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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十九章 覚悟を決めてあの子もこの子もその子も『俺の嫁』にしてご挨拶

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573 ご挨拶


 帰り道でマリーリーフ殿下とちょっとしたトラブルが起きてしまったけど、姫様とフィーナ姫から無事に結婚の許可を貰えて良かったよ。

 身分や階級に厳格な差がある貴族社会だからフィーナ姫の事情について納得しやすかったのか、みんな問題なく受け入れてくれて、六人の『嫁』達は仲良くやっていけそうで俺も一安心だ。


 そして、もう一つ。


「じゃあ、ガラス工房に手を出そうって密偵の動きは減ったわけだな?」

「はい、確実に。それも大幅に」


 ユレースが上げてくれた報告書に目を通して、まずは満足する。


「伯爵様に許可を戴いたので、グレイブル伯爵とその密偵およびルガー子爵の夜会の件をそれとなくリークしたところ、王室派とクラウレッツ公爵派を始め、帰国事業のお礼で伯爵様に友好的だったとお聞きした国々の密偵達も、軒並み手出しを控えたようです。もっとも、領内に居座ったままではありますけどね」


 ユレースの苦笑に釣られて、俺も苦笑する。


「それは良かった。何人も前グレイブル伯爵と同じ目に遭わせないといけないのは面倒だし、正当な報復でも、数が増えればやり過ぎだって批判されるだろうしな」

「そうですね。主家から中止命令が届くだろう頃までは泳がせておけとのお言葉でしたから、自主的に引いてくれて良かったですよ」


 多少の情報を探る程度なら目を瞑れる。

 むしろ、ある程度の情報は主家へ持ち帰って貰った方が、変に恐れられなくて済むからありがたいくらいだ。

 もちろん限度はあるから、その匙加減が大事だけど。


「問題なのは、態度不明の中立派もですが、敵対的な反王室派の貴族達、そして伯爵様に非友好的な国々ですね。特に反王室派の貴族達は、もはや反メイワード伯爵派も兼ねてる感じですから」

「迷惑なことにな」


 思わず溜息が漏れてしまう。


「そいつらにも今回の一件と『密偵を捕えるのも洗いざらい情報を吐かせるのも簡単だ。特に中立派と反王室派の貴族は、お前達に王家の取りなしがあると思うな。家ごと滅ぼされたくなければ絶対に手を出すな』って感じの情報を流してくれるか?」

「分かりました。グレイブル伯爵家って実例がすでにありますし、よほどの馬鹿じゃない限りそれで手を引くでしょうね。もはやそこらのゴロツキ程度じゃいくら雇ってもなんら成果を上げられないことは、これまでの諸々で理解してるでしょうし」


 何しろ裏社会の連中の進出すら完全に食い止めてるからな。

 信頼出来る手の者を出さなければ成果を上げられそうにない上、捕まれば身バレがほぼ確実ってなれば、そう簡単に手は出せなくなるだろう。


「それで、ルガー子爵へのお詫びの件は?」

「すでに手配済みです。準備が整い次第、お知らせします」


 ナサイグの報告に頷く。

 後は王都へ行くときに持って行って、あっちの執事に頼んでルガー子爵の王都の屋敷へ届けて貰えば十分だろう。


 まあ、本当にどこにでも想像を絶する馬鹿はいるし、まだまだ予断は許さないとは思うけど、一応、一段落付いたってことでいいかな。



 そんなゴタゴタした年末はあっという間に過ぎて、年が明けて新年祭がやってきた。


 マイゼル王国の暦では、冬至を大晦日として、その翌日から五日間、閏年は六日間、新年祭が盛大に行われて新年を迎える。

 当然、メイワード伯爵領でもその暦に従って、今年は五日間、新年祭だ。


 この世界の宗教はキリスト教じゃないし、国や種族を越えて信仰されてる宗教はないから、国によって暦は統一されてない。


 マイゼル王国は一ヶ月を三十日として、一年を十四ヶ月と新年祭を五日間、閏年は六日間挟んで、その翌日が一月一日になる暦になってる。

 でも他国では、季節を六つに分けて七十日で一季節の一ヶ月とし、一年が六ヶ月で月と月の間に祝日が一日挟まるとか、一ヶ月って考え方がなくて、単に一日から四百二十五日まで通して数えるとか、一月一日が春分の日とか、様々だ。


 元奴隷の領民達にはマイゼル王国の暦は馴染みがないだろうけど、俺の領民、ひいてはマイゼル王国の国民になったわけだから、その暦に従って貰う通達を出してる。

 ほとんどの領民がそれで納得してくれてるから、現状大きな混乱はない。


 一部の者達は出身国の暦に従って新年を祝いたいって思ってるみたいだけど、今回の新年祭をちゃんと祝った上で、後日、自分達でささやかにやるだけなら、目くじらを立てることはないから許可してる。


 で、文官達に丸投げして五日間の新年祭の準備を進めて貰ってたけど、これも準備万端整って、収穫祭の時みたいに、町では屋台が出て賑やかに、村でも蓄えてた御馳走を出して、飲めや歌えの大騒ぎだ。

 この賑やかさこそ、領地が豊かで領民達が幸せを享受してる証だろうから、是非無礼講で楽しんで欲しい。


 さらに今年は王様と王妃様の喪が明け、王城で新年の公式行事は全て行われる。


 まず、王家主催の新年祝賀パーティーだ。

 全ての領地から貴族家当主やその名代が集まって、公式行事として王族が新年の挨拶をして、貴族達もまた王族に新年の挨拶をする。


 ここまでは去年もやったけど、今年は例年通り、挨拶後に食料庫が開放され、盛大なパーティーで新年を祝うわけだ。

 その後も、各国の大使やらなんやらが挨拶に訪れて、新年祭の五日間は、王族も滅茶苦茶忙しい。


 それには俺も、特務騎士の立場で二人の護衛として全て同席するよう姫様とフィーナ姫に言われてる。

 いずれ王様になった時のために見学ってわけだ。


 そんな諸々の行事が一段落付くと、いよいよ一月一日になる。

 普段通りの毎日が始まるわけだけど……俺にはやらなくちゃならない、新年の行事よりも遥かに重要なイベントがあった。


 それは……。



「お父さん、お母さん、娘さんを俺に下さい」


 俺はエレーナの両親、ダークムン男爵と男爵夫人に深々と頭を下げる。

 そう、結婚のご挨拶だ。


 そのために俺は今、王都のダークムン男爵家の屋敷を訪ねていた。

 モザミアの件に先立ち、順番としてまずエレーナから挨拶を済ませるべきだからな。


 正直、滅茶苦茶心臓がバクバク言ってる。

 姫様とフィーナ姫の時もコルトン伯爵相手に似たような事を言ったけど、相手は二人の祖父みたいに思ってるって人であっても、本当に血縁関係があったわけじゃない。

 それもどちらかって言うと『嫁によこせ』的な、こっちから強引に認めさせにいく、交渉や駆け引きの類いだった。


 でも今はそうじゃない。

 好きになった女の子のご両親に、『お嫁さんに下さい』って頭を下げてお願いしてるんだ。


 先行して栽培実験したテンサイから採ったテンサイ糖を使ったパウンドケーキっぽい物を作って、手土産の菓子折として持参したし、失礼がないように、服装や髪型その他、清潔感が出るように気を付けもした。

 今日挨拶に来る旨も、俺の気持ちと一緒に事前に伝えといた。


 そして、隠すわけにはいかないから、他にも結婚を考えてる女の子達がいること、さらに、やんごとない事情によりしばらくの間、結婚する事実どころか婚約したことすら表に出せないことも。


 ここで『貴様なんぞに娘はやらん!』なんて言われたら、それはもう大変だ。


「頭をお上げください、メイワード伯爵」


 穏やかで明るい男爵夫人の声音に、ダークムン男爵と男爵夫人、二人の顔を窺うようにしながら頭を上げる。


「こちらこそ、娘をよろしくお願いします」


 すると逆にダークムン男爵から神妙な顔で深々と頭を下げられてしまった。

 男爵夫人も畏まって、それに倣って深々と頭を下げてくる。


「そんな、お二人こそ頭を上げてください。本当に俺でいいんですか?」


 許可して貰えたのは嬉しいけど、あっさりしすぎて逆に慌てちゃうって。


 だって、ほぼ二つ返事だぞ?

 貴族令嬢の結婚をそんなあっさり決めていいのか?


「何を今更。娘はかつてメイワード伯爵の命を狙い、犯罪奴隷の身分となりました。貴族令嬢として致命的です。そんな娘でも本当によろしいのですかと、むしろこちらが尋ねなくてはならないくらいです」

「それはもう、俺はそんなの全然気にしないです。って言うか、今の今まで、そのことを忘れてたくらいですし。そんなの、持参金代わりに賠償金をチャラにしてしまえば、すぐに元の貴族令嬢の身分に戻れるからなんの問題にもならない。そもそも、そんなことに関係なく、エレーナに惚れちゃいましたから」


 隣に座るエレーナの手を握ると、大いに表情筋に仕事をさせて、幸せそうに微笑みながら手を握り返してくれた。


 そんなエレーナの表情を初めて見たのか、ダークムン男爵も男爵夫人も、目を丸くして息を呑む。

 そしてすぐに、そんな娘を嬉しそうに微笑んで見つめた。


「こんな顔も出来たのだな」

「ええ、この顔を見られただけでも十分です」


 特に男爵夫人はとても安堵したみたいだ。


「娘から折りにつけ、お話は伺っていますわ。犯罪奴隷としてどのような無体をされようと文句を言える筋合いはないところを、娘を一人の騎士として、貴族令嬢として、そして女として(ぐう)して戴いていると。経歴に傷を負ったこんな無愛想な娘ですが、妻として迎えて戴けるのなら、親としてこんな安心することはありません」

「大丈夫。伯爵様と添い遂げるのは私の望み。それが叶うなんて、こんな幸せなことはない」

「ああ、そうだな」

「ええ、そうね」


 エレーナの力強い言葉に、ダークムン男爵と男爵夫人は深く頷いた。

 父親として、母親としての喜び溢れる顔は、本当に心からエレーナの行く末を案じてたってことが伝わってくる。

 ダークムン男爵は父親から男爵としての顔になって、改めて俺へと視線を移した。


「事実、エレーナには一切の縁談が来ていませんでした。一度でもメイワード伯爵の命を狙った娘を妻に迎えると言うことは、メイワード伯爵に敵対する意思があると見られかねないと、誰もが敬遠していましたから」


 なるほど、言われてみれば。


 元から王室派の貴族家にとって俺の派閥の貴族家との婚姻は必要ないし、中立派もそんな理由があれば敬遠するだろう。

 そして反王室派にとっては、男爵に降爵され返還された領地を一から立て直してる最中のメイワード伯爵派の貴族家との婚姻は、俺の派閥を切り崩すにしても、させまいとする俺からの妨害や報復を考えれば無理をするほどのメリットはないだろうし、何より婚家への経済的支援が必要と考えればデメリットの方が大きい。


 もしエレーナに惚れたとしても、よほどじゃない限り諦める案件だな。


「派閥の領袖(りょうしゅう)であり、今やドラゴンすら追い落とす勢いで『力』を付け発展しているメイワード伯爵家には命を救って戴いたばかりか、こうして縁戚関係になれるなど、これを僥倖(ぎょうこう)と言わずしてなんと言うべきか」

「立場として側室になるとのことでしたが、なんの問題もありませんわ。辺境伯への陞爵(しょうしゃく)がほぼ内定している伯爵家に男爵家から、妾として囲われるのではなく側室として嫁げるのであれば、それだけでも身に余る待遇と言えますもの」


 良かった……。

 予想以上にすんなりと許しが貰えて。

 むしろ、他に嫁に行ける宛てがないから、是非貰ってくださいって言わんばかりだ。


「エレーナのことは絶対に幸せにします。こちらこそ今後ともよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「よろしくお願い致します」


 そこからは和やかに歓談となって、これまでの俺とエレーナの、要は俺がエレーナに口説き落とされた経緯なんかを尋ねられたり、エレーナの昔話を聞いたり、他の兄姉達もこの結婚に賛同してくれてるらしいことを聞かせて貰ったりと、楽しい時間を過ごさせて貰った。


 まあそれに交じってちょっとだけ、兄姉達の婚家から、主にクリスタルガラスの食器や鏡を融通して欲しい的な要望が来てる、って話を匂わされたりもしたけど。


 そういう家のメリットが貴族家同士の結婚では求められるからな。

 それを無視して好き嫌いだけで結婚相手を決めてる俺が、貴族として例外なだけで。

 目くじらを立てることでもないし、精々俺の影響力の拡大に役立って貰おうと、遠回しにオーケーしといたけどさ。


 その代わりって言ったらなんだけど、逆にダークムン男爵領の作物の栽培状況について、それとなく探りを入れさせて貰ったし。

 胡麻やテンサイを栽培してくれるとゴマ油と砂糖の値を下げるのに助かるから、いずれ機会を見て是非お勧めしたいところだ。


 ともあれ、ご挨拶と顔合わせは無事終了。

 こうして俺とエレーナの結婚はダークムン男爵家に歓迎されて、無事、正式に婚約することとなった。



「ふふ♪」


 帰りの馬車の中、隣に座るエレーナから笑みがこぼれて表情筋がずっと仕事をしっぱなしだ。

 こんなにも喜んで貰えて、滅茶苦茶照れ臭いけど滅茶苦茶嬉しい。


「四つも年下だし、頼りないところもあると思うけど、精一杯頑張るからさ」

「うん。でも、そんなこと気にしないでいい」


 エレーナが甘えるように、俺の肩に頭を預けてくる。


「どんな伯爵様でも、私が愛した伯爵様だから」

「そうか……うん、ありがとう」

「私こそ、ありがとう伯爵様」


 俺達は王城の館に着くまでのしばしのあいだ、互いに寄り添い、二人だけの時間を楽しんだのだった。



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