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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十四章 奴隷達が引き渡されてトロルと交易を始める

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403 受け入れ態勢完了

 予定通り、更新再開します。

 引き続き応援よろしくお願いいたします。




 ガンドラルド王国との国境になってる川を越えて新主要街道を北に進むと最初に訪れることになる、小さな町レグアス。

 そのレグアスでは、本来なら何年も掛かるはずの広大な範囲の建物の解体と整地と基礎工事を、俺とエフメラが精霊魔法を駆使して強引に一日で終わらせるなど急ピッチで作業を進め、親方の伝手でやってきた職人達を中心に建設した、一つの大きな施設が完成していた。


 その名も、メイワード伯爵領レグアス貿易センター。

 トロルサイズにも対応してる一際大きな建物だ。


 って言っても、前世の貿易センターみたいな近代的な高層ビルじゃなくて、石造りと木造を合わせた、ただの交易所だけど。


 メインの建物は広く大きく、魚河岸や企業の展示会みたいなブースを設けて、希望する商会が借りて自由に商談や取引が出来るようになってる。

 そしてその隣には大小様々な倉庫と大きな事務棟も建てた。

 こっちも貸し出してるんで、必要に応じて借りて貰えればって思ってる。


 ただし、これら施設を利用できるのは、俺の領地での商業権を取得してる商会および行商人に限定させて貰った。

 モグリの商会や行商人を騙る詐欺師、そして商業権を取得してない別の貴族家の息が掛かった商会による、無茶や汚い商売、犯罪行為を防ぐためだ。

 特にトロル相手にトラブルを起こされるのが一番困るからな。

 だから、利用者の出入りのチェックおよび、それらを借りた商会や行商人の監視や監督も兼ねて、施設内の巡回も行う予定にしてる。


 ただ、それらチェックおよび監視や監督の巡回、さらに建物の保安や管理は、事務棟の一番大きな部屋を複数占拠した商業ギルドに丸投げする予定だ。

 蛇の道は蛇って言うし、その手のことはプロに任せとく方が安心だからな。

 もちろん相手も商売のプロ集団だから、慈善事業で引き受けてくれるはずもないんで、その対価はテナント料の割引きで手を打つことになってる。


 そして、この貿易センターにメインで入って貰ってる商会が、言うまでもなく俺の御用商人のインブラント商会だ。


 トロルとの初回の交易は、俺が直接取引をするって形で行うんで、インブラント商会には俺の代理人として交渉その他を請って貰う。

 そしてその初回で取引した交易品は、そのままインブラント商会に卸した形にして、他の商会と売買して貰うわけだ。


 当然、インブラント商会には相応の手数料を支払う契約になってる。

 交渉して売り捌いてって、そういうのはプロに任せるに限るしな。


 ちなみに、一応インブラント商会にもトロルと交易していいって許可証を国から取得して貰って、横槍を入れられても問題にならないよう先手を打っといた。


 そうまでしてまず俺が代表でトロルと交易するのは、言うまでもなくトロルどもがどんな反応や対応をするか不明だからだ。


 トロルの商売のやり方はよく分からないし、何が切っ掛けで無茶を言い出したり暴れ出したりするか分からないから、当然、当日は俺も立ち会う。

 そうしてトロルとの交易が成り立って、やり方が確立されたら、その後は各商会でご自由に取引をどうぞ、って流れになる予定だ。


 だから、インブラント商会が直接取引するのも、その段になってからになる。


 おかげで、今後を占うって意味でも、今回のトロルとの交易は注目度が非常に高い。


 インブラント商会以外にも、トロルが交易品として持ち込む予定の革や毛皮目当てに、服飾関係に強いアガゼル商会。

 先日商談を持ちかけてきて商業権を得たばかりの、職人の道具や施設、鉱物なんかを扱うドジール商会。

 その他同様に商談を持ちかけてきて商業権を得たばかりの複数の商会が、すでに幾つも事務所と倉庫を押さえて、ブースを確保してる。

 そして、これら施設を借りてはいないものの、多くの行商人が俺の領地での商業権を取得して、貿易センターの出入りと利用の許可を得ていた。


 そんな彼らは、初回の今回に限り、インブラント商会を通してトロルとの交易品を手に入れることになるから、インブラント商会長もオルブンも、それら商会や行商人との商談で連日忙しそうだ。


 さらに、トロルと交易する許可は元より、俺の領地での商業権を獲得してない商会や、他の貴族家からの使いなんかが、取引の経緯を見守り情報収集しようと次々にレグアス入りして、町はすでに賑わいを見せ始めていた。


 そんな連中が大勢集まってくるのを予想して、今レグアスでは幾つもの宿屋や定食屋なんかが建設ラッシュを迎えてる。

 それら宿屋を経営するのが、同様に商談を持ちかけてきて商業権を取得したガジ商会だ。


 ガジ商会は、上は貴族が泊まれる高級宿から、下は板間に寿司詰めで雑魚寝の宿とも呼べないような宿まで、幅広く経営出来るってんで、レグアスだけじゃなくウクザムスにも高級宿を建てて貰ってるところだ。

 そして定食屋を経営するのが、そのガジ商会の伝手で集まってきた小さな商会や料理人達だった。


 そんなこんなで、にわかに小さな町レグアスは商業都市として発展し始めてる。

 もしレグアスが商業都市として成功したら、いずれ防壁を広げて町を拡張しないといけなくなるかも知れないな。


 そんなレグアスの防壁の外、東側の森を切り開いて作られたのが、難民キャンプだ。


 何しろ一時的にとはいえ、一万人もの奴隷達が暮らす場所だから、かなり広い。

 今はまだ仕舞ったまま出してないけど、一万人が当面生活するためのテントやら日用品やらが詰め込まれてる倉庫や、役人が調書を取ったり寝泊まりするための簡易の役所も建ってる。

 だけど、基本的には土が剥き出しの更地だな。


 ちなみに、うちの領地で雇ってる役人達だけじゃ到底手が回らないのは目に見えてるから、フィーナ姫に頼んで、国から役人を何十人か借りる予定だ。

 借りた役人にやって貰うのは、基本的にテントや日用品を配るのと調書を取るだけ。

 その後のことは、こっちの役人達にやって貰う予定だ。


 なのでその調書も、いちいち細々(こまごま)説明しないで済むように、また情報を均一に扱えるように、チェックシートの形式で用意してある。


 名前や年齢なんかは直接記入しないと駄目だけど、性別や出身国、職業、今後どうしたいかなんかは、すでに項目ごとに書き込んであって、チェックボックスにチェックを入れるだけの簡単仕様だ。

 もちろん、それで全てを網羅できるわけがないから、その他で記入出来る欄もちゃんと用意してある。


 普通、こんな書類を一万枚も手書きで準備しようと思ったら無茶もいいところだけど、俺にはコピー&ペーストの魔法があるからな。大量生産は余裕だ。


 それから追加した施設が、二百箇所のシャワールームだ。

 奴隷として不衛生な環境に置かれてただろうし、長旅をしてきて汚れてるだろうから、綺麗に洗い流してさっぱりして貰いたい。


 って言っても、二百箇所あっても一万人だと、一箇所につき平均五十人が使うことになるから、一人十分で手早く済ませたとしても八時間以上掛かることになるんで、まあ全員がシャワーを浴び終わるには丸一日掛かるだろうな。

 当然、俺が付きっきりでシャワーをやってやるわけにはいかないから、コッソリと偽水晶を仕込んどいて、特殊な契約精霊達に任せる手はずになってる。


 ちなみにトイレも以下同文で二百箇所設置しといた。


 と言うわけで、その他諸々準備万端、後は到着を待つばかりだ。



「インブラント商会が頑張ってくれたおかげで、日用品はなんとか数が揃ったし、食料も倉庫に運び込んだし、必要な施設も建てたし、いつでも受け入れ可能だ。ってことで、他に何か質問や、見ときたいところはあるか?」


 難民キャンプや色々と建築中のレグアスの町中を案内しながら、視察に来た外務大臣のブラバートル侯爵と外務省の役人達に、どうだとばかりに話を振る。


「いや、十分だ」


 ぶっくり太ったでかい腹と顎のたるみを揺らしながら、ブラバートル侯爵が偉そうに頷く。

 それに続くのが、驚愕覚めやらぬって顔の外務省の役人達だった。


「十分どころか想定以上の充実ぶりですよ」

「まったくです。この短期間でよくもまあ、街道を整備し、トンネルを開通させ、関所に難民キャンプに貿易センターまで用意できたものですな」

「我々がトロルと交渉するために北の公爵の領都まで出向いたときは、馬車で山脈を迂回して、メイワード伯爵領に入ってからこのレグアスへやってくるまで、四日から五日は掛かっていたと言うのに」

「それがたった数時間で来られるようになっただけでも驚愕ですよ。しかもあの街道の走りやすいことと言ったら。それだけでも商人達を呼び込める武器になる」

「しかも領都へ向かう途中の広大な畑まで開墾済みとは。さすがに食料支援が必要かと計画を立てていましたが、いやはや、無用だったようですな」


 そんな風に口々に驚きの言葉を口にする。

 まあ、俺としては、ドヤ顔しちゃうけどね。


「伯爵位としては異例の、これだけ広大な領地を下賜(かし)されたのだ。しかも奴隷達を受け入れると決めた以上、この程度やって貰わねば話にならん。この交易が成功すれば、我が国の流通事情は大きく変わる。万全の上に万全を期して当然であろう」


 言ってくれるな、ブラバートル侯爵め。

 外務省の連中は領地が返還される前の姿を知ってるから、その発展ぶりで度肝を抜いてやろうと思って、ここまで一気にやったってのに、もっと驚けよな。

 可愛げの欠片もないおっさんだよ、まったく。


 それはさておき。


「同盟国のナード王国と懇意にするのは変わらずとして、その北方の小国家群とは食料の輸出でパイプが太くなったから、さらにトロルの交易品を渡して、積極的にこっちの味方に引き込みたいところだな」


 それがお前達の仕事だろう、俺がここまでやったんだから、ちゃんとやってくれよ。

 って感じにブラバートル侯爵に話を振るけど、その分厚い面の皮で俺の皮肉なんて食い止めて、屁とも思ってない顔だ。


「分かっているなら、ゆめゆめ失敗などするなよ?」


 って言うか、逆に皮肉を返してきやがるし。

 本当に、この手の貴族ってむかつくったらないな。


「言われなくたって成功させるに決まってる」


 ゾルティエ帝国が領土的野心を隠してない以上、敵の敵は味方ってことで、仲良くしといた方がいい。


「ところで」


 そこで声を潜めて、俺とブラバートル侯爵の会話を他の誰にも聞かれないように、ロクに頼んで声を消す。


「今回の件でフォレート王国の動きは?」

「本国の方で何か動きがあったようだが、詳細は不明だ。しかし、表立って我が国に何かを仕掛けてくる様子は今のところない」

「だったらいいけど……第二王女って、これで引き下がるようなタマか?」

「あり得ん。しかし、裏の実働部隊は貴様が潰したのだろう? シャーリーリーン殿下も手の者を失い、すぐさま介入してくることは難しかろう。動きを見せたとしても、精々、現場で情報収集させるのが関の山だと思うが」

「そうか……」


 確かに、もし無理矢理介入してトロルを怒らせて交易を台無しにしようとしても、現場に俺がいる以上、そんな真似はさせない。

 精神属性の特殊な契約精霊達をコッソリ巡回させておけば、よからぬ真似をしようとする奴らは残らず網に掛かって、まさに一網打尽に出来るからな。

 第二王女はそんなことは知らないはずだけど、ここで無茶して台無しにすれば俺の怒りを買って不要な逆襲を呼び込む、って思えば、多分無茶はしないだろう。

 って言うか、そう思いたい。


「恐らく、人族が妖魔とどれだけ対等に経済活動を行えるのか、お手並み拝見と言ったところだろう」

「それは、あんたも、だろう?」

「分かっているなら、失望させてくれるなよ?」


 まったく、ああ言えばこう言って煽ってくるな、このおっさんは。


 ともあれ、当日邪魔さえしなければ、様子見や情報収集くらい見逃してやる。

 むしろ持ち帰ればいい。


 トロルとの交易の成功、その成果を大々的に広めてくれれば俺も助かるからな。



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