救世者
『千代・・・ちよ、返事をして』
遠くで自分を呼んでいる声がする
『千代、しっかりして……』
母の泣き声
『ねぇーちゃん、起きてよ、なぁ……』
大樹の声も
「もぉー、ダメでしょ。家族に心配をかけては………」
真っ白い空間に腕組をしている。
黒髪にすみれ色の瞳の美女がいる。
「あなたは?」
「あら、わかんない?私はあなたよ」
妖艶な笑いを浮かべて、クルっとその場で回る。
スカートが広がり、キラキラと光を発する。
「もしかして?」
「はい、リリアーヌ・フランドルンと申します。はじめまして??」
美しいカティシーを披露してくれた。
「ごめんなさいね。本当は、出てくるつもりもなかったの。あなたの中にずっと微睡んでたのだけど………
あー、塚本くん??あれと同じイヤな経験をしていてね。ついつい本音というか、自分が外に出ちゃったのよね。」
そういえば、最初に思い出したのが
「「またか」」
声がハモってしまった。
リリアーヌが、吹き出す。
「あははは、ホントそれなのよ!!思わず出ちゃったのよね。
で、引っ込もうとは思ったのだけど……
お父さんの病気ね。あれが心配で魔法まで出しちゃったの。」
そう言うと、真剣な顔に戻った。
「私の父も同じように、頭に黒いモヤモヤを感じてたんだけど、それが何かわからなかったし、治すこともできなくてね。
で、冬の寒い日に玄関から帰ってきて、倒れたと思ったら、そのまま亡くなってしまったの。
だから、ごめんね。この世にはない力だって知ってたのに、どうしても伝えたくて」
「ありがとう!!」
悲しい顔になるリリアーヌ。
ごめんなさい。
結局、私はいつも自分のことばかり。
そう、お父さんが助かった。
この事実が何より大事だったんだ!!
「私こそ……ごめんなさい。
お父さんを助けてくれて。ありがとう。」
リリアーヌの手を両手で握る。
「千代、ごめんなさい。伝えておくね。
魔法の力。一度感知してしまって、使えるようになってしまたから、封印することは、私にも出来ないの………
本当にごめんなさい………」
「私の方こそ、酷いこと思ってごめんなさ」
「ねぇ、そろそろいいかな??
お互い謝ってばかりで先に進まないんだけど。」
急に男性の声が私の謝罪を遮った。
声の方を向くと、男性が立ってる。
人目をひく容姿だが、リリアーヌとは違い日本人?アジア系だ。
「千代、もう戻らないと、みんな大変そうだよ。」
彼は、そう言うとリリアーヌの手を握っていた私の手ごと大きな手で包み込んできた。
『千代……起きて……』
父の私を呼ぶ声が聞こえてくる。
「「あっ」」
リリアーヌと、また声がダブル
そして、お互い見つめあい
「リリアーヌ、今までありがとう。これからも、よろしくね」
「千代。ありがとう。いつも一緒にいるよ」
彼女はそう言うとスーッと消えた。
いや、私の中に染み込んだ。
「ほら、ボゥーとしてないで、行くよ。
わかる??声がする方。あっちに意識を持っていくんだ。
そう、上手だ………」
「ありがとう。あなたは??誰?」
声の方に意識が引っ張られながら尋ねる。
「オレ?うーん。
もう少ししたら、会えるし………
夏休み、楽しみにしててよ。じゃ」
そこまで言って、彼も消えた。
消えたのを見届けると、
なぜか安心できた。
そして引っ張られる力に
抗わず、身を任せた。




