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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十九章 覚悟を決めてあの子もこの子もその子も『俺の嫁』にしてご挨拶

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568 エメルの『嫁』になる意味

「エメル様からマインドロックをかけて戴きましたので、これからする話が外部に漏れる心配はないと承知していますが、それでも敢えて言わせて戴きます。これからする話は、一切他言無用です」


 有無を言わせない迫力に、エフメラでさえ思わず頷く。

 他のみんなは言わずもがなだ。


 それを確認して、一拍おいてから、フィーナ姫が高らかに宣言する。


「結論から先に述べます。わたしとアイゼ、マイゼガント王家は、エメル様と婚姻を結ぶに当たり、エメル様に王権を移譲します」

「「「「!?」」」」


 誰もが息を呑んで、部屋が静まり返る。

 何しろ『します』と断言だ。『したいと思います』とか『したいのですがどう思いますか』とか、希望を述べたり意見を求めてるわけじゃない。


 これはエレーナでさえ初耳の話だ。

 おかげで普段は仕事をしない表情筋が大いに仕事をして、驚愕の表情を浮かべてる。


「エ、エメ兄ちゃん、王様になるの!?」


 長い沈黙の後、はっと我に返ったように、エフメラが俺の袖を掴んで思い切り引っ張ってきた。


「ああ、そのつもりだ。そうでもしないと、姫様とフィーナ姫の二人と結婚出来ないからな」


 俺の返答に、さすがのエフメラも絶句してるな。


「つ、つまり……伯爵様は、殿下方……お二人と同時に結婚するために……そのためだけに国王になろうと……そういうことですか?」

「ああ、モザミアの言う通りだ」


 こっちも絶句されてしまった。


 まあ、普通そうだろうな。

 誰がお姫様二人をお嫁さんにしたくて、ただの貧乏農家の次男坊が王様にまで成り上がろうとするんだって話だよ。


「……本気ですか?」

「本気だ」

「……真面目な話ですか?」

「大真面目な話だ」


 本当に大真面目な顔で答える。


「そのために、領主になるための勉強をしたように、王城に来たときは姫様とフィーナ姫の政務を手伝ったり、教師を付けて貰って王様になるための勉強をしたり、ちゃんと統治のための勉強も進めてるぞ」

「……つまりアタシが、王家に入るってことに…………?」


 俺の本気を理解したんだろう、またまた絶句されてしまった。

 モザミアって、実家が政治と距離を取ってた下級貴族家だからなのか、自分は結構大胆な真似をする癖に、こういう権力が絡む突発的な事態になると、ちょっと弱いよな。


「ですガ、それだとわたくし達ハ、側室ハ側室でも、側妃になってしまいマス。殿下方ハそれでもよろしいのデスか?」

「ええ、問題ありません」

「うむ。エメルが国王の新たな王朝になる以上、エメルが選んだ相手であれば、誰でも側妃になれるのだからな」


 ただしと、二人は申し訳なさと厳しさが交じった顔になる。


「王権を移譲する以上、エメルが治める国はこのままマイゼル王国の領土を受け継ぐ形になる。よって貴族達にはそれを支持し、従って貰わなくてはならぬ。しかし、まず間違いなく、多くの反発を招くことになるだろう」

「ですので、可能な限り貴族達の反発を抑えるために、現王家のわたしとアイゼが正室となり、事実上、二つの王家を一つにまとめることでエメル様の血筋に正当性と説得力を持たせる必要があります。よって、あなた達には正室ではなく側室となることを承知して貰わなくてはなりません。承知して戴けますか?」


 エレーナとモザミアが一瞬戸惑うも、顔を見合わせて頷き合う。


「私は元より側室のつもりでしたから、今のお話に否やはありません」

「アタシも同じです。それに王妃なんて、アタシには到底務まりませんから」


 特にモザミアは恐れ多いって言わんばかりに、どうぞどうぞと喜んで差し上げますって顔だ。

 そんな二人に続いて、リジャリエラはなんでもないことのように頷いた。


「ハイ、わたくしも最初から側室にして戴き、正室ハ話に聞いていたアイゼスオート殿下にお譲りするつもりでシタから、そこにフィーナシャイア殿下が並ばれても、何も問題ありまセン」


 そして最後、エフメラだけど……。


「エフは……」


 ちょっと納得いかないって顔だな。

 ただの平民だけに、王族、貴族の身分差で正室、側室が決まる考え方が馴染まなくて、常に俺の一番でいたいからだろう。


「これは国政に携わる者としての、政治的な判断になる。そなたが王妃として、王城の女主人として貴族のご夫人やご令嬢達を取り纏め、また他国との外交交渉など行いたい、その労苦を(いと)わず、何か成し遂げたい目標があると言うのであれば、考慮するので聞かせて貰いたい」

「えっと……?」


 エフメラは王妃の立場や仕事が具体的にどんなものか分かってないから、ピンときてないみたいだな。

 ここは大雑把に補足説明しとこう。


「つまりだな、正室や側室って言うのは、この六人の中では立場上や便宜上って意味が大きくなる。だけど、実務ってことになると話は別で、自分勝手な貴族相手にタフな交渉が必要で、自由な時間がほとんど取れなくなるくらい滅茶苦茶忙しくなるし、たとえ嫌な奴相手でもニコニコ我慢してドカンってやるわけにはいかないから、滅茶苦茶大変な仕事をすることになるぞ、ってことだ」

「えっ、そうなの? エフはそこまでしたくないかも。嫌な奴は、絶対ドカンってやっつけてやりたいし」


 エフメラなら、そう言うと思ったよ。

 政治向きの話をある程度理解出来ても、それをやれるか、やりたいかって言われたら、やれないし、やりたくないだろうからな。


「つまり、フィーナ姫と姫様がその面倒な仕事を引き受けてくれるってことだ」

「わたし達に正室を任せて戴けますか?」

「でも、エメ兄ちゃんの一番を取られちゃうのは……」

「一番って言っても俺は正室だ側室だで差を付けるつもりはないし、それにほら、エフメラは妹で特別枠だから、そこにこだわらなくても平気だろう?」

「あっ、そっか! エフは順番付けられないくらい特別だもんね! うん、そんなよく分からない面倒なお仕事は嫌だし、正室って名前くらい、いいよ」


 理由はあれだけど、エフメラも納得してくれて良かった。

 姫様もフィーナ姫もほっと胸を撫で下ろしてるし。

 さすがに一番がいいってだけで、正室の仕事は任せられないもんな。


「あの……」


 話がまとまったところで、モザミアが怖ず怖ずと手を挙げた。


「そもそもの話ですけど、伯爵様に王権を移譲する必要はあるんですか? 殿下方が降嫁(こうか)されて、他の王位継承権を持つ方に王位を譲るのでは駄目なのですか?」


 まあ、当然の疑問だよな、それ。

 普通に考えたら、そうすべきだろうし。


 でも、そういうわけにはいかないんだよな。


「もし仮にエメル以外に王位を譲るとしたら、有力な候補は、クラウレッツ公爵かグルンバルドン公爵となるだろう」

「アタシはそのお二人と直接お話をしたこともないですし、詳しく知りませんが、そのお二人ならどちらでも問題ないのでは?」


「確かに、両名とも国政を預かるに足るだけの才覚はあるだろう」

「ですが、間違いなく国を割っての内戦となるでしょう。クラウレッツ公爵が王位に就けば、グルンバルドン公爵派はそれを良しとせず、逆もまた然りです」

「それは……」


 モザミアは自分で言ってたように二人のことを知らないから、そういうものなんだと理解するしかないんだろう。

 グルンバルドン公爵派の貴族達には何かと迷惑をかけられてるけど、グルンバルドン公爵自身は、何故か具体的な動きを見せてないからな。

 グルンバルドン公爵の狙いがどこにあるのか、正直、俺にもよく分からないし。


「でも、それは伯爵様も同じでは? 伯爵様が元農民だとか、最近の領地の躍進だとか、それを気に入らない貴族は多いはずです。むしろ、より大きな内戦になりませんか?」

「そうだな。エメルが王となった暁には、元農民の成り上がり者の下になど付けるかと、クラウレッツ公爵やグルンバルドン公爵が王位に就くより激しい反発を生み、内戦が起きるとすればその規模は確実に大きくなるな」


「ただしその場合、敵に回すのはエメル様ですよ? 一体誰が勝てるでしょう」

「あ……国中の貴族が集まっても、伯爵様には勝てないですね」

「ええ、その通りです。敵対すれば敗北と死罪は必至。であれば、反発したくともおいそれと出来ません。それはまた、他国からの侵略を撥ね除けると言う意味でも、エメル様以上の方はいないと言うことです」

「そもそも、今もマイゼル王国が存続し、さらに発展の兆しを見せているのは、全てエメルのおかげと言っても過言ではない。救国の英雄の呼び名は伊達ではないのだ。であればこそ、エメルを頂点に戴くことに何を躊躇う必要がある」


 ようやく、モザミアが納得いったって顔をする。

 クラウレッツ公爵もグルンバルドン公爵も、『力』がある大貴族だけど、それは所詮マイゼル王国内での話だ。

 他国が本気になれば、一派閥だけでの対処は難しいだろう。


 でも、俺なら可能だ。

 軍事的な侵略は元より、政治的な無理難題を吹っかけてくるのも、ガンドラルド王国の二の舞を演じるリスクを伴うとなれば、おいそれと下手な手は打てない、ってわけだ。

 一度国境線まで軍を進めてきたフォレート王国を退けた実績もあるしな。


「唯一気がかりなのは、反発し軍を動かした貴族達や他国の軍をエメルが相手にしている間、その間隙を突いてエメルの領地が攻め込まれないかだが……」

「それハ、わたくしと特務部隊ガ守りマス。好き勝手ハさせまセン」

「うん、エメ兄ちゃんが留守の間、エフが絶対に守るよ」

「……うむ、領地も問題はなさそうだな」


 うん、実に頼もしい。

 領地がより安全になるよう、そして万が一にもみんなが怪我をしないよう、もっと鍛えて『力』を付けて貰わないとな。


「それにエメル様と敵対するより懇意にした方が得だと、すでに多くの貴族達は知っています。今後も農政改革と精霊魔術師育成で恩恵を預かりたければ、そしてクリスタルガラス製品や姿見を手に入れたければ、エメル様を支持することが得なのは明白です。これからより一層、エメル様の影響力は強まり、他国へも広まっていくでしょう」

「帰国事業などを含め、すでにエメルは他国とのパイプを独自に持ち始めている。王権を移譲する際、他国の王族や主要な貴族からの支持も得やすいだろう」


「もしかして、そのためにこれまで……?」

「ああ、その通りだ」


 俺が頷くと、モザミアもエレーナもリジャリエラも、一瞬驚いた顔を見せた後、すぐに納得してくれたみたいだ。


「道理で、迷いなく領主の仕事を引き受けたわけですね。次々に事業を起こして、あり得ない速度で領地を発展させているのも納得です」

「それもこれも伯爵様が『力』を付けて王様になるため……とても遠大で大胆な計画」

「領軍だけでハなく、特務部隊ヲ設立したのも、それらヲ見越してだったのデスね」


 つまり、そういうことだ。


「結果論だけど、おかげでみんなとも同時に結婚しやすくなってきた。このまま、有無を言わせないくらいまで『力』を付けたいところだな」


 みんなの目が輝く。


「ですが、エメル様が(おっしゃ)る通り、現状まだまだ『力』が足りていません。王族のわたしやアイゼですら、ともすればエメル様との結婚を妨害され、望みが叶わない可能性があります」

「エメルはすでにマイゼル王国になくてはならない男だ。しかしエメルにこれ以上『力』を付けさせたくない者達が妨害してくるのはもちろん、エメルと縁故を結ぼうと縁談が国内外から舞い込む一方となるだろう」

「ですから、エメル様をお支えすることは元より、エメル様との仲を邪魔されないよう、わたし達自身が『力』を付けていかなくてはならないのです」


 みんな顔を見合わせて、表情を引き締めて頷き合う。


「妹だからって、エメ兄ちゃんとの仲は邪魔させない!」


 エフメラが気炎を上げると、エレーナ、モザミア、リジャリエラも後に続く。


「うん、私には伯爵様しかいないんだから」

「そうです。今更他のつまらない男になんて目は向かないですからね」

「必要な『力』だったら、いくらでも付けてみせマス」


 みんな、そこまで……。

 滅茶苦茶嬉しいよ!


「皆様がその覚悟を持たれたこと、大変嬉しく思います。ここまでの話で十分に理解して戴けたと思いますが、そのための『力』の一つとして、エメル様には王位に就いて戴きたいのです。皆様も、エメル様に王権を移譲するお話に賛成して戴けますね?」

「うん、分かった」

「承知しました」

「はい、分かりました」

「ハイ、異存ハありまセン」


 エフメラ、エレーナ、モザミア、リジャリエラ、全員が真剣な顔で頷いてくれる。


「では、皆で一丸となって、エメルが国王となれるよう己が力を尽くそう!」

「エメル様との幸せな結婚のために!」


 姫様とフィーナ姫が檄を飛ばすと、みんなもそれに応えて拳を突き上げたり、表情を引き締めて頷いたりする。


「エメ兄ちゃんとの幸せな結婚のために!」

「伯爵様との幸せな結婚のため!」

「伯爵様との幸せな結婚のために!」

ご領主様(精霊王様)との幸せな結婚のために!」


 そして、みんなが期待した眼差しで俺を見つめてくる。


「ああ、みんな一緒に、絶対結婚して幸せになろう!」


 俺って、滅茶苦茶果報者だ!



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[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★  さ、流石は見境なしのハーレム王ですねっ!(*´・ω-)b
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