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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十四章 奴隷達が引き渡されてトロルと交易を始める

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421 亡国の王子と貴族達

「伯爵様、どうしても伯爵様に面会させろと騒ぐ者達がいまして……」


 執務室で書類を処理してると、弱り果てたって顔で入ってきたモザミアが、溜息と共にそう切り出してくる。


「その様子だと、職人達が自分達の希望する仕事について訴えてきた、ってわけじゃなさそうだな」


 酒造り職人やガラス職人を屋敷に呼び出して新しい事業を始めた話は、すっかり広まってしまってる。

 だから、だったら自分達もって騒ぐ奴が出てきてもおかしくないとは思ってたんだけど、モザミアの顔を見るに、どうやらそういう手合いじゃなさそうだ。


「はい。レフュール王国の第三王子とその側近の貴族を名乗る者達で、何度注意しても当時の権威を振りかざして反省が見られません」

「レフュール王国?」


 聞き覚えのない国の名前に、思わず首を傾げてしまう。

 と、側で一緒に書類の処理を手伝ってくれてたナサイグが、フォローしてくれる。


「確か数十年くらい前に、ガンドラルド王国に滅ぼされた国です。ガンドラルド王国の真東からやや南寄りに位置した、エルフの国だったかと」

「つまり、そいつらもエルフってわけか」


 うんざりしたようにモザミアが頷く。

 エルフは総じて、他種族を見下してるからな。


 しかも、亡国の王子様ご一行か。

 未だに当時の身分や権力に(すが)ってるくらいだ、無駄にプライドが高そうで、役人や領兵達が何を言っても、まともに話を聞こうともしないだろうな。


「それで?」

「鉱山送りやガンドラルド王国への送還をほのめかしても効果なしです。自分達は王族と貴族なのだからそんな真似を出来るはずがないと、高をくくっているようで。下手に鉱山送りにすると鉱山で暴れそうな勢いで、強制労働をさせている犯罪奴隷達へ悪影響を与えかねません」

「どこにも度し難い馬鹿ってのはいるもんだな……」


 本当に、そういうことをさせるために、前向きな気持ちにさせてやったわけじゃないってのに。


「じゃあ、俺がちょっと行って身の程を教え――」

「お待ちくださいエメル様」


 椅子から立ち上がった俺を、きつい視線でナサイグが止めてくる。


「――どうしたナサイグ?」

「エメル様が出向くのはよろしくありません」

「そうですね。あの者達を呼びつけましょう」

「でも、俺が行って処理した方が早いし、他の連中への見せしめにもなるだろう?」


 場合によってはそのままガンドラルド王国へ送り返してしまえるし。


「見せしめという意味では確かにその通りです。ですがエメル様が出向くと、相手が勘違いをして増長します」

「ナサイグの言う通りです、伯爵様。あの者達は伯爵様の奴隷と言う自覚がなく、王子や貴族のままのつもりです。伯爵様が出向けば、あの者達は伯爵様が謁見に来たと、そして伯爵様より自分達が上なのだと、思い上がること間違いありません」

「なので呼びつける必要があります。それも相手の意向を汲んでの面会ではなく、再三の注意を無視して無用に騒ぎ立てる奴隷達へ直々に懲罰を与えるために、との理由で」

「なるほど……」


 本当に面倒臭いな、そういう形式や格式って奴は。

 でも、そういう手合いは、それこそそういう形式や格式を重んじてるだろうから、自分の立場を理解させるのに一番手っ取り早いんだろうな。


「そもそも用件も予想が付きます。エメル様がまともに取り合う必要はありません」

「確かに、まともに話を聞く必要なんてないだろうな」



 と言うわけで、ナサイグとモザミアの仕切りに任せたところ、『再三の注意を無視して無用に騒ぎ立てる奴隷達への懲罰を、領主たる俺が直々に与える』って伝え、『多忙なところ、わざわざ時間を作ってやったんだ』ってパフォーマンスで、敢えて三日待たせることになった。


 そして当日、周辺を領兵に固めさせて罪人を連行する(てい)で歩かせ、ウクザムスの俺の屋敷の門の外まで連れて来させた。

 さらに屋敷の敷地内には入れず、門の外で待たせること三時間。


「そろそろ頃合いも良いのでお願いします、エメル様」


 ようやく俺の出番らしい。


 屋敷を出て門の前まで行くと、問題の元王子と元貴族の合わせて六人の奴隷達が『ようやく来やがったか、この俺様達を散々待たせやがって』みたいな恨みがましい顔を俺に向けてきた。

 同時に、連行してきた領兵達が、疲れた顔でほっとした顔を見せる。


 何しろ、扱いが不服なのか、門の前に到着してからすぐにギャーギャー騒ぐのが聞こえてきたからな。

 連行してきた元グルンバルドン公爵領軍の騎士や兵士達や、門番や屋敷の警備をしてる元奴隷の領兵達との押し問答が始まって、ちっとも収まらなかったし。


「エメ兄ちゃん、外の人達煩いよ! エフが黙らせてくる!」


 結果、イライラを募らせたエフメラが飛び出して行って、ドガンと派手に攻撃魔法がぶっ放される音と震動が伝わってきた後、やっと静かになったくらいだ。


 ちなみにそのエフメラは、腰に手を当てて仁王立ちで、エフメラの契約精霊達が元王子と元貴族の奴隷達を取り囲んで睨みを利かせてる。

 そして、元王子と元貴族の奴隷達の契約精霊達もまた姿を見せてて、エフメラの契約精霊達と睨み合ってた。


 なんかもう、この状況を見ただけでドッと疲れるんだけど。


「あっ、エメ兄ちゃん」


 待ってましたと嬉しそうな顔をするエフメラの頭を、ご苦労様って感じに撫でて、その隣に立つ。


 俺とエフメラは屋敷の敷地内、奴隷達は敷地外。

 両者の間の門が、まるで越えられないお互いの立場を表してるような、そんな立ち位置だ。


「ようやく来おったか、この俺様を待たせおって無礼な――」

『無礼なのはお前達よ。我が主の前に頭が高い。即刻跪きなさい』


 いきなりデーモとモスが姿を現したと思ったら、奴隷達にグラビティフィールドをかけた。


「――ぐがっ!? なっ、なんだと!?」


 奴隷達が突然増した重力に、地面に押さえ付けられるように崩れ落ちて膝をつく。


 その表情は、二重の意味で驚愕していた。

 デーモが人間のように流暢に喋ったこと、そしてグラビティフィールドの効果に。


 何しろ、この世界のこの時代だと、まだ重力なんて概念すら発見されてないからな。

 初めてのこと尽くしで、表情を取り繕うことも出来ないらしい。


 もう面倒だから、このまま話を進めよう。


「それで、お前達が未だに過去の地位にみっともなく縋り付いて騒ぎ立てる馬鹿者どもか」


 改めて、連行されてきた奴隷達を眺める。


 今は無きレフュール王国の第三王子を名乗る見た目はまだ二十代の我が強そうなイケメンと、その側近の貴族を名乗る三十代から四十代くらいの男達が四人。

 その五人ともエルフで、褐色の肌と銀髪をしていた。


 その色合が、なんとなくダークエルフを連想させる。

 でも、エルフはエルフで、フォレート王国やシェーラル王国のように白い肌と金髪のエルフとは民族が違うってだけで、ダークエルフって種族は存在しないらしい。


「レフュール王国はすでに滅んで存在しない。お前達はもはや王族でも貴族でもない。理由はどうあろうと一度奴隷に落ちた以上、奴隷でしかない。その失った身分と権力が未だに通じるなどと、勘違いも(はなは)だしい。役人を通じて再三それを伝え警告したが、それでも従わず騒ぎを起こすと言うのなら、お前達を法で裁くしかない。判決は、この領地からガンドラルド王国への追放。以上だ」


 形だけでも会ってやったことに感謝しろ、って言わんばかりに、一方的に告げる。

 ちなみに、演技指導はナサイグとモザミアだ。


 そこで話は終わったとばかりに立ち去ろうとすると、グラビティフィールドの効果がきついだろうに、元王子がきつそうに表情を歪めながらも顔を上げて、ニヤリと笑う。


「ま、待て貴様――」

『我が主に対して、その口の利き方は何かしら』

「――ぐっ!?」


 さらに重力が増して、もっと表情を歪めるけど、顔を上げたままそれ以上頭を下げようとしない。


「この俺様の話を聞かないと後悔するぞ――ぐぅ!!」

『沙汰は下されたのよ。いい加減にしなさい』

「貴様にとってもいい話――ぐはっ!!」


 口を開くたびに、デーモとモスが重力を増してるってのに、一向に減らず口をたたくのを止めようとしない。

 元貴族達は跪いた姿勢すらきつく、もう頭を上げられないって感じなのに、根性あるって言うか、プライド高すぎるだろう。

 その根性を、もっと別の方向に生かせばいいのに。


「やれやれ、だな……」


 こいつが言う『いい話』なんてろくでもないことなのは予想が付くし、耳を貸す必要はなんてこれっぽっちもないけど、ガンドラルド王国へ連行中に暴れられて領兵達に怪我人が出ても困るし、それで逃亡して押しかけられても面倒だな。


「デーモ、モス、少し緩めてやってくれ」

『ですが我が主』

『ブフゥ』

「喋るだけ喋ったら満足するだろう」

『仕方ありません、我が主がそう言うのであれば』

『ブモゥ』


 渋々、二体はグラビティフィールドを最初と同じまで軽減する。

 立ち上がることは無理でも、なんとか顔を上げるくらいは出来るようになって、奴隷達はほっとするのと同時に、驚愕の表情でデーモ、モスを見比べた。

 まさか契約精霊が契約者の俺に口答えしたり、命令に従わなかったりするなんてって、驚いてるんだろう。


「どうせくだらないことだろうが、言ってみろ」


 仕方なくそう言うと、元王子は勝ったとばかりにニヤリと笑った。



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