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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第二十一章 一方でレガス王国も何やら企んでるっぽい

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631 フィーナシャイアの誕生日パーティー 遂にアレのお披露目

 今回のフィーナ姫への誕生日プレゼントのお披露目は、アイゼ()様の誕生日の時と比べて、そこに懸ける王族、貴族達のプライドは遥かに高くなる。

 熾烈になる、って言ってもいい。


 何しろ数多くの周辺国が参加してるんだ。

 フィーナ姫へのプレゼントは、その国の権力や財力といった『力』を他国に示すことになる。


 あの国だけには負けられない、って見栄やプライドだけじゃない。

 あれほどの品を用意できるのかって、今後の外交にも影響を与えるのは確実。

 だから生半可な物を用意しては、国益を損ねることにもなりかねない。

 自然と気合いも入るってもんだろう。


 それはマイゼル王国貴族も同じだ。


 他国に大きな顔をされてはメンツが立たない。

 臣下として恥ずかしくないプレゼントを用意しないといけないし、お披露目に参加する貴族の数が少なくてもフィーナ姫に恥を掻かせてしまう。

 特に、王室派の貴族が増えてきて王家が力を取り戻してきてるんだから、それを内外にアピールするためにも、中途半端は許されない。

 否応なく奮起せざるを得ないわけだ。


 と言うわけで、今回は伯爵家以上の貴族家の多数がお披露目を希望してる状況だ。


 もっとも、反王室派の中には、王家に恥を掻かせようと不参加を表明してるところもあるんだけど。


 それでもグルンバルドン公爵派は、グルンバルドン公爵が国のためを思って動いてのことだから、たとえ反王室派だとしても国益を損ねるのは本意じゃないって、参加を表明してくれてる。

 おかげで、参加する貴族家の数については、十分に体裁が整うくらい集まったんで一安心だ。


 あとは、プレゼントの中身だな。


 当然、フィーナ姫と姫様は先に確認してるんだけど、俺は確認してないから、果たしてどんなプレゼントが出てくることやら。

 心配もしてるけど、どんな珍しい品物が出てくるかちょっと楽しみにもしてる。


「皆様、王太女殿下、第一王子殿下がお戻りになりました。ご歓談中と存じますが、ご注目下さい。ただいまより、王太女殿下へプレゼントの贈呈を行います」


 宮内省の役人のアナウンスで、歓談で賑やかだった会場がすぐに静まっていく。


 会場の上座に位置する、壁近くの中央に立ってるフィーナ姫とアイゼ様に参加者達の視線が集まった。


 俺は変わらず、二人から一歩下がった位置に立つ。

 会場を見渡せば、歓談を止めて静かになったものの、お披露目に参加する貴族達だろう、一部で気合いが入ってたり、自信ありげだったり、視線で牽制し合ったり、すでに戦いは始まってるみたいだ。


「それでは、始めさせて戴きます」


 役人が下がって、代わりに宮内大臣のコルトン伯爵が前に出る。


「最初にフィーナシャイア殿下へ贈られるのは、ナード王国ナーダー王家より、ナーダード・プレジュネーダ、二十八年物」


 コルトン伯爵が、贈り主と贈物を告げると、早速大きなどよめきが上がった。


 そのどよめきと参加者の注目を集める中、会場の両開きの扉が開いて、ワゴンに載せられたワインボトルが三本、会場へと運び込まれた。

 そしてなんとナーダー陛下自らワインを載せたワゴンの横に進み出て、解説をしてくれる。


「我が国は知っての通り、農業に、特に果樹の栽培に力を入れている」


 これはナーダー陛下の解説と合わせて、さらに後から詳しく聞いたんだけど、ナード王国では比較的寒冷地向けの果物や、荒れ地に強い果物の栽培が盛んで、中でもそれらを使った特産品のワインはかなり有名で、国際的に高い評価を得てるらしい。

 そのワインの中でも、ナード王国王家御用達で、王家の者しか飲むことも扱うことも許されない王家のブランド、ナーダー王家の名が入った『ナーダード』は、最高級のワインだそうだ。


「そして、我が国周辺で使われていた古い言葉で『極上のリンゴ』を現す『プレジュネーダ』の名を付けられたこのナーダード・プレジュネーダは、我が国で最も生産されてるリンゴの中でもワイン用の特別なリンゴの、しかもその名に恥じない極上の品質の物で作られた、幻とも呼ばれるほどの一品だ」


 それも、当たり年と言われる二十八年物ともなれば、たとえどれだけ金貨を積み上げようと、ナーダー王家と懇意にしていようと、まず手に入る物じゃないらしい。


 もっとも、ワインの賞味期限は、よほど保存状態が良くても数年や十年くらいって言われてるから、二十八年物と言えば数十年以上前の物になるんで、もはや劣化して確実に味が落ちてると思う。

 ほとんど、コレクターズアイテムだな。

 でも、欲しい人には喉から手が出るほど、それこそ莫大な借金をしてでも手に入れたい物で、持ってるだけでステータスになる一品だそうだ。


 それを三本もだなんて、どんだけ太っ腹なのやら。

 観賞用、保存用、布教用じゃないけど、一本は興味があれば開封して飲んでみていい、一本は大事に所持、そして残る一本くらいなら外交の道具として使っていい、ってことかも知れない。


 もしかしたら、先のガンドラルド王国との戦争で援軍を出せなかったこと、反乱を経てフィーナ姫が王太女になって王位に就くことから、ナード王国とマイゼル王国の同盟は、血が薄く遠くなって結びつきが弱まってきてると言われてるけど、現王の御代ではとても懇意にしてて、より一層深く強く結びついてる、そう他国に対してアピールする狙いもありそうだ。

 あとは、マイゼガント王家からの贈答品であるクリスタルガラス製品に対する返礼の意味も。


 ともかく、初っ端からすごい物が出てきたわけだ。


「ナーダー王家の秘蔵の一品をお贈り戴き、感謝の念に堪えません。ナード王国との変わらない友誼に、厚くお礼申し上げます」

「なに、私達は兄と妹のようなもの、遠慮は不要だよ」


 フィーナ姫の返礼に、ナーダー陛下は満足げに頷いた。


 それから、ナーダード・プレジュネーダは会場から運び出されていくんだけど、それを涎を垂らさんばかりの物欲しそうな顔で見送ってる連中がいて、ちょっと笑えた。


「次にフィーナシャイア殿下へ贈られるのは、フォレート王国フォレティエート王家より、ピュアファーラーシルクの反物」


 そして次の贈り主と贈物を告げられると、またしても大きなどよめきが上がった。


 運び込まれたワゴンには、眩しいくらいに純白の美しい絹の反物が三つ、重ねて載っていた。

 それを目で追う女性陣の羨望の眼差しがすごい。


 解説のためワゴンの横に進み出たのは、またしても王族のマリーリーフ殿下だった。

 本来なら大使のシェーラル伯爵か使節団の代表がすべき役割だと思うんだけど、ナーダー陛下に対抗して、バランスを取ったのかも知れない。


「我が国のファーラー地方では養蚕が盛んですが、その特産品であるファーラーシルクと呼ばれる絹の中でも、ピュアファーラーシルクは最上級の名に恥じない、眩しいくらいの白さと、とろけるような肌触りを約束する一品です」


 これもマリーリーフ殿下の説明と後日聞いた話によると、ファーラーシルクと呼ばれる絹は、ファーラーシルクワームって言う魔物の蚕の繭から作られるらしい。


 ファーラーシルクワームは家畜化された魔物だそうで、普通の蚕より飼育が難しく、そもそも絶対数が少ないそうだ。

 つまり、品質がいいのはもちろんだけど、その希少価値もとても高い。


 どのくらい希少かと言えば、フィーナ姫と姫様が着てる俺がデザインしたドレスを作ってくれてる、王家御用達のアガゼル商会でも、ピュアファーラーシルクは滅多にお目にかかれない貴重品だそうだ。


 そう、残念ながら、フィーナ姫と姫様のドレスはピュアファーラーシルクじゃない。

 だから、ピュアファーラーシルクを選んだんだろう。


 それと反物のままなのは、今マイゼル王国で流行してる魔法少女テイストのドレスを、フォレート王国の服飾に強い商会では作れなかったのかも知れない。

 少なくとも俺がデザインした物を越えられなかったから、反物のままプレゼントすることにしたんじゃないかな。


「さすがフォレート王国産のピュアファーラーシルクですね。ドレスを仕立てるのがとても楽しみです」

「私も、フィーナシャイア殿下の斬新なデザインのドレスがピュアファーラーシルクで作られた物を、是非拝見したいものです」


 フィーナ姫の嬉しそうな微笑みに、マリーリーフ殿下も満足げに頷く。

 親しくなった二人だから、フィーナ姫に喜んで貰えてマリーリーフ殿下もほっとしただろう。


 そして、ねだる女性陣と勘弁してくれと嘆く男性陣に見送られて、ピュアファーラーシルクも会場から運び出されていった。


「次にフィーナシャイア殿下へ贈られるのは、レガス王国レガディース王家より、黄金のドラゴン像」


 そう告げられて上がったどよめきは、前二つと比べて決して大きくはなかった。

 むしろ若干、戸惑い混じりに聞こえた気がする。


 台車を三人がかりで押して運び込まれたのは、中型犬くらいの大きさがある、その名の通り本当に黄金のドラゴン像だった。


 ドラゴンはレガディース王家の紋章で、国旗に描かれてる。

 レドとは違って、四肢が太く四つ足歩行する、ランドドラゴンとかアースドラゴンって呼ばれるタイプの、よりトカゲっぽいシルエットをしてて、それでも背中には大きな翼がある。


 その黄金のドラゴン像はまさにその姿だった。

 三人がかりで押してこないといけないって、どんだけ金を使って重いんだか。

 しかも、両目はルビーなのか真っ赤な宝石が嵌め込まれて、牙や爪もダイヤか水晶みたいで、尻尾の先端と左右に並ぶ大きな棘は青いからサファイアかも知れない。


 とにかく、これでもかってくらい金をかけてる、成金趣味にしか見えない黄金のドラゴン像だ。


 説明するために進み出たのは、前の二国と違って大使だった。

 しかも、その説明が実に酷い。


 どれだけの重さの黄金を使った、目の宝石は、牙の宝石は、爪の宝石は、と時価を交えて得意げに説明するんで、聞き苦しいったら。

 極めつけは、王太子妃殿下と婚姻を結んだおかげでレガス王国は今後どれだけだって黄金が手に入る、って言い出す始末だ。


 その説明に、王太子妃殿下はお腹の前に置いた手を握り締めて俯いてしまってる。

 どう聞いても、王太子妃殿下の祖国、アザンド王国から搾取して食い物にしてます、って言ってるようにしか聞こえない。


 それを王太子妃殿下の前で、さらには他国の王族がいる前で得意げに語るんだから、神経を疑う。

 まともな神経をしてたら、こんなの貰っても喜べるわけがない。


「さすがはレガス王国ですね」


 フィーナ姫の返礼も短く、それだけだった。

 王太子殿下も大使も得意満面で頷く。


 でも、その返礼の言葉は、絶対に文字通りじゃなくて皮肉だと思う。


 ともあれ、とにかく馬鹿みたいに金が掛かってる、非常に珍しくて金を積んでも手に入らない、って品はその三つで、後は無難でも素晴らしい品が続く。

 唯一、シェーラル王国の贈物が水晶のゴブレットだったのは、俺のクリスタルガラスに対する皮肉だろうな。


 そうして他国からの贈物が終わった後は、国内の貴族達の番になる。

 当然、どれもさすがって言いたくなる物ばかりだった。


 そして、公爵家、侯爵家と終わって、伯爵家の番になり――


「次にフィーナシャイア殿下へ贈られるのは、ガーダン伯爵家より――」


 ――と、俺の順番を飛ばす。


 途端に、戸惑うようなどよめきが一部から上がった。

 他国のはもちろん、マイゼル王国の王室派以外の貴族達からだ。


 伯爵家の序列として俺が一番だって言うのは国内外に知られてることだし、さらに俺がどれだけ王家に……フィーナ姫とアイゼ()様に傾倒してるかも、この場にいて知らない奴はいないだろう。

 そんな俺が、お披露目にプレゼントを出さないわけがない。

 だからこその、戸惑いだろうな。


 ただし、アイゼ()様の誕生日パーティーに参加してた貴族達だけは、まさかまたなのかって目で俺を見てきたけど。


 そして今回も、子爵家以下の家からのお披露目はなし。


「それでは、次が最後になります」


 コルトン伯爵の声に、まず王室派の貴族達の視線が、そしてそれに釣られるように多くの貴族達の視線が俺に集まった。


「最後にフィーナシャイア殿下へ贈られるのは、メイワード伯爵家より、精霊魔道具であるクリスタルガラス製シャンデリア」


 今日一番大きい、戸惑うどよめきが会場中に広がった。



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