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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第二十章 お隣で戦争が始まってマイゼル王国への影響が気になるところ

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598 メイワード伯爵派結成記念パーティー 閉会

 そんな感じで残りの挨拶回りを済ませていき、最後の最後で、ヨーク子爵の所へとやってきた。


「ヨーク子爵、パーティーは楽しんで貰えたかな」

「っ……メイワード伯爵!」


 うん、憎々しげに睨んでくるな。


「どうした、パーティーはつまらぬか?」

「お酒も料理も進んでいないようですね? エメル様自慢の名物料理の数々は口に合いませんでしたか?」


 アイゼ様とフィーナ姫は、そんなヨーク子爵の態度を軽く流して、にこやかに微笑みかける。

 だけど、目は笑ってないし、圧もかけてるな。


 だって今一番王家を(ないがし)ろにして従ってないのが、ディーター侯爵派で、ヨーク子爵はその一員だし、モザミアにちょっかいを出して、俺達に喧嘩を売ってきたわけだからな。


「王太女殿下、第一王子殿下……ご機嫌麗しく」


 しかも全然心がこもってない挨拶と態度だ。


「ヨーク子爵やディーター侯爵の考えがどうあれ、このパーティーで俺のことを多少は分かって貰えたと思う。領地に帰ったら、誇張も過小評価もせず、今日見たこと聞いたこと感じたことを、正しく派閥の貴族達に伝えてくれ」

「おのれ……農民風情が貴族の真似事か! 調子に乗りおって!」

「果たして、調子に乗ってるのはどっちだろうな? 俺のことをどう思おうがそっちの自由だけど、それで現実から目を逸らした時点で未来はないぞ?」


 グルンバルドン公爵が動きを見せる様子がない以上、警戒すべきはディーター侯爵派の動きだ。

 ディーター侯爵自身は名代を立てるばかりで、この二年、ただの一度も王都に顔を出してない。

 特に病気や怪我の話を聞かないし、明らかに王家に反抗してるって言えるだろう。

 嫌な噂も耳にするしな。


「侯爵閣下の領民でありながら侯爵閣下に牙を剥くとは! この恩知らずの恥知らずめ!」

「恩知らずの恥知らずはどっちだ? お前らはマイゼル王国の貴族、王家の臣下なんだぞ? 王家に牙を剥いといて、どの口が言う」

「ええい黙れ! 農民風情が!」


 顔を真っ赤にして、これ、自分の立場をこれっぽっちも理解してないんじゃないか?

 しかも、その王家の二人の前だぞ?


「黙るのはそなただヨーク子爵」

「あなたの態度は、ディーター侯爵派の、ひいてはディーター侯爵の考えと受け止めて構いませんね?」

「っ……い、いえ、そのようなことは……」


 ありそうだな。


『この者が忠誠を誓っているのはディーター侯爵であり、王家ではないようです』


 まあ、だろうな。


『そして我が君のことも、本気で裏切り者だと憎んでいます。我が君がディーター侯爵に忠義を尽くしていれば、この華やかなパーティーの主役はディーター侯爵と自分達だったのにと』


 そいつは逆恨みもいいところだな。

 どうやら、にわかに勢力を拡大してきたせいで、かなり調子に乗ってるらしい。


 まあ、その原因の一端は俺にあるわけだけど……。


 ところがその勢いを、俺が農政改革を広めたことで失った、と。


 そもそも俺には、ディーター侯爵を恨みはしても、敬愛する理由も忠義を尽くす理由も欠片もないってことを、全然理解してないだろう。

 むしろ、ここまで潰さずにいたことを、逆に感謝して欲しいくらいだ。


 しかもその事実を完全に無視して、自分の都合のいいことしか見えてない、考えてないんじゃ、切り崩して取り込む価値もなさそうだ。


「まあいいさ。精々、今後どう立ち回るべきか考えるんだな。没落したり破滅したりした時に、今日のことを後悔しないようにな」


 これ以上は話してても無駄なんで、早々に切り上げて立ち去る。

 背中から金切り声が聞こえてきたけど、ガン無視して。


「……」

「アイゼ様、どうかしましたか?」


 立ち去りながら、何やらアイゼ様が難しい顔をする。


「検地も監査も拒否し、農政改革を受け入れていない以上、ディーター侯爵派は今、徐々に追い詰められつつある。しかしディーター侯爵と、ヨーク子爵のあの強気な態度が気になる」


 ディーター侯爵の強気な態度って言うのは、トロルどもが攻めてきて領地に逃げ帰って以降、未だに王都に顔を出さなければ詫びも入れず、反抗的な態度を貫いてるってことだよな。


「例の嫌な噂が事実……ってことですか?」

「分からぬ。しかし、その可能性が高くなった」

「わたしもそう思います。本格的な調査を行った方がいいかも知れませんね」


 その本格的な調査は、まずは王家の諜報部に任せるとして。


『キリは何か読み取れたか?』

『最後に笑うのはディーター侯爵と自分達だと、自信を見せていました。根拠のない自信ではなく、ディーター侯爵への信頼からです。その根拠となる具体的な内容までは思い浮かべなかったので、読み取れませんでした』


 それは……もうちょっとつつけば良かったかも。

 でも、歓談は切り上げちゃったし、今から引き返してそこをつつくのはヨーク子爵が面倒な事になりそうだ。


 それに、パーティーもそろそろいい時間だ。

 トラブルで締め括るのは避けたいところだな。


 仕方ない、ディーター侯爵派の動きに注意しつつ次の機会を待つか。


「じゃあ、挨拶回りも終わりましたし、そろそろ」

「ええ」

「うむ」


 二人と一緒に会場の上座へと戻ってくる。


「皆様、宴もたけなわではございますが、そろそろ終わりの時間がやって参りました」


 執事のそのアナウンスの後、招待に応じてくれたことへの感謝の言葉と共に閉会の挨拶をして、大きな拍手の中、無事にパーティーは終わった。


 みんなマナーとして、いつまでも居残ったり、また俺に話しかけて自分だけ特別に便宜を図って貰おうなんて真似はせず、順次会場を出て行く。


 そうして招待客が会場から出て行くのに合わせて、クロークに預けてあったコートその他を手渡していくんだけど、手渡すのはそれだけじゃない。

 ビンゴゲームで当選した人達には、番号札と景品の引き換えがあるからな。


「き、気絶するなんて、お恥ずかしいところをお見せしました……でも……ああ、素敵……ありがとうございます!」

「ああ、幸せ! パーティー中、ずっとこの時が楽しみで落ち着きませんでした」

「私程度が貰っていいのか恐れ多いですが……いえ、ありがたく戴きます」


 周囲の羨望の眼差しがすごくて、恥ずかしそうだったり、自慢げだったり、恐縮そうだったり、表情は色々だったけど、みんな喜んでくれたみたいで満足だ。


 そして、羨望が嫉妬になって大変なことにならないように、当選した人にも外れた人にも、全員にお土産を用意しておいた。


「キャー!?」


 お土産を受け取って帰って行く人達の中から、不意に女の子の悲鳴が上がる。

 最後の最後で何事かと思って慌てて振り返れば、下級貴族の小さなご令嬢が、どうやら家に帰るのを待てずにお土産を開けて中身を見たらしい。


「すごい! すごい! すごい!」


 しかも飛び跳ねて大はしゃぎだ。


 その手に握ってるのは、手の平にすっぽり隠れる程度の小さなコンパクト。

 そう、俺が作った鏡を使った、先日大量に作ったコンパクトだ。

 それを女性に一人一人、お土産として渡したわけだ。


 本来なら帰り際に、それもまだ会場を出たばかりの廊下の途中でお土産を開けて中を見るなんて、マナー違反ではしたないと注意するところなんだろうけど、母親のご夫人も自分のお土産が気になって気になって仕方なかったらしく、中身を確認して歓喜の声を上げていた。

 それを見て我慢出来なくなったんだろう、他のご令嬢や中にはご夫人達もその場でお土産を開けて中身を見たらしく、そこかしこから歓声が聞こえてくる。


 さすが上級貴族のご令嬢やご夫人には、そんなはしたない真似をする人はいなかったけど、帰る足が早足になってた。

 早く家に帰って確認したいのか、はたまた馬車の中で開けて見たいのかも。


「エメル、随分と奮発した土産だな」

「ですがこれなら、ビンゴゲームで手鏡が当たらなかった人達も満足でしょう」

「だと嬉しいですね。それなら頑張って作った甲斐があるってもんです」


 そして、手鏡が当たった人達は、さらにもう一タイプの美しい鏡が手に入って、さらに大満足って顔だ。

 気絶して落として割ったりしないよう、是非とも気を付けて欲しい。


 後日、あちこちのお茶会や夜会で、これ見よがしにコンパクトを取り出して、直す必要もない髪を整えて自慢し、話題を攫うご令嬢やご夫人の姿が頻繁に見られるようになったらしいんだけど、それは余談ってことで。


 ちなみに、男性へのお土産は、ショットグラスのように小さなサイズだけど、ソーサー型って呼ばれる口が広いシャンパングラスのペアだ。

 一部、やっぱり我慢出来なかった令息や貴族が中身を確認して歓声を上げてる。


「太っ腹もここまでくると、呆れて物が言えないな。この手土産だけで一財産どころじゃ済まないだろう? しかも鏡は君のお手製なんだから」

「アムズか。パトリシアさんも。二人ともお土産は気に入って貰えそうかな?」

「ああ、十分に」

「ええ、もちろんです」


 二人とも上級貴族、それも次期クラウレッツ公爵と公爵夫人になろうって言うんだから、さすがにこの場で開けたりはしてないけど、特にパトリシアさんの笑顔が眩し過ぎるくらい眩しい。


「今夜美味い酒を飲んだ貴族達は、さらにクリスタルガラスのグラスが欲しくなるだろう。ご婦人方も、姿見が欲しくてたまらなくなるはずだ」


 アムズの指摘には笑顔だけで返す。

 それが狙いだ、とは、さすがにこの場で口に出すのはちょっとあれだからな。


「そんな太っ腹な君と、腹を割って話したいことがあるんだ。後日、時間の都合を付けて貰えないか?」

「それは構わないけど」

「こちらの準備が整ったら招待状を送るから、都合のいい日に来てくれ」

「ああ、分かった」


 俺が頷くと、アムズもパトリシアさんも、フィーナ姫とアイゼ様、そして俺に挨拶をして帰って行った。


「なんの話だろう?」

「ふむ、クリスタルガラスの追加の注文か何かだろうか?」

「付き合いのある貴族や他国への、利を配るためかも知れませんね」

「なるほど、あり得そうな話ですね」


 今回の事で、クリスタルガラスと鏡の話は、他派閥へも一気に広まるだろうからな。

 このパーティーに参加したがってた他国の大使や外務貴族も多かったし。

 切り崩しや交渉材料に使うのかもな。


「そういうことなら、是非どんどん注文して貰いたいですね」


 今回のパーティーは、想像以上に話題になりそうで、大成功だったな。



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