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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第二十三章 宣戦布告、そして開戦へ

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681 軍部の反乱への対応

 翌日、早速軍部を訪れて、今後について協議する。

 正式な軍議じゃなくて、そのための予備会議と言うか、さらにそれ以前の情報の確認や意見の摺り合わせみたいなもんだけど。


 だから参加者は俺と軍務大臣のイグルレッツ侯爵、将軍のガーダン伯爵、その他参謀本部の面々だけだ。


「やはり王太女殿下もそのようにお考えだったか」


 昨日の話を伝えると、やっぱりそれは軍部も危惧してたようで、イグルレッツ侯爵が小さく唸る。

 ただでさえ、北部で作戦行動中で忙しいだろうに、開戦が前倒しになるなら、早急に手を打たないといけないからな。

 仕事がさらに山積みになるだろうけど、ここは頑張って貰うしかない。


「姫様とフィーナ姫から簡単に状況は聞いてますけど、具体的にはどう事態が推移してるんですか?」

「それについては俺から説明しよう」


 テーブルの上に北部の地図が広げられ、報告書をまとめた書類が束で置かれ、参謀や役人じゃなくて将軍が直々に説明してくれる。

 それによると――



◆◆◆



 議事堂で会議が行われ、ノーグランテス辺境伯派とディーター侯爵派の貴族達が王城に逗留と言う名の軟禁をされた日の夜。

 王都の貴族街にて。


「王国の騎士団が何故我が家に踏み入る!? これは越権行為だ!」

「ヨーク子爵家にはレガス王国と通じ国家転覆を謀る国家反逆罪の嫌疑がかけられている。これが捜査令状と逮捕状だ」

「なっ……!?」


「いいか、全員取り押さえろ、一人も逃がすな。執務室を押さえ、資料の押収も急げ。決して証拠を隠滅させるな!」

「「「「「はっ!」」」」」


「ま、待ってくれ! 国家反逆罪など何かの間違いだ! 我がヨーク子爵家の王家への忠誠を疑うのか!? そのような大それた真似をしようはずがない! 当主様は!? 当主様はいずこに!?」

「嫌疑はヨーク子爵家だけではない、ノーグランテス辺境伯派、ディーター侯爵派の全ての貴族家に対してかけられている。全ての当主は、王城に留め置かれ調査中だ」

「そんな……!?」

「貴様は家令か? 貴様にも詳しく話を聞く必要がありそうだな」

「は、放せ! 知らない! 私は何も知らない!」

「それはこれからじっくり尋ねる。素直に協力すればよし。逆らえば容赦はしない」


 その日、夜を徹し、ノーグランテス辺境伯派、ディーター侯爵派の全ての貴族の屋敷で同様の強制捜査が行われ、屋敷の者達は次々と捕縛され、資料を押収されていった。

 メイドや下働きなどほとんどの者達は何も知らされていなかったため、騎士団に逆らう気力などなく、大人しく捕縛された。

 しかし、一部の騎士や兵士達が抵抗、あるいは逃走しようとし、やむなく切り捨てるなどの事態も起きた。


 その後の調べで、押収された資料からはレガス王国と通じる証拠は出なかったものの、様々な不正の証拠が相次いで見つかり、それだけでも当主は交代の上、蟄居(ちっきょ)させられるか、投獄されるだけの罪が確定した。

 また、家令や侍従長、侍女長など、高い権限や地位を持つ者達は計画を知らされており、少し脅せば早々に自白、口が堅い者達も苛烈な取り調べ(拷問)によって自白し、レガス王国と通じ国家転覆を謀る証言が得られた。



 その翌日早朝、急遽編成された部隊の第一陣が、ノーグランテス辺境伯派、ディーター侯爵派の領地へ進発。

 物証を押さえるための作戦行動を開始した。


「ここはトエルマー伯爵領である! 王都の騎士団が何故、隊伍を組んで我らが領へ踏み入らんとする!?」

「王都の屋敷に滞在する家人より証言を得て、トエルマー伯爵家には、レガス王国の軍を招き入れ王家と国家に仇なす謀反の疑いが持たれている!」

「ば、馬鹿な!? そのような話は聞いたこともない! 何かの間違いだ!」

「抵抗すれば反逆の意思ありとみなす。大人しく我らの指示に従い、取り調べに協力すれば悪いようにはしない」

「わ、分かった、協力する! 全員、騎士団の指示に従え! 決して抵抗するな! 少し調査に協力すれば、謀反など間違いだとすぐに分かる!」


 伯爵以下、特に子爵や男爵などの下級貴族の領地では、関所の駐屯部隊や小さな村や町などの守備隊は、ほとんど何も知らされていない者達ばかりだった。

 彼らは、王都よりやってきた王家の旗を翻す騎士団に逆らうことなく、武装解除に応じ宿舎などに大人しく軟禁され、取り調べにも協力的であり、確実に白だった。


 しかし、町の守備隊の隊長や王都に通じる街道の関所の責任者などの、部隊への命令権を持つ者達の中には、計画の詳細は知らずとも、日頃から王家やマイゼル王国への不平不満を口にして周囲の思考を誘導し、レガス王国軍の侵攻に呼応するよう準備を進めていた者達もいた。


 それに対し、大きな町や領都の守備隊や屋敷の警備隊は、ほぼ全ての者達が計画に加担しており、戦端を開く結果になった。


 それら抵抗の排除に、小競り合い程度で即日対処出来た場合もあれば、複数の部隊が連携したため半月以上手間取らされた場合もあった。

 いずれにせよ、王国軍が勝利して屋敷へと踏み入ることに成功し、捜索が行われた。


「な、なんですかお前達は、無礼な!」

「トエルマー伯爵夫人とお見受け致します。トエルマー伯爵家には謀反の嫌疑がかけられています故、大人しく調査にご協力下さいますよう。抵抗は無意味とご承知おきを」

「このような無体な真似をして、許しませんよ!」

「夫人を別室へ。我らは調査を続ける」

「はっ!」

「何をする! 手を放しなさい無礼者!」


 領都の屋敷では、夫人、嫡男その他、一族の重要人物が次々と捕縛され、取り調べの結果、計画を自白するに至った。


「トエルマー伯爵の領都の屋敷では、執務室の右側の壁に田園風景の風景画が飾られているはずだ。その裏に隠し金庫があるとされている。大至急調べろ!」

「ありました! 隠し金庫です!」

「中身の書類や手紙は?」

「はっ、こちらです」

「これは、ヨーク子爵からの手紙……そしてこちらは軍馬の売買契約書と、武器や糧食の買い付けの契約書か」

「ゴクリ……メイワード伯爵が議会へ提出したと言うこの『写し』と、寸分違わず同じ内容ですね……」

「ああ……メイワード伯爵子飼いの見えない諜報部隊か……空恐ろしいな」

「どのような陰謀を企もうと、全て丸裸にされそうですね」

「味方であれば、これほど頼もしいことはない」


 各部隊にはエメルが提出した『写し』を持たせてあり、それと見比べることで『写し』が正しかったことが証明され、同時に本物の物証を確保するに至った。



 しかし、首謀者とも言えるノーグランテス辺境伯家、ディーター侯爵家の抵抗は激しく、領都および砦の門を閉ざして籠城。


「レガス王国より援軍が到着するまで持ち堪えろ! 我らは『力』のない情けない王家になど従わぬ!」


 各領軍のトップや主要な部隊にはすでに命令が行き渡っており、嫡男、次男などの指揮で徹底抗戦の構えを見せ、攻略は遅々として進まなかった。


「包囲して備蓄が尽きるまで待つにしても、時間の猶予がありません。上層部の話に寄れば、開戦まで遅くとも二カ月しかないのですから」

「強引にでも突入すべきでは?」

「ここで(いたずら)に兵を失うわけにはいかん。後にレガス王国軍との戦いが控えているのだ。それに敵も一枚岩ではない。祖国を裏切るのを嫌がり、逃亡、投降している兵もいるのだからな。ともかく降伏勧告を続けながら、その者達より内部の状況を聞き取り、工作員を送り込むなど、攻略の糸口とするのだ」





 ――とのことだった。


「姫様とフィーナ姫から聞いてた通り、小さい貴族家や、小心者で周囲に計画を漏らしたりろくに通達してなかったりした貴族家は、あらかた片が付いたって感じですね」

「そういうことだ。これほど迅速かつ強引に捜査を進め、少ない犠牲で片を付けられたのも、エメル殿の事前の調査のおかげ。『写し』があってこそだ」

「あれが役に立ってくれたのなら幸いですよ。ただ……」

「そう、問題はノーグランテス辺境伯家、ディーター侯爵家の抵抗だ。元より、両家の領軍は質量共に優れている。このような事態に備えての部隊への通達や、拠点への物資の集積など、すでに終わらせていたのだろう。本格的に籠城されては、おいそれとは手出しが出来ん」


 将軍の口ぶりからすると、強引に事を進めれば、なんとか出来ないこともないって感じみたいだけど。


 本番が控えてるから、無理をして消耗するのも厳しい。

 かといって、このまま放置してレガス王国軍と連携されるのも厄介だ。


 果たして、犠牲を出してでも急いで攻略してしまうべきなのか。

 それとも、包囲を続けて孤立させ、遊兵化させることで本隊同士の戦いに関わらせないか。

 はたまた、打って出てくるのを待って勝負を付けるのか。

 戦術的にどれが正しいのか、判断が難しいな。


「俺が行って速攻で片を付けられたら簡単なんですけどね」

「本来なら頼みたいところだが、やはりそれは遠慮して貰いたい。ここでエメル殿が出ては、全ての功がエメル殿の物になってしまう」

「大丈夫、分かってます」


 俺が提出した物証を元にした作戦行動だからな。

 一番の大物を俺が対処したら、確かに功績はほぼ全て俺の物になってしまう。

 迂遠なことだと思うけど、功績のバランスを考えると、やっぱり任せるしかない。


 ここで大物を捕えて功を立てれば、貴族に叙爵される騎士や、陞爵(しょうしゃく)する下級貴族の指揮官が出るだろう。

 褒賞に領地を与えれば、王家が直轄地を管理する負担も少しは軽くなるからな。


「ただ、そうなると、そいつらがレガス王国軍と連携して打って出てくることも考えて、こっちの布陣と作戦を考えないといけないわけですよね?」

「その通りだ。そこでエメル殿と、メイワード伯爵派の各領軍をどこに配置して、どう動いて貰うかを考える必要がある」


 それを事前に話し合っておかないと、本番の軍議で揉めて大変そうだからな。


「じゃあ、それをどうするか、話し合いましょうか」



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