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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第二十一章 一方でレガス王国も何やら企んでるっぽい

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644 反応が鈍い貴族達

「周辺国を味方に付けると貴様は簡単に言うが、そう簡単に上手くいくと本気で思っているのか?」


 外務大臣のブラバートル侯爵が渋い顔をする。


「他国の王太女殿下の誕生日パーティーに呼ばれてもないのに図々しくも突然やってきて、挙げ句の果てに主役の王太女殿下を侮辱し、その国をコケにした。常識的に考えれば、そんな無礼者が正しい、侮辱された方が侵略されて当然、なんて理屈は通らないだろう? そんなことを言えば品性が疑われる」

「感情論では当然そうだ。しかし外交とは、誰もが常に正しい者の味方をするわけではない」

「分かってるって。誰だって大国に睨まれるのは怖いし、トラブルは避けたい。安全保障や貿易、婚姻関係や同盟、その他様々な思惑で、必ずしもマイゼル王国の味方をしてくれるわけじゃない、って言いたいんだろう?」

「その通りだ。分かっているのなら、楽観的に考えん方がいいぞ」


 そんなの、わざわざ言われるまでもない。


「まあ、そこんところは外交努力って言うか、努力目標だな」


 軽く流して、国際世論を作り味方を増やすことにこだわらなかった俺に、ブラバートル侯爵が不審そうな目を向ける。

 それは、クラウレッツ公爵やジターブル侯爵、グルンバルドン公爵達も同じだ。


「一応、帰国事業と高品質の作物の輸出、さらにガラス産業で、俺やマイゼル王国に好意的な国は少なくない。もっとも、どこまで本気か、口先だけかは分からないけど。だから、今後の付き合いを考えてどっちに付くのが得か、考えさせてやればいい」


 事も無げに言うと、グルンバルドン公爵が顔をしかめる。


「……踏み絵にするつもりか?」

「今回の事態、せっかくだからそう利用してもいいんじゃないか?」


 小さなどよめきと唸り声が上がる。

 まさか俺がそこまで考えてるとは予想もしてなかったってリアクションだ。


 もういい加減、俺が農民だ平民だ、ただの成り上がり者だって印象は、捨てた方がいいと思うぞ?

 下手な貴族より、よっぽど国政について勉強してるからな?


 まあ、舐められるのは面倒な反面、付け入る隙にもなるから、まだ自分からは言い出さないけどさ。


 余裕の態度でこだわらない俺に、貴族達は顔を見合わせて難しい顔をする。


「しかし、味方に付くのなら、やはり勝つと分かっている国がいいのも確か」

「現状で、マイゼル王国が勝つと思っている国は皆無なのではないか?」

「レガス王国だけならまだしも、背後のゾルティエ帝国が動くとなれば、万に一つも勝ち目はないだろう」

「それに、メイワード伯爵の言う事業や産業も、付き合いの期間が短く、取引量も額もまだ小さい」

「今後を考えるにしても、一国を動かすにはまだ弱かろう」

「他国は黙って動かぬのではないか?」


 口々に不安の声が上がる中、きっぱりと言い切ってやる。


「最低でもナード王国はこっちに付いてくれると思うけど、俺だって即決で味方になってくれる国ばかりなんて思ってないさ。最悪、開戦時に一国も味方がいないかも知れないし。まあ、正直、それならそれで構わないって思ってる。俺達が勝ち進めば、そのうち旗色を見てこっちに付くだろうし。そうならなかったとしても、戦場での勝敗になんら影響はないからな」


 大口叩いてるくらいにしか思われてないのか、俺の自信を信じ切れないのか。

 貴族達の反応はいまいちだな。

 安心したとか、勝ち馬に乗ってやろうとか、前向きになった奴はほぼ皆無だ。


 ネックは、やっぱり背後のゾルティエ帝国か?


 そんな中、ライアンがグレイブル伯爵として、改まった口調で聞いてくる。


領袖(りょうしゅう)の見込みでは、対レガス王国戦の勝率はどのくらいと見込んでいますか?」

「そりゃあもちろん百パーセントだ。俺が出るんだぞ? マイゼル王国に万に一つも敗北はない。開戦時に味方がいてもいなくても、戦場での勝敗になんら影響がないってのは、つまりそういうことだ」


 俺があまりにも自信たっぷりにノータイムで断言したせいで、どよめきが大きくなった。


「ゾルティエ帝国が動いたとしても?」

「ああ、もちろん百パーセントだ。マイゼル王国の勝利は揺らがない」


 ライアンも、自分で質問しておきながら、口元がやや引きつってるな。


「あの馬鹿王子は、フィーナ姫とアイゼ様を大勢の前で侮辱した。それを俺が許すとでも? 俺は一人でだろうとレガス王国と戦って、叩き潰す。ゾルティエ帝国があの馬鹿王子の肩を持つって言うなら、ゾルティエ帝国もだ」


 本気の俺の言葉に、息を呑み、呻くような声が聞こえてくるけど、それを馬鹿馬鹿しいとか、出来るわけがないとか、そんな言葉を口にする奴はいない。

 一番言いそうな奴らは排除され、以前なら言いそうだった奴らは、ほぼ軍門に降ったからな。


「領袖はレガス王国と……果てはゾルティエ帝国とも本気で事を構えるつもりなのですね」

「ああ、その通りだ」


 強く頷いてから、改めて貴族達を見回す。


「もちろん、どこまでやるかは、今後のレガス王国の態度次第だ。もし早々に降伏して公式に謝罪するなら、たっぷりと賠償を搾り取って、それで手打ちにしてやってもいい。だけど、もし反省も謝罪もなく、負けを認めるくらいなら死んだ方がマシだってプライドに(じゅん)じる気なら、望み通り、レガス王国をこの地上から消してやる」


 呻き、唸る声が大きくなる。

 伸るか反るか、迷ってるんだろうな。


 でも、そんな伸るか反るかの博打を打つような気持ちでいて貰ったら困る。

 俺と一緒に戦うからには、そんな及び腰じゃ話にならない。

 必ずフィーナ姫とアイゼ様を侮辱した報いを受けさせて、絶対に謝罪させる。

 その気概を持ってくれないと。


「俺は出来ないことは口にしない主義だからな。そして、やると言ったらやる」


 俺と付き合いの浅い貴族達は半信半疑だけど、俺と付き合いがある貴族達は、俺の本気を感じ取ったようだ。


「だが、その後はどうするつもりだ」

「そうだ、レガス王国を滅ぼせば、我が国への影響も大きいのだぞ」

「地上から消してやるって言うのは、飽くまでも地図上からその名を消すって意味で、別に国土全てを焦土と化して人が住めない土地にしようってわけじゃない」


 俺だってそこまで悪辣じゃないからな。

 魔王として世界に名を轟かせたいならまだしも、そんな趣味はないし。

 俺は自分の手が届く範囲の大事な人達さえ守れれば、それでいい。


「要は、全ての国土をマイゼル王国の物にするのか、現王家を倒して親マイゼル王国の新しい王家を立てさせ賠償を支払わせるのか、ってことだ。後者なら、適当な段階で国名を変えさせて、スッキリしたいところだな」


 結果どうするかは相手の出方次第で、管理も出来ないのに無闇矢鱈と国土を奪い取るような真似はしないつもりだ。


 ただ、今回はガンドラルド王国を無条件降伏させた時とは違う。

 何が違うのかって言えば、レガス王国は人族陣営で、しかも同じ人種の人間が主体の国だってことだ。

 つまり、領地単位で貴族と領民をマイゼル王国に帰属させれば、支配可能ってわけだな。

 過去幾度となく、その手法でレガス王国とフォレート王国には領地を奪われてるから、マイゼル王国にそれが出来ないわけがない。


 レガス王国の国王がノーグランテス辺境伯派とディーター侯爵派に保障したように、降伏した貴族の地位や財産を安堵すると約束することで、降伏しやすく、またこちらへ寝返りやすく出来る。

 もっと血生臭いことを言うなら、マイゼル王国へ敵対的な貴族や、腐敗してる貴族は戦争責任を追及して処刑して、少しでもマイゼル王国へ友好的または従順な態度を取る者を後釜に据えてやればいい。


 まあ、まだ何も始まってないんだから、今そこを詰めて話す必要はないけど。


「とにかく、俺が言いたいのは、大国との戦争だからって腰が引ける必要はないってことだ。むしろ勝ち馬に乗るつもりで、手柄を立てるために参加すればいい」


 フィーナ姫とアイゼ様に目を向けると、二人とも頷いた。


 このままならまず間違いなく、ディーター侯爵派とノーグランテス辺境伯派の貴族家は国家反逆罪で一族郎党処刑され、地位も領地も財産も没収され家は取り潰しだ。

 ただ、保身に走ってだろうが心底反省してだろうが、開戦前に王家の軍門に降るなら、降爵や領地の一部の没収など、なんらかの罰は与えられるだろうけど、家の取り潰しまでは免れるだろう。

 どちらにせよ、また王家が管理しないといけない領地が増えることになる。


 中央集権化を推し進めるなら、王家が管理する領地が増える方が財力も権力も増すから、それら全ての領地を召し上げるのが一番なんだけど……。

 ハッキリ言って、現状でも王家は手一杯だ。


 旧アーグラムン公爵領とガンドラルド王国から返還された領地で、王家の直轄地は短期間で一気に数倍以上に増え、信頼出来る優秀な代官や役人が足りず、十分に管理が行き届いてない。

 俺を早く辺境伯に陞爵(しょうしゃく)させて、それに相応しいだけの領地を与えたいのも、王家の直轄地を少しでも減らして管理の負担を軽減したい事情もある。


 つまり、レガス王国との戦争に参加して手柄を立てれば、その褒美に新たに爵位を与えられたり陞爵したりして、ディーター侯爵派とノーグランテス辺境伯派の領地を与えられる可能性が高い。

 いずれ独立して平民落ちするしかない三男以下や親族、立身出世を目指す騎士など、チャンスがゴロゴロ転がってるって言っても過言じゃないわけだ。


 そうなれば、自分の家に連なる貴族家が増えて、家の発言力が高まるだろう。

 権勢を拡大する大チャンスだ。


「俺に協力して兵を出せば、手柄を立て放題だぞ」


 これはかなり魅力的な話のはず。


「いや、しかし……」

「ですが……」

「ううむ……」

「……」


 だけど……予想外に反応が悪いな?


 ブラバートル侯爵、ジターブル侯爵、クラウレッツ公爵、グルンバルドン公爵などなど、重鎮や派閥のトップ達が難色を示す。

 他の貴族達も煮え切らない態度だ。


 こんな美味い話に、なんでそこまで二の足を踏むんだ?



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― 新着の感想 ―
[一言] まさに歩く核兵器! とんでもない展開、いや、北の領地がカケラも出てこなかった頃からきな臭いなぁとは思っていたけど、ここ迄とは! もうここ数日、この物語に首ったけです(≧∀≦)/
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