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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第二十一章 一方でレガス王国も何やら企んでるっぽい

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640 物証の公開

「ハーグダス伯爵」


 ディーター侯爵派やノーグランテス辺境伯派へ向けてた顔を、グルンバルドン公爵派へと向ける。


 唐突に俺に呼ばれた法務大臣のハーグダス伯爵は、ここでまさか自分に話を振られるとは思ってなかったのか、一瞬目を見開いた後、まるで自分を巻き込むなと言わんばかりに嫌そうな顔をした。


「あいつらはああ言ってるけど、マイゼル王国の法には、伯爵が用意した物証に対し、それより爵位が上の者が、捏造だ、無効だ、証拠が本物か検証するなと騒いだら、その物証が本物か偽物か検証すらせずに無罪になるのか? そして伯爵は証拠偽造罪が適応されるのか?」

「それは……そのような法は存在しない」


 そりゃあそうだ。

 特権とばかりに金や権力を使って好き放題してるだけで、法的にそんな真似が認められてるわけがない。

 長年の慣習や暗黙の了解になってて、誰もそこに切り込まなかっただけで。


「つまり爵位に関わらず、物証があればそれは検証されなければならないし、物証が本物であれば相応の裁きを受けなくてはならない。そこは爵位や権力や金品で手心が加えられてはならない。そうだな?」

「……その通りだ」


 これまで散々そうやって言い逃れしてきた貴族達、それは『そのような法は存在しない』『その通りだ』と言い切ったハーグダス伯爵自身も含めてだけど、苦い顔をする。

 だからまあ、白々しいっちゃ白々しい話だよな。


 でも、今は司法が正しく運用されてないことを追求するのが目的じゃない。


「だそうだ。ハーグダス伯爵(法務大臣)自らこう言ってるぞ? お前達がいくら捏造だと騒いだところで、検証しなければそれが本物か偽物か断定できないわけだ。むしろ、お前達が必死になって否定して騒げば騒ぐほど、有罪になって裁かれる心当たりがある、俺が用意した物証が本物だ、って証明してるも同然だ。ほら見ろ、他の貴族達だってそう思ってるぞ」


 散々ヤジを飛ばしてきた連中が、周囲の貴族達を見回し言葉を詰まらせる。

 その反応を見るだけでも、物証は存在するって言ってるようなもんだ。


「ああ、急いで屋敷や領地に帰って処分しようと思っても無駄だぞ。お前達にその機会は与えられないからな」


 希望を断ってやると、さらにたじろぐ。


 だけど、次期侯爵とノーグランテス辺境伯の余裕そうな態度は変わらない。

 俺がいつまでも物証を出さずに、脅しと印象操作だけで自白させようとしてるから、本気でハッタリか捏造って思ってるんだろう。

 そして、どうとでも言い負かせるし、処分も出来ると。


 確かに、このままいつまでも引き延ばしは出来ない。

 さっさと物証を出さないと、本当は物証なんてない、その物証は捏造だから自信がないんだろうって、他の貴族達に思われてしまう。

 そうなると、この先の展開が不利になるし、思うほどの効果を出せなくなるかも知れない。


 そうなる前に、そろそろ物証を突きつけてやりたいところなんだけど……。


『我が君、お待たせしました。我が君の誘導と時間稼ぎのおかげで準備が整いました』

『ナイスタイミングだキリ。よくやった!』


 さあ、物証は揃った(・・・・・・)

 ここからが本番だ。

 馬鹿者どもを、徹底的に追い詰めていくとしようか。


「やれやれ、せっかく自首するチャンスを与えてやったのに、そのチャンスを棒に振るって言うならそれでもいいさ。罪が確定して後悔すればいい」


 自信たっぷりに、挑むように笑みを浮かべる。


「じゃあ、お待ちかね。俺が手に入れた物証の検証に入るとしようか」


 ディーター侯爵派とノーグランテス辺境伯派の下級貴族達は狼狽えるけど、次期侯爵とノーグランテス辺境伯はまだ余裕の態度を崩さない。

 他の貴族達は、果たして俺がどんな物証を出すのか、本物か捏造か、それを見極めようと余計な口を挟まず俺に注目する。


「まず物証を見せる前に、ディーター侯爵派とノーグランテス辺境伯派にこれだけは言っておく」

「なんだ?」

「今更謝っても、許しはせんぞ」


 次期侯爵とノーグランテス辺境伯が、絶対に言い負かしてやるって気迫を込めて、俺を睨み付けてきた。


「何故、この会議を開くのに、五日も日を開けたと思う?」

「何?」

「どういう意味だ?」

「鈍い奴らだな。この国家存亡の危急の事態に、この会議が誕生日パーティーの翌日に即刻じゃなく、何故五日も日を開ける必要があったのかって聞いてるんだ」


 これは、ノーグランテス辺境伯と次期侯爵、そして両派閥の貴族だけじゃない、全員に対する問いかけだ。

 絶対に、この会議の開催が何故こんなに遅かったのか、疑問に思ってる貴族は大勢いるだろう。

 その答えを、今、明かしてやるわけだ。


「答えは簡単。物証を確実に集めるためだよ」

「なっ……!?」

「馬鹿な!」


 さすがのノーグランテス辺境伯も次期侯爵も動揺を見せて、派閥の貴族達がこの二人を振り返って狼狽える。

 そして話を聞いてただけの他の貴族達の間にも動揺が走った。


「何も驚くことはないだろう? 俺は契約精霊に乗って空を飛べる。さらに同時に何人だって乗せて飛べるし、馬を外した馬車を運びながらも飛べる。最速で飛べば、俺の故郷、ディーター侯爵領にあるトトス村まで、王都から二時間あれば十分行けるんだ。つまり五日もあれば、お前達の領都や屋敷を全て回るなんて余裕なんだよ」


 もちろん、それだけじゃない。


「俺の見えない諜報部隊って知ってるか? およそ一ヶ月で、フォレート王国の諜報部隊のフロント企業だったスゴット商会の裏の裏まで、それこそフォレート王国と繋がってた裏の商会長や、別の商会名義で借りてた倉庫などの実働部隊の隠れ家、関係者の自宅その他、全てを暴き出して完全に壊滅に追いやった話は、耳にしたことくらいあるんじゃないか?」


 どうやら、聞いたことがあるらしい。

 嘘だハッタリだと叫ばないみたいだ。

 ノーグランテス辺境伯や次期侯爵なら、噂の事実確認くらいしてるだろうしな。


「さて、これで俺の物証の信憑性は理解して貰えたと思う」


 初めてノーグランテス辺境伯も次期侯爵も余裕をなくして焦りが見えた。

 だから、不敵に笑って真っ直ぐに見つめてやる。


 まあ、全部嘘なんだけどさ。


 五日も日を開けたのは、こういう風に話を持って行くため。

 実際に、五日もあればこいつらの領都を全て回れる時間はあるけど、回ったとは言ってない。

 ましてや、存在しない俺の見えない諜報部隊の話は、話を知ってるか、耳にしたことくらいあるんじゃないか、って聞いただけで、それが事実だとは一言も言ってない。


 でも、おかげでこれから俺が見せる物証の信憑性が一気に跳ね上がった。


 ここまで引き延ばしたせいで俺の用意した物証の信憑性を怪しんでた連中は軒並み、だったら本物に違いないって思っただろう。

 この後、ノーグランテス辺境伯と次期侯爵達がどれだけ捏造だなんだと騒いでも、それをそのまま鵜呑みにする奴は、もう皆無に違いない。


「それじゃあ、例の物を持って来てくれ」


 宮内省の役人が、予め準備してた物証を持って来てくれる。


 演壇の俺の前に置かれたのは、厳重に封をされた、大きな書類入れの文箱(ふばこ)が二つ。

 この文箱の中身はどちらも、会議の開始前はまだまっさらだった(・・・)羊皮紙だ。

 今はびっしりと、物証が書き込まれた書類になってる(・・・・)


 なんのことはない。

 この会議が始まるまで、物証なんて一つもなかった。


 あったのは、一つの噂だけ。

 それが、ディーター侯爵派とノーグランテス辺境伯派が、レガス王国と通じているのではないか、って噂だ。


 かつて反乱を起こして処刑されたアーグラムン公爵も、フォレート王国と通じてたくらいだ。内容が内容だけにごく一部の間でだけだけど、その噂はまことしやかに囁かれてた。


 ただし、噂の信憑性はそれなりにあったものの、明確な証拠はなかった。


 だけど、事ここに至れば、その噂は事実だったと誰もが思うだろう。

 そしてそれを証明する物証が、ほんの今出来上がった(・・・・・・)


 キリがディーター侯爵派とノーグランテス辺境伯派の思考を読み、それに基づいて、キリとユニが関連する記憶を読んで、証拠となる情報を集める。

 その集めた情報をキリがエンとサーペに伝達。


 エンがX線で文箱の中を透視して、羊皮紙の上にその情報をコピーするように、報告書形式の文章で、文字や絵を光で浮かび上がらせる。

 サーぺはそれに従い、文箱の中に同封してたインクを操作して、書き上げる。


 続けてレドとロクが、温風でインクをすぐさま乾かしてしまう。


 さらにユニが、数日かけて運ばれてきたと信じるように、羊皮紙を巻いた癖を付けたり、ヨレさせたり小さな傷を付けたりと、ダメージ加工をする。


 そして、モスとデーモがグラビティフィールドで書き上げた羊皮紙を持ち上げて、二枚目に取りかかる。


 それを繰り返して、いかにも俺の見えない諜報部隊が調査して上げた報告書って体裁の物証を、この会議の間に完成させたわけだ。


 その内容は、キリを通じて、すでに俺の頭の中にも入ってる。

 おかげで、怒りで腸が煮えくりかえってるんだけどさ。


「さあ、お待ちかねの物証の公開だ」


 公開処刑の実行とばかりに、文箱の蓋を開けて山のような羊皮紙の束を取り出した。



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