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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第二十一章 一方でレガス王国も何やら企んでるっぽい

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615 シェーラル王国の動向 西進 1

 予定通り、更新再開します。

 引き続き応援よろしくお願いいたします。


◆◆◆



 丘陵地帯に布陣する二万のシェーラル王国軍。

 その前方には、トロルのグルガガ砦があった。


 シェーラル王国軍はゴルボ砦とガラドド砦を陥落させた後、負傷兵と守備兵を南のガラドド砦に残し、周辺の町や村を全て制圧。

 その後、西進し、その進軍経路上にあるグルガガ砦の攻略戦を開始した。


 グルガガ砦は、ガンドラルド王国がシェーラル王国の領土を侵略するために、かつての最前線として建造した砦だ。

 最前線が東のゴルボ砦とガラドド砦へと移動した後は、ほぼ放棄された状態で使われておらず、何十年と放置されてきた古めかしさがある。


 しかしそれでも、トロルサイズのその砦は堅牢だ。

 万を超す兵力を駐屯させるだけの規模があり、真正面からやり合えば、甚大な被害が出るだろう。


 だと言うのに、シェーラル王国軍はなんの小細工もなく、砦を包囲して真正面からの決戦を挑んでいた。


「弓兵部隊、射撃開始!」


 シェーラル王国軍の将軍、ファバルト侯爵家次男フラーゼン・ヘルフォルトの、戦場全てに響き渡れとばかりの大音声の攻撃命令が下される。

 即座に、城壁上のトロル達へ向けて、弓兵から無数の矢が放たれた。


 その城壁上のトロルの数は、砦の規模に比べて非常に少ない。


 それもそのはず。

 この砦に駐屯するのは、近隣の守備隊数百と、同様に近隣の村や町から募った民兵、さらにゴルボ砦とガラドド砦から落ち延びてきた兵、合わせてたった三千の兵力しかいないからだ。


「敵兵の数は少ない! よく狙い密にせよ! 無駄撃ちをするな!」

「「「「「はっ!!」」」」」


 このグルガガ砦のように、すでに役目を終えて放棄された砦はいくつもある。

 その一つ一つに近隣の守備隊や落ち延びた兵士が集まり、いちいち攻略しなくてはならないとなると、侵攻に時間ばかりが掛かってしまい、犠牲もそれだけ多く出てしまう。

 だから現在、別働隊が広く散って、それら砦近隣の町や村を制圧するために同時に動いていた。


 それはつまり、余所から援軍が来る可能性が非常に低く、またトロル達が仮に落ち延びたとしても、逃げ込める拠点が潰されていっていることに他ならない。


 故に、ヘルフォルト将軍は不安や時間に追われて焦ることなく、じっくりと腰を据えてグルガガ砦攻略戦に臨んでいた。


「やはりトロルどもからの反撃は散発的か」


 弓兵の攻撃は続いており、その矢を避けてトロル達が城壁に身を隠しているため、人の頭程の大きさの石礫を使った投石の反撃は、それほどの脅威とはなっていない。


「よし、精霊魔術師隊前進せよ!」


 ヘルフォルト将軍の新たな命令に、大盾を構えた歩兵部隊に守られた精霊魔術師部隊がグルガガ砦へと向かって前進していく。


 しかし、トロルも一方的にやられっぱなしでいることはない。

 弓兵は距離があるため、飛び道具を使わないトロルにはどうしても有効な反撃手段はないが、攻撃魔法の有効射程の関係から砦のほぼ真下付近まで敵が近づいてきたのなら、当然、本気の反撃に出る。


「近づケさせルか!」

「食らエ! 潰れロ!」


 少々矢が当たろうと物ともしないタフさと再生能力を生かして、一抱えもある大岩を軽々と持ち上げると、接近してきた精霊魔術師部隊へ向けて全力で投げ落とし、接近を阻み始めたのだ。


 そんな大岩を全力で投げつけられては、大盾など構えていたところで、盾ごと押し潰されて即死するしかない。

 あちこちで大岩の下敷きになって悲鳴が上がる中、精霊魔術師部隊の隊長が反撃の指示を下す。


「迎撃だ! 迎撃せよ!」

「「「「ファイアアロー!」」」」

「「「「ロックアロー!」」」」

「「「「アイススピア!」」」」


 投げ落とされる大岩へ向けて反撃の攻撃魔法が殺到し、集中砲火を浴びた大岩は打ち砕かれ、その破片を撒き散らした。


 その破片を歩兵部隊が大盾で防ぐ。

 そのための大盾を構えた歩兵部隊だった。


 しかし、迎撃して砕けるのは半数にも満たない。

 大岩を恐れて足を止めては、一方的に犠牲が増えることになる。


「怯むな! 進め! 進め!」


 精霊魔術師部隊の隊長の檄が飛び、多数の犠牲を出しながらも、遂には精霊魔術師部隊が砦の下の射程圏内へ到達する。


「よし! トロルどもを狙え! 一匹たりとも撃ち漏らすな!」

「グアッ!?」

「オノレ!」


 弓兵が放つ無数の矢に加えて下方より攻撃魔法が放たれ、城壁上のトロルが次々と倒れ、落下し、その数を急速に減らしていく。

 見る間に、トロルから投げつけられる大岩の圧力が弱まっていった。


 ヘルフォルト将軍は後方からそれを確認して、新たな命令を下す。


「一気に押し込むぞ! 櫓を前へ! 第一突入部隊前進せよ! 城壁に取り付き次第、歩兵部隊は砦へ突入せよ!」


 その号令に従い、部隊の後方に控えていた、太い丸太で組まれた大きな櫓が砦へと近づいていく。


 十を数えるその櫓はどれも高さは城壁と同じくらいあった。

 櫓の上にはそれぞれ精霊魔術師の小隊と歩兵部隊が乗り込んでいて、城壁の高さからトロルへ向かってさらに攻撃魔法で圧力をかけていく。


 しかし、どれだけ無数の矢と攻撃魔法で圧力をかけられても、トロルはその程度で引いたりはしない。


「食らエ!!」

「近づけさセるカ!!」


 防壁の陰から姿を現した新手のトロル達は、手に手にトロルサイズの巨大な戦斧を握っていた。

 その戦斧がどれだけ巨大でも、切り結ぶためには櫓が接近して城壁に取り付くまで待たなくてはならない。

 しかしそうなれば数で劣るトロルは不利な戦いを強いられることになる。


 だから、戦斧を手にしたトロル達は待たなかった。

 全力を振り絞りハンマー投げの要領で戦斧を振り回すと、櫓へ向けて思い切り投げつけたのだ。


「うわぁっ!!」

「櫓が!!」

「逃げろ!!」


 鋭く放たれた巨大な戦斧はその質量と鋭い刃に任せ、太い丸太を物ともせずにへし折り、櫓を倒壊させていく。

 さらには直接、櫓の上の精霊魔術師や歩兵をまとめて薙ぎ払った。

 倒壊した櫓、そして落下してきた戦斧や兵士の死体の下敷きになり、さらに多くの犠牲が出る。


 しかし、突入を成功させなくては砦の早期陥落はあり得ない。


「怯むな! 第二突入部隊前進せよ! 弓兵部隊、精霊魔術師部隊は全力で圧力をかけてこれを支援しろ!」


 さらなるヘルフォルト将軍の指示に、第二突入部隊の櫓が接近していく。

 そしてこの攻防を幾度か繰り返し、第四突入部隊の櫓の一つが遂に城壁へと取り付くことに成功した。


「橋頭堡を確保しろ!!」


 櫓の上から城壁の上へと展開した突入部隊が、橋頭堡の確保のために周囲のトロルと交戦を開始。

 突入部隊はトロルを槍で牽制して攻撃魔法を叩き込み押し返す。


「エルフどもヲ叩き出セ!!」


 これに対し、トロルはメイスや棍棒を振り回し、突入部隊を叩き潰し、また城壁の外へと叩き落とす。


 乱戦となっては、弓兵も砦下の精霊魔術師も、味方を巻き込みかねないため攻撃を止めるしかない。

 接近戦のみとなった一進一退の攻防が続く中、やがて二つ、三つと櫓が城壁に取り付き橋頭堡の確保に成功した突入部隊が出たことで、戦局は大きくシェーラル王国軍へと傾き始めた。


「周囲制圧! 突入部隊続け!」


 城壁へ取り付いた櫓の梯子を登り、後続の歩兵部隊が次々と城壁上へ突入していく。


「オノレ! たかがエルフどもガッ!!」


 もし、トロルの兵数がせめて倍いれば、こうも易々と砦に取り付かせ、突入を許すことはなかっただろう。

 そしてガンドラルド王国北部と中央で大きく兵力を減らしていなければ、籠城して時間を稼いでいる間に、他の砦から次々と増援がやってきて、野戦で蹴散らしていたに違いない。


 しかし兵数の差は大きく、砦へ侵入を許した時点でトロルに勝機はなかった。

 かつてシェーラル王国を散々苦しめ、領土を奪う最前線の砦として活躍したグルガガ砦は、たった一日の攻防戦で陥落することとなったのだった。



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