年齢詐称
「千代、ちよ」
声が耳から聞こえる。
さっきまでは、直接頭に響く感じだったけど。
「う?うん?」
目が覚め、頭をあげると
イスの廻りには父、母、大樹がいた。
ノートを書きながら寝てしまっていたらしい。
「うん?みんな、どうしたの??」
みんなの顔が酷いことになってる
母と大樹は、目が真っ赤だ。
「良かったー!!」
母が抱きついてくる。
状況が読み取れない。時計を見ると7時を過ぎていた。
バイトが終わって、塚本先輩の事や過去の事、これからの事を一人で考えようと、部屋に籠っていたんだ。
「夕食が出来たから、呼んだんだけど返事がなくて、疲れて寝ているなら、そのままにしようと思ったんだけど………」
母が言葉を飲み込む。
「滋野本家から、急に電話が来たんだ。千代を起こせ。って、
起きなかったら家族全員で起きるまで呼び掛けろ。って
訳もわからず部屋に入ると、千代は机に伏せたまま寝てて、呼び掛けても起きなくて………」
父も言葉が詰まる。
二人の目線は、ノートに注がれていた。
その先に書いてあったのは
魔法
治癒
に大きく何度もバッテンが書かれている部分だ。
父と母の顔が曇る。
「大樹、ごめんね。友達を治せなくて」
あっ、と思い出して謝る。
「は?なに?なんで謝るの??」
大樹が、ワケわかんないと首を降る。
「え?だって同じように痛い思いしてる友達がいるのに、自分だけ治ってイヤな思いさせたんじょない?」
父に口止めされた時の表情を思い出す。
「はぁ?何いってるの!当たり前じゃん。一人治したら、オレもオレも。ってみんな来ちゃうし。
そうしたら姉ちゃんだけで治せるわけないじゃん。オレ、バカだけど、
それぐらいは理解してるよ!!」
うん?
「だって、きのう友達にも話すな!!って言われて悲しそうな顔してたじゃない?」
してたよね?
「えっ!!そんな顔してた?オレ、人に姉ちゃんの事を自慢する気マンマンだった事を恥ずかしい。とは、思ったけど……」
私の勘違いだった。って事??
はぁー。やっぱり『ほう・れん・そう』しなくちゃダメだね。
ちゃんと話し合おう。
塚本先輩とも!!
そんな言い合いをしてると、
いつの間に部屋を出てたのか、父が電話の子機を持ちながら戻ってきた。
「本家の護さんに礼を言っておいたぞ。
千代、夏休み入ったら、すぐに本家に行きなさい。
いま魂も身体も不安定になっているらしい。
本当は、明日にでも行かせたいが、テストもあるし無理だろう?
とりあえず応急処置で、結界を張ってくれたらしいから、魔法も使えなくなってる。って、
夏休みくらいまでしか持たないみたいだけどな。」
うん?結界をはる??
何ですか?
リリアーヌちゃんも、魔法を使えなくするのは無理だって言ってたけど。
「お父さん、結界って何?
リリアーヌちゃんも魔法を使えなくするのは無理だって言ってたけど?
それに、バイト先にも迷惑をかけるから、夏休み入ってすぐは無理だよ。」
出来ない事は、ちゃんと伝えないと。
バイト先にこれ以上迷惑はかけられない。
「うん??リリアーヌさんって、千代の中の人だよな??
護さんが、その人と一緒にかけた。って言ってたぞ。夢の中で会った。とも言ってたが」
夢の中で会った?
大学生くらいの男性には会ったけど、
護さんって、お爺ちゃんのお兄さんだよね?って事は80歳くらい??
イヤイヤ会ってないよ
「さっきみた夢の中でリリアーヌちゃんと大学生くらいのお兄さんには会ったけど、護さん?には会ってないよ」
「あー、たぶんそれが護さんだよ。
夢の中だから、実物とは違って見えたのかもなぁー。
しかし、大学生かよ。自由だなぁー。
まぁ、その夢の中でリリアーヌさんと一緒に術を仕掛けたらしいぞ!」
へぇー、そういうもんなんだ。
じゃ、もしかして私も別の姿で見えてたのかな?
夢の中って、恐ろしい。
「千代、バイトの方も問題ないと思うよ。」
お母さんが話し始めた。
「金曜に滋野本家に行く。って決めた時に彩ちゃんに連絡取っておいたの。
あの子の学校。大学付属だから、3年の1学期の成績で学部が決定しちゃうし、
夏休みだけはバイトして良いことになってるから、探している。って言ってたから。
去年も夏に短期でやってるし。
昨日、カフェに行って店長さんにも相談してきたから大丈夫なはずよ。」
うわー、お母さんが行動早すぎ!!
ってか、娘のバイト先に、娘が知らない間に連絡を取ってる。って何事??
彩ちゃん
仕事、スゴい出来る。
フロアーもキッチンも
初バイトと思えないぐらい、
すぐに覚えてバリバリ働いてた。
辞めたあとも、しばらくは彼女の事を聞いてくるお客さんもいた。
短期で良いからまたやって欲しい。って、店長も言ってた。
「彩ちゃんは、大丈夫なの?勝手に決めて??」
「うん。連絡したから大丈夫。
去年も短期でやってるし。自分で探さなくてラッキー。って喜んでいたわよ」
そうだ。彩ちゃん、
去年もそれで、私と一緒に働いていたんだ。
両方良ければ、良いか。
『ぐぅー』
それまで大人しくしてた大樹がお腹で存在を主張した
みんなで笑顔になる。
そういえば、夕飯まだだったね
「ごめん。大樹!すぐに用意するね。
明日も朝練習あるよね!
遅くなっちゃった……」
慌てて母がキッチンに下りていった。
大樹、最高!!




