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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第二十四章 レガス王国と開戦、完全勝利を目指す

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726 エメル考案の作戦、その仕込み



 日が暮れて、中央の天幕に集まった主立った騎士達や領軍を指揮する者達を、ランプの明かりが照らす中。


「諸君、早馬の伝令により、ランテス砦に続き、ディーター侯爵領領都にもレガス王国軍が合流したことが確認された。これで誰も文句はあるまい?」


 将軍が断固たる口調でそう伝える。


 この情報はすでに何時間も前に、俺が張った監視網から受け取っていた。

 そして、すぐにこの場の全員に伝えてある。


 だけど即座に動かず、早馬が届くのを待って改めてこうして集まって伝達したのには理由があった。


 一つは、反王室派の貴族達が、リアルタイムで取得した俺の情報を疑ったため。

 正しくは、俺の情報収集および伝達能力を認めたくなくてゴネただけだけど。


 一つは、即座に動いたら、俺が情報をリアルタイムで取得出来ると敵に疑われる可能性が高いので、それを隠すため。

 いざという時にリアルタイムで対応して動くことで、敵の度肝を抜き、先手を打って優位に立つためだな。

 今後のことを考えて、俺はそれに付き合ってやったわけだ。


 結果、俺が取得した情報が正しかったことが証明された。

 早馬の速度を考えて逆算すれば、ほぼリアルタイムなのが理解出来ただろう。


 反王室派の貴族達が青い顔、苦い顔で俺を睨んでくるから、勝ち誇ってドヤ顔を返してやる。


「これもメイワード伯爵の精霊魔法の『力』なのか……」

「恐ろしい……見えない諜報部隊とは、これほどの速度で伝達出来るのか」


 なんて囁き声があちこちから聞こえてくる。


 目論見通り、だな。


 だからそっちは敢えてスルーしておく。

 精々、驚いて脅威に思ってくれ。

 そして同時に、味方にしたときの頼もしさと安心感も大いに感じてくれ。


 大勢がざわつく中、将軍は咳払いを一つして動揺を鎮めると、重々しく口を開く。


「すでに日は沈んでいるが、ただいまより作戦を開始する。事前に説明した作戦に、現時点での変更はない。夜間に動くのは、メイワード伯爵のみ。明朝、日の出と共に、クラウレッツ公爵派領軍より選抜された部隊が、ディーター侯爵領領都方面への援軍として出立。同時に、グルンバルドン公爵派領軍より選抜された部隊が、ランテス砦方面への援軍として出立。それ以外の部隊は、本陣の守備隊を残し、全ての部隊が中央の敵本陣へ向けて進軍を開始する」


 将軍の通達に、誰も異議を唱えない。

 変更なしの通達通り、この作戦は事前に話し合われてた通りだからだ。


 実質、明朝からの作戦だな。

 それに先行して、俺が裏で暗躍する、って感じで。


 俺が夜のうちに動くのにも理由がある。


「大方の予想通り、ランテス砦方面およびディーター侯爵領領都方面のレガス王国軍は、明日、早速打って出てくるようだ」


 この情報も、俺の監視網で取得した情報だ。


 幸いなことに、やっぱりランテス砦方面もディーター侯爵領領都方面も、レガス王国軍にはシャドウストーカーはいなかった。

 中央の本隊以外は不要だと思ってるのか、それとも数が少ないから中央の本隊のみで集中運用してるのかは不明だけど。


 ともかく、俺の特殊な契約精霊達が砦や屋敷内に入り込んで盗み聞きしても、それに気付ける奴は皆無だった。


 おかげで情報は抜き放題。


 レガス王国軍とノーグランテス辺境伯領軍、ディーター侯爵領軍はどちらも、お互いに反目し合って協力態勢に難があることが判明した。

 だから俺は裏からコッソリ、そこをつついてやろうってわけだ。


 他にも、戦後を見据えて色々仕込んでやろうって言う、一石二鳥……いや、一石三鳥くらいの作戦になる。

 それもこれも、監視網を構築してリアルタイムに動けるおかげだな。


 自分の今後の動きを確認してる間にも、将軍の話は続く。


「援軍に向かう部隊は急いで貰うが、強行軍する必要も、明日の交戦に間に合わせる必要もない。敵に急いでいると思わせればいいのだから、無用な疲労を溜めないように。援軍の出番は、その後になる」


 将軍の重ねての注意に、援軍を率いる貴族や騎士が神妙に頷いた。


「敵本陣へ向けて進軍する本隊も同様だ。当初予定していた決戦の地となる平原に布陣して、進軍してくるレガス王国軍を迎え撃つ。陣形はやはり当初予定通り防御陣形で布陣するが、東西に援軍を出すため、多少配置を変更する。まず――」


 配置の変更、陣形の修正、様々な戦況における部隊の移動と連携などなど、この話し合いに先立ち将軍と参謀本部の武官達で会議して決めた修正案を伝えていく。

 途中、領軍を指揮する貴族家の当主や嫡男などから質問が出たり、一部から不平不満が出たりもしたけど。

 概ね、修正案通りに作戦は決定。

 終わったのは夜も更けて、日付が変わろうって頃合いだった。


 解散して、明日に備えてしっかり休もうとみんなが出て行く中、人がはけるまで動かないでいた俺に、メイワード伯爵領軍の部隊長の騎士とライアンが視線を向けてきた。

 だから、しっかり頼むと目で頷く。

 二人とも目で頷き返すと、天幕を出て行った。


 伝えることは昼のうちに伝えといたし、激励もしといたから、今更改めて言葉を交わすまでもない。

 信じて任せればいい。


 そんなことを考えてたら、将軍が声をかけてきた。


「それではエメル殿、休みなく働かせて申し訳ないが早速頼む」

「大丈夫ですよ、事前にちゃんと休んでるんで」


 それに、ユニとキリに頼んで肉体的な疲労も精神的な疲労も回復すれば、一晩の徹夜くらいどうってことないし。

 試したことはないけど、数日くらいなら平気で徹夜できるんじゃないかな。

 もっとも、そこまではしたくないからやらないけど。


 話してるうちにあらかた人がはけたみたいなんで、そろそろ動くとしますか。


「じゃあ行って来ます」

「ああ、エメル殿なら万が一などないと思うが、気を付けて頼む」


 頷いて、将軍と武官達に見送られて天幕を出る。


「じゃあロク、行こうか」

『キェェ』


 雲一つなく、月明かりが明るい夜空へと飛び立つ。


「まずはランテス砦方面からだ。一晩で全てを回るから今夜は忙しいぞ」

『キェェ』


 十分な高度を取って、街道沿いに一路東へ。


 元より今夜は明るいし、ちょっと光量を増幅して貰えば暗視としては十分。

 ほとんど昼間のように眼下の景色が見える。


「そろそろ始めるか」


 背嚢から大量の植物紙を取り出して。


「エン、モス、エアリアルフォトだ」

『承知しました、主様』

『ブモゥ』


 親指と人差し指で作ったL字を組み合わせたフレームに眼下の景色を収めて、航空写真を植物紙に焼き付ける。

 このままじゃ暗くて何がなんだか分からないから、色調を補正して、昼間撮影したのと変わらない出来栄えに仕上げるのも忘れない。


 そうして、ノーグランテス辺境伯領の詳細な地図を作っていく。


 やがて農村が見えてきた。


「位置的にも丁度いいし、ここでもエアリアルフォト、っと」


 さらにここに農村がありますってマークと、最寄りの街道への方向も入れておく。


 それから寝静まった農村へと舞い降りた。

 もちろん、姿も気配も完全に消して。


「ノーグランテス辺境伯領軍もレガス王国軍も駐屯兵はなし、と。まあ、ごく普通の農村だから無理もないか」


 その情報も農村のマークの横に記載しておく。


 さて、ここまでは事前に共有した作戦通り。

 ここからは将軍にも誰にも説明してない、秘密の作戦だ。


「それで村長の家は……」

『こちらです、我が君』

「さすがキリ、助かる」


 村長の家に、特殊な契約精霊達を一チーム配置する。


 これも情報収集も兼ねてるけど、それ以上にやって欲しい役割がある。

 だからそれについて、一度で済むよう他のチームにも一緒に説明してしまう。


「――と言うわけで、頼んだぞ」

『『『『『はい、ますたー』』』』』


 仕込みはこれでよし。


「それじゃあ皆さん、良い夢を」


 グッドラックとピッと指を立てて、ロクに乗って空へと舞い上がる。


 配置したチームの精神属性の特殊な契約精霊が、早速仕事を始めて村人達に夢を見せ始めた。

 人格に影響がない程度に、深層心理へ訴えかける夢を。


 朝目覚めたら、夢のことなんて覚えてないだろうけど、今はまだそれでいい。

 これはまだ仕込みでしかないからな。


 それを見届けてから、すぐに次へと向かう。


 こうして全ての農村に一チームずつ、町にはその規模に合わせて二から四チームを配置。


 ノーグランテス辺境伯領全てを回り終わったら、次はディーター侯爵領だ。


 同様に、全ての町と村にチームを配置して、夢を見せて仕込んでいく。


 そして最後に……。


「どうせなら昼間に来たかったけど仕方ないか。みんなの顔を見たかったけど、元気にやってるらしいのは知ってるし」


 そう、やってきたのは俺の生まれ育ったトトス村だ。


「顔を出すのは、戦争が終わって落ち着いてからかな」


 パティーナとサランダも紹介しないといけないし。

 まだお嫁さんを増やすのかと、呆れられそうでちょっと気後れするけど……。


「感傷に浸るのはまた後にするか」


 トトス村は俺がいて、ディーター侯爵家のちょっかいを退けたからか、王家に対する不信感や、レガス王国歓迎なんて雰囲気は欠片もない。

 でも一応念のため。

 同じ手順を繰り返す。


 それと、俺の故郷だけにレガス王国軍が必要以上のちょっかいをかけるかも知れないから、念には念を入れて、領都と同様四チームを配置しとく。

 さらに実家の納屋の裏手に穴を掘って、偽水晶も埋めておいた。

 もちろん、俺の精霊力で満タンの。


 これで少々交戦することになっても、特殊な契約精霊達に与えた精霊力が尽きることはないだろう。

 こんなこともあろうかとって、領地から持って来といて良かったよ。


 全て終わって空へ舞い上がったところで、東の空が白んで来てるのが見えた。

 本陣ではそろそろ援軍が出立してる頃か。


「これで仕込みは十分。じゃあ戻るか」



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