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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十四章 奴隷達が引き渡されてトロルと交易を始める

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408 黒幕どもへの制裁

 ちょっと照れ臭いけど、軽く手を挙げて、歓声と連呼を止める。


「お前達が俺の良き隣人であってくれるなら、変わらず俺はこの国を守ってやる。だからくれぐれも俺の敵に回るなよ」


 またしても大歓声だ。


 改めて、縛られてる三人を見る。


「少しは自分達が、お前達の主人がしでかした事が分かったか?」


 返事はない。


 何も言えないだろうな。

 判決を言い渡し、それから兵士達に合図して、またしても奴隷の首輪を持ってこさせ、三人に付けさせる。


「本来ならお前達もトロルに引き渡してしまいたいところだが……お前達にはランドーラ子爵、ザルア男爵、トレアド伯爵とその息子に、事の顛末を伝えて二度とこんな馬鹿な真似をしでかさないよう、メッセンジャーになって貰う。だからガンドラルド王国への追放は勘弁してやるが、二度と俺の領地へ入る事は許さない。その奴隷の首輪は特別製で、領地に入って来たら契約精霊達が一発で気付くようになってるからな」


 あからさまにほっとしてるギネルド・ガンテインとキエーガ・ザレンドルだけど、安心するのは早計だ。

 その奴隷の首輪は、トロルロードすら拘束した、トロルロードが百年頑張っても壊れない鎖と同じだからな。

 そうそう簡単には壊せないし外せない。


 まあ、まず間違いなく、一生外せないだろう。


 それともう一つ。

 念のために準備させといた便箋に代筆して貰って、厳重な抗議の手紙をしたためた。

 さらに領兵に、片手に乗るくらいの、そこそこ装飾が凝った小箱を持ってこさせる。


「これをお前らの主人に届けろ。俺からの警告が入ってる。分かっていると思うが、勝手に開けて中を見るなよ。直接主人に届けろ。いいな」


 領兵に縄を切らせて、手紙と小箱を手に押しつける。


「……畏まりました」


 ネグロス・シェアダンが紳士的に一礼すると、他の二人も、トロルに引き渡されずに安堵したのか、慌てて倣って頭を下げた。


「では、連れて行け」


 領兵達に周囲をガッチリ固められて、連行されていく。

 このまま関所を越えて、マグワイザー辺境伯領へと追放される手はずだ。


 どうやらこの処罰を、甘ちゃんだとか詰めが甘いとか、三人ともそう思ってるみたいだけど、それこそ考えが甘いな。

 お前達とランドーラ子爵、ザルア男爵、トレアド伯爵には、また別の意味で見せしめになって貰うんだからな。



◆◆◆



 ――数日後。


「申し訳ございません旦那様。失敗致しました」

「なんだと!? 貴様何をやっている!」

「そうだ! 貴族とは名ばかりのあんな成り上がり者に、またしても邪魔されたと言うつもりか! この無能め!」


 深々と頭を下げたトレアド伯爵家執事ネグロス・シェアダンに、トレアド伯爵は怒りをまき散らし、その息子は癇癪を起こして八つ当たりする。


「まったくもって(おっしゃ)る通りでございます。ですが、恥を忍んで申し上げます。かの伯爵に敵対するのは、もはや愚策でございます」


 ネグロスは事の経緯を、一切の虚飾も誇張もなく、そして個人的な見解も差し挟まず、最初から最後まで淡々と事実のみを報告した。


「なんだと!? 正体がバレていただと!? そんな馬鹿な!」

「恐れながら、事実でございます。そればかりか――」


「なんとフォレート王国と……!? いや、だとしても……このような屈辱を受けたことが、あのような成り上がり者に救われていた結果などと認められるか!」

「そうだ! この国の守護者にでもなったつもりか! 思い上がりおって!」


「お前もいつまでそんな首輪を付けたままでいる! さっさと外せ、目障りだ!」

「……外れないのです」

「なに?」

「腕利きの鍛冶屋に頼み鍵を壊そうとしても、切断しようとしても、道具が傷むばかりで、ろくに傷すら付けられないのです……」


 これでは、外出がままならないどころか、客人の前には二度と出られなかった。


「おのれ忌々しい……どこまでもコケにしおって……!」

「旦那様、若様、こちらを。かの伯爵より、必ずお二方に渡すよう言付かって参りました」


 ネグロスは、外れない奴隷の首輪の不安を一旦脇に置いて、職務を全うするべく、エメルに渡された手紙と小箱を差し出す。


「なんだこれは?」

「かの伯爵によりますと、抗議の手紙と、警告が入った小箱だそうです」

「警告だと? 馬鹿にしやがって!」


 息子はその小箱をひったくると、無造作に開く。


「なんだ? 中には何も――」


 言いかけたその途中で、突然、何も入っていない箱の中から突風が吹き上がり、竜巻のように荒れ狂う。


「――なっ!?」

「なんだこれは!?」

「っ!?」


 三人が驚きの声を上げる中、その竜巻からエアカッターが無数に放たれる。


「ひいっ!?」

「うわっ!?」


 エアカッターは、ソファーを、執務机を、書類棚を、カーテンを、壁を、部屋中をデタラメに切り裂いていく。


 程なく、エアカッターと竜巻が収まったとき、執務室は、そして三人の衣服は、見るも無惨にズタズタに切り裂かれていた。

 しかし、三人の肌には、掠り傷一つすらない。


「な……な……!?」


 よろけるトレアド伯爵と、尻餅を付くその息子、そして茫然となりながら、改めてエメルへの恐怖を確かな物として戦慄するネグロス。


 その三人の前で、執務机の上にボウッと小さな火の玉が現れる。

 その火の玉は、執務机の表面を焼き焦がしながら素早く複雑に動き始めた。


「これは……!?」


 その焦げ跡は、エメルからのメッセージになっていた。


『トレアド伯爵と次期当主に警告する。これ以上、敵対するのであれば容赦はしない。次はお前達の身体ごとズタズタに引き裂き、全てを焼き尽くす』


 そこで三人は、自分達の服だけがズタズタに切り裂かれていることに、ようやく気付いた。

 もしこれが警告でなかったら……その結果は想像に難くなく、震え上がる。


 そこまでのメッセージを残して、小さな火の玉は跡形もなく消えた。


 しかし、ほっと胸を撫で下ろす暇もなく、倒れたランプから突然炎が噴き上がり、ズタズタに切り裂かれた壁紙やカーテンに引火して、床と壁を焼き焦がし広がっていく。


「――!?」

「かっ、火事だ!?」

「い、急ぎ消火を!」


 ネグロスは家人達を大至急呼び集め、バケツに水を汲ませて消火活動に当たる。

 どれほどの時間が経ったか、全てを鎮火したとき、執務室の半分以上が焼け焦げていた。


「これが、かの伯爵からの警告……私の動向はおろか正体までも知っていたことといい、殺そうと思えばいつでも殺せる、証拠ごと全てを隠滅して……と言うことなのでしょうな……」


 ネグロスの言葉に、トレアド伯爵はガックリと膝をつき、その息子は震えながらドサリと尻餅を付いていた。

 執務室は静まり返り、もはや誰も口を開く気力すら残っていなかった。


 その光景を見届け、仕事を終えた特殊な契約精霊達は、姿と気配を完全に消したまま、マスターであるエメルの下へ帰還していく。



 これと全く同じ光景が、ランドーラ子爵家、ザルア男爵家でも繰り広げられた。


 さらに後日、緊急の議会が開催され、王太女たるフィーナシャイアより、ランドーラ子爵、ザルア男爵、トレアド伯爵は厳しく糾弾されることとなった。


 そしてエメルの厳重な抗議の手紙はグルンバルドン公爵にも届けられ、ランドーラ子爵は怒り心頭のグルンバルドン公爵より厳しく叱責された上、派閥から追放。

 王家より沙汰が下され、それぞれランドーラ子爵は男爵に、ザルア男爵は騎士爵に、子爵に降爵が決まっていたトレアド伯爵はさらに男爵に降爵され、領地も降爵後の爵位に見合うだけを残し、多くを召し上げられた。


 エメルが未遂で終わらせたからこそ、この程度の処罰で済んだが、あわや再び戦争と言う事態を引き起こそうとした以上、エメルや王家とは無関係に、これら三つの貴族家と懇意に付き合おうとする貴族家はもはや皆無だった。

 さらに取引や婚約は白紙撤回され、親族も関係を断ち、家臣や使用人達もそのほとんどが辞職し逃げ出して、急速に没落していったのだった。





 領兵達に連行されていく三人を見送って、大きく息をつく。

 後は、箱の中に忍ばせた特殊な契約精霊達に任せておけばいい。


「さて、色々と邪魔が入ったけど、まだ肝心なところが終わってないな」


 ブラバートル侯爵を振り返る。


「そうだったな」


 気を取り直して、必要な手続きを続けるため、外務省の役人達が我に返ったように慌てて動き出した。


 奴隷を引き渡すための書類を改めて手にして、ブラバートル侯爵と緑の肌のトロルはそれぞれ中身を改めると、必要な書類にお互いのサインを入れる。

 そして、互いに交換してまたサインをして、最後にマイゼル王国とガンドラルド王国で一部ずつ持った。


「ではこれで、マイゼル王国およびガンドラルド王国間における、第一回目の奴隷の引き渡しと、賠償金の支払いが正しく行われたことを認める」


 ブラバートル侯爵がそう宣言すると、まず外務省の役人達が、続けてその護衛達、領兵達、そして野次馬達が、盛大な拍手をする。

 そんな光景を眺めて、そういう文化がないからか、緑の肌のトロルが鼻を鳴らした。


「まったく、人間は面倒な手続きヲするモノダ」


 トロルどもは脳筋だし、もっと簡単なやり取りしかしないんだろうな。


 でも、これは確かに約束が履行されたって証拠になるんだから、お互いにとってその証拠となる書類を取り交わすことは、余計な揉め事を回避するために必要な手続きだ。

 後から『全額払っタはずダ!』『いいやまだ足りてない!』なんて言い争いをして、再び戦火を交えるなんてことになったら、目も当てられないからな。


 ともあれこれで、大きく一山越えたわけだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] ついに奴隷1万人到着ですか。 オークロードとの対話から長かった… けれどまた話が大きく転換するんでしょうね。 それらが楽しみです。 奴隷の中には新しいキャラもたくさん居るでしょうし、男の娘…
[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★
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