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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十一章 意趣返しは舐められないための貴族の嗜みだと思う

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327 余興と言う名の精霊魔法合戦 2

 敢えて挑発に乗ることにして、おもむろに右手を突き上げ、ビシッと最高に格好いいポーズを取る。


「顕現せよ、我が契約せし光の精霊、エン!」

『参上いたしました、主様』


 眩しい光が収束していき、やがて人型を取ると、天使の輪と白い翼を持つ天使が姿を現す。


 エンは慈愛の微笑みを浮かべて、バサッと翼を大きく広げた。

 光の羽が舞い散り、宙に溶けて消えていく。


「――っ!?」


 第三王女が息を呑んで、きつく、きつく、親の敵かってくらいきつい目で、エンを睨み付け、そして俺を睨み付けた。


 会場の端の方に寄ってる第八王子が目を丸くして唖然として、使節団が狼狽してどよめく。


 悪いけど、内包するエネルギー量は第三王女の光の精霊(リリー)を遥かに凌ぐ。

 優に二十倍は越えるだろう。


『フォレート王国の皆様、お初にお目にかかります。主様の契約精霊、エンと申します。以後、お見知りおきを』


 略式カーテシーまで披露するエンに、驚きとざわめきが一層大きくなった。


 俺が指示しなくても、流暢に喋り、自己紹介までする契約精霊。

 こんなに人間臭い(・・・・)精霊なんて、初めて見たんだろう。


 エンも、なかなか気が利いた演出をしてくれるよ。


「報告書通り……まるで本当に人のよう……」


 思わずと言った感じに茫然と呟いて、第三王女が失敗したとばかりに口をつぐみ、俺の所まで歯ぎしりの音が聞こえてきそうなくらい、悔しそうに俺を睨み付けてきた。


 それより、報告書って、聞き捨てならないな。

 果たして何が書かれてるのやら、機会があったら問い質したいところだ。


 でも今は余興を優先しよう。


『主様、どのような魔法をお披露目しますか?』

「そうだな……普段は実用的な魔法ばっかり考えて、こういう余興に向いた魔法って、ほとんど考えたことなかったからな」


 エフメラがまだ赤ちゃんの時に、あやすためにベッドの上でグルグル回る奴を光らせたりしたことはあるけど、本当にそんな程度だ。


『では、こういう魔法はいかがでしょう』


 エンから提案してくれる。

 でも、残念ながらいまいちだ。


「その魔法だと、ただ派手なだけだな。度肝を抜くにはいいけど、見応えとか、楽しいとか、長く心に残る感動はないかな」


 第三王女のナイトパレードを見せられた以上、ただ派手なだけじゃ駄目だ。

 あれに匹敵するだけの、この世界の人に感動を与えられる魔法じゃないと。

 それが出来て初めて、光属性の魔法の可能性を探求してる第三王女に負けを認めさせられると思う。


『そうなのですか? 難しいですわね』


 なんて、俺達が相談してると、それだけでもうフォレート王国側の全員のどよめきが止まらない。


 パーナから聞いた話だと、契約精霊ってある程度育っても、子犬程度の知能や感情しかないらしいからな。

 それがエルフでも、多分賢い犬程度だろう。


 そのことに驚いてくれるのはいいけど、本番はまだこれからだ。

 ナイトパレードがヒントになって、一つ閃いたことがある。


「エン、まず――」

 手順をコソコソと伝える。


『それほどの数の制御は初めてですが、仕組みは単純ですから、十分に出来ると思いますわ』

「よし、じゃあこれでいこう」


 改めて第三王女に向き直る。


「お待たせしました殿下。それでは、これから俺の魔法をお見せしますね」


 不敵に笑ってみせると、第三王女の喉がゴクリと動いた。


「殿下、そして会場の皆さん、これから準備として、シャンデリアや燭台の明かりの光量を落とします。消すわけじゃありません、光の精霊魔法で光をコントロールして光量を落とすだけです。ですので危険はありませんから、慌てず騒がず、燭台などに触れないように注意して下さい」


 まず前置きだ。


「それと、俺が光量を落としたら、演奏をお願いします」


 次に曲のイメージをリクエストする。

 これで準備万端だ。


「それではいきます。皆さん、暗くなったら天井を見上げて下さい」


 すっと右手を挙げると、エンがシャンデリアや燭台の光量を落としてさらに暗く、足下もほどんど見えないくらい広間を暗くする。

 シャンデリアや燭台の炎の大きさが変わってないのは、よく見れば分かるだろう。


 そして、十分に暗くなり、静かで幻想的な曲が流れ出したところで、西側の壁付近に、一つ小さく明るい光点を灯す。

 それから、次は東側の壁付近に、ぽつぽつと光点を灯していく。


 そうして光点の数を増やしながら、それら光点を、西側の壁付近のそれは床の方へ、東側の壁付近のそれは天井の方へ、ゆっくりと動かす。


 光点の数が、十……百……千……二千……と、どんどん増えていき、俺が何をしようとしてるのかようやく分かったんだろう、第三王女を始め、全員から驚きと感嘆の溜息が漏れ聞こえてきた。


 光点の色は、白、黄、赤、青の四色だけだけど、強さも大きさもまちまちで、ランダムに瞬く。


 光点が三千を越えた頃には、光の川の流れのような長い帯が生まれていて、それがゆっくりと東から西へ回転していった。


「すごい……」

「まるで夜空そのものだ……」

「目で見るよりも遥かに星の数が多い……なんと美しい……」


 そう、俺が見せた魔法は、そのものズバリ、プラネタリウムだ。


 天の川のような美しい星の帯、幾つもの星座。

 時折、それらを横切るように、流れ星が流れる。


 前世での話だけど、肉眼で見える星の明るさは一等星から六等星までで、地平線から上の分だと、その数は四千数百程度。ただ、地平線付近の星は見えにくいから、実際に目にするのはざっくり三千程度、って何かで読んだ。

 それを今、一万個の星を輝かせて、ネットで公開されてる夜空の写真よりも鮮明に美しく、この世界の夜空を作り上げる。


 その星空をゆっくりと東から西へと回転させ、床を地平線に見立てて地平線の下に隠れた星は消し、新たに東から星を登らせる。


 いつしか、誰の声も聞こえなくなり、静かに曲だけが唯一聞こえる音になっていた。

 やがて曲の終わりが近づいてきたところで、東の空を明るくしていき、その明るさに星が隠れて見えなくなるように消していく。

 そして、一際大きく眩しい光点、太陽を登らせて、夜を明けさせた。


 空全体が朝のように明るく染まり、星が全て消えて、太陽も朝のような空も、やがて薄く消していき、光量を落としていたシャンデリアと燭台の明かりを元に戻した頃、曲の演奏が終わった。


 広間は静まり返り、物音一つ聞こえない。

 どれほどの間静まり返っていたか。


「さすがエメル様です」

「とても素晴らしかった」

 フィーナ姫とアイゼ様が、感嘆の溜息と一緒に賞賛の言葉と拍手をくれる。


 それでようやく我に返ったように、貴族達が、そして使節団が拍手をくれた。

 第八王子は目をキラキラと輝かせながら、一際大きく激しく拍手してくれてる。


 そして、肝心の第三王女はって言うと……。


「……素直に、驚きました。言葉では言い表せないほどに美しく、幻想的でした」


 すごく、すっごく悔しそうに、俺をきつく睨み付けながらも、惜しみなく拍手をしてくれた。


「先ほどの契約精霊との会話からすると、普段からこのような魔法を使っているわけではないのですね?」

「ええ、殿下の魔法(ナイトパレード)を見て思い付いたんで」


 正直言うと、ちょっと悔しい。


「悔しいですが……私のコントロールを上回る緻密さと繊細さでした」

「いえ、俺こそ悔しいですね。殿下の発想がなければ、今の魔法はありませんでした」


 俺は前世の知識から引っ張り出してきた発想だからな。

 ゼロからナイトパレードを思い付いた第三王女には、発想で完敗だ。


 圧倒的な実力差は見せつけてやれたけど、これじゃあ勝負は引き分けだな。


「そうですか。メイワード伯爵程の使い手にそう言って戴けると、面映ゆいですね。素晴らしい魔法を見せて戴いたお礼に、マリーリーフと、私の名を呼ぶことを許します」

「ありがとうございます、マリーリーフ殿下」


 騎士らしく(うやうや)しく一礼すると、一際拍手が大きくなった。

 使節団の連中は、あからさまに不満顔だったけど。


 第三王女……マリーリーフ殿下がその名において約束してくれた通り、異を唱えることはなかったんで、そのくらいはよしとしておこう。


「一度、メイワード伯爵とは魔法について話をしたいものです」

「俺も、マリーリーフ殿下の研究した魔法に興味が出てきました。是非、話を聞かせて貰いたいです」


 お互いに笑みを交わす。


 ただし、和やかに、友情が芽生えて、って感じじゃないけどね。

 マリーリーフ殿下は相変わらず俺を睨み付けながらニヤリとした笑みだし。

 だから俺も、返すのは不敵な笑みだ。


 こういうの、なんとなくお互いに認め合った好敵手(ライバル)って感じだな。


 前世のオタク仲間とも違う、現世で精霊魔法を教えてる弟子とも違う。

 なんか、こういう感覚初めてかも。


 うん、こういうのも悪くないな。



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