表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十三章 緒戦を勝利で飾ったら千客万来で忙しい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

401/741

401 招かれざる客達



 俺の貴族としての主な仕事は、領地では領地経営と開発、王都では農政改革と精霊魔術師育成だけど、何もそればっかりしてるわけじゃない。

 領地でも王都でも、最近は来客の対応や商談が増えてきた。


 俺がトロルと交易しようとしてる。

 その情報が、一部の貴族達に広まってるせいだ。


 今日も王城内の館で、貴族の来客があって商談を持ちかけられてる。


「貴殿が性急な領地開発を行っているのは聞いている。しかもガンドラルド王国から奴隷達が引き渡され養わねばならんとなれば、かなり資金繰りが苦しかろう? そこでだ、貴殿の窮状を救うために、この儂が資金を貸してやっても良い」


 何かと言えば、金貸しってわけだ。


「大金貨一万枚、これだけあれば数年は領地の運営に困ることはないはずだ。なに、すぐに返済する必要はない。数年掛けて領内を整備し、その後数年で投資分を取り戻し、十年後に返済してくれれば良い。当然ながら利子が一割付くが、貴殿の腕前であれば、その程度の金利はものともせんだろう」


 しかも、こっちが元農民だからって舐めて、どうせ理解出来ないだろうって高をくくって恩着せがましく吹っかけてきやがる。

 一割なんて言ってるけど、わざと回りくどく分かりにくく、こっちが誤解しやすい説明をして、要約すると単利じゃなくて複利で貸し付けようとしやがった。


 つまり利子が一割付いて、返済額が大金貨一万一千枚になるんじゃない。

 元金に利子を上乗せして、翌年の利子を計算するから、一年目に返済するなら一割増しだけど、二年目に返済するなら二割一分、三年目なら三割三分一厘、十年目で約二.六倍程の、およそ大金貨二万六千枚になる。


 こんな金額を一括返済しようと思ったら、平均的な伯爵レベルでも領地やら利権やら、切り売りしないと対処不可能だ。

 そして、分割で返済するにしても、その後も年間一割ずつ複利で利子が膨れ上がっていって、いずれ増える利子だけで返済がいっぱいになり、借金は全く減らないことになるだろう。


「貴殿であれば、完済できるものと信じているが、万が一と言うこともある。資金を借り受けるに当たって、担保を入れるのは常識だ。しかし貴殿は叙爵されて間がない。担保に入れられる価値ある資産はまだ持っていないだろう。そこでだ、担保の代わりに、近々始まると言うトロルどもとの交易で手に入れた品を、儂の領地に優先して一割引きで卸すと言うのはどうだ? 同じ一割で丁度いいだろう」


 なるほど、それが狙いで、頼んでもいない金貸しに来たってわけか。


 しかも、何が『同じ一割で丁度いいだろう』だよ。

 真面目くさった顔で、いかにもお互いに利益があるみたいな顔してるけど、俺を罠に嵌めてやろうって狙いがダダ漏れだ。

 馬鹿みたいな利子で金をむしり取る上に、それこそ商人達が群がってきていくらでも高値で売り捌ける物を延々安売りさせて、一方的に搾取しようってんだからな。


 さらに(たち)が悪いことに、引き渡される奴隷達のための買い付けの時に、一方的にぼったくられたのとはわけが違う。

 曲がりなりにも金の貸し付けだから、俺が了承してサインした書類を作成することになる。


 つまり、後からからくりに気付いて俺が文句を言ったところで、正式な書類があるから無効には出来ない、訴えても勝てないようになってるわけだ。


「お話になりませんね。結構です。元々、資金に窮してるわけじゃない。うちの領地で栽培してる作物は、早い物だとすでに収穫を終えて出荷が始まってるから、金はいくらでも儲けられる。トロルとの交易が始まれば、さらにだ。わざわざこのタイミングで、しかも複利で二倍じゃ済まない馬鹿みたいな額の借金を抱え込まなくても、十分領内は回せるんですよ」

「っ……!」


「俺が複利計算出来たのが意外ですか?」

「チッ……」


 はいはい、残念だったな。


「トロルとの交易は別に俺が独占してるわけじゃないのに、なんでわざわざ俺を通そうとするんですか? 誰だって自由にやっていいんですよ?」


 苦々しそうな顔をして、黙り込んだか。

 そりゃあ、トロルが怖くて自分じゃ出来ません、なんて弱味を見せるわけにはいかないもんな?


 ここでとっとと帰れって追い出すのは簡単だけど、また馬鹿な真似を仕掛けてこないように、こっちからも吹っかけさせて貰おうか。


「そんなにトロルとの交易で手に入れた品が欲しいなら、一割引きで優先的に売ってもいいですよ」

「なに!? 本当か!?」


「その代わり、俺の領地で栽培および生産した品をそっちの領地で売るときは、関税をゼロにして貰いたい。どうせ一領地からの関税収入なんて、圧倒的に安値で仕入れたトロル経由の品を高値で売り捌いた儲けに比べれば、大した額じゃないでしょう?」

「その程度なら……いやいや、冗談ではない!」

「おっと気付かれたか。そいつは残念だ」


 わざと丁寧な態度を崩して、飄々とした口ぶりで肩を竦めてみせると、悪い顔を作ってニヤリと笑ってみせる。

 代わりに最も重要な食料生産を壊滅させて、領地を裏から牛耳ってやるチャンスだったのに。

 って言わんばかりの顔でさ。


「それじゃ交渉決裂ってことで。お客様がお帰りになられるそうだ。お見送りを」


 部屋の隅で控えてたメリザに言って、ドアの方へ目配せする。


 分が悪いって判断したんだろう、その貴族は苦虫を噛み潰したような顔をしながら、思いの外素直に帰って行った。


「ふぅ……やれやれだな」

「お疲れ様ですご主人様。毎回大変ですね、あんな貴族達ばかり群がってきて」


 一応形だけ丁重に見送って執務室に戻ってくると、メリザに言われたのか、パティーナがやってきて新しくお茶を淹れてくれた。

 それを飲んで一服する。


「まあな。でも、あれはまだしも大人しくて手間が掛からなかった方だよ」

「そうでしたね」


 厳重に情報統制して隠してたわけじゃないから、ちょっと調べたら俺がトロルと交易しようとしてるって情報は手に入れられるようになってる。


 当然、嗅ぎつけたこの手の連中が利権に群がってくるけど、それは承知の上。

 だって完璧に隠し通したら、後から卑怯だ独占するな利権を寄越せって、(かえ)って面倒なことになってたはずだし。

 だからある程度情報は漏洩させて、嗅ぎつけた奴が出れば、嗅ぎつけられなかった奴らは鼻で笑って一蹴できる。


 そういう目論見があったわけだ。


 もっとも、嗅ぎつけた連中の相手が想像以上に面倒臭くて仕方ないけど。


 今みたいに、俺を舐めてかかって騙そうとしても無理って分かれば、大人しく引き下がるような奴ばかりじゃない。


 酷いのは、当然の顔で一方的に、トロルと取引する権利を全て寄越せって高圧的に迫ってきたり、自分の軍門に降れ、トロルと取引した品を安値で全部寄越せって脅迫してきたり、権力を振りかざして脅せば欲しい物はなんでも手に入るって勘違いしてる奴が本当に多くて、文字通りお話にもならなかったからな。

 そういう連中には逆に、迫力あるレドや、残忍な脅しが得意なデーモが、たっぷりと脅し返してやったけど。


「とはいえ、この場は引き下がっても、それで大人しくしてくれるとは思えないのがなぁ」

「そうですね。金の亡者みたいな貴族は多いですから、そう簡単には諦めないと思います。今度は裏からあの手この手で妨害や強奪をしてくるかも知れません」

「だよなぁ。トロルとの交易が始まったら、領内に出入りする奴のチェックや見回りなんかの治安維持を、より一層厳重にしないと駄目だろうな」


 盗賊を装った部下達にインブラント商会の荷馬車を襲撃させて強奪する、なんて強引な手段に出ないとも限らない。

 インブラント商会長やオルブン達にも、十分に注意するよう言っとかないとな。


「まったく、面倒な話だよな。なんかさ、そいつらみんな思い違いしてるけど、トロルとの交易は、俺が独占してるわけでも、俺の特権でもなんでもないんだよ。交易したければ、どうぞご自由にって話なのに」

「わたしはトロルを直接見たことはないですけど、怖いんでしょう? 毛ほども恐れずに対等に商売をしようなんて、ご主人様以外には無理だと思います」


 まあ、だから事実上、俺が独占してるみたいな感じになっちゃってるんだよな。

 姫様やフィーナ姫にも、貴族達が俺に独占させるなとかなんとか色々言ってるみたいだけど、トロルとの商業権をくれてやるから後は自分でなんとかしろって言うと、すごすご引き下がってるらしいからな。


 それで俺を攻撃してくるなんて、お門違いにも程がある。


「かといって、中には常識的に交渉してくる貴族もいるから、軒並み門前払いってわけにもいかないんだよなぁ」

「お互いの領地の関税の調整や、引き渡される奴隷達の日用品やそれ以外の特産品の割安での販売でしたよね?」

「ああ。お互いに利益がある話だから、そういうのはちゃんと調整して、ウィンウィンの関係にしときたい。って言っても、そういう話を持ちかけてくる連中の全員が友好的とも限らないのが、また頭が痛い話だけど」


 俺を元農民の成り上がり者って見下して嫌ってても、実利は実利として考えて交渉してくるから、余計に厄介なんだ。


 もちろん中には、俺がぼったくりの謀略を撥ね除けるどころか意趣返しまでしたことで、元農民の成り上がり者と言えども(あなど)りがたし、って認めてくれて、友好的な態度で懇意になろうと近づいてくる貴族もいる。

 例えば、クラウレッツ公爵本人じゃないけど、嫡男で次期公爵のアムズ殿とか。

 マイゼラー戦役の第二次王都防衛戦後に擦り寄ってきた、元中立派の貴族達とか。


 それ以外にも、相談ごととは別に、マグワイザー辺境伯のリグエルからも交渉を申し込まれてるし。

 さらには外務大臣のブラバートル侯爵経由で、外交に力を入れてる外務貴族なんかが、他国との外交で利用できそうな品を欲しがって打診してきたりもした。


 そういうところは俺にもメリットが大きいし、出来れば友好的な関係を築きたいと思ってるよ。


「ちなみに、パティーナの実家のリエッド男爵はどうだ? なんか言ってきてるか?」

「それは……その、はい」


 困ったように眉を下げて、申し訳なさそうに苦笑する。


「マイゼル王国ではあまり栽培されていない、南方の作物や調味料などを安く取引できるように、ご主人様に頼んで欲しい……と」

「ああ、もしかして農政改革と合わせて、スカージ王国とかの小国家群への販路拡大が狙いか」

「多分、そういうことだと思います……済みません」

「別に気にすることないからな。他にも、うちで働いてる侍女やメイド、護衛達を通して、そういう話を持ちかけられてるから、パティーナのところだけじゃない」

「そうでしたか」


 ちょっとだけ、ほっとしたように表情を緩める。

 パティーナって真面目だから、自分の家だけ無理を言うのが申し訳なかったんだろうな。


「具体的な日時はまだ決めてないけど、エレーナのところのダークムン男爵や、サランダのところのディエール子爵からも、二人を通してアポが入ってるし」

「ご主人様の派閥ですね」

「まあ……俺は自分の派閥を作るとも、作ったとも、一度も宣言したことないんだけどね」

「ふふっ、ご主人様の人徳ですね」

「それも人徳って言っていいのかなぁ?」


 他にも、アイジェーンのところのバラドン子爵からも直接交渉したいって話が来てるし、主に王都ではそれら貴族達と交渉する仕事がいっぱい入ってて、すごく大変だよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ