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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第二十四章 レガス王国と開戦、完全勝利を目指す

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729 ランテス砦方面戦闘開始

◆◆◆



「これよりマイゼル王国軍を一蹴する!」


 早朝、太陽が登りきってしばし過ぎた頃、短くも猛々しい進軍命令が下された。


「「「「「おおーっ!!!」」」」」


 それに応えて、勇ましい(とき)の声が上がる。

 その鬨の声が余韻として砦内に響く中、ランテス砦の堅固な門が重々しい音を響かせながら開かれていった。


「続け!」


 号令と共に、整列した完全武装の騎兵部隊が出陣する。


 先頭を行くのは、レガス王国軍マイゼル王国東方征伐部隊部隊長であり第六騎士団団長である、エレアム伯爵家次男ユーゲウス・ファルモだ。

 ユーゲウスはその筋肉質で大柄な体躯に相応しい重厚な金属鎧を身に着け、威風堂々、馬を歩ませる。


 その後をユーゲウス麾下(きか)の騎兵部隊を主力とするレガス王国軍三千が、さらにその後方にアーマンハイダ辺境伯領軍四千が続く。


「ノーグランテス辺境伯領軍、前進!」


 そして最後尾を固めるのは、ノーグランテス辺境伯領軍の歩兵部隊一千だ。

 レガス王国軍に負けぬよう勇ましく、力強さを感じさせる足取りで進む。


 しかしその実、顔には苦々しさを滲ませている者達が多かった。


 ランテス砦はノーグランテス辺境伯の管理下にある砦だ。

 それにも関わらず、その姿はまるでレガス王国軍のついでやおまけのようにしか見えない。

 それは、兵数が少ないことが理由として最も大きいだろう。


 しかしそれだけではない。


 国境の辺境伯領を預かる将兵として鍛え上げられたノーグランテス辺境伯領軍の兵達より、レガス王国軍およびアーマンハイダ辺境伯領軍の兵達の方がさらに鍛え上げられており、加えて武器や防具の質も上だったからである。

 加えて軍馬もまた、レガス王国軍の方が体躯がよく、毛並みから何から全てを上回っていた。


 ノーグランテス辺境伯領軍もレガス王国製の武器と防具を買い付けて装備している。

 しかし、レガス王国が上質の武具を他国の貴族に、ましてや弱小国の田舎貴族などに売るはずがない。

 そのため、ただでさえレガス王国軍はマイゼル王国を弱小国として見下し、ノーグランテス辺境伯を田舎貴族の裏切り者程度にしか見ていなかったが、この差を目にして一層(さげす)む風潮が蔓延していたのである。


 そのことに、ノーグランテス辺境伯は元より、ノーグランテス辺境伯領軍の誰もが不平を覚えていた。


 しかし、いかんせんランテス砦に常駐している兵力が少なすぎた。

 今回の出陣で、部隊の中核を担いマイゼル王国軍を蹴散らせるのであれば、そもそも籠城などしていない。

 その(てい)たらくでは、何を言ったところで負け犬の遠吠えでしかなかった。


「調子に乗りおって、今に見ているがいい」


 砦の最上階の窓より出陣の様子を見下ろしていたノーグランテス辺境伯は、苦々しい顔で誰にも聞こえないように独りごちる。


 ノーグランテス辺境伯としては、まず領内各地に散っているマイゼル王国軍を蹴散らして、各地の防衛や籠城をしている自身の領軍を集める必要があった。

 だから、合同の作戦会議でそれを強固に主張した。

 しかし、ユーゲウスを始め、レガス王国軍の武官、アーマンハイダ辺境伯領軍を率いる騎士達から、その作戦案は一蹴されてしまったのである。


 それも当然だろう。

 レガス王国軍にしてみれば、その作戦案に乗るメリットは皆無だ。


 領内各地に散っているマイゼル王国軍など、ノーグランテス辺境伯領軍と睨み合いや小競り合いを続け、レガス王国軍に対する防衛力として機能しないのであれば、そのまま放置していていいのだ。

 むしろそれが、当初の作戦案に沿った対応でもある。

 よって、レガス王国軍の誰もが、全く耳を貸さなかったのだ。


 それどころか、そんなに戦いたいのなら、目の前のマイゼル王国軍を蹴散らした後、その残党狩りをさせてやる程度の扱いで、失笑すら漏らしていた始末である。

 作戦会議が一触即発の事態になったのは言うまでもない。


 そうして、ノーグランテス辺境伯は自身の領軍一千と共に、砦の防衛に回されてしまっていた。


 当然、自身が管理し守るべき砦である。

 さらに、レガス王国軍に留守中好き勝手されないよう、目を光らせる者が必要でもあった。

 結果、この配置を断れなかったのだ。


 ノーグランテス辺境伯は拳を強く握り締める。

 多少は『力』を取り戻してきたとはいえ、未だ脆弱な王家に虜囚がごとく王城に軟禁された恥辱。

 それをレガス王国の者達に助けられ、情けなく逃走しなくてはならなかった屈辱。

 その雪辱を果たすことが出来ないでいる、この忍耐の日々に、腸が煮えくりかえる思いだった。


「王家も、レガス王国も……いつかこの手で全てを叩き潰してやる!」



◆◆◆



「ネイケルト団長! ランテス砦より敵が出陣しました!」


 天幕に飛び込んできた部下の騎士に、マイゼル王国軍第八騎士団団長、ジオロス・ネイケルトは慌てもせずに頷いた。


「そうか。数と編成は?」

「騎兵を中心に、レガス王国軍三千、アーマンハイダ辺境伯領軍四千! 最後尾にノーグランテス辺境伯領軍およそ一千です!」

「予想の範囲内だったな。であれば、何も問題はない」


 ジオロスの落ち着き払った態度に、慌てていた騎士は安心感を覚えて多少は落ち着きを取り戻す。


 ランテス砦方面のマイゼル王国軍は第八騎士団を中心に六千。

 それに比べ数で勝り、質で勝り、さらに歩兵が多いマイゼル王国軍に対して有利な多数の騎兵で向かってくるレガス王国軍が、脅威に思えるのは当然だった。


 しかし、それは最初から分かっていたこと。


 だから騎兵の突進を止めるための罠や馬防柵など、対策を進めてきた。

 さらにエメルが献策し、それを軍部が採用している。

 防衛に徹すれば、いくら簡易の防御陣地とはいえ、一日や二日、守り切れない話ではなかった。


「では予定通りに事を進めよう。メイワード伯爵の見えない諜報部隊もこの事態を掴んで本陣の伯爵へ伝えに動いているだろうが、それはそれ。本陣へ知らせの早馬を」

「はっ!」


「援軍の王室派領軍はどこまで来ている?」

「恐らく、街道の南、あと数時間程度の距離かと」

「ではそちらにも、敵襲あり、至急救援を請う、と早馬を」

「はっ!」


「本陣よりグルンバルドン公爵派領軍三千の援軍も来る予定だが、本日中に間に合うかは分からない。しかし事態を知らせる必要はある。そちらにも早馬を」

「はっ!」


 次々に指示が出され、淀みなく実行されていく。


「防備を固めるよう各部隊に通達を。今日のために備えていたのだ、諸君であれば必ずややり遂げてくれると信じている」

「「「「「はっ!」」」」」


 ジオロスの余裕の笑みすら浮かべている、そのどっしりと構えた姿に、誰もが勇気づけられ、今日まで進めてきた準備を思い出し、自分達ならやれると心に闘志を燃やす。

 そして、それぞれの持ち場へと散っていった。


 天幕に残るのは、ジオロスと腹心の部下や武官、各部隊長達だけとなる。


「さすがネイケルト団長、お見事です」


 素直な称賛の言葉に、ジオロスは苦笑を漏らす。


「上が慌てては、下を不安にさせるだけだからな。それにしても、年寄りにはきつい状況だ」


 陣地を囲むのは、頑丈に作ったとはいえ簡易の柵のみ。

 防御力はたかが知れている。

 柵を壊され突破されれば、騎兵が雪崩れ込み蹂躙されるだろう。


「ネイケルト団長の采配があれば、十分に持ち堪えられます」

「そうですとも」


 部下達の信頼の言葉と瞳に、ジオロスは彼らを安心させるよう大きく頷く。


「もちろん、老骨に鞭打って全力で守り切ろう。なに、どうせ今日一日守り切れればいいのだ。どうとでもなる」

「おお!」

「さすがネイケルト団長だ!」


 部下達の瞳が輝くのを見て、内心で苦笑する。

 これも上に立つ者の仕事だ、と。


 そして、声に出さず口の中だけで頼む。


「メイワード伯爵、予定通り頼みましたぞ」



 そして二時間後、遂に戦いの火蓋は切って落とされた。

 レガス王国軍が国境を越えて侵攻してきて五日目。

 初めての両軍の激突だった。



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