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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第二十四章 レガス王国と開戦、完全勝利を目指す

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740 二つの口上、その真実と嘘

 激しく動揺を覚えながらも、デズモンドは戦場の中央、エメルから十数メートル程離れた位置で止まる。


 あまりの違和感に、エメルを前に動揺が収まらない。


 その服装。

 騎乗しているユニコーンの姿をした、あり得ないくらい馬鹿げた大きさの契約精霊。

 それらも十分に動揺を誘い、後者に至っては恐怖すら覚える。


 しかし何よりも、エメルの醸し出す空気が異常だった。


 王家の思惑により祭り上げられた救国の英雄。

 仮に本当に優秀な精霊魔術師だったとしても、その功績の大半は見えない諜報部隊が打ち立てたもの。

 たかが農民風情の成り上がり貴族が、この殺し合いをする戦場において、四万もの敵を前に平然としていられるはずがない。

 ましてや、自信に満ち溢れて不敵に笑えるなどあり得ない。


 そう思うのに、エメルの内から滲み出る気配と自信が、虚勢や思い上がりなどではなく、確固たる実力と自負に基づくものであるとしか感じられなかった。


 デズモンドも、味方の騎士の実力者達は元より、ガイウスと共に戦場でフォレート王国などの大国の強者達と相見(あいまみ)えてきた。

 そして命のやり取りをしてきたのだ。


 その勘が告げている。

 まるで戦えそうにない体付きのエメルが、今まで一度も遭遇したことがない程の、とてつもない強者であると。


 エメルに見つめられているだけで、死のイメージしか湧いてこない。


「情報が間違って……いや、全て正しかったとでも言うのか……!?」


 脳裏を掠めたその思考に戦慄する。


 レガス王国軍より銅鑼が鳴らされ、デズモンドははっと我に返った。


 口上を述べなくてはならない。

 そのために、この場に出てきたのだから。


 激しい動揺を無理矢理押さえ込み、大きく息を吸って腹に力を込め、死のイメージなど吹き飛べ消えろとばかりに声を張り上げる。


「マイゼル王国軍に告ぐ! 私はレガス王国軍マイゼル王国中央征伐部隊司令部所属、第三騎士団副団長、デズモンド・ガオスである! 汝らマイゼル王国は、貴国の王太女の生誕を祝うためわざわざ駆け付けた、我らが尊崇する第一王子レディアス・グランサ・レガディース王太子殿下を、その祝いの席であろうことか侮辱し、多数の他国要人の前で恥を掻かせ、愚弄した! このような身の程知らずの蛮行を、我らは決して許すことはない! まさに万死に値する! よって我らは、思い上がり礼節を忘れた貴国を征伐し、我らが王太子殿下の名誉を守り、レガス王国の威光をあまねく世界に示すだけである! 死して己が罪を償うがよい!」


 デズモンドの声が朗々と響き渡り、レガス王国軍の将兵達から、それに同意し威嚇するように鬨の声が上がった。

 やがてその鬨の声が静まっていくと、今度はマイゼル王国軍より銅鑼が鳴らされた。





 こっちは曲がりなりにも貴族で伯爵である俺が出てるってのに、一見すると肩書きだけは偉そうだけど、身分は平民の、第三騎士団の副団長って騎士の口上が終わった。


 あからさまなくらい、マイゼル王国(こっち)を見下して馬鹿にしてるのが透けて見える。

 やる気はすでに十分だったけど、これはもう目に物見せてやらないとな。


 だから、ロクに頼んで戦場の隅々まで俺の声を届かせるようにしてから、声を張り上げる。


「ウォータースクリーン!」


 その声と共に、俺の真上にウォータースクリーンを一枚展開させた。

 第二次王都防衛戦の時に作り出した、映画館のスクリーンの数倍大きなウォータースクリーンより、さらに十数倍大きなウォータースクリーンだ。

 これだけ大きければ、うんと後方の予備兵力や司令部までよく見えるだろう。

 そこにビデオディストリビューションで、俺の姿を映し出した。


 途端に、両軍からどよめきが上がる。

 特にレガス王国軍側からは、驚愕と動揺が大きく伝わってきた。

 デズモンドとか言う口上を述べに出てきた騎士に至っては、上を見上げてあんぐり口を開けて目を剥いてるしな。


 それにお構いなしで、口上を述べ始める。


「レガス王国軍に告ぐ! 私はマイゼル王国軍王家直属特殊戦術精霊魔術騎士団団長、メイワード伯爵エメル・ゼイガーである!」


 俺が口上を述べる様子がウォータースクリーンに映し出されて、ロクに届けさせる俺の生の声と、ビデオディストリビューションで再生される俺の声とが、戦場中に広がっていった。


「レガス王国軍の兵達には初めて見る魔法だろう。このように、リアルタイムで俺の姿と声を再生して映し出す魔法だ。しかし、この魔法はもう一つ、こんな使い方も出来る」


 俺の姿を消して、デズモンドとか言う騎士を映し出した。


『マイゼル王国軍に告ぐ! 私はレガス王国軍マイゼル王国中央征伐部隊司令部所属、第三騎士団副団長、デズモンド・ガオスである! 汝らマイゼル王国は――』


 ほんのさっき行われた口上の再生だ。


 これには、さすがに両軍から驚愕のどよめきが上がった。

 何より驚いてるのは、デズモンド本人だろう。

 俺と再生されてる自分の姿を目が飛び出そうな顔で何度も見比べてるし。


 やがてデズモンドの口上が終わったら、それを消して俺の姿に戻す。


「この魔法の効果が分かって貰えたかな?」


 リアルタイムの映像と音声だけじゃなく、過去のそれも再生できる。

 それを理解して貰うのが重要だから、ここまでやれば十分だろう。


「口上を述べるに当たり、まず、我らが敬愛する第一王女フィーナシャイア・ジブリミダリア・マイゼガント王太女殿下を紹介しよう」


 ウォータースクリーンの俺の姿を消して、誕生日パーティーで俺に向けて優しく微笑んでくれたフィーナ姫の姿を映し出した。


 そのあまりの美しさに、マイゼル王国軍からは感嘆の溜息や歓喜の声が上がる。

 王城勤務の騎士や兵士、王都市民でもなければ、生でフィーナ姫を見たことがないだろうからな。

 出回ってる絵姿で見知っていても、生の美しさには敵うまい。


 同時にレガス王国軍からは、それ以上に感嘆の溜息が上がった。


「そしてもう一人、貴様らが尊崇する第一王子レディアス・グランサ・レガディース王太子殿下だ」


 十分にフィーナ姫の美しさを堪能させた後、その隣にもう一枚ウォータースクリーンを展開し、見下し底意地悪そうな笑みの馬鹿王子を映し出してやる。


 途端にレガス王国軍から大きな動揺のどよめきが上がった。


 レガス王国軍の兵達も、事情はマイゼル王国側と変わらないだろう。

 絵姿で見知ってるだけの馬鹿王子の姿を生で見て、多分、美化された絵姿や褒め言葉から想像した姿との違いに驚いてるに違いない。


 早速、馬鹿王子や王家に対して疑念や不信感を抱いてるレガス王国軍の兵達が現れたから、キリに頼んでそれらの感情を増幅しておく。

 その手のネガティブな感情は、遠慮なしにどんどん増幅だ。


 こっちは現実とのギャップを十分に理解させてから、口上の続きを述べる。


「貴様らが尊崇すると言う第一王子レディアス・グランサ・レガディース王太子殿下は、招待状を送ってもいないのに図々しくも押しかけてきて、我らマイゼル王国国民全てが敬愛する、そして他でもないこの私が尊敬し愛してやまない第一王女フィーナシャイア・ジブリミダリア・マイゼガント王太女殿下を、多数の他国要人が見ている中で、侮辱し、恥を掻かせ、恥知らずな真似をして愚弄した。これがその証拠だ!」


 その二枚を左右にスライドさせて、さらに中央にもう一枚展開する。

 それには、ビデオディストリビューションで、フィーナ姫と姫様と俺との会話を再生した。


 画面には表情を曇らせたフィーナ姫を表示して、姫様と俺は映し出さない。


『実はな、間近に迫った姉上の誕生日パーティーに、急遽レガス王国から王太子であるレディアス殿下が参加するとの連絡が一方的にあってな』

『はぁ!?』

『なんで目前になって急に……今更、これまでの非礼を詫びたい、ってわけじゃないですよね?』

『連絡を入れてきた大使は相変わらず礼儀のなっていない態度だったからな。何か別の思惑があるのだろう』


 このやり取りに、レガス王国軍から一際大きなどよめきが上がった。


「『貴国の王太女の生誕を祝うためわざわざ駆け付けた』だったか? これのどこがだ? 『招待状を送ってもいないのに図々しくも押しかけてきて』って、こちらの口上が正しいと、少しは理解出来たか?」


 キリによると、司令部以外の下っ端の騎士達も、相当に驚いて動揺してるらしい。

 当然、最も動揺してるのは、内情を知ってる司令部の連中らしいけど。

 何しろ、隠してた馬鹿王子の本性が現れた顔が暴露されて、兵達のみならず、部隊を指揮する騎士達にまで嘘を吹き込んでたことが、白日の下に晒されたわけだからな。


「貴様らの口上が嘘だらけって暴露は、まだまだここからだぞ」



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― 新着の感想 ―
[良い点] よし! もっと言ったれ、エメル!(*゜▽゜)ノ いやぁ、やっぱりどんでん返しのザマァが始まる瞬間はたまりませんな。 ほんとにドキドキします。 それも、両軍の丁寧な描写があればこそ、です…
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