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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第八章 領地に陞爵にパーティーにと準備が忙しすぎる

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241 新しい……精霊?

「な、なあ、お前達って、普通に野良の精霊だよな?」


 部屋の中でふよふよと漂う二十四体の野良の精霊に声をかける。

 その二十四体全てが、肯定するように小さく震えた。


「お前達、今、その偽水晶の中から生まれてきたんだけど、分かるか?」


 ふるふると、否定するように小さく震えた。

 どうやら気付いたら……正しくは、ほんの今自我を獲得して周囲を認識したら、ここに漂ってたらしい。


『やはり、この者達も覚えていないようですね』

 キリが納得したように頷く。


 そんな俺達の見てる前で、ふよふよと漂いながら、ほとんどが窓から、一部は廊下の方のドアや隣の部屋の方の壁や天井や床から、すっと通り過ぎて部屋を出て行った。

 その光景を眺めて、最後の一体が見えなくなったところで、大きく溜息が漏れる。


「まさか、こんな形で野良の精霊が生まれるなんてな……」


 あの森に野良の精霊が多かったのは、やっぱり偽水晶のせいだろう。

 改めて詳しく調べる必要があるけど、目の前で見せられたんだから、多分間違いないはずだ。


 あの洞窟の中もちゃんと探して回れば、多分空っぽの偽水晶も見つかると思う。

 精霊力の濃度も高かったし、吸収して、溜め込んで、野良の精霊を生んで、空っぽになって、また吸収して……を繰り返してるのかもな。


「ともかく、みんな助かったよ。ありがとうな」

『何事もなく済み安心しました』

『シャァ』

「ああ、そうだな」



 それから俺は、精霊力の回復を待って、日を改めてから色々と実験してみた。


 念のため、精霊魔術師部隊の新人相手にガツンとやった王都南の方で、まだ精霊力が入ってる偽水晶のうち一本に追加の精霊力を注ぎ込んで、今度は防壁を展開せずに野良の精霊が生まれる瞬間を観察したり。


 洞窟まで行って、空っぽの偽水晶を探して回り、何本か発見したり。

 ついでに、多分そうやって一度空っぽになった後だと思うけど、他より極端に中の精霊力が少ないのも見付けたり。


 途中まで俺の精霊力を注いだ偽水晶に、何回かに分けて精霊力を注いで、おおよそ満タン近くまで入れるのに、俺のフルの三倍ほどの量が必要になることを確認したり。

 小さい偽水晶だと、見た目に比例して少量しか入らなかったり。


 偽水晶に入れた精霊力は、いつまでも活性化状態が保たれるのを確認したり。

 そして、俺の精霊力でおおよそ満タン近くまで入れても、カチカチに固まった粘土みたいに動かせなくなったりせず、契約精霊達には問題なく精霊力を動かせて魔法を使えることを確認したり。


 時間は掛かってるけど、順調に色々な事実が判明してきてる。


「外部バッテリーって言うか、擬似MP回復ポーションって言うか、とにかく、そういう方向で利用できるのは、ほぼ確実だな」


 ただまあ、そのためには、一度中に入ってる精霊力を、野良の精霊として出してやらないと駄目なんだけど。


 問題なのは、小さな偽水晶だ。

 真空の刃で切り落とした小さい方は、いつまで経っても野良の精霊が生まれてくる気配がない。


 試しに、最初に二十四体の野良の精霊が生まれた偽水晶の半分程度の大きさの偽水晶を取ってきて、精霊力を注いで野良の精霊を生まれさせてみたんだけど、生まれたのは一属性につき一体の合計八体だけだった。


 同時に、野良の精霊を形作れなかった余りなのか、精霊力も一緒に大量に放出されてたから、多分野良の精霊一体を形作るのに必要な精霊力の量があるんだろう。

 それに足りない精霊力しか内包できない偽水晶は、ずっとそのままになるのかも知れない。


 これも、今後観察したり実験したりして確かめていかないと駄目だけど、もしそうだとしたら、せっかく携帯性に優れてる小さな偽水晶は使えないってことになってしまう。


「色々分かってきたけど、まだ偽水晶から野良の精霊が生まれるのと、トトス村や王城で野良の精霊が増えたのと、違いが分からないんだよな」


 トトス村と王城の場合、そこで生まれたんじゃなくて、余所からやってきた可能性もあるし。

 トトス村と王城の共通点は、俺が実験で頻繁に魔法を使ってたり、みんなに魔法が使えるように練習を見てやったりしてたことだ。


 そうやって放出された精霊力はすぐ非活性化状態に変わってしまうからな。

 対して、偽水晶の中の精霊力は活性化状態だから、単純に比較できないけど。


 ともあれ、ここまで色々やってみたら、もっと踏み込んで試してみたくなるよな。



 諸々準備をして精霊力を全快させた日、次の実験に移行する。

 念のため、また王都南の平原に出て、剥き出しの土になった上に俺の精霊力を入れて満タンにした偽水晶を置いた。


「俺が半分放出するから、みんなは偽水晶の中から残り半分を取り出して一つにまとめてくれ。じゃあいくぞ」


 契約精霊達みんなが頷いてくれたから、早速実験開始だ。


 まず俺が自分の精霊力を球形にまとめて、属性ごとに放出する。

 みんなはそれを受け止めると、自分達に取り込んだりせず、偽水晶の中から自分に対応する属性の精霊力を取り出して、それぞれの塊に移してまとめてくれた。

 その精霊力は、まるで風船の中で煙が渦巻いているような、そんな感じに動いてる。


「うーん……量としては十分だと思うんだけど、野良の精霊になってくれないな……」

『我が君、すでに全て非活性化状態になってしまいました。自然の精霊力が入った偽水晶のように、固くまとまりません』


 キリの言う通りだ。

 まあ一発で上手く行くとは思ってなかったから、次は手法を変えるだけだ。


「じゃあ次はみんな、偽水晶から一体分の精霊力を取り出して、取り込まずに、同じように塊としてまとめてくれ。その時、ギュッと圧縮しながら渦巻かせる感じで」

『承知しました、主様』


 みんな一斉に取り出して、さっきと同様に手元で塊にする。

 圧縮した分サイズは小さく、しかも強く渦巻かせて。


「うーん……密度を上げても駄目か……」


 渦巻いてるけど、ただ動いてるだけで、あの弾け飛びそうな感じは全然しない。


『非活性化状態になってしまいましたわ、主様』


 エンの言う通り、これも失敗みたいだ。


 精霊力が満タン近くまで入ってる偽水晶から野良の精霊が生まれたのは、自然にある精霊力を吸収したからで、人間が出した精霊力じゃ駄目なのかな?

 それとも、そもそも人為的に野良の精霊を生み出そうってのが無茶なのかな……。


「よし、じゃあ次。今回は最後の実験だ。最初と同じように俺が半分出すから、みんなは半分を偽水晶から取り出してまとめてくれ。その後は、非活性化状態になっていくのに合わせて、偽水晶の中から活性化状態の精霊力を取り出して、少しずつ注ぎ込んでいくことで塊の活性化状態を維持してくれ。ああ、あと、さっきよりもっと圧縮しながらで」

『お任せを、我が主』

「よし、じゃあいくぞ」


 最初と同じように俺が気絶しない程度残して、残った半分を放出する。

 それを受け止めて、みんなが偽水晶から残り半分を取り出し、塊としてまとめてこれまで以上に圧縮し、さらに追加で偽水晶から精霊力を取り出して注ぎ込み続ける。


「どうだ?」

『あら、これは……中心に芯のような手応えが……』

「本当か!? どんどん注ぎ込んでくれ!」


 感覚に集中して内部を捉えてみれば、デーモの言う通り小さな手応えがあった。


『でも小さくて、あまり大きくなっていきません……このままでは偽水晶の中にある我が主の精霊力が先に尽きてしまいそうです』

「くっ……偽水晶が満タンの時にやるべきだったか!」

『我が主、恐らくそれでも足りないかと』


 この方法だと、根本的に膨大な精霊力が必要になるってことなのか?

 でも追加で注ぎ込める精霊力なんて……。


 あ、あった!


「みんな、普段気配を解放したとき自然に流れ出てる精霊力があるだろう? あれを誘導して上手く注ぎ込めないか?」

『我が主がお望みでしたらやってみます』


 最初にデーモが、続いて他のみんなも、普段自分達から漏れ出してる気配、つまり精霊力を注ぎ込んでいく。


『これは……我が主、芯のような手応えが少しずつ大きくなってきています』

『キェェ』

『ヒヒン』

「そうか、他のみんなもか! その調子で注いでいってくれ!」


『ただこれだけではかなり時間が掛かりそうです、主様。これでは非活性化が先にきそうですわ』

『少し自分達の存在を削って一気に注ぎ込んでみますか、我が君?』

「そんなことして平気なのか?」


『これまで我が君に膨大な精霊力を与えられていますから、少々なら平気です。我が君に頼まれて魔法を使えば、すぐに取り戻せます』

「そうか……みんなの存在を削らせるのは申し訳ないけど、今だけはみんなの言葉に甘えさせてくれ。無理しない範囲で頼む!」

『お任せ下さい、我が君』


 みんな、いい返事をくれて、自分達を構成する精霊力を削って、追加で一気に注ぎ込んでいく。

 確かにみんなが言う通り、みんなの存在が揺らいだり消滅したりするのを危惧する量じゃなさそうだ。

 この程度なら、調査で王都と旧領地を何往復かすれば、十分取り戻せそうだ。


 そして……。


「おおっ、一気に大きくなってきてる……渦を巻いてきてるぞ!」


 俺達が渦を巻かせたレベルじゃない、野良の精霊が誕生した時みたいに激しい勢いで渦巻いて、手応えも大きく、段々と弾け飛びそうな感じになってきてる。


「みんなまだいけるか!?」

『グルゥ!』

『シャァ!』

「分かった、頼む!」


 どんどん注ぎ込まれていく精霊力に、さらに激しく渦巻いていき……遂に、やっぱりポンとポップコーンが弾けるみたいな感じだけど、精霊力が勢いよく弾け飛ぶ。


「おおっ…………おおぉ?」


 ふわふわと精霊達が浮いていた。

 一属性につき一体ずつ、合計八体の精霊が。


『ブモォ?』

「だよな? こんな精霊見た事ないぞ……本当に野良の精霊か?」


 これまで見てきた、そして偽水晶から生まれた野良の精霊は、ピンポン球サイズの光の玉だ。

 それも、境界線が曖昧でハッキリしない、ふわっと光ってる感じの。


 なのに今目の前でふわふわ浮いてる精霊は、ピンポン球より少し大きく、その境界線がきっちりハッキリした、ゴムボールや電球みたいな見た目で光ってる。


「ん……? なんだこの感覚は…………えっ、ちょ……まさか契約された状態か!?」


『ますたー』『ますたー』『ますたー』『ますたー』『ますたー』『ますたー』『ますたー』『ますたー』


 俺がその繋がりを認識した途端、その精霊達は俺を『ますたー』って呼びながら集まってきた。


「そんないきなり『ますたー』って……やっぱりこれ、契約された状態だよな!?」


 しかも、だ……。


「この精霊達、お前達とも契約みたいに繋がってないか!?」

『わ、分かりません、この精霊達は一体!?』

『ブル、ブルゥ?』

 みんなの方を振り向くと、みんなもなんか狼狽えてるし!


『でも確かに繋がっている感じはしますわ』

『ワタシ達とも、野良の精霊とも、存在の在り方がまるで違う感じがします』


 その新しく生まれた契約された状態の精霊達は、今度はみんなの方へと漂っていく。


『さぶますたー』『さぶますたー』『さぶますたー』『さぶますたー』『さぶますたー』『さぶますたー』『さぶますたー』『さぶますたー』

『じ、自分がサブマスター!? 我が君、これは一体どういうことでしょう!?』

「いや、俺にもさっぱり分からないって!」


 本当に、この精霊達はなんなんだ!?



 いつも読んで戴き、また評価、感想を戴きありがとうございます。


 今回で第八章終了です。

 次回から第九章を投稿していきます。


 祝賀パーティーにおける新しい情報が想定より少なかったかな、と反省です。

 思い付くまま書いたら倍はいきそうな感じだったので、削ったら削りすぎたかも知れません。

 次は、領地経営のための人材確保その他準備、そしていよいよ領地へ行って、領主としてのお仕事開始です。


 それと、申し訳ありませんが、予告通り第九章開始前に数日更新をお休みします。

 一話ごとの分量を削れば、毎日更新に執筆が追い付くかも知れませんが……どうするか悩み中です。

 更新再開は来週の月曜日2月1日予定になります。

 再開後は第九章終了まで、毎日更新する予定です。

 ご了承下さい。


 励みになりますので、よろしければブックマーク、評価、感想など、よろしくお願いいたします。


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