表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十八章 クリスタルガラスの反響がすごすぎる、主に陰謀方面で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

549/741

549 夜会の後に

 早々に夜会から帰ってきて、姫様とフィーナ姫に顛末を報告する。


「分かりました。それはグレイブル伯爵のみならず、他の貴族達にとっても良い薬になったでしょう」


 報告が終わった後、フィーナ姫がそう重く頷いた。

 ただ、どこか悲しそうで、ちょっと申し訳なくなる。


「たとえ同じ派閥に属する貴族同士であっても、明確な序列がある以上、どうしても競争は生まれます。ですが、例えそうであったとしても、今回のグレイブル伯爵のやりようは度を越しています。王家からも厳しい沙汰が必要でしょうね」


 自分達を支持する貴族同士が足を引っ張り合い、つぶし合ったわけだからな。


「俺の『力』不足のせいで今回みたいな事態を招いて、フィーナ姫と姫様に嫌な思いをさせちゃって済みません」


 もっと強気に厳しい態度で圧倒的な『力』を示してれば、敵対的な貴族どもはまだしも、味方からまで舐められて、こんな馬鹿な手出しをされることはなかったはずだ。

 支持して貰わないといけないからって、反発されすぎないよう、ぬるい態度を取ってたのが悪かったんだろうな。


「いいえ、エメル様のせいではありません」

「うむ、姉上の言う通り、エメルのせいではない。これは臣下を御し得ていない王家の不甲斐なさが招いた事態だ」

「それを言うなら、いずれ王様になって従えなくちゃいけない俺がちゃんと出来てなかったのが原因で、二人は全然悪くないですよ」


 いやいや私が、わたしが、俺がと、他の二人に責任を感じさせないよう、自分の責任を主張する。


「アイゼ様、フィーナシャイア様、エメル様、どうかそこまでで。誰の責任かなどと言い合ったところで建設的ではありません」

「そうですよ。お三方が今後どうするかが大切では?」


 部屋の隅に控えてたクレアとレミーに諭されて、三人で顔を見合わせて苦笑する。

 確かに、誰の責任かなんて決めたところで意味はないな。

 いずれ結婚して一つの王家になるんだから、三人ともしっかりとしないと駄目なんだから。


「まずグレイブル伯爵には相応の沙汰を下すことは決定です」

「具体的にはどんな処罰が下されるんですか?」


 まさかいきなり爵位と領地を剥奪とか?

 いや、さすがにそれはやり過ぎか。

 王室派の貴族家が一つ減っちゃうし。


「それはジターブル侯爵の対応次第だな。どう取りなしに動くのか。動かないと言うことはないだろう」

「もしジターブル侯爵が動かなければ、グレイブル伯爵家は降爵くらいの罰は必要でしょう。それは王室派の力が減じることになりますから、さすがに歓迎できません。ジターブル侯爵には迅速に動いて貰わなくては困りますね」


 ジターブル侯爵は、別にジターブル侯爵派ってのを形成してるわけじゃない。

 クラウレッツ公爵派以外の王室派の筆頭として緩くまとめてたってだけで。

 だから派閥の領袖(りょうしゅう)程の力も責任もないけど、それでもまとめ役としての責任はある。


 そういうわけで俺も、立ち去り際にジターブル侯爵に『取りなしたければ』って言ったし、小国家群との交易の機会を譲って、他の王室派の貴族家にも広まるよう、利を配ったんだ。

 もしここで何もしない、何も出来ないようじゃ、王家からどころか、王室派の貴族家全てから見限られるだろうな。


「エメルはグレイブル伯爵もしくはグレイブル伯爵家に対し、何か望む罰はあるか?」

「そうですね……俺も王室派の力が弱まるのは結果的に困るんで、誠意を持って謝罪してくれればそれでいいですよ……って、この件が起きる前なら言ったと思いますけど」


 こうなった以上、そんな甘いことは言ってられないわけで。

 何かしらのペナルティは負って貰わないと、本当に俺が舐められてしまう。


「フィーナ姫の言う通り、出方次第では最低でも降爵くらいはして貰わないと。でももし誠意を見せるなら、何かしらの重要な利権を手放して俺に渡すとか、名目はなんでもいいですけど罰金みたいな形で多めの負債を負って貰うとか、そんなところでしょうか」

「ふむ、妥当なところだな」


 それでも多分、表立って謝罪することはないだろうな。

 それはつまり罪を認めることに他ならないから、それこそ降爵待ったなしだ。

 しかも他派閥に王室派の内部に不和があることを知られて、付け入る隙を与えかねないわけで。


 だから、別の名目でペナルティを支払うことで事実上の謝罪をして、罪だ罰だってところの追求は有耶無耶にしてしまうことになると思う。

 これが反王室派の貴族家が相手なら、積極的に動いて罪と罰を明確にして、なんなら裏でやってる犯罪の証拠すら集めて暴いて、降爵させた上でなんらかの利権を取り上げるくらいするけど。


 ただそれもやり過ぎるとマイゼル王国の国力が低下するから、フォレート王国やシェーラル王国、そしてガンドラルド王国を喜ばせる結果になってしまう。

 何より、味方に対してそこまで苛烈にしたら、恐れられるのはいいとしても、恨まれたら王様になるのに支持を得られなくなるかも知れないし、王様になった後、面従腹背で足を引っ張られかねない。


 その匙加減が、貴族社会でやってく難しさだよな。

 為政者として清濁併せ呑むってのは、スッキリしなくて大変だ。


「エメルがそれで良いのなら、その辺りを落としどころで考えてみよう」

「後は、同じような事を起こす貴族家を出さないことですね。クラウレッツ公爵にも話を通して、派閥の貴族達をまとめて貰わなくてはなりませんね」


 姫様とフィーナ姫の言葉に頷く。

 夜会に参加してなかった重鎮の上級貴族達は通達を出すまでもなく、俺に対してそんな真似はしないだろうしな。

 付き合いがほとんどない一部の上級貴族達やほとんどの下級貴族達と違って、会議その他で会って話す機会も多かったし、国政で俺がやってることの影響がどんどん強く広まっていってることは、目に見えて分かってるだろうし。


 ともかく、それもこれも、グレイブル伯爵家とジターブル侯爵家の出方次第だな。



 そしてその三日後。

 領地から王都へ戻って来たら、思いも寄らない急な来客があった。


「忙しい中、時間を取って戴き感謝します、メイワード伯爵。グレイブル伯爵ライアン・スレーマンです」


 その客、グレイブル伯爵を名乗ったのは、夜会で見た三十代の神経質そうなインテリ男じゃなくて、俺より少し年上の、まだ二十歳にならないくらいの若い男だった。


 ライアンと初めて会って挨拶したのは、先日の姫様の誕生日パーティーの時だ。

 その時は当然、伯爵じゃなく次期伯爵だったんだけど。


 そしてその隣には、ジターブル侯爵が厳めしい顔で立ってた。


「本来なら、夜会の翌日の夜にはすぐに来たかったのだが、貴殿は領地へ戻ってしまっていたからな」


 まさかこんなに迅速に動くとは予想外だったよ。

 しかも連れ立って来るなんて。


 思わぬ展開に、一瞬対応が遅れてしまった俺を見て、グレイブル伯爵を名乗ったライアンは自嘲しながら説明してくれた。


「驚かせてしまったようで申し訳ない。父には今回の責任を取って隠居してもらい、私が家督を譲り受けたんでね。その折には、ジターブル侯爵にも骨を折って戴いたので、家督の相続は法に則った正式なものだ」

「えっ、ああ、そうなんだ」


 って、なるほど、速攻で当主が隠居することで、反省してますよって内外に見せて降爵するような事態を避けたってわけか。

 それも恐らく、俺みたいに夜会を途中で辞してか、遅くとも夜会の後にはその辺りの話し合いをしたんだろう。

 で、翌日には当主交代劇が行われた、と。


 それでその足で、俺の所にくるつもりだったわけか。


 その当主交代劇を誰が言い出したのか、ライアンなのか、ジターブル侯爵の指示なのかは分からないけど、ジターブル侯爵も一緒に来たってことは、自分がちゃんと動いたんだって俺に対する……いや、王家に対するパフォーマンスかもな。


 これだけ迅速に動いたってことは、今回の一件、そして俺の立場や影響力が、多分想像以上に重要になってるって理解した結果かも知れない。

 そして、同席してるのは俺を宥めて取りなすためでもあって、当主が責任を取って交代したことで、落としどころにしたいんだろう。


「取りあえず、ようこそって言っていいのかな。詳しい話を聞かせて貰おうか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ