり、妖怪としての年齢からすると幼いが、人間の年齢からすると十代後半にあたるためしっかりしている。
青柳亭飴鷺
忘花楼に奪われた看板芸妓。アマサギの妖怪。芸妓の安全は保障されているとはいえ、機嫌によっては他の妖怪を食らうかもしれない存在が上にいるため、座員たちは奪還の機を慎重に狙っている。
【雷雅陣営】
老舗旅館・龍爪亭の最上階を拠点に、利毒の研究を傍観(名目上は監視)している。
雷雅
利毒の研究成果が現れるまで暇潰しという名の豪遊に耽っている。ようやく志乃と再会したこともあって浮かれており、志乃を傍に留め置いて離さずにいる。
風晶によって過去が判明した。本名を須榧在雅といい、約千年前に実在した人間であり、優秀な人材として宮中で重宝されていた。しかし数々の悪行を重ねていたこと、宗教じみた人望を得ていたことから危険視され、朱泉府筑幸郡に左遷。そののち鬼に変貌し、宮中落雷事件〈苑雲の災雷〉を引き起こす。この事件は後世の芸術でも多く題材として取り上げられ、結末は在雅が討伐されたと伝わっているが、在雅は宮中で殺傷を行い、馴染みの人間一名を誘拐して逃亡。妖怪として雷雅と呼ばれるようになり、今に至る。
風晶
志乃と同じく雷雅の豪遊に付き合わされている。二週間が経った頃合いには志乃を連れ出して気分転換をさせつつ、警告の意を含めて自分と雷雅の過去を話した。
本名、由見晶之。かつて宮中は白義殿に勤めていた近衛兵であり、須榧在雅とは幼馴染の関係にあった。在雅がしたという悪行は彼を妬んだ者たちによる風評被害と信じ、実際の在雅が人間とはかけ離れた感性の持ち主であった事実に薄々気づきながらも目を逸らし続け、〈苑雲の災雷〉にて突き付けられることになった。在雅が誘拐した馴染みの人間とは晶之のことであり、そもそも〈苑雲の災雷〉が起こったのは、在雅が晶之を同族にすべく確保しに来たことが原因である。
雷雅の血を飲まされたことで眷属化し、雷雅を殺せなくなるも抵抗を続けていた。しかし一族の首を手土産に持ってこられる、薬を投与されて暴走状態にされ実の息子を捕食させられるといった仕打ちを受け、精神的に追い詰められていく。雷雅への恨みを抱き続けてはいるが、千年以上もの時を過ごしたこと、妖怪としての変化からは逃れられず、既に感情を失い始めている。
【利毒陣営・忘花楼】
負の感情を素早く、そして大量に集めるべく、利毒が建設した三つの楼閣から成る娯楽施設「忘花楼」の上部関係者。
利毒
花を育てるという表現をしつつ、呪詛の研究に成果を出している。呪詛を研究することは色護衆にとっても有益な情報をもたらすため、そして何より申告していたため、妨害を回避することができた。
呪詛を利用するということで、呪術に長けた妖狐・白雨の封印を解いて招集、協力相手としており、彼女には破格の待遇をしている。
白雨
忘花楼を構成する三楼閣のうち、花楼(妓楼)の女主人として君臨する妖狐。夕立御前と呼ぶ者もいるという。白銀に朱あるいは紅が混じった毛色の持ち主だが、遊女や花魁を参考にした人型が基本の姿。千年以上前に雷雅に恋をし、かの鬼に相応しい女となるべく呪詛に塗れてきた。その果てに戸地下郡は蓮寸に封印されていたが、利毒によって解き放たれる。また、兼久隊はこの封印の状態を確認するため、直武一行とは別の経路で江営に入る運びとなった。
欲しいものや自身の美しさのためには手段を選ばず、仲間たちにも疎まれたほどの極悪非道にして実力者。同時に努力家でもある。現在は雷雅を待っているため鳴りを潜めているだけであり、油断を許さない相手。縄張りを荒らすことや、縄張り内のものが欠けることを嫌う。
芳親は彼女を前にした際、何らかの違和感を覚えたが、詳細は不明。