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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十四章 奴隷達が引き渡されてトロルと交易を始める

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427 グエンの主張

 さすが元騎士だけあって、そこらのチンピラみたいにすぐ喧嘩を吹っかけてくる様子はない。


 上背や体格だけを見れば虎型獣人のゼネガルの方がいいけど、殴り合いをすればグエンの方が圧倒的に強そうだ。

 まあ、ゼネガルはガタイがいいだけで一般人だったらしいから仕方ないけど。


「グエンと言ったな」


 領主らしく、俺の方が上なんだって態度で真っ直ぐに目を見つめ、まどろっこしいことは抜きで、単刀直入で尋ねる。


「獣人達の格付けを済ませたお前の次の目的はなんだ?」

「話が早いな。オレと勝負しろ。オレが勝てば、オレがボスだ。あんたはオレの配下になって貰う」


 やっぱりそれか。


 グエンは俺に敬意を払う様子もなければ怯む様子も見せない。

 自信の現れなのか、横柄な態度と物言いだ。


 それに腹を立てたのか、エレーナが注意か文句か、前に踏み出したんで、手を挙げてそれを止める。


「ボスになる目的は? 元騎士だけに忠誠を捧げるのはかつての主君だけで、お前もザレリア王国を復興させたい口か?」

「復興? いいや、そんな夢物語に興味はないな。今更王族だ貴族だと言い出されても、従う義理も意味もない。言っただろう、今はしがない一匹の獣人で、こいつらのボスだと」


 あの大馬鹿エルフどもとは違うってわけか。


「そいつらを……獣人達の安全や生活を守りたいって話なら、俺は理不尽な真似をするつもりはないぞ。法律上、奴隷として扱うが、別に苦役を課したり搾取したりするつもりもない。テント暮らしを長く続けさせるのは悪いと思うが、服や日用品は支給したし、食事も十分に与えてるし、衛生環境も悪くないはずだ。仕事の相談にも乗って、職業選択の自由も与えてるだろう?」


 この時点で、もう扱いは奴隷とは呼べない。

 だから、奴隷の収容施設とかボロ屋に押し込むんじゃなくて、難民キャンプで受け入れて生活の支援をしてるんだ。


「そして、真面目に働き、真っ当な生活をして、この俺と領地に貢献すれば、奴隷の身分から解放して、正式に領民として迎え入れると約束もした。さらに言えば、俺の下で領民になるのが嫌なら、希望すれば別の領地、別の国へ行く自由すら保障している。それの何が不満だ?」

「ああ、そうだな。奴隷の扱いとしては破格の待遇だろう。そして、トロルどもから解放してくれたことには感謝しよう。だがな、それだけじゃ、あんたの下に付く理由にはならない。そんな物、オレがトップに立てば全て叶う話だ」


 なるほど、一理ある。

 ただし、問題だらけだけどな。


「つまり、お前は自分がトップに立ちたいだけか」

「いいや、それも違うな」

「ん? どういうことだ?」


 グエンがここにきて初めて俺を値踏みするように、頭のてっぺんから爪先まで眺めてきた。


「オレも獣人だ。強者に従うことに否やはない。だが、あんたはオレ達の上に立つだけの強者たり得るのか?」


 そして、俺がボスたり得ないと言わんばかりに、鋭く目を細めた。


「精霊魔法は見せて貰った。確かに圧倒的だった。だが、それだけだ。それだけじゃ、オレ達が認めるだけの強者とは言えない。精霊力が尽きたら? 最後に物を言うのは鍛え上げた自分自身だ。あんたにはそれがない」


 いくらユニに肉体改造して貰ってるって言っても、ゴリゴリのマッチョになったわけじゃないんだし、見た目は普通と変わらないからな。


「つまり、殴り合いに弱そうな俺には従いたくないってことか」

「その通りだ。だが、単純に強ければいいってわけでもないがな」

「と言うと?」

「強者には、弱者を従え、庇護し、君臨するにたり得る器が求められる。馬鹿にも甘ちゃんにも務まらない。何より暴君じゃお話にもならない」


 ふむ、単に殴り合いが強ければそれだけでボスって認めるわけじゃない、と。

 同じ脳筋でも、そこはトロルと違うんだな。


「で、果たしてあんたにその器があるかな?」


 それはつまり、俺にはその器が『ない』って言ってるわけだな。


「少なくとも俺は弱者を庇護し、寛容を以てお前達に接してると思うが?」

「その点は認めないでもないが、オレには甘ちゃんにしか見えんな」


 甘ちゃんか……そう言われると、否定しづらいな。


「伯爵様、発言の許可が欲しい」


 不意にエレーナがそう許可を求めてくる。

 一見すると表情は変わらないように見えるけど……これはちょっと怒ってるな。

 どうしても言ってやりたい事があるって顔だ。


「何を言うつもりだ?」

「あのグエンって獣人の勘違いを正す」

「うーん……変な挑発をしたり、決裂させたりするなよ?」

「大丈夫、分かってる」


 力強く頷くか。

 確かに、エレーナが俺の意向を無視して騒ぎを起こすなんて考えられないな。


「分かった。発言を許可する」

「ありがとう伯爵様」


 使命感に燃えた顔で頷いて、エレーナが俺の一歩前まで進み出た。


「グエン、お前は思い違いをしている。それを私が正す」

「ほう? それであんたは?」

「メイワード伯爵領軍守護騎士団団長、ダークムン男爵家三女、エレーナ・ラグドラ」


 エレーナがまだ若い女性でありながら、曲がりなりにも騎士団団長の地位にあると聞いて、グエンは多少なりと表情を改めて話に耳を傾ける気になったみたいだ。

 エレーナが同じ騎士ってこともあるんだろうけど、つまりそれだけ俺が舐められてたってことだな。


「伯爵様を甘ちゃんと評したのは、伯爵様に反抗的な態度を取っているお前達と話しをするこの場を設けたからだと思う。だけどそれは伯爵様がお優しく慈悲深い方だからに過ぎない」

「お優しく慈悲深い方、ね」


 それが甘ちゃんってことだろう、って言いたそうだな。


「伯爵様にとって、お前達が反乱を起こしたと見なして問答無用で鎮圧するのは簡単。そして、領主たる貴族に反旗を翻したとなれば、厳罰に処さなくてはならない。だけどこの場には、女子供もいる。一般人もいる。せっかくトロルから助け出した弱者に、無慈悲に厳罰を与えたくないとの配慮をされただけ」

「その厳罰って言うのは、鉱山送りか、この領地から追放してガンドラルド王国へ送り返すって奴か?」


 グエンが、元農民で甘ちゃんの俺にそんな刑を執行する度胸があるのか、って言いたげに、口の端に笑みを浮かべた。


 なるほど、それらの罰を与える通達はしてたけど、実際にはそんな度胸はない、ハッタリだ、って思われてたわけか。


「刑が執行された実例はある。あろうことか、伯爵様が育てている畑を焼こうとした金で雇われたゴロツキどもや、暴力で領民の稼ぎを奪い取ったり店や屋台の品を繰り返し盗んだりした他領からの移民達は、全員犯罪奴隷として鉱山送りにされてる」

「ほう……」


 グエンの表情が少し険しくなったな。

 同時に、その後ろに集まってる獣人達がざわつく。


「そして、この領地からガンドラルド王国へ追放した事例も二件」

「なに……!?」


 グエンだけじゃなく、獣人達もどよめく。

 奴隷達を難民キャンプへ移動させる途中だったから、領兵達に取り押さえさせたり、トロルどもに引き渡した現場を、たまたま誰も目撃してなかったのかもな。

 しかも大馬鹿エルフの仲間は隔離しちゃったし。


「先日、お前達がトロルから引き渡される際に、伯爵様の邪魔をしようとトロルに攻撃を仕掛けて決裂させ、再び戦争を起こそうとした者達。引き渡された奴隷達で、滅ぼされた祖国復興のため伯爵様を利用しようと企み、それを看破され断られたことに腹を立て、見せしめに領民達を無差別に殺そうとしたエルフ達。その者達はすでに追放され、トロルに引き渡されて奴隷に逆戻りしてる」


 獣人達のどよめきが一層大きくなる。

 グエンもさすがに、エレーナが嘘やハッタリで言ってるわけじゃないと分かったみたいだ。


「理解した? 伯爵様はお優しい方。だから、出来ればお前達をそんな目に遭わせたくないから、こうして話し合いで事を治めようとしてる。だけど、反抗したとなれば、領主として領地の治安と秩序を守るため、心を痛めながらも、公平に、そして無慈悲に、刑を執行する」


 エレーナが視線を厳しくして、腰に佩いた剣に手を触れた。


「ここまでは、伯爵様が咎めなかったから見逃す。でもここからは、よく考えて発言し、行動するように」


 獣人達の前列には、戦闘に自信がある奴や強面を並べてたんだろう、どうせ殴り合いになれば自分達が勝つ、ハッタリだ、って考えてるのか、まだ余裕がある奴が並んでる。

 でもその後ろの方は、それこそ女子供に一般人で、あからさまに動揺が見て取れた。

 どうするんだ、話が違う、って感じの視線をグエンに向けてる奴もいるな。


 わずかの間を置いて、グエンが笑みを浮かべる。


「意外だったな。甘ちゃんだと思っていたが、確かにオレの思い違いだったらしい」


 ちょっと虚勢を張ってるって感じるのは気のせいかそうじゃないのか。

 勝ち誇るエレーナにきつい視線を向けた後、改めて俺を値踏みするような視線を向けてきた。


「甘ちゃんと言ったことは撤回しよう。だが、あんたはオレ達の上に立つだけの強者たり得るのか?」


 そして、もう一度同じ台詞を繰り返す。


 やっぱり脳筋である以上、そこは引けないらしいな。

 それにここで引いたら他の獣人達に舐められて、ボスの座から転落だもんな。



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