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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第八章 領地に陞爵にパーティーにと準備が忙しすぎる

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242 特殊な契約精霊達

 予定通り、更新再開します。

 今回から第九章の予定でしたが、もう一話、第八章の最後に付け加えます。

 第九章の序盤で回想的に入れていたエピソードでしたが、構成を見直し、独立させ加筆しました。

 章の最後から再開と言う中途半端な感じになってしまいましたが、引き続きお楽しみ下さい。

 第九章は次回更新分からとなります。


「……分からないなら、分かるまで実験してみるしかないな」


 火属性の特殊な契約精霊に少し多めの精霊力を渡してみる。


「火を灯してくれ」

『はい、ますたー』

 その特殊な契約精霊は淡々とした返事をして、火を灯した。


「頼めばちゃんと聞いてくれるな。まあ、契約状態にあるみたいだから、当然と言えば当然なんだろうけど……んん?」


 灯した火を消させたら、その特殊な契約精霊は火を灯すのに使わなかった余分な精霊力を空中に放出した(・・・・・・・)

 活性化状態だった俺の精霊力が、空中でエネルギーを失って、非活性化状態へと変わっていく。


『グルゥ?』

「ああ、今こいつ余剰分の精霊力を取り込んで成長しないで、野良の精霊と同様に(・・・・・・・・・)空中に放出した(・・・・・・・)

『この特殊な契約精霊達は、内包するエネルギーを増やして、精霊として成長しようと言う考えはないのでしょうか?』


 キリが訝しげになるのも分かる。


 精霊達はみんな、精霊力を取り込んで成長したい、強くなりたいって思ってるそうだ。

 ただし、契約状態にないと、精霊力を取り込んで成長出来ないらしい。

 異世界物だと『魔力には人それぞれ固有の波長がある』って設定が一般的だけど、ご多分に漏れずこの世界でも、『精霊力には人それぞれ固有の波長がある』みたいで、誰彼構わず精霊力を渡されたところで、魔法を使った後の余剰分は取り込めずに放出するしかないみたいだ。

 だから、契約してパスを繋いで波長を合わせることで、その契約者の精霊力に限り、取り込んで成長出来るようになるらしい。


 それなのに、契約者の精霊力を取り込まずに放出してしまうなんて、見たことも聞いたこともない異常事態だ。


「なあお前、せっかく契約精霊になって成長する機会が得られたのに、それをふいにするような真似をしていいのか?」

『?』


 なんだこの反応は……。

 この特殊な契約精霊には、成長しようって意思や欲求が、全く感じられないんだけど……。


 それから色々話しかけてみるけど、なんて言うか、反応を返してくれはするものの、どいつもこいつも画一的な反応ばかりで、確固たる自分とか個性とか、明確な自分の意思らしきものが全く感じられなかった。

 まるで登録された会話パターンが多い高性能の音声ガイドと会話してるみたいだ。


「会話することで学習して個性が出てくる、ってわけでもなさそうだな……魔法の方はどうなんだ?」


 契約精霊達の精霊力を渡して貰ったら、『さぶますたー』って呼ぶだけあってそれでもいいらしく、魔法を使えた。

 でもやっぱり、余剰分は放出してしまった。


 俺と契約精霊達の精霊力を一対一で交ぜて渡してみても魔法を使えた。

 でもやっぱり、余剰分は放出してしまった。


 試しに属性の違う俺や契約精霊達の精霊力を渡してみたら、魔法は使えなかった。

 まあこれは当然で、使えなかった精霊力はそのまま放出された。


『主様、やはりこの特殊な契約精霊達からは成長しようと言う意思を感じられませんわ。それどころか、言われたことや渡されたイメージに即するように判断して魔法を使うことは出来るようですが、自発的に考えて行動する様子もありません』

「どうやら、エンの言う通りみたいだな」


 多めに精霊力を渡して、明かりを灯させて、こちらの指示に合わせて色や強弱、収束する向きを変えたり特定の対象を追尾したりなんかはするけど、言われたとおりのことしかしてないのが分かる。

 契約精霊達のように、俺の意図を汲んで先回りするとか、より効果的になるように工夫するとか、効率を上げるとか、そういった思考や判断が全く見られない。


 しかもだ。


 明かりを灯させたまま、取りあえず放置して他の特殊な契約精霊で実験してる間、ただただ明かりを灯したままだった。


 俺に対して、『ますたー、いつまで灯してればいいですか?』とか『なんのために灯してるんですか?』とか『もっと他の魔法も使いたいです』とか、とにかくそういった自己主張や疑問や欲求すら見せない。

 ただひたすら言われた魔法を淡々と実行するだけで、まるでプログラム通りに動くロボットみたいだ。


『我が主の言う、「ぷろぐらむ」や「ろぼっと」が何かは知りませんが、ただ淡々と言われた仕事をこなすだけの存在、と言う意見には賛成です。異質で気味が悪いですね』

 デーモが眉根を寄せて、扱いに困るように、特殊な契約精霊をつついた。


 もし本当にこの特殊な契約精霊がプログラム通りに動くロボットに過ぎないのなら、精霊達にとっての『不気味の谷』って奴かも知れない。


 でも……俺にとっては不気味どころか全然逆だ!


「気味が悪いどころか、これはこれで滅茶苦茶有用じゃないか!?」


 だって文句一つ言わずに、淡々と言われた仕事をこなすAIみたいな存在なら、どんな魔法だって(・・・・・・・・)一切の遠慮なしに(・・・・・・・・)使わせられる(・・・・・・)


 例えばユニは、守ったり癒したりの魔法を使うのは好きだけど、傷つける攻撃魔法を使うのは好きじゃない。

 だから俺も、滅多なことじゃユニに攻撃魔法を使わせないようにしてる。


 例えばキリは、俺に近づいてくる連中の思惑や悪意を暴くために傍に置いて、頻繁にそういう魔法ばかりを使わせてたせいか、あまり俺から遠くに離れたがらなくなった。

 俺の暗殺未遂事件以降は、その傾向が特に顕著だ。


 そういう部分を特殊な契約精霊達が補ってくれれば、みんな気持ちよく魔法を使えるってもんだ。


 しかも、数は力だ。

 そして、数は脅威だ。


 満を持して、一度は言ってみたい、やってみたいシチュエーション上位にランクインの台詞を叫ぶ。


「行け! ファン○ル!」


 俺が手を振り下ろし、標的のトロルを模したマッドゴーレムを指さすと、八体の特殊な契約精霊達がイメージ通りの複雑な軌道を描きながら飛んでって、文字通り四方八方から攻撃魔法を放った。


「いいねいいね! 滅茶苦茶テンション上がるんだけど!」


 さらに色々試すと、俺のイメージだけじゃなくて契約精霊達のイメージでも、操作や誘導が可能だった。


「八体ともレドに追随して、レドの攻撃する対象に向かって同時攻撃だ!」


 レドが翼を大きく羽ばたかせて空へと舞い上がると、八体の特殊な契約精霊達もまた追随して空へと舞い上がって、レドがファイアアローを急降下爆撃すると、それに合わせて同じ標的に急降下爆撃する。

 精霊力さえ属性に合わせて渡せば、司令塔は誰でも構わないらしい。


「いいねいいね! 某有名シューティングゲームのオプションみたいだ! 数を増やして部隊編成して、契約精霊の指示で同じ標的や複数の標的を同時に攻撃出来たら、飽和攻撃による面制圧も簡単にやれるようになるんじゃないか!?」


 脳裏に、大量の特殊な契約精霊達が編隊飛行しながら、有名な○○サーカスって呼ばれたミサイルが派手に飛んでいくシーンを彷彿とさせる、攻撃魔法が飛んでいく光景が浮かぶ。


 しかも、俺が玉座に鎮座したまま、遠くの戦場へとそいつらを派遣して。


「くぅ! 夢が広がるな!」


 その場合、特殊な契約精霊達が魔法を使うのに必要な精霊力は、部隊を率いる同属性の契約精霊の精霊力を使えばいいんだけど、あんまり契約精霊達の存在を削るような真似はしたくないから、その時は俺の精霊力が入った偽水晶を持たせていけば、かなり長時間の作戦行動が可能になるよな。


「レド、特殊な契約精霊達が偽水晶の精霊力も使えるかどうか、試してみてくれ」

『グルゥ』

 レドが地面に転がしてた偽水晶を全部掴んで飛び立つ。


 いや、俺の精霊力が入った一つだけで良かったんだけど……こういうところが、レドって大雑把なんだよな。


『グルゥ!』

 レドが指示を飛ばすと、八体の特殊な契約精霊達は偽水晶に群がって、そこから精霊力を取り出して攻撃魔法を……んんっ!?


「ちょ、ストップ! 特殊な契約精霊達はそのまま! 偽水晶にくっついたままで! レド、戻って来てくれ!」

『グルゥ』


 レドが戻って来て、その手に掴んでる偽水晶と特殊な契約精霊達を見て――


「――!?」


 思わず息を呑んで絶句してしまう。

 だって、特殊な契約精霊達がくっついてるのは俺の精霊力が入った偽水晶だけじゃない、自然の精霊力が入った偽水晶にまでくっついてたんだから。


『わ、我が君、この特殊な契約精霊達は、我が君や自分の精霊力だけではなく、自然の精霊力すらも使って魔法を使えると言うことでしょうか!?』

「もしそれが本当なら……とんでもないことだぞ!? と、とにかく試してみよう! お前達、こっちの自然の精霊力が入った偽水晶から精霊力と取り出して魔法を使ってみてくれ!」


 試してみると……あっさり成功した。


「おい……おいおいおいおいおい! 活性化状態なら俺のだろうが自然のだろうが精霊力が使えるって、やばすぎだろう!」


 特殊な契約精霊達はそのサイズに見合った、簡単な魔法しか使えない。

 でも、その簡単な魔法でいいなら、自然の精霊力が入った偽水晶が手元にある限り、俺は自分の精霊力の枯渇を考えずに、際限なく魔法が使えるってことになる!


「やばい……やばすぎる……今ぱっと思い付くだけで、とんでもない利用方法が次々に浮かんでくるんだけど!?」


 文句一つ言わずに魔法を使ってくれる、しかもこっちの指示を理解して判断できるだけの知能もある、とくれば……不可能だって思ってたアレ(・・)も出来るかも知れない!


「……増やそう」

『主様?』

「特殊な契約精霊を、余力がある限り山ほど増やそう!」



 ――こうして俺は思い付いたあれやこれやを実現するため、旧領地の調査の合間に、余力の精霊力で特殊な契約精霊達を増やし始めた。



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