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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第二十二章 レガス王国との戦争へ向けてと春に予定していた作業を進める

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655 インブラント商会長を味方に付ける

「さて、三つ目なんだけど」

「はい、なんでしょう」


 精霊魔道具のレンタルの話で頭がいっぱいになって忘れてたのか、インブラント商会長がそうだったとばかりに慌てて居住まいを正す。

 それだけインパクトがあったってことで、ご愛嬌だな。


 ただ、内容が内容なだけに、俺も表情を改める。


「さっきも他言無用って言ったけど、これから話すのは本当の本当に他言無用で頼む。もし外部に漏れたら、いくらインブラント商会長でも……」

「はっ、心得ております」


 途端にインブラント商会長は顔を強ばらせて生唾を飲み込んだ。


「うん、信頼してるから打ち明けるんだ」


 前置いて、腹に力を込めて、声のトーンを落とす。


「俺がアイゼ()様と結婚しようとしてることは知ってると思うけど、フィーナ姫とも結婚しようと思ってることは?」

「なんと!? いえ……やはり、そうだったのですな。常識で考えれば、どちらかお一方とだけだろうと、そう考えるところですし、多くの者達がそう思っているようです。しかし、それにしては閣下の振る舞いや噂がどうにもおかしいと思っておりました」

「さすがインブラント商会長。俺のことがよく分かってるな」

「ははは、閣下は常識では計れないお方ですからな」


 一笑いした後、また表情を改める。


「それで、話はこれで終わりではないのでしょう?」


 うん、その通り。

 だったら王位はどうなるんだって、インブラント商会長くらいの人ならすぐ気付くだろう。


「そこで、フィーナ姫から俺に、王権を委譲されることになってる。これはフィーナ姫もアイゼ()様も承知してる話で、俺が王様になって新しい王朝を打ち立て、二人を正妃として迎えるんだ」

「――!?」


 さすがにこれにはインブラント商会長も絶句してるな。

 叫び出さなかったのは、他言無用が利いてるからだろう。


 ただ、脂汗がぶわっと噴き出したみたいで、ウグジス侯爵並にハンカチを取り出して汗を拭く。

 もっとも、拭いても拭いても、汗が引かないみたいだけど。


「こ、これは……とんでもないお話ですな……とてもではありませんが、外部に漏らすなど、とてもとても……」


 下手に漏れたらマイゼル王国は大きく混乱するだろう、主に俺を阻止しようとする貴族達のせいで。


「……いや、ですが、閣下であれば……?」


 お?


「つい取り乱してしまい、申し訳ありません」


 しばらく間を置いて、インブラント商会長が落ち着きを取り戻してから話を続ける。


「そこでインブラント商会長にお願いがあるんだ。俺を支持して協力して欲しい」

「……それは、具体的には何をしろと?」


「取引のある商会や職人達だけでもいい。『ガンドラルド王国の侵略、最大派閥の貴族の反乱、そして新たにレガス王国の侵略。それらを退けてマイゼル王国の平和を守ったのは救国の英雄メイワード伯爵で、その「力」がなければマイゼル王国は三度滅んでいた。農政改革で美味しい作物も出回り始めたし、自分達が今平和に暮らしていられるのは、全部救国の英雄メイワード伯爵のおかげだ。しかも、王太女殿下と第一王子殿下と仲が良くて、恋の噂も流れるほど。だったらいっそ二人と結婚してメイワード伯爵に王様になって貰ったら、マイゼル王国はもっと平和で豊かになるんじゃないか』って感じに話を広めて、世論を作って欲しいんだ。もちろん二人とも承知してる話なんで安心してくれ」

「――!」


 驚いて当然だ。

 一歩間違えれば、国家転覆の企みに聞こえるだろう。

 でも、現王家がそれを望んでる、って時点で、これは反乱でも簒奪(さんだつ)でもないし、大義名分があるんだ。


「メイワード伯爵領はそのまま新しい王家の直轄地になって、商売には影響はないと思う。もっとも、さすがに露骨な優遇は出来ないけど。それでも、今後俺が考えてる色々なことが、一領地だけじゃなくて、マイゼル王国全土で動かせるようになる。もちろん、名実共に俺の王家御用達になるインブラント商会には、色々と真っ先に相談させて貰うのはこれまで通りだ」

「それはまた、スケールの大きなお話で……」


 なんとかそう声を絞り出した後、これまでにないくらい大真面目な顔になった。


「そのお話、全力で乗らせて戴きます!」


 おお!


「閣下が陛下になられた暁には、我がインブラント商会は益々発展することでしょう。しかしその権勢を欲するだけではありません。閣下が作り上げる豊かなマイゼル王国を、儂も是非、見てみたくなりました」


 キリが何も言わないから、これは本心からの言葉なんだろう。


「ありがとうインブラント商会長。とても心強いよ」

「こちらこそ、この歳になってまだこのように胸が高鳴る、この方に付いて行きたいと思えるお方に出会えたことは、儂の人生における宝です」

「大げさだな。でも、本当にありがとう」


 手を差し出すと、インブラント商会長がしっかりと握ってくれる。


 これで俺達は運命共同体になった。

 俺が王様になればインブラント商会も大きな飛躍を、万が一俺が反逆者として処断されればインブラント商会もお取り潰しくらいあるだろう。

 これでもう一つ、失敗出来ない理由が出来たな。


「そして最後の四つ目なんだけど、二つ目、三つ目を踏まえて、他の商会、大商会も俺を支持するように誘導して欲しいんだ」


 もちろん、対価は必要だろう。

 それがグラビティフィールドの精霊魔道具を優先的にレンタル出来る権利なんだけど、それで足りないのなら、単純に金貨を積み上げるか、何かしら特別な製品の販売の独占なんかも考える必要がある。


 プロの商売人を相手に、それも魑魅魍魎(ちみもうりょう)のごとき貴族相手に商売をしてきた大商会の商会長を相手に、ド素人の俺がそういう駆け引きで勝てるとは思えない。

 だからそこんところの利害調整を、出来ればグラビティフィールドの精霊魔道具の件だけで治めるように、インブラント商会長には立ち回って欲しいんだ。


「なるほど、そういうことでしたらお任せ下さい。まず間違いなく、グラビティフィールドの精霊魔道具の件だけで十分な対価となります。欲の皮が突っ張った者達は、次代の国王陛下の覚えが悪くなるわけですから、それが分からず足下を見て無茶な要求をする者など、こちらから切り捨てて構わないでしょう」

「そっか。そうだな。やっぱり餅は餅屋。インブラント商会長に任せとけば安心だな」

「その信頼に、是が非でも応えてみせましょう」

「うん、よろしく頼んだ」


 商談成立だな。


「そこで閣下、今回のお話について、恐れながら儂の父と息子のレイブンにだけは話をする許可を戴きたいのです」

「ふむ?」

「父は現在、王都本店の店長を任せておりますが、前商会長だけあって、未だに顔は広く影響力もあります。必ず大きな力になってくれるかと。そして息子のレイブンは副会長を務めており、次期商会長になる予定です。なのでこの話には是非最初から噛ませておきたいのです。もちろん二人とも口が硬く、秘密を漏らすことは一切ないとお約束します」


 なるほど。

 前商会長ならかなりの年齢だろう。

 この手の話は若い連中は乗ってくれやすいだろうけど、年寄りは保守的で頑固だろうからな。

 そんな年寄りを少しでも支持者に出来る可能性があるなら、とても助かる。


 それに副会長のレイブンも、この話に最初から噛んでたか蚊帳の外だったかで、代替わりしたときに、俺の覚えが大きく変わるからな。


 もしレイブンが噛まなかったら、俺と懇意にしてるメイワード伯爵領支店で支店長をしてるオルブンを次期商会長に、って声が出ないとも限らない。

 そうなれば、お家騒動になりかねないもんな。


 それは俺も望まないし、代替わりした後もインブラント商会を頼りにしたいから、レイブンとはオルブンと同等以上に懇意になっとくべきだろう。


「分かった。その二人も是非巻き込んで味方に付けてくれ。ただし、時が来るまでは、その二人までにしといて欲しい。オルブンやカラブンには悪いけど、二人にも秘密だ」

「さすが閣下、ご理解戴きありがとうございます。二人とも必ず閣下にご満足して戴けるだけの働きをすると、お約束します。当然、この二人以外には、口が裂けても口外しませんとも」


 うん、インブラント商会長がここまで言ってるんだ、信用して任せよう。

 これでまた、大きく一歩前進出来たな。



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