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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十四章 奴隷達が引き渡されてトロルと交易を始める

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417 酒造り職人のドワーフ達

 三日後、執務室の応接スペースで、俺は八人のドワーフ達と向かい合っていた。

 八人全員が、今回引き渡された奴隷達で、祖国への帰国を希望してる。


「よく来てくれた。改めて、俺が領主のメイワード伯爵エメル・ゼイガーだ」


 俺の挨拶に、追加のソファーも運び込んで座ってる八人が、落ち着かなさそうだったり警戒気味だったり、少々居心地が悪そうだ。


「それで領主様、わざわざワシらだけを呼びつけて、なんの用だ?」


 代表らしいドワーフが、眼光鋭く俺を見据えてくる。

 彼らも薄々気付いてるんだろう、自分達の酒造りの腕に関係してるってことを。


 八人のうち、五人が男で、三人が女。

 そして、ボサボサの髪と豊かな髭のせいで半分は四十代以上に見えるけど、調書によると、人間の年齢に換算して四十代は一人、三十代が三人、二十代が二人、十代になるかならないかが二人と、比較的に若い。

 それも夫婦が二組で、それぞれに男の子と女の子が一人ずついる家族だ。

 次世代に期待を持てるし、是非とも領地に残って貰いたい。


「本題に入る前に、一つ確認させて欲しい。調書によると全員が祖国への帰国希望らしいけど、その意思は固いのか? 少しくらいこの領地に残ってもいいって思ってくれてないか?」

「フン、そんなこと、祖国に戻りたいに決まっておるだろう」


 頑とした態度で、代表のドワーフが言い放つ。

 ちなみに一番年上の四十代の男で独身だ。

 もう一人、三十代の独身の男も、それに同意するように強く頷いた。


 だけど、他の六人、夫婦二組はそれに強く同意してるって感じには見えないし、子供二人は大人達がそう言うからって雰囲気が感じられた。


『キリ』

『はい、我が君。祖国への望郷の念は強いようです。ですが、待っている家族などは恐らくもうおらず、他に強い魅力を感じる選択肢がないので、ともかく戻りたいようです。祖国へ戻り酒造りをしていければ、と思っているようですが、何十年とトロルの奴隷をして来て、今更祖国へ戻って居場所があるのか、本当に酒造りを続けられるのか、まともに生活を送れるのか、不安も覚えています』


『つまり、説得の余地はあるってことだな』

『恐らくは。しかし、トロルに強制的に酒造りをさせられてきて、誰かの下で無理矢理酒造りをさせられることに忌避感も抱いています。貴族である我が君の下に付くことを、それで忌避しているようです』


 そうか……まあ、分からなくもないな。


『それで、他の者達は?』

『子供達はガンドラルド王国で生まれ、奴隷としての生活しか知りません。祖国に帰ることにこだわりはなく、どこであろうと生活に不安を覚えています。その両親達は、子供達が幸せに暮らしていける環境を欲しており、取りあえず同胞が多い祖国が良さそうだと言うだけで、それ以上に安心して子供達を育てられる環境があれば、そちらを望むと思われます』

『よしよし、頑として帰国の意思が固いってわけじゃなさそうで安心した』


 ドワーフって頑固だから、下手な説得は逆効果になる可能性があったけど、これなら予定してた通りに話を進めれば、少なくとも二組の家族は説得出来そうだ。


「お前達は俺の奴隷としてトロルどもから所有権を受け取った。だから現時点ではお前達の立場は俺の奴隷であり、俺の財産だ。これは周辺諸国が批准してる奴隷に関する法で、そのように定められているから、正式な譲渡によるものだ」


 この後何を言い出されるのかって警戒したり、身を固くしたりするから、安心するように微笑む。


「だけど俺は、お前達が奴隷だからと言って理不尽な真似をするつもりはない。引き渡された奴隷達が一万人にもなるし、様々に手続きが必要だし、すぐに対処は出来ないから時間が掛かるが、最初の挨拶でも言った通り、真面目に働いてくれれば、いずれお前達を奴隷の身分から解放しようと思ってる」


「なんじゃと!?」

「えっ!?」

「本当に!?」


 みんな驚いてるけど、まあ無理はないよな。

 こうして面と向かって話をするのは初めてなんだから、お互いの人となりも分からないわけだし、すぐに信用出来るわけがない。

 奴隷からの解放なんて奴隷達を従わせ働かせるための方便で、本当は解放するつもりなんてさらさらない、って思われてたかもな。

 普通、奴隷を手に入れた貴族が、善意で奴隷の身分から解放してやろうなんてするわけないんだから。


「トロルどもに攫われたり、祖国を侵略されたりで、無理矢理奴隷にされた者達がほとんどなんだろう? そういう奴隷達を解放して、普通の人としての生活と尊厳を取り戻させたいって思って、トロルどもから奴隷達を引き渡して貰ったんだ」


 代表ともう一人のドワーフは俺を胡散臭そうに見てるし、夫婦も子供達も、俺の言葉をどこまで信じていいか判断が付かずに戸惑ってるな。


「当然、全てが善意ってわけじゃない。この領地を気に入ってくれた者達、行き場がない者達には、奴隷から解放したら俺の領民になって貰って、この領地の発展に尽くして貰いたい。この領地はトロルどもに支配されてたマイゼル王国の旧領地だった場所で、それを返還させたばかりだから、どんどん開発を進めないとまだまだ暮らしにくいんだ。だから長い目で見ると、奴隷として無賃で働かせながら食わせていくよりも、領民として働かせて経済を回させ、納税して貰う方が得なんだ」


 そしてそれだけじゃない。


「帰国事業で解放した奴隷達を帰国させたら、その国の民を救い出したって事で、恩を売れるだろう? マイゼル王国や俺にメリットがある話だ」


 こうして打算の話をしたからだろう。

 ただの善意や、奴隷にされてるのが可哀想だからなんて同情心だけより、よほど納得して理解してくれたようだ。


「そこで本題だ。薄々気付いてるだろうから、先に言っておく。この領地に残って俺の領民にならないか? 本来なら帰国希望者を引き留める真似はしないんだけど、俺はお前達の酒造り職人としての技能が欲しい」


「やはりな。それでワシらに恩を売ろうって魂胆か」

「ぶっちゃければ、その通りだ。だけど、お前達にもメリットはある」

「フン。奴隷から解放してくれるって言うなら、して貰おう。だが、感謝はするが、それだけだ」


 うん、腕組みして、いかにも頑固職人って感じだな。


「もちろん、その程度でドワーフの職人達をどうこう出来るなんて思ってない。だから、説得するチャンスを貰いたい」


 部屋の隅で控えてたプラーラに合図する。

 頷いたプラーラは、ドアを開けて外に声をかけた。


 サランダやアイジェーン達侍女がワゴンを押しながら入室すると、そのワゴンに載せてた物をテーブルに並べた。


 それを見て、代表のドワーフの眉がピクリと動く。

 子供達は興味津々にそれらを眺めてる。


「これは俺の領地で栽培されてる大麦、小麦、その他作物だ。難民キャンプでお前達に出してる食事、美味かっただろう?」


 子供達は素直に頷く。

 夫婦達も躊躇いながらも、子供達に釣られるように頷いた。

 代表のドワーフともう一人は、ここで素直に頷くのは癪だって感じに、難しい顔をしてるけど。


「ハッキリ言おう。これだけの作物であれだけ美味い料理を食べられるのはマイゼル王国だけだ。他の国では食べられない。もっと言うなら、マイゼル王国でも他の領地ではまだまだ高級食材扱いで、貴族や豪商なんかの金と権力を持ってる連中しか食べられないが、俺の領地なら、一大産地ってことで平民でも普通に食べられる」

「本当ですか!? これからも毎日あんなに美味しい物が食べられるんですか!?」


 ようやく十代になったばかりって男の子が、目を輝かせて身を乗り出してくる。

 さらにもう少し年下の女の子も一緒だ。


 子供だとドワーフでも素直なんだな。

 それとも奴隷として生まれ育った環境のせいで、特別素直なだけなのかな?


「ああ、もちろんだ。普通に店や露店で売ってるから、いつでも買って食えるぞ」

「で、でも……あたし達、お金持ってないです……」


 女の子がしゅんとなる。


「俺の領地で頑張って働いてくれれば、お金は稼げるよ。奴隷だとか元奴隷だとか、貧民だとか種族だとか、男だとか女だとか、そういうのに一切関係なく、働いた成果に応じてちゃんとお金が稼げるようにしてるからな」

「本当!?」


 女の子がぱあっと明るくなる。

 素直な子供達から、両親達の方へと目を向ける。


「一応言っておくと、お前達の祖国ザグンデス王国は現在もトロルと小競り合いを続けてて、徐々に国境沿いの領地を奪われていってるそうだ。まあ、俺がトロルどもの兵力をかなり削ったんで今は小康状態になってるらしいけど、それも一時的なものだろうな」


 両親達は不安そうにお互いの顔色を窺う。


「対して、この領地は安全だ。俺がいる限り、トロルどもは攻めてこられない。最初の挨拶で見せただろう? もしトロルどもが攻めてきても瞬殺だ。安心して生活出来ることを約束しよう」


 よしよし、子供達の反応と、今の俺の言葉に、夫婦二組はどうするって感じに視線を交わしてるな。


 これでこの六人はほとんど落としたも同然だろう。

 出来れば頑固そうな二人も欲しいから、説得を続けるけどさ。



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