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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十三章 緒戦を勝利で飾ったら千客万来で忙しい

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402 売り込む客達

 来客の対応や商談は、何も貴族達ばかりじゃない。

 主に領地の屋敷へ押しかけてくるのは、商人や行商人達だ。


 しかも貴族相手と違って、一日のうちに短時間で区切って何組も会うスケジュールが組まれてる。


 オルブン曰く、ぼったくりを撥ね除けての意趣返しや、トロルとの交易の噂に、急激に期待度が上がり、メイワード伯爵領が注目を集めてる証拠だそうだ。


「メイワード伯爵閣下、本日は貴重なお時間を戴きまして、誠にありがとうございます。ドジール商会の商会長ハディーニ・ドジールと申します」


 へこへこと揉み手するのは、これまたでっぷりと太った人間のおっさんだった。


 応接スペースのソファーに向かい合って座ってるけど、俺の後ろにはユレースとモザミアが控えて立ってる。

 相手に人数と身分で圧をかけるのと同時に、アドバイスを貰ったり記録を取って貰ったりするためだ。


 その役割に従って、ドジール商会長の挨拶が済んだ時点で、ユレースが身をかがめて俺に耳打ちする。

 今日のスケジュールをモザミアが組んだ時点で、相手の商会の取引や経営状況、商会長の人柄、主力商品、商売のやり方、なんかの情報をユレースがオルブンから事前に聞き出してて、それを俺に伝えてくれるってわけだ。


 オルブンやカラブンから直接聞ければ早いけど、商売の話をするのに、御用商人とはいえ別の商会が立ち会うのは、さすがにどうかと思うしな。


「ドジール商会は、先にぼったくってきた中立派の貴族家が懇意にしていた、そこそこ大きな商会ですね。御用商人ではなく、インブラント商会が買い付けていた商会とは違うらしいです。だけどその一件で、その貴族家が追徴課税で力を落としたため、取引が先細りになる可能性が高いので、伯爵様に媚びを売って保険をかけたい狙いがあるのではないか、と言うのがオルブンの見解でした」


 自分達は俺の敵じゃないですよアピールも兼ねてるってわけか。


「主力商品は、鍛冶、革細工その他、職人が使う様々な設備や道具全般、およびそれらの材料となる鉄などの鉱物や木材、それ以外にも馬車や家具、設備の施工なども請っているそうです。うち(メイワード伯爵領)の就業支援で支給した道具類なんかは、この商会から仕入れていたそうですよ」

「なるほど、そういう繋がりもあって、俺の所に来たわけか」


 一通り話を聞いて、それから改めてドジール商会長へ向き直る。


「それで、ドジール商会のお目当ては、ガンドラルド王国から入ってくる安価な鉱物か?」

「さすが救国の英雄と呼ばれる伯爵閣下、そのご慧眼に感服致しました」


 揉み手しながらの、あからさまなおべんちゃらだな。

 よいしょしとけば俺の気分が良くなるだろうなんて見え見えの舐め腐った態度に、正直蹴り出してしまいたいけど、そこは一応我慢する。


 態度は苛つくけど、犯罪まがいや汚い商売をしてるわけじゃなさそうだし、領地の発展に利益があるなら、領主としてこの手の連中も使いこなしてみせないとな。


「ですがもちろん、ガンドラルド王国からの鉱物ばかりではありません。伯爵閣下のご領地には銅山があるとか。今後大きく貨幣の鋳造が必要でしょうから、特産として採掘量を増やされるのではと思われます。その銅のお取引や、ツルハシ、輸送馬車、鍛冶道具、果ては精錬の設備などなど、ご入り用の品が多々あるのではと思いまして、この私どもが伯爵閣下のお力になれるのではと思い、馳せ参じた次第です」


 相変わらずへこへこと揉み手ばかりしてるけど、言ってることは至極もっともだ。


 大勢の奴隷達が引き渡される以上、その人口に見合った貨幣の鋳造が必要になる。

 特に平民にとっては、金貨や銀貨より、銅貨が使われる枚数が圧倒的に多い。


 価値は当然金貨の方が高いから金鉱を押さえた方が産業としては儲かるけど、俺がその手の鉱物を全部押さえたら他の貴族達からの反発もすごいだろう、って言うのと、トンネルなどの目論見もあって、銅山を押さえることにしたんだ。


 ちなみに銀は、反乱を起こして取り潰しになった旧デルイット伯爵領で、今は王室派の貴族の領地になったところに銀山があるから、主にそっち方面で頑張って貰いたい。


「さすが鉱物も扱ってる商会だけあって、目端が利くな」

「おおっ、救国の英雄からお褒め戴けるとは、恐悦至極に存じます」


 よいしょがいちいち大げさでウザい。


 まあ、よいしょが上手くいってると思わせるため、表面上はニコニコしとくけどさ。


 そこからしばらく、いちいちよいしょが入ってウザいけど、ドジール商会のセールスポイントや、うちの領地でどんな商売をしたいのかなんて話を聞く。

 そうしてその手の話が一通り終わったところで、さらに売り込みをかけてきた。


「伯爵閣下が契約精霊に乗って空を飛んで移動されるとのお話は有名で、さもありなんと思いますが、それはそれとして、伯爵位に相応しい仕立ての馬車で列を成すと言うのも、伯爵閣下のお力を示すのに分かりやすい方法かと。そういった目に見えて分かりやすい権威や『力』を重視する貴族は多く、また民衆の支持を得やすい利点もありますからな」


 なるほど、鉱物などを輸送する馬車のみならず、貴族が乗るための豪華な馬車も取り扱ってるってわけか。

 一台売れるだけで、かなりの儲けになるだろうからな。


「言わんとするところは理解するけど、差し迫って必要じゃないし、そういう見栄や権威に回すより領地の発展に金を回した方が実利が大きいからな……まあ、覚えておこう」

「はっ、ご入り用の際は、是非我がドジール商会へご用命戴きますよう」


 へこへこ揉み手とよいしょがウザいけど、商売としては悪くない話ばかりだ。

 それに、ガンドラルド王国から入ってくる鉱物が目当てなら、負って欲しい役目(・・)があるから丁度いい。


 何しろ、キリによると、俺から商業権を貰えたら、国に申請して俺と同様にトロルと商売する商業権も取得するつもりみたいだし。


「いいだろう、商業権を与えよう。支店を建てるための用地確保の補助金も出してやる。支店を建てる前に仮店舗が欲しいなら、別途申請してくれ」

「ははっ、ありがとうございます。さすが救国の英雄と呼ばれる伯爵閣下、ご決断が早い」


 見え見えのよいしょは脇に置いといて。


 この商業権は、飽くまでも一商会として、俺の領地で商売をしていいよってだけの、ただの許可証だ。

 そこにインブラント商会みたいな御用商人にするとか、トンネルは無料で通行していいとかの特権はないし、関税優遇なんかの諸々の措置も含まれてない。


 この商業権があれば、この領地での商業ギルドに加盟して、商売をする権利を保護されるけど、それ以上の特権が欲しければ、商売上の実績を積んだ上で、商業ギルドとは別に領主たるこの俺に毎年一定以上の上納金を納め続ける必要がある。


 この上納金ってのが、一部では賄賂や暴力団のみかじめ料同然で利用されててイメージが悪いんだけど、実際にはそれだけじゃない。

 他の領地の貴族や商会とトラブルが起きて自力で解決出来ない場合、領主に泣きつけば保護を受けたり解決して貰えたりする、要は保険金やトラブル解決のための依頼料や謝礼みたいな意味合いもあるわけだ。


 また、実態や実績がないペーパーカンパニーを横行させないため、そして行商人を装ったスパイにやりたい放題させないため、上納金を納めて商業権や特権を貰ってるかどうかは、取り調べの時にも役立つらしい。


 インブラント商会長からそんな風に説明されて、上納金を受け取って貰えた方が商人としては安心出来るから是非受け取って欲しい、って言われたんだよね。


 これはマイゼル王国での法律や商売のルールだから、色々思う所はあったけど、俺の領地でもそのシステムを採用したわけだ。

 加えて、この領地は飽くまでもマイゼル王国の領地の一つなんだって、他種族や他国出身の奴隷達に知らしめる意味もあるから、あんまりマイゼル王国でのスタンダードと差異を大きくしたくなかったってのもある。

 もしそこを変えるなら、俺が王様になってからだ。


「では、詳しくはこちらの書類をお読み下さい」


 モザミアが植物紙で数枚の書類をドジール商会長に渡してくれた。


「失礼して、拝見させて戴きます」


 早速、ドジール商会長が簡単に目を通していく。


 俺の領地で商売するにあたっての、諸々必要なルールや手続きを説明したものだけど、ほとんどがマイゼル王国での標準的なルールに従ってるから、目を通すのにそれほど時間は掛からないだろうし、問題もないはずだ。


 ただし一部、俺の領地独自のルールが盛り込まれてる。


「俺は不正や犯罪が嫌いだ。あくどい真似をしたり、それを見逃して貰おうと賄賂を渡すような真似は許さない。弱者を相手に犯罪まがいの商売をして、虐げたり暴利を貪ることもな。当然、犯罪として立証されれば、商業権は取り上げるし牢にも放り込むけど、目に余るようなら、領地から追放する」

「なるほど、それは当然でしょうな」


 さも当然って顔で相槌を打つけど、この顔は軽く考えてるな。

 いざとなれば俺の領地から撤退すればいいくらいに思ってるんだろうけど、そんな逃げなんてさせるわけがないだろう。


「追放先をよく見ろ。追放先は国境線の向こう側、ガンドラルド王国だ」

「っ!?」


 慌てて、食い入るようにその部分を読み出して、真っ青になっていく。


「ガンドラルド王国は、俺達に奴隷を引き渡すんで、奴隷の数が足りなくなって困ってるだろうからな。大歓迎で、精々こき使ってくれるはずだ」


 ニヤリと悪い笑みを浮かべてやった。

 後ろのユレースやモザミアも圧をかけてくれてる。


「なに、そうビビることはない。法を守り、俺の怒りに触れないよう真っ当な商売をしてれば、何も恐れる必要はないだろう?」

「そ……それはそう、ですな」


 へこへこ揉み手をしてる顔が引きつってるな。

 早まったかって顔をしてるけど、曲がりなりにも貴族で領主の俺が許可するって口に出したんだ、逃げられるわけがない。


 まあ、こうして脅しはしたけど、世の中綺麗事だけで回ってるわけじゃないってのも分かってるつもりだ。

 他の商会と多少汚い抗争をしたり、腹黒い真似をしたり、場合によっては必要になるだろう。


 目こぼし出来る程度なら、俺も口うるさく言ったりはしない。


 もっとも、今それを言えば、せっかくの脅しの効果も半減するから、言わないけど。


「伯爵様、そろそろお時間です」

「そうか」


 モザミアがスケジュール管理してくれてるから、その言葉に従って、話はここまでとばかりに立ち上がる。

 ドジール商会長も慌てて立ち上がった。


「いい商売を頼むぞ。俺の領地が発展するために力を貸してくれ」

「は、はい、もちろん。よろしくお願いいたします」


 手を差し出し、握手を交わす。

 ちょっと、強めに力を込めて、だけど。


 汗を掻きながら、ドジール商会長も俺の手を握る。


 握った以上、もう逃げられない。

 精々、頑張って働いて貰うとしよう。


「肩を落として帰りましたね。伯爵様を舐めてかかるから、自業自得だけど」


 ドジール商会長がモザミアの案内で退室した後、ユレースが苦笑する。


「まあな。でも脅して従わせたいわけじゃないから、気持ちよく領地発展のために働いて貰えるように、実務面ではしっかり丁寧に対応するよう役人達には改めて通達しといてくれ。ああ、あと女性陣には、女だからって舐めた真似をしたらガツンとやり返していいってこともな」

「ははっ、分かりました」


 ニヤリと笑ってやると、ユレースも楽しげに笑う。


 そんな感じにちょっと雑談しながら少し休憩を挟んだ後、モザミアが次の商人を取り次いでくれた。


 単に行商をしたいだけの行商人達は、無難なら許可を。

 スパイや、俺にとって何かしら不利益な工作をしようと目論んでる奴、また、汚い商売をしてるような奴は、当然不許可で追い返す。


 中には、この領地を訪れる商人や行商人、そして貴族達を相手に、手広く宿屋を経営したいって商会長もいて、そういうのは大歓迎で迎え入れた。



 そんなこんなでこれまでの通常業務に加えて、面会や商談が日に日に増えていく日々を過ごす中、遂に外務省から連絡が入った。

 そう、ガンドラルド王国から奴隷達が引き渡される日が遂に決まったんだ。



 いつも読んで戴き、また評価、感想を戴きありがとうございます。


 今回で第十三章終了です。

 次回から第十四章を投稿していきます。


 エルフのお姫様達とのイベントが順調に進んでいます。

 ただ、マリーリーフの優秀さが怖いです……。

 元からそのつもりではあったのですが、実際に書いてみると、これはやばい、と。

 気を付けて話を構成しないと、秘伝が漏れてしまいそうです。

 次は、遂に奴隷達が引き渡され、トロルとの交易となります。


 そして第十四章の更新前に、また数日お休みを戴きます。

 本当は、半月かもう少し長めのお休みを取りたいところでしたが、PCが壊れて復旧に時間が掛かり予定より長くお休みしたので、前倒しで第十四章を開始します。

 なので、代わりに第十五章の前で、長めにお休みを取るかも知れません。

 じっくりお話を練る時間が欲しいところなので。

 更新再開は来週の月曜日9月6日予定になります。

 ご了承下さい。


 励みになりますので、よろしければブックマーク、評価、感想など、よろしくお願いいたします。


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