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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十一章 意趣返しは舐められないための貴族の嗜みだと思う

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341 アルタールークの密命と初公務 4

 がっかりするだけで実がない挨拶攻勢が終わって、やっとまたメイワード伯爵とアイゼスオート殿下の所に戻ってこられた。


 今度こそちゃんと話を聞こうって気合いを入れて、どう話しかけるか頭の中で何度も繰り返し考える。


 それなのに……。


「メイワード伯爵のお噂は色々と伺っています。是非そのお力の一端を見せて戴けませんか?」


 マリーリーフ様が突然そんなことを言い出した。

 まさか歓迎の晩餐会で、そんな喧嘩を売るような真似をするなんて。


 ボクがあわあわしてる間にどんどん話が進んで、勝負の場が整えられてしまった。


「ふぅ……」


 また、話を聞きそびれちゃったよ……。

 でも、メイワード伯爵の魔法にはボクも興味あるから、それはそれでちょっと楽しみかも。


 先手はマリーリーフ様。

 噂には聞いたことはあったけど、実際に見るのは初めての、光のダンス。

 とっても綺麗ですごかった。


 三百を超える光の球のダンスは、途中から演奏も付いて、華やかで楽しくて。

 あれだけの数の光の球を同時に一糸乱れず動かすイメージと、精霊力の制御はすごく大変なはずなのに。

 笑顔で、得意げに、涼しい顔で見事にこなしてみせる。


 さすが精霊魔法の研究にいそしんでただけはあるんだなって、マリーリーフ様を見直しちゃったよ。


 だって、ほら、普段は目つきが悪くて怖いだけだから……。

 これにはさすがのメイワード伯爵も敵わないんじゃないかな……。


 そう思ったのに。


「わぁ……!」


 思わず感嘆の溜息が漏れちゃうくらい、メイワード伯爵の魔法は圧倒的で、幻想的で、美しかった。

 まるで最初から晩餐会が星空の下で行われていたかのように、何千もの星が瞬いて、もう言葉もなくて……。


 うっとり見とれて、はっと気付くと、魔法が終わって元の会場に戻ってた。


 誰もが感動の余韻に酔いしれてて、言葉もなく静まり返ってた会場に、二つの拍手が響くと、その拍手は会場中に広がっていく。

 ボクもすぐに必死に手を叩いて、メイワード伯爵に拍手を送ったよ。

 だって、それだけの魔法だったんだから。


 マリーリーフ様、すごく悔しそう。

 だけど、同時に完敗したって顔もしてる。


「……素直に、驚きました。言葉では言い表せないほどに美しく、幻想的でした」


 そこは研究者の矜持なのかも。

 認める物はちゃんと認められるんだね。


 それからマリーリーフ様とメイワード伯爵は、お互いの健闘を称え合って、少し仲が良くなったみたいだ。


 ボクもこの感動を伝えたい。

 胸が熱く震えるほどの、この気持ちを。


 なのに、どんな言葉で伝えたらいいのか、上手く言葉が出てこない。

 どんな言葉を選んでも、ちゃんと伝えられる気がしなくて、迷って悩んでる間にも、話はどんどん進んでいってしまう。

 下手に口を挟むと、マリーリーフ様の話を遮って睨まれてしまいそうで、タイミングも掴めないし。


 でも、このままだと話題が変わってしまって、言いそびれてしまいそうで……。

 焦って、益々言葉が見つからない。


 どうしよう!?


 そう思ってたら……。


「殿下、こっちで一緒に話しませんか?」

 メイワード伯爵が気付いてくれて、そんな風に声をかけてくれた。


 優しい!

 メイワード伯爵すごく優しい!


 ここで素直に話の輪に入って、この感動を伝えるだけなのに、つい……。


「えっ!? そ、その……ボ、ボクと話すのは……い、嫌じゃないですか?」


 そんな風に言っちゃってた……。


 ああ、なんてボクは馬鹿なんだろう!


 それなのに。


「どうしてそんな風に? 全然嫌じゃないですよ」

「ええ、どうぞこちらへ」

「うむ、これはアルタールーク殿下を歓迎する場です。アルタールーク殿下が遠慮される理由などないでしょう」


 メイワード伯爵だけじゃない、フィーナシャイア殿下も、アイゼスオート殿下も、微笑みながらボクを招いてくれる。

 そこには、他の人達みたいな、義理や仕方なくって感じが一切ない。


 まるでボクをボクのまま見て、受け入れようとしてくれてるみたいで……。


 マリーリーフ様に睨まれてるから、勢い込んで入るわけにもいかなくて、慎重になっちゃったけど、なんとか話の輪に加わる。


「あ、あの……メイワード伯爵の魔法……すごく、すごく素晴らしかったです。と、とても幻想的で、見とれて、声も出なくて……これほどの精霊魔術師には、出会ったことがなくて、その……」


 もっと上手に喋って伝えたいのに、上手く喋れなくて、だから焦ってしまって、余計にどもってしまって。

 でも、メイワード伯爵は、ボクが喋ってる間、ニコニコしてちゃんと話を聞いてくれて、ボクが伝えたいことを伝え終わるまで、ちゃんと待っててくれた。


「ご、ごめんなさい、上手く言えなくて……」

「何も謝ることなんかないですよ。お褒めの言葉を(たまわ)り光栄です、殿下」


 ああ……優しい!

 なんて優しい人なんだろう!


「ところで、殿下も精霊魔法を使われるんですか?」

「え? あ、あの……はい」


 その後、気を遣って話題を振ってくれたけど……。


「契約精霊も?」

「は、はい……」


 よりにもよって、ボクの契約精霊の話だなんて……。


 きっとメイワード伯爵は知らないんだ。

 ボクの契約精霊が、みんなに気持ち悪い、頭がおかしいって嫌われてることを。


 正直言えば、見せたくない……。

 だってそれでメイワード伯爵に、そしてフィーナシャイア殿下とアイゼスオート殿下に嫌われたら、もう誰もちゃんとボクの話を聞いてくれる人がいなくなっちゃう……!


 でも……。


 もしかしたら、こんなにも優しいメイワード伯爵なら……。

 この人達なら受け入れてくれるかも……。


「あ、済みません、無理にとは――」

「い、いえ、その……嫌がらないで……下さいね?」


 迷うボクに気を遣ってくれたメイワード伯爵に、勇気を振り絞る。


「……そ、それじゃあ、紹介します……おいで、ターク」


 呼び出した土の精霊(ターク)に、メイワード伯爵が驚き目を見張った。


 ボクの土の精霊(ターク)はテントウムシの姿をしてる。

 だから、虫なんて、って気持ち悪がって、そんな姿にしたボクを気色悪い、頭がおかしいって、みんな罵るんだ。


 ……やっぱりメイワード伯爵も?

 ああ、やっぱり見せるんじゃなかった……!


「野良の精霊より遥かに小さいサイズになった契約精霊は初めて見ました……」


 え? そこ?

 驚くところ、そこ?


 虫の姿なのは? 気持ち悪くないの?

 マリーリーフ様なんて、文字通り、虫ケラとばかりに嫌悪を隠してないのに。


 この場じゃなかったら、きっとすごく罵られてる。


 それなのに……。


「これが殿下の契約精霊なんですね。色々驚きました。もしかして土いじりとか、お好きですか?」

「っ!? ど、どうしてそれを?」

「おっ、当たりですか。土属性って、まんま土いじりに一番向いてますし、テントウムシって益虫ですよね。花、麦、野菜の大敵の、アブラムシとかカイガラムシとか害虫を食べてくれますし、種類によっては、うどんこ病菌を食べてくれますから」


 あっ!

 そうだ、メイワード伯爵は元農民出身!

 だからきっと虫とか平気で、テントウムシが益虫だってことを知ってたんだ!


「は、はい! ボ、ボク、バラを育てるのが趣味なんです!」

「なるほど。だとしたら、やっぱりテントウムシはありですね」


 思わず勢い込んだボクに、しみじみ納得したって顔で頷くメイワード伯爵。


 嫌悪どころか、納得して、受け入れてくれた……!


 しかもそれだけじゃない。

 やっぱり微妙な顔になってしまってたフィーナシャイア殿下とアイゼスオート殿下、そして嫌悪を隠さないマリーリーフ様に、ボクがテントウムシの姿を選んだ理由を説明してくれる。


 ずっとボクが言いたくて、理解して欲しくてたまらなかったことを、ボクの代わりに言ってくれてる……。


「ふむ、初めて知った。(わずら)わしいものくらいにしか思っていなかったが、一口に虫と言っても、人の役に立つ虫もいるのだな」

「バラを育てるには苦労すると聞いたことがありますが、そのような話はわたしも初めて知りました」

「……」


 分かってくれた……。

 フィーナシャイア殿下とアイゼスオート殿下は分かってくれた。


 あのマリーリーフ様でさえ、ちゃんとした理由があったと知って……やっぱり虫の姿は生理的に無理なのかも知れないけど……一応の理解を示してくれたみたいだ。


 すごい……。

 メイワード伯爵ってすごい……!

 ずっと辛くて悩んでたことを、こんなに簡単に解決してしまうなんて!


 さすが救国の英雄!

 他国の王女のボクの気持ちまで救ってくれるなんて!


「……あ、あの……!」

 だから、これ以上ないくらい、勇気を振り絞る。


「ボ、ボクのことも、名前で……!」

 そうお願いした。


 そうしたら……。


「はい、名前を呼ぶ許しを戴きありがとうございます、アルタールーク殿下」

 ちゃんとボクの名前を呼んでくれた。


 でも、ボクが自分の名前が男の子の名前で嫌だってことを知ったら……。


「じゃあ、アルター姫、ではどうですか?」

「――!?」


 まさか、ボクを姫って呼んでくれるなんて!


 そんな人、生まれて初めてだ!


 しかもそれをマリーリーフ様が咎めたら、反論までしてくれて……。


「殿下、顔を上げて下さい」

 そう、お姫様のように手を取ってくれて……。


「ちょっと普通とは違う愛称になりますけど、『アルル姫』って言うのはどうでしょう?」

 可愛くて女の子らしい愛称まで付けてくれた。


 この時受けた衝撃と、胸を突き抜けたボクの気持ちは、多分、どれだけ言葉を尽くしても言い表すことなんて絶対に出来ない。


「……か、可愛い……アルル……姫…………すごく可愛いです! ボ、ボクのことは、これからアルル姫って、呼んで下さい……!」

「はい、アルル姫」


 だからつい勢い込んでしまったボクに、そう微笑みながら呼んでくれたメイワード伯爵。


 ああ、なんてことだろう……!


 視界が滲む。

 なんだか泣いてしまいそう。

 この世に、こんなにも素敵な人がいたなんて!


 ボク……もっとメイワード伯爵のことを知りたい。

 ボクのことも、たくさん知って欲しい。

 もっともっとメイワード伯爵と話をして、仲良くなりたい!



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