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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十一章 意趣返しは舐められないための貴族の嗜みだと思う

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319 無法者達の侵入

 意趣返しのための計画を練ったところで、すぐさま準備に動き始める。


「ええっ、僕も行くんですか!? それって僕が矢面に立つってことですよね!?」

「一緒に意趣返しする作戦を考えた仲だろう? ユレースにも実行部隊に参加して、相手に煮え湯を飲ませてやる機会を与えてやろうって言うんだ、ありがたく思ってくれ」

「それ、絶対に面倒事を押しつけてるだけですよね!?」


 まあ、そんな風に腰が引けてたけど、インブラント商会の隊商を守るためにも、是非同行してやって欲しい。


 それから俺は策の仕込みのために急遽王都へ飛んで、グレッグに農政改革の依頼について、幾つか依頼に応じる返答を出すように指示と、農地生産改良室のメンバーを派遣するための計画を練る。


 その後、インブラント商会を訪ねて、商会長にも直接今回の話をして、諸々のお願いをした。


 商会長も事態を重く見てたらしくて、快く協力を約束してくれて助かったよ。


 さらに、レミーの父親で監察室の室長であるロードアルム侯爵と面会して、事情の説明と、策に協力して貰えるよう依頼をした。


 最初は渋られたんだけど、策の要になるし、今後俺が育てた高品質の作物を格安で提供することを対価に、なんとか引き受けて貰えた。

 その程度の対価で無理なお願いを聞いてくれるって言うなら安いもんだろう。


 それに対価に関係なく、策に乗るのはロードアルム侯爵にもメリットがある話だ。

 だから、後から思えば、最初渋ってみせたのはポーズだったのかも。


 でも、駆け引きをして落としどころを探るのも貴族らしいやり方だけど、敢えて相手の要求を丸呑みしてやって、だからこっちが求める以上に働いてくれよってプレッシャーをかけるのもまた、貴族らしいやり方じゃないかな?


 ともかく仕込みは済ませた。

 策が発動するまで準備その他、時間が必要だから、後はそれを待てばいい。


 すぐさま領地にとんぼ返りして、策の仕込みが順調なことを、ユレースとウルファーだけじゃなく、ナサイグとモザミア、プラーラにも報告して、情報を共有しておいた。

 エレーナには、王都へ向かう途中で説明済みだ。


 もし他にも何か気付いたことがあったら、みんな報告してくれるだろう。


 取りあえずこれで一旦一息付けるな……なんて思ってたら、その日の夜中、新たな事件が起きた。



『ますたー、ますたー』

「……んぁ?」


 真っ暗な寝室で、特殊な契約精霊の呼ぶ声に、ぼんやりと目を覚ます。


『ますたー、侵入者を撃退した』

「はあ!? 侵入者!?」


 思いがけない報告に、一発で目が覚める。


 バッチリ目が覚めてよく見れば、東の畑を巡回させてたうちの一体だ。


 確かにそういう命令はしといたから、それはいい。

 だけどまさかこんなにも早く侵入者が現れるなんて思ってなかったよ。

 てっきり、もっと人の出入りが増えて、余所者が目立たなくなってからだと思ってたのに。


「……んぅ、エメ兄ちゃん?」

「ああ悪いエフメラ、ちょっと放してくれ、東の畑に侵入者が現れたらしい」

「えっ、侵入者!?」


 結局毎晩俺のベッドに潜り込んで、俺に抱き付いて寝るのが日常になっちゃったエフメラ。

 さすがにこの状況で俺の寝室に忍び込んでくる豪胆で命知らずな紐付きの使用人はいないんで、実はすごく助かってるんだよな。


 そんなエフメラの腕を解いてベッドから降りると、ガウンを羽織って部屋を出る。


「待ってエメ兄ちゃん、エフも行く!」


 同じくガウンを羽織ったエフメラを連れて、夜間の見張りをしてる護衛と兵達に状況を報告して、詰め所に走らせすぐさま兵達を十数人程揃える。


「領主様、侵入者が出たらしいとのことですが」

「ああ、巡回をさせてた精霊から報告があった。東の畑だ、ついてきてくれ」


 先導してくれる特殊な契約精霊の後を追い、護衛と兵達を引き連れて町を出ると、真っ直ぐ東の畑に向かう。


 そうして畑の外縁部までやってくると、そこには血を流して地面に転がってる人間が全部で六人いた。

 俺達が来ても起き上がって逃げる素振りはなくて、微かに苦しげな息遣いが聞こえてくるから、どうやら全員気を失ってるらしい。


「なんと! 本当に侵入者が!」

「こいつらの手当てをして確保を頼む」

「はっ!」


 兵達がすぐさま侵入者の六人を止血して、武器を取り上げ縄で縛り上げる。


 傷口は、ファイアアロー、ロックアロー、アイススピアのものだ。

 気を失ってるのは、それらの攻撃で意識を失ったと思わせて、精神攻撃で意識を飛ばさせたからだ。

 抵抗した跡がないから、姿を消して巡回させてた特殊な契約精霊が、上手く不意打ちで仕留めてくれたからだろう。


 これなら逃がさず身柄を確保出来るし、万一報告や発見が遅れて失血死したとしても逃がすよりマシだし、何より自業自得だ。


「エフメラ、こいつらの血を分解しとこう」

「うん」


 血液が地中に染み込むと、血液に含まれる塩分が作物の生育に悪い影響を与えてしまう。

 この程度の人数分なら大した影響はないだろうけど、同じようなことを目論む連中が今後何度もやってくる可能性がある以上、用心に越したことはない。


「ん? エメ兄ちゃんこれ……!」


 エフメラが指さした、そいつらの側に落ちてる道具を見て、一瞬、カッと頭に血が上る。

 火口箱と油が入った革袋だ。


「こいつら、畑を燃やそうとしたのか!」

『侵入者、畑を燃やそうとした。だから撃退した』

「やっぱりそうなんだな。よく畑を守ってくれた、助かった」

『それがますたーの命令だから』

「ああ、そうだな。ありがとう、巡回に戻ってくれ」

『はい、ますたー』


 報告に来てくれた特殊な契約精霊を巡回に戻してから、兵達の隊長に指示を出す。


「精霊からの追加の報告はないし、もういないと思うが、他にも仲間がいないか念のため付近の捜索と巡回を頼む」

「はっ!」


「エフも見回りする? 他にもいたらエフが一発でやっつけてあげるよ!」

「ありがとうな、エフメラ。でも大丈夫だ、兵達と精霊達に任せといていいよ。生きて掴まえて情報を引き出さないと駄目だからな」


 エフメラだと、問答無用でサクッと殺しちゃいそうだし。

 縄で縛られ荷車に乗せられ、町へ護送される六人の侵入者達を改めてよく見る。


「どうやら余所から入り込んだ者達のようですな」

「ああ、そうみたいだな」


 不衛生なボサボサの髪や髭を伸ばして、服装はボロくて汚れてる上に、みすぼらしい革製の胸当てを付けてて、腰には剣を佩いてる。

 この風貌からして、余所者なのは間違いない。


 うちの領民にこんな装備をした奴はいないし、何よりもっと清潔な服装や容姿を心がけさせてるからな。


「恐らく、何者かに雇われたゴロツキどもといったところでしょう」

「まず間違いなくな。どうせ報酬に目が眩んだ馬鹿どもだろうし、雇い主に繋がる情報が得られるとも思えないけど……少しでも手がかりが欲しい。情報を吐かせてくれ」

「はっ、必ずや! 領主様の育てている美味い作物を焼こうなんて不埒者どもは、徹底的に痛めつけて全て吐かせてやります!」


 兵達みんな怖い顔して頷いて、そこが怒るポイントなのか。

 いや、俺もそうなんだけどさ。


「ああ、手加減無用だ。俺達は屋敷に戻るから、後は頼んだ」

「はっ、お任せを!」


 夜中の出来事だったし、兵達に周囲の捜索や巡回もさせてるから、多分今夜はもう何も起きないだろう。


 エフメラと一緒に戻って、騒ぎに気付いて起き出してきた奴には軽く事情を説明してからもう一度寝て貰った。

 俺とエフメラも、もう一度寝直す。


 そうして翌朝、改めて文官、武官も含めて主立った者達を集めて、夜中に起きたことを報告した。


「さて、みんなの意見が聞きたい。どう思う?」

「タイミングから、ぼったくられた件と無関係とは思えませんね」


 ユレースの言葉に、全員が同意する。


「ただ、そのゴロツキを雇った者が(くだん)の領地の領主のいずれかと繋がっているとは限りませんが、同じ動機でエメル様の妨害をしてきているのは確実でしょう」


 ナサイグは、背後関係が同じとは断定しないか。

 でも、俺を邪魔に思ってる貴族の差し金だって判断は同じみたいだな。


「今後、似たような事件は増えるでしょうね」

「他の町や村でも同様の事が起こっていないか調べさせ、巡回を強化させましょう」

「領主様が関所を設けられたのでしたな。不審な者達が通っていないか、念のため確認に兵を走らせましょう」

「恐らく、関所を迂回して適当な場所から入り込んだんだろう。国境線も領境も兵達の数が足りず、十分に目が届いていないからな」


 みんなも対策を話し合ってくれるけど、とにかく今は兵達の数が足りてないのがネックで、効果的な対策が打てない感じだ。

 特殊な契約精霊達も、さすがに全ての国境線と領境を巡回させて見張りをさせるには、絶対数が足りてない。


 この件については人手が増えるまで、当分後手に回らざるを得ないか。


「とにかく、全員気を付けて警戒に当たり、打てる手は可能な限り打ってくれ」

「「「「「はい!」」」」」



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