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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十六章 あれもこれもと領地開発を加速させる、拡大するハーレムのために

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482 科学的知識の勉強会

「ずるい!」

「ずるいです!」

「羨ましいです」

「その、私も……」


 ある日の夕方、エフメラ、モザミア、プラーラ、エレーナの四人に詰め寄られてしまう。


 俺の隣にはリジャリエラが。

 俺達が二人きりでコソコソしてるって、エフメラとモザミアが怪しんで探りを入れてきて、二人きりの勉強会がバレた結果だった。


 それを耳にしたエレーナが自分もと言い出して、どこから聞きつけたのかプラーラまでやってきた。


「ちょ、待った、落ち着け。本当に勉強してるだけだからな? 参加しても勉強するだけだぞ? それでもいいのか?」

「いいよ!」

「もちろんです」

「私も伯爵様の知識にとても興味があります」

「私にも、今後必要になる」


 まあ、特に秘伝を教えてるってわけじゃないから、多少参加者が増えたところで俺は別に構わないけど。


「リジャリエラはどうだ? 構わないか?」

「ハイ」

「秘密じゃなくなっちゃったけど……」

「秘密ガ知られた時点でもはや同じデス。公に大勢でとなれバ、理由付けとしてハ十分デス」


 なるほど、一人だけコッソリ補習を受けてることにはならないから、面目は保たれるってわけか。


「じゃあみんなも一緒にで」

「ハイ」


 何やら最近、エフメラとモザミアとは三人仲がいいみたいだし? リジャリエラが構わないならいいだろう。


 と言うわけで、人数が増えたし、場所を俺の執務室のパーティションで区切られた応接スペースに変えて、勉強会が始まる。


 はずだったんだけど……。


 何故か俺を除いた五人で、壮絶なジャンケン大会が始まった。


「「「「「ジャンケンポン! あいこでしょ! あいこでしょ!」」」」」


 五人もいるからなかなか決着が付かない。

 それはいい。


 でも、あいこばかりが、二十数回も続くともなると、あまりにも不自然だ。


 最初は、もうどうにでもしてくれって思って決着を待ってたんだけど、あまりにもあいこばかりが続いて、変だなって思って観察してみると……原因はエフメラだった。


 二人がグー、二人がパーを出すと、エフメラは必ずチョキを出してあいこにする。

 三人がチョキ、一人がパーを出すと、エフメラは必ずグーを出してあいこにする。


 そして……。


「やった!! エフの勝ち!!」


 四人がグーを出したその時、エフメラ一人がパーを出して、勝ちをもぎ取っていた。


「エフが座るのは、エメ兄ちゃんの隣!」


 超ご満悦の顔で、俺の右側にボスンと座って、腕に腕を絡めてしがみついてくる。


「あらあら」


 プラーラがそんなエフメラを見て微笑ましそうに笑うけど、モザミア、エレーナが悔しそうな顔をする。

 特にエレーナが。


 そして俺に向けられる、無言の抗議。


 すでに結婚するって決めた『俺の嫁』って立場上、無条件で俺の隣に座れておかしくないもんな。

 エフメラの強固な反対に、『嫁』と『妹』の間に挟まれて、それを押し通せなかった弱い俺を許して欲しい……。


 そんな空気の中、リジャリエラだけがエフメラを見て驚きに目を見開いていた。


「エフメラ、お前、精神の精霊(ココロちゃん)使ってインチキしただろう」


 エフメラにしか聞こえないように小さな声で咎める。

 途端にビクッと身を固くするエフメラ。


「えへへ……♪」


 誤魔化し笑いを浮かべると、絶対に離れるもんかって俺の腕を痛いくらい抱き締める。


 まったく……。


 心を読む魔法は可能な限り秘密にしないといけないから、こんなことで暴露するわけにはいかないし、今回だけは見逃してやるけど、次はもうインチキするなよ。

 そう目できつく咎めると、小さく『は~い』って答えながら、甘えるように頭を擦りつけてくる。


 くっ……そういうのはずるいだろう、可愛すぎる!


 本当にもう。

 こんなインチキが癖になったら後々困るから、エフメラには本気で自重して貰いたいもんだ。


 で、だ。


「勝ちまシタ!」


 数回のあいこの末、リジャリエラが一人だけ勝って、俺の左側にぴったり寄り添うように座ると、俺に微笑みかけてくる。

 どこか、してやったりにも見える、満足げな顔で。


「ほらみろ、エフメラ」

「……ごめんなさい」


 まったく、素直に謝ったから今回は許すけどさ。

 リジャリエラにも、リジャリエラにしか聞こえないように小さな声で言っておく。


「エフメラの真似をしたんだろうけど、今後そういうインチキは禁止だ。悪いことは真似しないように」

「ハイ……分かりまシタ」


 しゅんとなるリジャリエラは反省したようだから、こっちも今回は許すけどさ。


 たまたま近くを漂ってただけの精神属性の野良の精霊が、何かを察したのか、そそくさと逃げるように壁を通り抜けて外へと出て行った。

 野良の精霊が悪いわけじゃないから、そっちを咎めたりはしないけど。


 ともあれ、俺の左右が埋まっちゃったんで、ジャンケン大会はここで終了。


 対面のソファーに、負けたモザミア、エレーナ、プラーラが適当に並んで座る。

 エレーナには、後でしっかりフォローしないとな。


 それはそれとして。


 女の子達が俺の隣を取り合って勝負なんて、滅茶苦茶照れるしドキドキしてテンション上がっちゃうんだけど!


 プラーラは面白そうって流れで参加しただけだろうけど、それ以外の四人が、さ。

 もう、夢のようなシチュエーションだよ!


「ゴホン!」


 改めて意識すると口元がにやけそうになっちゃうから、咳払いしてことさら真面目な顔を作って、全員を見回す。


「じゃあ、俺が知ってる科学的知識の勉強会を始めるぞ」

「わ~!」


 エフメラが拍手して、みんなそれに釣られて拍手する。

 リジャリエラはニコニコと、モザミアとエレーナは少しでも俺に近づこうと生真面目な顔で。

 そしてプラーラが好奇心のままに前のめりで、一番テンションが高いかも知れない。


「一応言っとくけど、エフメラにはとっくに教えたことばかりだからな?」

「いいの。復習」


 まあ、エフメラがそれでいいならいいけどさ。


「じゃあ、初回の今回は、基本中の基本、物って、水って、空気って、何で出来てて、どういう状態なのかって話をするぞ。まず、ここに一滴の水がある。この水を二つに分けると、半分の大きさになった一滴の水が二つになる。これをさらに二つに――」


 科学的知識の勉強会、要は理科の授業だな。


 ここ最近、リジャリエラには色々と教えてきたけど、やっぱりどうにも分別が難しいらしい。

 小さすぎて目に見えないから、どうしてもイメージが湧きにくいみたいなんだ。

 だから、せっかく主立ったメンバーが集まった機会だし、基礎の基礎からやろうと思ったわけだ。


 ちなみに、原子って考え方は、前世でも原子論って言って紀元前数世紀って大昔にはすでに、古代ギリシアの哲学者によって提唱されてたらしい。

 もう一つちなみに、その手のトリビア的な知識は、俺以上にネット小説が大好きだった義隆(よしたか)がネットから拾ってきて、ドヤ顔で披露してたのを聞いてるうちに覚えた物も多い。


 だからこの世界のこの時代でも、すでにちゃんとそういう学問はあるし書物もある。

 ただ本が高価だから、知らない人が多いだけで。


「――だから、水が加熱されて蒸発したら、水は目に見えないくらい小さな分子になって空気中に散っていくんだ。つまり空気は空気って単一の何かじゃなくて、そうやって色々な分子が集まって混ざり合って出来てるってことになるわけだ。だからカラッと晴れた日とジメジメした日の違いは、その空気中に水の分子がどれだけたくさん含まれてるか、その違いになるってわけだ」


 俺の頭の中のイメージをキリに拾って貰って、それをエンに伝えて貰って、空中にホログラムのようにモデル映像を投射しながら説明をする。

 おかげで、かなり分かりやすいはずだ。


 って思ったんだけど……。


 とっくに勉強済みで理解してるエフメラが、自分はもう知ってるもんね、って言わんばかりのドヤ顔で頷いてるのはさておき。


 どうやら他の三人は、そう簡単にはいかなかったらしい。


 モザミアは難しそうな顔で、モデル映像をじっと睨んで、ブツブツ言いながら今の話をなんとか理解しようと頑張ってるけど、十分理解出来たって顔じゃない。

 エレーナはさらに難しい顔で、理解するのにかなり悪戦苦闘してる感じだ。

 リジャリエラは、悟りを開いたようなアルカイックスマイルって言うか、モデル映像を見てるようで見てなくて、これ、もうお手上げって微笑みだろう。


 ただ一人、完全に理解したらしいのがプラーラだ。

 って言うか、頬に手を当てて、どこか熱っぽく潤んだ瞳でうっとりしてる。


「本当にもう、さすが伯爵様です……わたくしも、千年以上の生の中で考えたことくらいあるんですよ。水や土は、どこまで小さく分けられるんだろう。半分ずつに分け続けていったら、これ以上分けられないところまで小さくなるのかも知れない。そしてそれは、果たして一体どんな物なのだろう、って」


 おおっ、さすが樹齢千年以上は伊達じゃないな。


「ですが、こんなにも理論立てて、体系づけて考えたことはありませんでした。まさか空気にまで同じ考え方が通用するだなんて……本当に、本当に、伯爵様はもう、もう、もう……」


 俺を見つめながら熱くうっとりと吐息を漏らして……それがやけに色っぽい。

 そんな顔をされると、ちょっとどんな顔をしていいのやら……。


「改めてつくづく思いましたけど……こんな難しい学問を、伯爵様は一体どこで誰に学ばれたんですか?」


 モザミアが不審そうに俺を見る。

 貴族ですら、ここまで学問を学んでるか分からないもんな。

 多分、学んでない奴の方が圧倒的に多いだろう。


「それは秘密だ」


 やっぱり、って感じにモザミアが肩を落とす。

 こればっかりは仕方ない。


「エフメラ様は、こんな難しい話を、もうとっくに理解しているんですね?」

「うん!」


 尋ねるモザミアに、エフメラは小さな胸を張って、これでもかってくらいドヤ顔だ。


「元農民や、現役の農民の娘の知識じゃないですよ、絶対」

「まあ、それは認める。でも、それだけの知識がないと、俺のオリジナル魔法はどれ一つとして成り立たないんだ」

「そうでしょうね……」


 見ただけで真似られるんなら、とっくにもっと俺のオリジナル魔法は広まってるって話だ。


 最近、そのいい例になってるのがダークボックスだ。

 インブラント商会で頻繁に使ってるから、さすがにその存在を嗅ぎつけた奴が出始めたらしい。

 真っ黒い闇の箱を作って物を冷やそうとしたり凍らそうとしたり、真似してる奴がいるって、インブラント商会から報告が上がってる。


 でも、誰も真似出来てない。


 さすがに、単なる真っ黒いだけの闇の箱でも、日差しが、つまり赤外線が遮られれば、時間を掛ければほんの少しは温度を下げて冷やせる。

 だけど赤外線の原理を理解してないから、キンキンに冷たくしたり、ましてや凍らせたりは、全く出来てないそうだ。


 それを聞いた時、思わずニヤリとしちゃったよ。

 してやったり、だな。


「だからみんな、本気で学ぶ気があるなら頑張ってくれ。俺もできるだけ分かりやすく説明するし、どんどん質問してくれて構わないから。特にリジャリエラは、しっかり学んで理解してくれよ」

「ハイ、ご領主様(精霊王様)の御心のままに」


 神秘的な雰囲気を漂わせて、柔らかく微笑むリジャリエラ。

 その雰囲気に飲まれたように、モザミアやエレーナがリジャリエラに目を奪われてる。


 でも、俺にとっては不安が残る微笑みだ。


「本当に、しっかり、頼むぞ」

「……ハイ」


 目を見ながら念を押すと、リジャリエラがついと視線を逸らした。


 いやもう本当に、しっかり頑張って貰いたいもんだ。


 こうして勉強会は人数を増やして続けられることになった。



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