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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十四章 奴隷達が引き渡されてトロルと交易を始める

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413 商談の結果

 ズシンと地響きを立てて、前のめりに突っ伏して倒れた青い肌のトロル。


 俺は鳩尾に叩き込んだ拳を引いて、倒れた青い肌のトロルの身体を横に避ける。

 気付けば、会場内がしんと静まり返っていた。


 見届け役の緑の肌のトロルを振り返る。


「バ、カな……!?」


 俺と目が合って、思わずよろける緑の肌のトロル。


「俺の勝ちだ」


 拳を突き上げて勝利宣言すると、次の瞬間、爆発的な大歓声が上がった。


「伯爵様!!」


 エレーナが慌てすぎて転びそうになりながら、俺に駆け寄ってくる。


「伯爵様、怪我は!?」

「ああ、大丈夫、さすがにちょっと拳が痛いけど、それだけだ」

「本当に!? 捻挫や骨折は!?」


 俺の右手を触って確かめて、なんともないって分かると、ほっとしたのか、ちょっと目を潤ませながら俺の右手を握り締めた。


「良かった……伯爵様に怪我がなくて……」

「心配かけて悪かった。でもこの通り、俺は無事だ」

「うん」


 くっ、だからこういうときだけ表情筋が仕事をして、眩しいくらいの笑顔になるの、反則だろう。


 続けて駆け寄ってきた領兵達にも次々に心配されて、安心されて、勝利を褒め称えられる。

 それが一段落したところで、緑の肌のトロルへと改めて目を向けた。


「これで分かっただろう? トロルロードの王との勝負に俺が勝ったってことが。覆しようもない、俺の勝利だ。いいな?」

「グ、ムゥ……」

「いいな?」


 念を押すと、観念したように緑の肌のトロルは頷いた。


「分かった……キサマの勝ちだ……」


 緑の肌のトロルが俺の勝利を宣言したことで、再び大歓声が上がった。

 その大歓声に応えて手を振ると、さらに歓声が大きくなる。

 気恥ずかしくもあるけど、ちょっと気持ちいい。


「それじゃあ約束通りに」


 事前の取り決め通り、ブースに残ってた作物のうち半分をトロルどもの所へ運んで貰って、代わりにミスリルのインゴットを一つ、受け取ってきて貰う。


「大勝利で大儲けだったな」

「驚きました……お見事です閣下」


 インブラント商会長が、未だに倒れたまま起き上がれない青い肌のトロルを他のトロル達が助け起こしてる光景と、俺が手渡したミスリルのインゴットと、俺の顔を見比べて、驚き覚めやらぬって顔で尋ねてくる。

 それも、俺の思惑を正確に見抜いてくれてるんだろう、敢えて周囲に聞かせるような大きな声で。


「トロルに素手で勝つなど、一体全体どういうからくりなのですかな?」

「それは当然、企業秘密だ」


 だから、もったいぶってニヤリと笑う。

 俺の意図に気付いてた連中が聞き耳を立ててたみたいで、あからさまにガックリしてるな。


 ちなみに、からくりなんてない。


 いかにも攻撃魔法や防御魔法じゃない、何かしらの精霊魔法を使って勝ちました、って思わせたけど、実際には精霊魔法なんて使ってないからな。

 これまでユニに肉体改造して貰って、ちょっと人間離れした身体能力を発揮できるようになってるってだけで。


 一度、姫様を助けるのにトロルを蹴り飛ばしたことがあるけど、人前でそこまでやったのは、あの時だけだ。

 それも、目撃したのは姫様と侍女のクレアだけ。


 そして、トロルロードの王との勝負で勝った時は、人間の目撃者は皆無。


 だから俺の救国の英雄としての活躍や名声を高めるために話が大げさになって広まってるだけ、って思われてたことだろう。

 でも今回のことでそれが事実だって証明された。


 ただし、精霊魔法でなんらかのからくりがあるらしい、ってカモフラージュつきで。

 肉体改造のことは切り札の一つとして、まだまだ秘密にしときたいからな。


「それじゃあ、これで全ての商談が成立ってことで、いいな?」


 商人の青い肌のトロルが、両脇から抱えられて後方に搬送されていく様子を眺めながら、緑の肌のトロルに確認する。

 まだブースに残ってる作物に未練があるようだけど、名誉を懸けた神聖な戦いの結果だ。


「仕方ナい……分かっタ」


 強さの序列が絶対のトロルは、こういうとき、きっちり守ってくれるから助かるよ。

 むしろ、人間とかエルフとかの方が往生際が悪いって思う。


 さて、これでもう一山越えたな。


 って思ってたら――


「あ、あの、メイワード伯爵閣下、よろしいでしょうか?」


 ――かなり遠慮がちだけど、図々しくも、ドジール商会長が揉み手で近づいてきた。


「ん? どうしたドジール商会長?」

「大変に不躾で申し訳ありませんが、その残った作物を、私どもに売って戴けないでしょうか? それで、その作物を使って、トロルと交易する許可を戴きたいのです」


 おっと、そうきたか。

 野次馬で集まってた商人達からブーイングが上がる。


「ええい、トロルとの商業権は得ているんだ、文句を言われる筋合いはない!」


 なんて言い返してるけど、俺とインブラント商会が取り仕切ってる取引の場に、一旦区切りは付いたとはいえ、しゃしゃり出てくるのは十分に図々しくて、文句を言われても仕方ないだろう。


 でも……まさか、自分から(・・・・)動いてくれるなんてな(・・・・・・・・・・)

 次回以降でも良かったけど、負って欲しい役目(・・)を果たしてくれるなら、俺としては大歓迎だ。


 そう、この流れを作ることこそ、全ての作物を取引しなかった、二つ目の理由だ。


 もっとも、だからって、いい顔をして歓迎すると他の商人達を勘違いさせて舐められるかも知れないから、敢えて渋い顔を作る。


「俺とトロルの取引の場に、それはどうなんだ?」

「は、はい、無礼は重々承知しております。ですが、商人としてこの商機を逃すわけには参りません。後ほど、お詫びとお礼を持参致しますので、どうかご許可を戴けないでしょうか?」

「ふむ……」


 わざとらしく難しい顔をして、悩んでみせる。

 それから、仕方ないって顔で許可を出す。


「謝罪と謝礼は当然。その上で、なんらかのペナルティは覚悟しておけよ」

「はっ、ありがとうございます!」


 インブラント商会長に任せて、残った作物をドジール商会に売る。

 手早く済ませるため、ドジール商会のブースじゃなく、ドジール商会長の後ろに作物の袋を積み上げさせた。


「あ、あの、私どもとも、お取引をよろしいでしょうか?」


 震える足と声で怖ず怖ずと、揉み手をしながらドジール商会長が緑の肌のトロルに近づいていく。


「フム……」


 緑の肌のトロルはドジール商会長の後ろの作物を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。


「イイだろう」

「はっ、ありがとうございます!」


 ドジール商会長は早速トロルどもの鉱物の所へ行って、これとこれをこのくらい欲しいと交渉に入った。

 ドジール商会長が希望を伝え終わると、緑の肌のトロルの笑みが深くなる。


「オレは細かナ値は知らン」


 そう言って、ドジール商会長が希望した鉱物の四分の一くらいを前に積む。


「手っ取り早く、勝負ダ」

「っ!?」


 まさかいきなりそうくるとは思ってなかったのか、ドジール商会長は息を呑んで、慌てたように俺を振り返ってきた。


「お前の取引なんだ。俺の顔色を窺う必要はない。好きにしろ」


 事も無げに言ってやると、一瞬逡巡した後、決意を固めたように緑の肌のトロルに向き直った。


「い、いいでしょう。では、私どもが勝ったら作物は全部出しますが、先ほど交渉した全てと、追加でこれとこれと、それからこれらも戴きます」

「イイだろう」


 緑の肌のトロルが早速構える。


「メイワード伯爵閣下!」


 いきなり目の前で構えられて、慌てたようにドジール商会長が振り返って、俺に期待した目を向けてきた。


「精々死なないように気を付けて頑張れよ」

「……え?」


 だから、骨を拾ってやるぞって言わんばかりに頷くと、間抜け面を返してくる。


「あ、あの……メイワード伯爵閣下が代理人で立って戴けるのでは?」

「おいおい、何を言ってるんだお前は。それはお前の取引だろう?」

「は? いえ、ですが先ほどは――」

「さっきのは、インブラント商会を代理に立てて交渉してただけで、俺が直接トロルと取引をしてたんだ。だから俺が勝負を受けた」


 そのことはちゃんと公言してたから、知らない奴が悪いってことになる。

 もし知ってた上で俺に戦わせようって言うなら、それは虫が良すぎる話だろう。


「でも今は、お前のドジール商会が取引してるんであって、俺は関係ない。なんで俺が他の商会の取引にまでしゃしゃり出る必要があるんだ? それとも、今後、ドジール商会の取引全てに俺が口出ししても構わないのか?」

「それは……」

「それとも、仮にも貴族であり、この領地の領主であるこの俺を、(てい)よく利用してやろうってふざけた了見だったのか?」

「め、滅相もございません!」


 剣呑な雰囲気を醸し出しながら視線をきつくしてやると、ドジール商会長は慌ててペコペコ頭を下げる。


 そう、ここはきっちり線引きしとかないとな。

 でないと、俺を舐めていいように利用しようとする商会が際限なく出てきかねない。


 ドジール商会長にブーイングを飛ばしてた連中が、失笑を漏らしてる。

 当然だろう。

 そんな美味い話があるわけがない。


 ドジール商会長は真っ青な顔で、自分の商会の従業員や護衛で雇ってる連中を振り返る。


「お、お前達!」

「む、無理です会長!」

「トロルとなんて戦えませんって!」


 そりゃあそうだよな。

 孤立無援でトロルの前に立ってるドジール商会長は、今にも卒倒しそうだ。


 まあ、あんまり無関係を決め込むのも薄情だし、ちょっとは手助けしてやろう。


「せめて立会人くらいはしてやる。死ぬ前に止めてやるから安心しろ」


 そんなのなんの助けにもならないって、絶望した顔になってるな。


「話は付いたようダな。イくゾ」


 俺が出ないと分かってあからさまにほっとした緑の肌のトロルが、早々に勝負を付けるべく、身構えた。


「よし、始め!」

「参りました!! 降参!! 降参です!!!」


 開始の合図直後、速攻土下座で降参するドジール商会長。


「勝負あり!」


 こうして、人間とトロル、マイゼル王国とガンドラルド王国の初めての取引は、その全てが終了した。



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