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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第十章 領地の開発に自重なんていらないと思う

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291 トンネルを掘ろう! 2

「せ、せっかく作ったトンネルを崩落させることを視野に入れているのですか!? 軽く国家予算を越えそうな膨大な工費と、気が遠くなりそうな年月を掛けて開通させたトンネルを、そんな簡単に!?」


「国土を蹂躙されることに比べれば、埋めた入り口を掘り返して再度開通させる方が遥かにマシのはずだ」

「それは、そうですが……」

「まあ、さすがにもったいないから、出来ればそうならないように、外交努力って奴をするのは前提だけど」


 特に外務省に期待だな。


「い……いえ、しかし! 仮に閣下の(おっしゃ)る通り、進軍速度に大差を生じないとしても、容易に軍を進められる進軍経路を新たに作り出すなど、他家が黙ってはいません!」

「だから、容易な進軍経路と見せかけて、崩落させて一網打尽にするための罠も兼ねてるって建前を押し通せばいい」

「そんな建前を信じる者など、恐らくほどんどいませんよ!?」

「どうしてだ?」


「トンネルの通行料と言う利権と関税です! 山脈の南北での通行と物資の輸送が格段に容易になります! 少なくとも山脈南側に領地を持つ貴族家は、従来の山脈越えで王都へ向かうルートより、この領のトンネルを使う方が遥かに利便性が高いのです! 他領との交易にもこのトンネルが使われるようになります! そうすれば、どれほどの通行料と関税による収益が上がることか!」

「だろう? だから、作らない手はないよな」


 当然、平時はそうやって稼ぐ。

 いざ戦時となれば、崩落して罠として利用する。


 無駄のないプランだよな、建前上は。


「そこまで分かっていて……そうです、ガンドラルド王国の軍事的な脅威を考慮しなければ、絶対に作らない手はありません。しかも、閣下が直接工事に参加して、精霊魔法で工期短縮と、工費削減をなさるおつもりなのでしょう?」

「その通り。ついでに、その他領への街道も整備すれば、より一層効果的だ」


「っ……だとしたら、なおさら他家が黙っていません。工事には絶対に邪魔が入ります。計画を頓挫させようと、正攻法から卑劣な搦め手、果ては戦争まで視野に入れて、必ずや妨害してきます」

「ああ、大丈夫だ。絶対に妨害なんて出来ないから。そう、絶対にだ」


 俺が言葉通り、絶対の自信を持って言い切ると、ウルファーがなんとも言えない顔をする。

 さっきから、せっかくの超イケメンが台無しだぞ?


「だから、ウルファーはその辺りは心配しなくていい」

「心配しなくてもいいと言われましてもね、閣下……」


「ウルファーに頼みたいのは、現在の工法で、今言ったサイズのトンネルを開通させるために必要な、現実的な人員と工期と工費、および、開通することによって得られる経済効果の試算と、投資を回収するのに適した通行料の設定だ。当然、俺がノータッチの場合のな」


 その話はおしまいとばかりに話を進めると、眉間に皺を寄せて渋々って顔で、小さく唸りながら概算を出してくれる。


「……帰ってから改めて細かく調べて試算してみないと分かりませんが、延べ人数は数千から一万人以上。それで工期はおよそ三十年から五十年以上。工費は今見込まれている税収から考えますと、恐らく百年経ってもまかなえないかと。国に借金をするとしても、返済の目処が立たないため、借り入れはかなり難しいでしょう。何より、他の貴族家が絶対に邪魔をして、銅貨一枚でも多く借り入れ額を削ってくるでしょう」

「ふむふむ、それで?」


 他家の妨害を全く意に介してない俺に、ウルファーは益々何か言いたそうな顔をするけど、取りあえず話を先に進めてくれる。


「経済効果は……普通の領地であるならまだしも、周辺も返還されたばかりの領地ですから三十年から五十年も先の状況は、正直予想も付きません」

「やっぱりそうか。さすがにウルファーでも難しいか」

「はい。ですから、見込みを出すにはその時までに他領がどれほど発展するか、まずは他領の政策を詳しく調べて…………」


 不意に、ウルファーが動きを止めて、真っ青になって頬を引きつらせる。


「まさか!? トロルと交易されるおつもりですか!?」

「おっ、そこに気付くなんてすごいな、さすがウルファー。そのうち知れ渡る話だけど、今はまだ横槍を入れられたくないから、当分は他言無用で頼むな」


 やっぱり侮れない頭の良さと柔軟さだ。

 雇って正解だったよ。


「閣下!? 茶化してる場合じゃありません!」

「茶化してなんかないさ。俺は本気だ」

「なお悪いです!」


「何が悪いんだ? ガンドラルド王国は鉱物資源が豊富らしいし、さらに南の国からの交易品が入手しやすくなる。ガンドラルド王国周辺の国からうちの国への交易路として現在使われてる、東西に遠回りする街道の重要性は確実に落ちる。特に舐めた真似をしてくれたフォレート王国の関税による収入を減らせるのは、ざまあみろだよな」

「……っ!?」

「ってわけで、このトンネルを使った街道交易は、当たればどでかいぞ?」


「それは……確かに…………いえ、失礼ながら、閣下は正気ですか!? トロル達がまともに交易をすると考えておられるのですか!?」

「ああ、させるさ」


 そう、トロルが『するかどうか』じゃない、俺が『させる』んだ。


「軍事力では俺が上だってところは見せた。少なくとも、俺が生きてる間は、下手な真似はしてこないだろう。さらにこれから育てる戦力で、俺以外でもトロルと対等以上にやり合えるってところも見せてやるんだ。その上で、対等に交易することで経済的に重要な相手国って認識させるのはもちろん、『人間はひ弱な下等生物で、トロルの奴隷としてしか生きる価値がない』ってトロルどもの価値観をぶっ壊して、人間に迂闊に手を出せば痛い目を見る、敵対しない関係を維持した方が得だ、って認識を改めさせてやるんだよ」

「なっ……!?」


 そうすれば、俺が死んだ後だって、一方的に条約を破棄して、再度マイゼル王国を人間牧場にしようと攻めてくる、なんて真似はそうそう簡単に出来なくなるはずだ。


「ああ、勘違いするなよ? 別にトロルどもと手を取り合って仲良く共存共栄しようってわけじゃない。まあ、そうなれたらベストなんだろうけど。さすがに、人族、妖魔って分けられてるだけあって、価値観の隔たりがあまりにも大きすぎるからな。でも、少なくとも侮っていい相手じゃないって意識くらい、支配階級だけじゃなくて、被支配階級の普通のトロルどもの共通認識にしておくくらいには持って行っときたいんだよ」


 まるで陸に上がった魚みたいに、しばらく口をはくはくさせてたウルファーが、やがて生唾を飲み込む。


「……閣下はそのようなことまで考えておられたのですか……?」

「ああ、トロルとの戦争中には、もうな」

「そ、そのように早くから……」


「勝った負けた、賠償を支払った支払わせた、そんだけで満足してどうする? いずれ同じ事の繰り返しだ。だから、この先の安全保障を考えると、そこまでやらないと国民は安心した生活が送れないだろう?」


 それだって永遠じゃない。

 いつかどこかで天秤のバランスは崩れて、また戦火を交えることになると思う。

 でもそれは、十年、二十年程度先の話じゃない。

 もっと何十年も先の、それこそ百年以上先のことで、それまで平和が続いてくれればいいなって思う。


「閣下は……本当に叙爵されて間もない元農民なんですか?」

「それ、よく言われるよ」


 おどけて肩を竦めてみせると、ウルファーがなんとも言えない顔をする。


「もしかして、このような無価値の山脈を含めてまで、旧国境から新国境までの領地を望んだのも……」

「ああ、その通りだ。伊達や酔狂でこんな山脈を領地に欲しがったりするもんか」


 ウルファーは口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返して、結局それ以上は何も言わなかった。


「まあ、そんなわけだから、経済効果は未知数だけど、ある程度の見込みはしてるから予想を立ててくれ。それと、それを踏まえて、通行料をどう設定するか、だな」


「そ、れは……必要な予算は、国庫を空にしても一括で出せる額ではありませんから、通行料を多少高めに設定しても、数十年は投資額を回収出来ないでしょう」

「あまり高すぎて通行量が減るのは良くないから、ほどほどで抑えといてくれ」


「でしたら、百年は回収出来ない事を覚悟しておいて下さい」

「そうか、分かった。後で改めて資料を作って提出してくれ」

「……分かりました」


 俺が予想してた以上にショックを受けたみたいで、ウルファーの奴、もうフラフラで今にも倒れそうだな。

 ともあれ、ここで見せたい物は見せたし、しておきたい話も終わった。


「よし、それじゃあ一旦戻るぞ」


 ウルファーを屋敷に送り届けた後、エレーナには仕事を言いつけてから、偽水晶を大量に抱えて、エフメラだけを連れてまた工事予定地へと戻ってくる。


「エメ兄ちゃん、ここにトンネル掘るの?」

「ああ、短期間で一気にやっちゃいたいから、エフメラ、頼りにしてるぞ」

「うん♪」



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