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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十四章 奴隷達が引き渡されてトロルと交易を始める

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407 暗躍した者どもへの制裁

「見てるんだろう!?」


 野次馬達や周辺に向けて、声を張り上げる。

 一体誰に向かって何を言ってるんだ、みたいな空気になるけど、事が終わったって空気が弛緩する前に再び引き締めて、俺に注目を集めた。


「今のゴロツキどもを雇ったり、領兵を差し向けたりしてきた、そこで成り行きを高みの見物してるお前らのことだよ!」


 その俺の言葉に、再び場がざわつく。


「おっと、こっそり逃げようったって無駄だ、逃がすわけないだろう? やれ!」


 俺が右手を挙げて振り下ろすと、再び攻撃魔法が放たれる音と悲鳴が上がった。


 数は三つ。


 野次馬達の中に一つ。

 野次馬達のさらに後方の物陰に一つ。

 少し離れた建物の上に一つ。


「引っ立ててこい」


 巡回兵に命じて、捕縛させる。

 さっきのゴロツキ同様に縄で縛られて連行された来たのは、悲鳴の数と同じ三人だった。


「これは一体、なんの真似ですかな?」


 そのうちの一人、初老の紳士っぽい男が、手当はされてても傷が痛むんだろう、若干の脂汗を流しながらも、無関係の被害者面で逆に俺を非難してくる。

 他の二人も似たようなことを口にしようとするから、きつく睨み付けた。


「黙れ。茶番で時間を無駄にするつもりはない。ネタは上がってるんだ。この領地に入ったときに契約精霊達の監視が付いたのは、お前達もなんだよ」

「っ!?」


 三人とも息を呑む。

 そんな馬鹿なって言いたそうだけど、互いに面識がなさそうな三人が、互いにチラチラと視線を交わし合い、互いのその態度から同類だと悟って、俺の言ったことが嘘じゃないって分かったようだ。


「どうやら、シラを切っても無駄だと分かったようだな」


 ゴロツキどもに対してしたよりも、さらに高圧的な態度で言い放つ。


「し、しかしそれは、メイワード伯爵が勝手に決めつけて言っていることではありませんか。証拠はない」


 二十歳過ぎくらいのちょっと仕立てがいい服を着てる文官タイプの男が、往生際が悪くそう言い放つ。


「だったらお前達の主人、今回の黒幕に直接抗議するとしよう。お前と、主人の名を言ってみろ」

「っ……!」

「どうした? 言えないのか? 言えないってことは、俺に対してやましいことがある、俺の主張が正しくて報復をする正当性がある、って証拠だろう?」


 ことさら大きな声で野次馬達にも聞こえるように言ってやると、ざわめきが大きくなった。

 どうやら、俺の主張に理があると認められたらしい。


 最初に茶番をやろうとした初老の紳士っぽい男が、文官タイプの男を『馬鹿が余計な口を利きおって』って感じに(さげす)むように見る。

 この初老の紳士っぽい男は、中途半端につつくとまた茶番を繰り広げようとして無駄に時間を取られそうだから、最後の一人の、いかにも一般人みたいな軽装だけど、多分正規の訓練を受けてるだろう三十代後半くらいの騎士っぽい男に問い質す。


「お前はどうだ? 俺が言いがかりを付けてるって言うなら、黒幕たる主人の名前を出して、自分の所属を明らかにして、『こんな無体な真似をして、主人から俺への抗議がいくぞ』って、言い返してみたらどうだ? なあ?」

「くっ……!」


 成り行きを見守ってる野次馬達は、この流れで完全に俺の側に回ったみたいだ。

 この三人に非難の視線を向けてくる。


 初老の紳士っぽい男は、なんか覚悟を決めてだんまりを決め込んでるけど、それならそれでいい。

 恐らく想像してるだろう、拷問して口を割らせて黒幕の名前を聞き出す、なんて真似はする必要ないからな。


「お前らが名乗るどころか主人の名すら言えないって言うなら、俺が代わりに言ってやろう。まずお前だ」


 騎士っぽい男の前に立つ。


「グルンバルドン公爵派、ランドーラ子爵領軍騎士団所属騎士ギネルド・ガンテイン」

「なっ!?」


 どうやら本当に騎士だったらしい。

 あり得ないって驚愕を顔に貼り付けてる。


 同時に、ジェラッド達、元グルンバルドン公爵領軍組からも動揺のどよめきが上がった。


「スゴット商会と組んで俺に喧嘩を売ってきて、見事に返り討ちに遭ったからって、その腹いせに領軍の弓兵を五人も使って、奴隷達の引き渡しと交易を邪魔してやろうって魂胆か。みみっちいな、お前の主人のランドーラ子爵は」

「そんな馬鹿な……!?」


 ランドーラ子爵とのやり取りを臭わされ、さらに旅装束の五人が領軍の弓兵だってことも見抜かれて、なんでそこまで知ってるんだってすっかり混乱してる。


 ジェラッドが言い訳しようと慌てて俺の所に駆け寄って来ようとしたから、分かってるって、軽く手を挙げて止めた。


 今回の件に、グルンバルドン公爵は無関係だ。

 ただし、罰を与えたって言っておきながら派閥の貴族の統制も取れてないんじゃ、なんらかの抗議をする必要はあるけどな。


 驚愕のあまり言葉も出てこない、そのギネルド・ガンテインの耳元に口を寄せて、他の奴には聞こえない小さな声でいいことを教えてやる。


「スゴット商会はフォレート王国と組んでたんだよ。つまりランドーラ子爵も、そのお仲間の貴族達も、フォレート王国に踊らされて俺と王家に喧嘩を売ってきたんだ。アーグラムン公爵の二の舞を演じる前に、わざわざ俺が苦労して止めてやったってのに、愚かで恩知らずなことだな。なあ?」

「――!?」


 愕然として固まってしまったギネルド・ガンテインを放置して、次に文官っぽい男の前に立つ。

 表情を強ばらせてるけど、まだ少し余裕があるっぽいな。

 絶対に自分の正体を知ってるわけがない、そう確信してる顔だ。


 でも、残念、全部丸見えだ。

 何しろ、今回ばかりは事が事だけに、禁術を解禁して記憶を探ってるからな。


「で、お前は、瓦解したトレアド伯爵派、ザルア男爵家所属経理キルガ・レンド……とは表の顔で、裏の顔は汚れ仕事専門の、密偵部隊隊長キエーガ・ザレンドルだな」

「馬鹿な!? あり得ない! 絶対にあり得ない!」


 おうおう、取り乱しちゃってまあ。

 よっぽど正体を探られない自信があったんだろうな。

 髪を染めたり、化粧をしたりして、表と裏の顔を使い分けてるみたいだからな。


「あり得ない? あり得るから、こうしてお前の正体を掴んでるんだろう。お前がゴロツキ十三人を雇ってけしかけてきたのも把握済みだ」


 サーペに頼んで染料を落とす溶液をぶっかけ、髪の染料と化粧を洗い流させる。

 突然、溶液をぶっかけられたこともだろうけど、流れ落ちる染料に、ここまでバレてたのかって、愕然となってるな。


 さらに追い討ちで、ギネルド・ガンテインに教えたのと同じ内容を、こっちにも耳打ちしてやる。

 そして最後にもう一言。


「知らなかったのか? 密偵部隊隊長を謳いながら、所詮その程度か」


 鼻っ柱と心が折れたようにガックリ項垂れるキエーガ・ザレンドルを放置して、最後、一番面倒臭そうな初老の紳士っぽい男の前に立つ。


「……つまり、この私めの正体も、すでにご存じと、そう(おっしゃ)りたいわけですな」

「ああ、その通りだ。トレアド伯爵家執事ネグロス・シェアダン」


 ネグロス・シェアダンは軽く目を見張ると、観念したように笑った。


「不正や横領、犯罪を犯してた自業自得だろうに。貴重な領軍の契約精霊持ちを四人もこんなことで使い潰して、そんなに俺が憎かったか? トレアド伯爵も大人しく子爵に降爵されて蟄居(ちっきょ)しとけばいいものを。家督を継ぐ息子の方も、派閥は瓦解したんだから、自分は父親とは違うって、さっさと方針転換して俺と手を組めば良かったんだ。その決断が下せない時点で、どうせ先はなかっただろうけどな」

「それは私と旦那様、若様との……そこまでご存じとは、恐るべき情報網ですな」

「執事のお前がすべきは、馬鹿な主人達の破滅に付き合うことじゃなく、その忠言で、なんとしても説得することじゃなかったのか?」

「耳が痛いですな……」


 困ったように微笑んだ後、凪いだ目を俺に向けてくる。


「それで、私ども三人とも、先ほどの連中同様に犯罪奴隷落ちで、トロルに引き渡されるのですかな?」


 どうやら本気で最初から、失敗したときはトレアド伯爵家と心中する覚悟を決めてたらしいな。

 大した忠義ぶりだけど、こっちにしてみれば、いい迷惑だ。


 そしてこの言葉に、他の二人がギョッとして命乞いを始めようとしたんで、きつい視線を向けて黙らせる。

 緑の肌のトロルがそいつらも奴隷としてよこせって言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべてて、他の二人が顔を青ざめさせてるけど、自業自得だ。


 なんか自分の忠義ぶりに酔ってるようにも見えるから、ネグロス・シェアダンにも他の二人に聞かせた内容を、囁いてやった。


「――!?」

「忠義を気取るのもいいけど、あまりにもお粗末すぎだろう?」

「…………返す言葉も、ありませんな」


 さて。


「お前ら三人だけじゃない、他の奴らにも改めて言っとくぞ」


 縛られたままの三人を順番に見て、それから野次馬達もぐるっと見回す。


「せっかく俺が命懸けで戦って戦争を終わらせて、お前達やお前達の大事な人達の命を、財産を、そしてトロルどもの奴隷にならないで済むように自由を守ってやったってのに、今度また誰かこんな恩知らずで恥知らずな真似をして、トロルとの戦争を引き起こそうとしやがったら、俺はこの国を見限るからな!?」


 どよっと、これまでにないほどのどよめきが上がった。

 野次馬達が動揺して、領軍の騎士や兵士達も狼狽える。


「考えるまでもないだろう? 俺が憎い、だから邪魔をするし潰しに掛かる。だけど、自分の命と財産と自由は、お前が命を賭けて守れ。なんて馬鹿げた理屈を振りかざす、そんな恩知らずで恥知らずな奴まで、なんで俺が命懸けで守ってやらなくちゃいけないんだ!?」


 これを当然って傲慢に考えてるふざけた奴が貴族なんてやって権力を握ってるから、国が良くならないんだよ。


「いいか、他の奴らにも伝えておけ! 今度こんな真似をしてみろ、そんなに自らトロルに滅ぼされたいなら、お望み通り自殺させてやる! 俺は俺の家族と大事な人達だけを連れて、他国へ移住して、お前達やお前達の大事な人達がトロルと戦争して蹂躙されて、殺されようが、奴隷にされて悲惨な目に遭おうが、国が滅びようが、知ったことかで無視を決め込むからな!?」


 そんな俺の言葉に、ガーハッハッハッと、愉快そうな大笑いが重なった。


「そいつはイイ! コイツさえいなけレば、下等な人間ナド恐るるに足らンからな!」


 俺がこの国を去れば、即座に不戦条約なんて破棄して攻め込んできそうな獰猛な笑みを浮かべて、目の前の全員をすでに奴隷として従えたつもりで見渡してる。


「オマエら、コイツに不満があるヤツらにドンドン伝えロ! 邪魔しに来イ! かかって来イ! ってナ! そしてコイツをこの国カラ追い出しテしまエ!」


 大人しく奴隷達の引き渡しと賠償金の支払いに従ってたのが、嘘みたいな態度だ。

 つまり、これこそがトロルどもの本音だろう。


 でも、だからこそ効果的だ。

 欲望丸出しの獰猛な笑みと大音声に、誰もが震え上がり、後ずさり、縋るように俺を見てくる。


 まあ、飴と鞭の茶番だな。


 そもそも、本気で見限るわけがないだろう。

 姫様もフィーナ姫も、この国を愛してて、離れるわけないし。

 それにここはもう俺の領地で、俺を慕ってくれてる領民が大勢いるんだからな。


 だから、トロルどもの方へと向き直る。


「おい、あまり調子に乗るなよ。今回は俺が未遂で終わらせたんだ。だからまだこの国を見限ったわけじゃない。さっきも言ったが、もし俺がいる間に手出ししてきたら、お前ら、一匹残らず根絶やしにするからな」

「グッ……! ああ、分かってイる」


 いきなり野次馬達から歓声が上がって、領兵達が先陣を切って俺の名前の連呼を始める。

 そういうの、嬉しいけど恥ずかしいから勘弁して欲しいんだけど……。



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