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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第三章 トロルが仕掛けてきたから踏み台にしてやろうと思う

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83 三人で祝勝会と戦後処理の話 2

「戦場や鹵獲(ろかく)した品の後処理はどんな感じですか?」


「戦場の方は、トロルどもの死体の処理が問題だな。そのまま放置や生のまま埋めるのは疫病の原因になるとそなたが言うので、焼いて処理し穴を掘って埋めることになるが、何しろ数が数だ。サイズを考えれば人間の十倍近い量があるからな。幸いと言っていいのか分からぬが、炭化した死体は、もうそれ以上の処理の必要はないから、その場で砕いて土に撒くようにした」

「レド様のファイアボールで地面まで焼け焦げていますから、元の平原に戻るまで、数年から十数年はかかるでしょうね」


「それは……なんだか済みません。レドを始めみんなやたらと張り切っちゃって」

 自然破壊もいいところだったなぁ。


「死体の処理と合わせて、平原を元に戻しましょうか? 多分、畑を耕す要領でいけると思いますけど」

「いいえ、それには及びません。死体の処理くらい兵達にさせて構いませんよ。なんの働きもせず戦働きの褒賞金を手にしたことに、多少の後ろめたさを感じている者もいたようですから。それを仕事とすれば、納得して受け取れるでしょう。それに、それで兵達が苦労した分だけ、エメル様のお力と偉大さを再確認することになりますから」

「姉上の言う通りだ。それに、現場を見ていない貴族達もまだ多くいる。それに話を聞きつけた近隣の民達にも見せてやりたいからな。あの戦場跡を見れば、その戦いの激しさを知る事になるだろう」


 なるほど、伝聞で聞いただけだと、やっぱりまた荒唐無稽な作り話や英雄ごっこって思われちゃうかも知れないし、証拠があれば、そうも言ってられなくなるか。


「じゃあ戦場跡の見学ツアーって銘打って近隣の町や村でなんかで参加者を募って、王都観光に利用するのもありかもですね。国から補助金出して、商人や宿屋と提携して観光バス……じゃない、駅馬車なんかを運行して貰って、王都に来てお金を落として貰って、復興の手伝いをして貰いましょうか」


「まあ、それは面白いアイデアですね。さすがエメル様」

「面白い着眼点だな。民が他の町などに用もないのに旅するなどあり得ない話で、ましてや観光などと贅沢する余裕もなかろうが。そのような話であれば、普段旅をしない民達もささやかな贅沢として、王都に出向くかも知れぬな」

「ええ、民達がそのように王都へ出向き、地元へ戻って話を広げれば、頑なに領地に引きこもっていた貴族達も、確かめに来ずにはいられなくなるでしょう」


 えっと……思いつきのネタのつもりだったんだけど……乗り気にさせてしまった。


 まあ、いっか。

 生まれてから死ぬまで一生、生まれた村から出ない、なんて人も多い時代だ。

 そうやって見聞を広げることで、色々プラスに働くだろう。


「その話はまた後日、詳細を詰めていくとしよう」

「はい、姫様」

 仕事、増やしちゃったなぁ。


「それで次に鹵獲した品についてだが、常にない程の書類の山だな。そなたの魔法で大々的に勝利を喧伝しただろう? あれで気の早い商人どもが、戦利品売却のための申し入れをしてきてな。本来であれば王城に出入りして取引できるのは、認可した大商会のみなのだが、それ以外の大商会、果ては小さな商会まで、慣例を無視して食い込もうと躍起になって、伝手を伝って申請してきている」


「そうなんですか? 商魂逞しいですね」

「ええ、王都復興に大量の資材が必要ですから、降って湧いたような大量の品に、おこぼれでもいいからと、駄目元で申請してきているようです」


 なるほど。

 本来の戦争なら、武具、水と食料、薬、野営道具、その他、それらを運搬するための荷馬車や馬、その馬のための飼い葉なんかが大量に必要で、物が大きく動く。

 戦争特需ではあるんだけど、現状を考えると物資不足に陥るって側面の方が強い。


 それが今回は、その消費がほとんどなかった。

 防衛部隊が野営したり、見学組が野営したりと、多少は必要だったわけだけど、目と鼻の先に王都があるんだから、運搬にそれほど労力が掛からなかったのも大きい。

 何より死傷者ゼロって言うのが、一番大きいだろう。

 その上で、トロル達が大量に運んできたそれらの物資が丸々手に入ったわけだから、むしろ収支は大黒字だ。


 聞いた話、トロル達の食料は、人間の口に合わない物が一部あるけど、概ね人間も食べられる物ばかりらしい。味に関しては種類によってピンキリで、不味いけど食えないほどじゃないってレベルの物は、うんと安く流通して、貧民街とかの貧しい層の食事になってるそうだ。


「何より一番の目的は大量の武具による鉄だろう。トロルの扱う武具は、その巨躯と膂力(りょりょく)に相応しい大きさで、どれも人間が扱う武具の十倍ほどのサイズがあるからな」

「つまり、二万六千匹分の武具が手に入ったから、鋳潰して使うなら、二十六万人分の武具が作れるくらいの鉄が手に入ったってわけですね?」


 もっとも木製の棍棒を使ってるトロルも多かったから、大雑把にだけど。

 そっちも加工すれば多少は木材や薪として使えるはずだ。


「その通りだ。それほどの数の武具ともなれば、我が国の騎士から末端の兵士まで十分に行き渡り、なお余りある。前回の王都奪還時の五千匹分の武具もあることだし、一度に市場に流したら、大幅に値崩れしてしまう上、それでも全ては売り捌けぬだろう」

 戦利品としてそれだけの資産を手に入れたって考えると……贅沢三昧で一生遊んで暮らしても、絶対に使い切れないな。


「いずれにせよ、全てそなたの物だ。誰に何をどれだけ売り捌くのか、市場の動向を見つつ、そなたの意見も聞きながら決めていかなくてはな。そのためにも、今回は異例ではあるが、特例として王城と取引のない商会とも取引する予定で、今は各商会の経営状況や裏で何をしているかなどの調査をさせている」


「なるほど、ありがとうございます。もし十分に捌けないようなら、国が安く買い上げて王城で備蓄しちゃってもいいですし、なんなら国外に輸出して外貨獲得に利用してもいいですよ」

「そうか。ではその方向でも検討してみよう」

 仕事を増やしちゃって申し訳ないけど、俺じゃあ売り払う伝手もないし、ここは全部お願いするしかないよな。


「それから保護した奴隷達ですが、エメル様の提言通り国が保護したという形式を取っていますが、まだ身元調査と書類の作成段階ですので、こちらもエメル様の戦利品として、エメル様が個人で所有する奴隷としての手続きを進めても構いませんよ?」

「いやいや、奴隷とかいらないですよ。今回だけでも千人近い奴隷を保護したんですよね? 王都奪還時の数百人と合わせたら千五百人以上になるんでしょう? そんな数の奴隷を抱え込んでも、絶対に持て余しますって」


 そもそも、元日本人の感覚としては、奴隷を使うって微妙に受け入れがたいし。


 この世界だと普通に奴隷はいるし、生活が立ちゆかなくなって自ら身を売って奴隷になる人もいて、買った人がどういう扱いするかは知らないけど、それでも死ぬよりマシって思って奴隷になることを選んだ人もいるだろうから、一概に悪とは言い切れないんだよね。

 何しろ、経済規模がそれほど大きくないから、安価な労働力の奴隷って社会を支える重要なシステムみたいだし。

 まあ、犯罪を犯して奴隷にされた犯罪奴隷なら、どんな過酷な労働をさせられようと同情する余地はないけど。


 もし奴隷制度をなくそうと思ったら、まず経済規模を大きくして人々の生活を豊かにした上で、学校を作って子供達の道徳観や倫理観を教育しながら、数十年とか百年とかかけて社会を変えていかないと駄目だろうな。


「だから奴隷達は身元調査と心のケアをしっかりして、奴隷の身分から解放してあげて、希望する身の振り方を叶えてあげる方向で。故郷に帰りたい人には帰らせてあげたいですし。それにもお金が掛かるだろうから、俺の戦利品を売り払ったお金から必要経費は出していいですよ」

「分かりました、エメル様がそう(おっしゃ)るのでしたらそのようにいたしますね。ただ、国が保護した以上、経費は国が出しますので、お気遣いは無用ですよ」


「そうですか、分かりました。あっ、くれぐれも、トロルの奴隷になってたからって、理不尽な差別だけはしないように、下の方にまで厳命しておいて下さい。トロルに無理矢理攫われて理不尽な目に遭ってた人達がほとんどだろうから」

「お優しいのですね、エメル様は」

 そんな眩しそうに見つめられたら、ちょっと照れちゃうよ。


 それから、あれこれと戦後処理についての話をして、一通り話が終わったかなってところで、姫様が難しい顔をして表情を引き締めた。


「エメル、そなたは非常に注目を集めている。気を引き締めて隙を見せることのないようにな」

「えっと……それって?」


「これよりそなたに取り入ろうとする者、そなたを取り込もうとする者などが、うんざりするほど近づいてくるだろう。それこそ、私達に擦り寄る者以上にな。中には、女を使ってそなたを罠に嵌めて言いなりにしようとしたり、醜聞をでっち上げて英雄の名声を地に落とそうとしたりと、よからぬ事を画策する者が現れるだろう、確実にな」

「げっ……それは面倒ですね」


 ハニトラ(ハニートラップ)って奴か。

 女の子にモテるのは悪くない気分だけど、ハニトラなんて勘弁して欲しい。


「くれぐれも引っかかるなよ」

「くれぐれも引っかからないで下さいね」

 二人とも微笑んでるけど、ちょっと笑顔が怖い……。


「はい、気を付けます」

 ここは殊勝な態度で返事しておこう。



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