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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第四章 内政と貴族との駆け引きが大変でイチャイチャしてる暇がありません

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90 そのハードル、高きこと山のごとし

「じゃあこれから具体的な業務内容について説明するんで、まずはリストに従って班ごとに分かれてくれ」


 メリザさんが一人一人に、羊皮紙の班分けリストを配ってくれる。

 四人一組の班で、全部で五班だ。


「班はこっちで適当に決めといたから。元農水省に勤めてたり農業の経験がある人は班ごとにばらけさせて、契約精霊の属性が均等になるように分けたけど、それ以外は特に考慮してないんで、各自上手くやって欲しい」


 班ごとに分かれて、みんな自分達の契約精霊を見て納得する。

 土水火風の四属性が各一人ずつ、それで四人で一班だ。


 ちなみに、今は全員契約精霊を出しっぱなしだ。

 契約精霊を普段から見せてるのか消してるのかは、特に決まりがあるわけじゃないんで自由だけど、公式行事の場なんかでは理由がない限り姿を消してるのがマナーらしい。

 要は、契約精霊の姿で視界を遮らないように。


 主催や重要な参列者の姿が見られないのは困るし、主催や重要な参列者も自らの権勢を誇るために贅を尽くした煌びやかな衣装を着てるのに、それを見て貰えないのは困るってわけだ。


 まあ俺の場合はそのマナーを聞く前に、ただでさえ数が多くて大きいからゾロゾロ連れ歩くのはどうかって、自主的に消すようにしてたわけだけど。


 ともあれ、契約者の周りをふよふよと漂う契約精霊達は、小さいのでソフトボールくらい、大きいのでバレーボールより二回り小さいくらいの大きさだった。


「班ごとに分かれたところで、みんなこっちを見てくれ。これが何か分かるかな?」

 俺が指し示したのは、目の前にある雑草が生え放題の荒れ地みたいな場所だ。


「確か畑だったはずです。もう長い間使われてないみたいですが」

「敵に取り囲まれたときに、城内へ民を避難させ、援軍の到着まで持ち堪えられるよう、自給自足をするための畑ですね」

 さすが元農水省の役人達は知ってたみたいだ。


 もっとも、この王都がまだ王都になる前、領都として建設されたのが五百年以上前の話で、この前の第一次王都防衛戦が起きるまで一度も攻め込まれたことがなかったから、無用の長物として放置されていた。

 そうして、土地を遊ばせとくのはもったいないからってことで、五百年の間に徐々に畑を潰してあれこれ建物を建てていった後の、使われないまま残った区画ってわけだ。


「農地生産改良室の所属として、畑仕事が全くのド素人ってのもどうかと思うから、この畑を耕して貰おうと思ってるんだけど、どう思う?」


 元農家の娘のパーナがしゃがんで、荒れ地同然のその土を弄る。


「あぁ~~……これは全然駄目ですねぇ~~……何を作付けするかにもよりますけど、まずは雑草を全て抜いて枯らして、完全になくなるまでそれを何回か……その後どこかから適した土を運んできて土作りを始めて……作付け出来るようになるまで何年か掛かりそうですねぇ~~」


 前世と違って強力な除草剤も肥料もないし、重機もトラクターもない。

 作物に適した土を運び込むのも重労働で、その上で適した肥料を交ぜて土壌を整えてと、かなりの時間と金と労力が掛かるはずだ。


 それを聞いて、みんな戸惑ったように顔を見合わせる。

 せっかく熱意を持って募集に応じ、今もやる気が出たところだったのに、何年も掛かるって出端を挫かれたら、そりゃあモチベーションを維持するのも大変だよな。


「普通ならその通りなんだけど、安心してくれ。そのために開発した魔法だ。モス、サーペ、レド、ロク」

 呼びかけて、モス、サーペ、レド、ロクの姿を現させ、気配を解放する。


「でかい!?」

「なんて精霊力だ!」

「これが噂の……!」


 動揺こそするけど、俺の契約精霊の話は全員知ってたみたいで、魔物だなんだって騒いだり逃げたりする人は皆無だった。


「モス、サーペ、レド、ロク、トトス村の実験畑でやってたみたいに……うん、そう、今回は主食になる小麦に合わせた土壌に改良しよう」

 四体が返事したところで、全員に向き直る。


「じゃあこれから俺がお手本を見せるんで、よく見ててくれ」


 宣言した後、四体に精霊力を渡して、手前の一角に手を(かざ)す。

 四体とも慣れたもんで、すぐ作業に入ってくれた。


 まず雑草を根こそぎ、文字通り根の一本まで全て枯らしてしまい、(くわ)で耕すように土を混ぜ返す。

 適度な水分と通気性を確保しながら、窒素とかリン酸とかアンモニアとか、あれやこれやを肥料としていい感じに整えて、土壌にも酸性アルカリ性があるから、pHも適した数値に整えた。


「枯らした雑草だけじゃ肥料が足りないけど……まあ、ざっとこんな感じかな」

 一分ほどで、一メートル四方の荒れ地が小麦の栽培に適した土壌に早変わりだ。


「「「…………」」」

 みんな、唖然、茫然、って感じだな。


 パーナが狼狽えながら、その土を触って確かめた。

「すごい……いい土…………これなら小麦が十分育ちますよ…………」


 唖然、茫然としてた全員が、同じように土を触り比べて確かめる。


「確かにこの土なら、問題なく作付け出来そうだ……」

 元農水省の役人達も、小さく唸る。


「自分は……農業など全く知識がないんだが、それでも出来るだろうか?」

「俺も、戦うことしかしてこなかったからな……」

 元精霊魔術師部隊やトロルに奴隷にされてた人達には、ちょっとインパクトが強かったかな。


「大丈夫。俺が教えたトトス村の人達は契約精霊を持ってないけど、自分達だけでこのくらいの魔法はすぐ使えるようになったから。そうして育てた野菜があれだ」


 テーブルの上の、トトス村産のグレードの高い野菜を指すと、感嘆の声が上がる。


「必要な知識は学べばいいし、幸い練習場所は目の前にたっぷりある。さっきも言った通り、知識と経験をフォロー出来るように班分けしたし、時間もお金も労力も掛からないから、後はやる気と根気だけだ」


「そうか……そうだな、ここまでお膳立てされてやれないじゃ、この計画に参加した意味がない」

「最初は誰でも素人で、剣の握り方すら知らないもんだしな。そっから学んで使える奴になればいいってわけだ」


 俺以外に成功した人達がいるって話は効果的だったな。

 それも、契約精霊も持ってない普通の農民なんだ。

 元から意欲を持って募集に応えてくれた人達だし、契約精霊持ちだし、負けてられないだろう。


「そういうわけで、今見せた魔法を自分達で出来るようになって貰うのが当面の目標だ。そのためには農業その他、ある程度の知識が必要だから座学で色々と学んで貰う。そのための講師も頼んであるんで安心してくれ」


 座学って聞いて、ほっとした人と、嫌そうな顔をした人がいるけど、そこはそれぞれ頑張って欲しい。

 ある程度の知識とイメージがあれば、後は精霊達が勝手にいい感じにしてくれるから、そのイメージを作り上げられるだけの土台を作るためだ。


 ただ、やる気になってくれたところで水を差すようで悪いけど、自分達の実力、現実もちゃんと直視して貰わないと困る。


「それから俺も教えるけど、各自で精霊力のコントロールの練習もしておいて欲しい」

「精霊力のコントロールを?」

「精霊とも契約出来ているし、特に問題を感じてないが?」

 まあ、そういう認識だよな。


「面接の時に、精霊力を放出してどのくらいコントロール出来てるか見せて貰ったけど、ハッキリ言って、みんなコントロールが甘い。どのくらいかって言うと……」


 メリザさんにテーブルの上から、コップと水が入った水差しを渡して貰う。


「俺が魔法を使う場合はこう」

 言いながら、普通にコップに水を注いでいって、ギリギリぴったり入れる。


 それから水差しに水を戻して、コップを空にする。


「みんなが魔法を使う場合はこう」

 コップの上で水差しを逆さまにして、バシャッと水を落とす。

 コップはほぼ満タンになったけど、ほとんどの水は俺の手と地面を濡らした。


「とにかくコントロールが甘くて無駄が多い。コントロールが良くなるだけで、無駄に放出する精霊力が減るから、魔法を使える回数、威力が飛躍的に伸びるはずだ」


 これは属性ごとに精霊力を分別する以前の問題で、それをどうにかしないと、せっかく土壌を改良できるようになっても、狭い範囲しか出来ませんじゃ意味がない。


 実際に荒れ地を耕しはしなかったけど、百メートル四方をきっちり真四角、その面積の土壌を改良できるだけの精霊力を行き渡らせる。

 もちろん、全員が感知出来るようにして。


 その精霊力を感知して、全員がどよめく。

 百メートル四方をきっちり真四角になるようにコントロールって、今のみんなの実力じゃ無理だろう。

 せいぜい、直径数メートルを歪な円で囲めれば上出来ってところか。


「コントロールが良くなれば、それだけ土壌を改良できる面積が増えるから、是非頑張って欲しい。理想は一回で畑の一面を全部やって、小さな農村なら一日で終わらせられるくらいになって欲しいかな。そのくらいのペースで作業しないと、国中の畑の土壌を改良するのに、一体どれだけの人員と期間が必要になるんだよって話になるし」

「「「…………」」」


 あれ?

 みんな青い顔して黙っちゃったけど……そんなに難しいこと言ってない……よね?



 後日、ちょっとした誤解があった事が分かった。

 俺は最終的に一人で出来るようになった上で、二十人全員で小さな農村を、くらいで考えてたんだけど、みんなは一班でそれをしないといけないと思ったらしい。

 しかも、たった二十人で国中の畑の土壌改良をするもの、と。


 うん、さすがに俺もそこまで無茶は言わない。

 計画が軌道に乗れば、どんどん人員を増やしていく予定だし。

 でも、二十人で国中の畑を全部やるくらいの意気込みで頑張ってくれてもいいんだけどね?



「さて、それじゃあ次は――」

「おい、貴様!」


 不意の怒鳴り声に振り返ると、やたら豪華で煌びやかな服を着たでっぷり太った男が、突き出た腹を揺らしながら、怒りと不快に顔を染めてドスドスと歩いてきていた。


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