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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十八章 クリスタルガラスの反響がすごすぎる、主に陰謀方面で

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537 クラウレッツ公爵との商談 4

 それはまた、思わぬ提案が飛び出してきたもんだな。


「まず、貴様の領地は立地が悪い」


 その話に乗る乗らないを考える間もなく、クラウレッツ公爵が畳み掛けるように話し始める。

 その口ぶりからすると、最初から今回の商談で持ち出すつもりだった話みたいだ。


「流通の上で王都から遠いのが致命的だ。南側一帯はトロルのガンドラルド王国であり、東西に他領を幾つか経由しても、やはり行く手にはガンドラルド王国しかない。マイゼル王国内で流通させることだけを考えても、整備された主要な街道を通った方が安全で確実性が高い」


 確かに、例えば、西側のクラウレッツ公爵派の領地や、王都より北側の領地、さらに東側の王家の直轄地や転封(てんぽう)した王室派の貴族の領地など、どこに輸送するにしても、一度は王都を経由する必要がある。

 直接輸送出来るのは、グルンバルドン公爵派の領地や南部の一部の貴族領だけだ。


 メイワード伯爵領から王都まで、荷馬車でおよそ六日。

 クラウレッツ公爵領の領都から王都まで、荷馬車でおよそ一日。

 それだけでも輸送費が随分と変わってくる。

 しかも、王都周辺は元より、クラウレッツ公爵領も街道整備を進めてる。


 だけど、王都から南部の領地では、街道整備に着手してる領地は少ない。

 俺の領地の真北にあって、王都へ向かうときに必ず通る必要がある、リグエルのマグワイザー辺境伯領も、砦の再建が優先で街道整備には手が回ってない。

 割れ物を輸送するなら、街道整備が見込めてる中央の方がいいに決まってる。


「さらに言えば、フォレート王国、レガス王国、ナード王国への輸出も、我が領からの方が近い」


 マイゼル王国の北側にあるレガス王国は元より王都経由で北上しないと行けないし、フォレート王国へも、グルンバルドン公爵派の領地を幾つか経由して北東へ進むより、一度北上して王都へ出て、それから東へ向かって進んだ方が、道中も安全だし、街道整備の状況もいい。


 ナード王国へは、王都へ出ずに返還された領地を北西に幾つか領地を経由して行くとなれば、長らくトロルに支配されてたせいで街道の状況が悪くて、とてもじゃないけど割れ物を安全に輸送するのは無理だ。

 だから結局、王都へ出て、クラウレッツ公爵派の領地を幾つか経由して西へ向かった方がいい。


 つまり、メイワード伯爵領はガンドラルド王国を考慮しなければ、交易路の行き止まりみたいな位置にあるってことだ。


「これだけの鏡だ。姿見にするにせよ、鏡台にするにせよ、安物の家具と組み合わせるわけにもいくまい。幸い、スカージ王国との関係は良好だ。スカージ王国製の家具を輸入し我が領で組み立てれば、輸送コストはかなり抑えられる」


 クラウレッツ公爵も、当然それを考えたってわけだ。


 俺の領地でそれをやろうとすれば、クラウレッツ公爵領の領都との往復で十四日余計に掛かってしまう。

 家具だけに大量に輸送は出来ないし、物が物だけに護衛は通常より大勢雇わないと駄目だ。

 それを考えれば、往復十四日で跳ね上がる経費はかなりの額で、ダイレクトに価格に反映してしまう。


「だから、鏡を安価で優先的にクラウレッツ公爵領に輸出しろって?」

「そうではない。ガラス職人達を全て移動させ、生産拠点をクラウレッツ公爵領へと変えるのだ」

「はあ!? おいおい、それは業務提携じゃなく、俺からクリスタルガラスと鏡の生産業を取り上げて、利権を奪おうって算段だろう!?」

「そうではない。話を最後まで聞け」


 思わず睨み付けた俺に、クラウレッツ公爵は平然とした顔でそれを受け流す。


「クリスタルガラスと鏡を作り出したドワーフの職人達の技術は素晴らしい。これらが世に出れば、その職人達を欲しがる者達は掃いて捨てるほどに出てくるだろう。それこそ、国内の貴族達はおろか、他国の貴族、王族達までもだ」


 それはすでに予想済みだ。


「しかし、貴様の領地の警備態勢はどうだ? 出身国も種族もバラバラの、素人に毛が生えた程度の領兵達。しかも領地の広さに対して圧倒的に数が足りていない。領境はおろか国境の守りすら不完全とあっては、密偵が入り込み放題だろう。そのドワーフの職人達を他国の密偵に攫われて国境を越えられたら、もはや手出しは不可能だ。どれだけ交渉しようと返還されることはないだろう。それこそ戦争で奪い返すくらいしなくてはならんだろうが、それも現実的ではあるまい」

「だから攫われ放題の俺の領地じゃなくて、自分の領地で保護してやるって?」

「その通りだ」


 おいおい、どんな名目を並べようと、その攫ってく密偵とやってることは変わらないだろう。

 そんなんで、俺が頷くとでも?


「貴様個人がどれだけ強かろうが、所詮は一伯爵家に過ぎない。しかしわたくしは公爵だ。クラウレッツ公爵派を敵に回す愚か者はそうはいない。それが他国の有力貴族や王族であってもな」


 常識で考えれば、その通りだろう。


 だけどな、相手は俺だぞ?

 俺を敵に回すことが、クラウレッツ公爵派を敵に回すより容易いとでも?


「安心しろ。わたくしは悪辣な貴族ではない。公爵としての権力を笠に着て、立場が弱い者から利権を奪ったり巻き上げたりなどしない。相応の対価を払おう」

「相応の対価、ねぇ」

「それも、ドワーフの職人を買い取っておしまいなどではない。クリスタルガラス製品および鏡の売り上げから一割を貴様に払い続ける」


 なるほど、マージンを支払うってわけか。


「たった一割とか、そっちこそ暴利を貪ってるようにしか思えないな」

「どうせ、数少ない領兵をガラス工房の警備に当てているのだろう? 今後、一層の警備が必要となり、多くの人員を投入する必要になることは明白だ。職人を攫われれば、捜索、奪還と、手間も経費も掛かることになる。その負担がなくなり、労せずして収益を上げられると考えれば、一割でも十分のはずだが」


 あわよくば一割で、俺がごねればもう少し、二割くらいなら出してやる、ってところか?


『この者は、ガラス産業を他国に奪われたくないと考えているのも本当ですが、それ以上に、これ以上我が君に「力」を付けさせたくないようです。そのため、一大産業となるであろうガラス産業を早期に取り上げ、我が君に対抗できる「力」を蓄えたいようです』


 やっぱりそういう算段だったってわけか。

 大貴族のクラウレッツ公爵が、親切心でそんなこと言い出すわけないもんな。


「色々御託を並べてくれたけど、お断りだ」


 俺が考える素振りすら見せずに断ったせいか、クラウレッツ公爵の眉間に皺が刻まれる。


「そこらの伯爵家が相手なら、その話に乗ったかも知れないな。だけど、話を持って行く相手を間違ってるんじゃないか?」


 そこらの普通の伯爵家なら、ましてや領兵の状況がそんな程度なら、欲を掻いて独占しようとした結果、他国に職人を奪われて、全てを失って泣き寝入りするしかなかったかも知れない。

 そして、そうならないようにって考えるなら、腹は立っても、クラウレッツ公爵の意見に乗って産業を明け渡して、売り上げの一割か二割の収入で満足しておこうとしたかも知れない。


 クラウレッツ公爵が利己的で強欲で、金のなる木を奪い取って権益を独占しようとするような悪徳貴族ならまだしも、そうじゃないなら、一面では国内産業の保護って意味がある。

 他国にみすみす奪われてしまったら大損だからな。


 それを公爵家と派閥の『力』で守って、売り上げの一部を渡すことで利益を与えつつ負担を軽減してやれば、見方を変えれば双方ウィンウィンの関係が成り立つとも言えるだろう。

 もちろん、単なる産業保護って善意からだけじゃないのは、貴族の振る舞いとして当然だとしてもだ。


 だけどその話が成り立つのは、『力』のない、そこらの普通の貴族が相手だったらの話だ。


 そう、俺にそんな普通の理屈が通用するわけないだろう。



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