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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第八章 領地に陞爵にパーティーにと準備が忙しすぎる

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211 エメル糾弾会議

 予定通り、更新再開します。

 序盤はなんとかまとまりました。

 中盤、終盤はこれからなんとかしていかないとですが。

 頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。


 にっこり微笑むフィーナ姫。


「エメル様、本日お呼び立てした件、お心当たりありますよね?」


 王族の居住スペースの館、そのリビングのソファーで俺が一人、対面に姫様とフィーナ姫が二人並んで座ってる。

 真正面から真っ直ぐ俺を見つめてくるフィーナ姫は、とてもにこやかだけど、全然目が笑ってない。

 って言うか、怖い……!


 姫様はまるで俺に見せつけるように、渋い顔を隠そうともしてないし。


 ゴクリと生唾を飲み込む。


 さらに二人の後ろには、クレアがにこりともしない至極真面目な顔で、レミーが俺を責めるようなむっつりした顔で立ってるし、俺の後ろには、自業自得だとばかりに呆れ顔のメリザが立ってる。

 空気がピンと張り詰めてて、完全に包囲網完成って感じだ。


「……エレーナの件なら俺は無実です。やましいことは何もありません」

 他に思い当たる節がないし、早々に自分から切り出す。

 下手な嘘や誤魔化しは、多分絶対に逆効果だ。


 ……って言うか、選択肢は本当にこれで良かったのか!?

 ギャルゲーなら分かりやすい選択肢が出てくれるのに!

 リアルでこんな修羅場を乗り切れるだけの経験ないっての!


「夜遅くエメル様の寝室を訪れ、あまつさえ招き入れられ、あろうことか初日に解雇した四人とは異なり長く寝室に留まり出てこなかった、と聞きましたが?」


 崩れないにっこり笑顔が怖すぎる!

 声のトーンも下がって、背筋に冷たい物が……。


「……その通りですけど、疑われるような真似は一切してません」

「エレーナ・ラグドラは、そなたに思いの丈を伝え迫ったそうだが?」


 じいっと疑いの眼差しが……まさか姫様からこんな目で見られる日が来るなんて!

 しかも、全部筒抜けなのか!?

 どこから漏れてるんだ!?


「た、確かにエレーナから気持ちを打ち明けられて迫られましたけど、俺には姫様とフィーナ姫がいるんだから駄目だって、ちゃんと拒みました」

 それを信じろと、ってクレアとレミーの眼差しが冷たい!


「それでは何もやましいことはないと?」

「そなたを信じて良いのだな?」

「もちろんです!」


 フィーナ姫と姫様が視線を交わして、小さく頷き合った。

 そして、嘘や動揺を見逃すまいって感じに、じっと俺を見つめてくる。


「ではエメル様、何故そのような事態になったのか、詳しくお話を聞かせていただけますね?」


 おおっ、弁明の機会が貰えた!

 いやもうこうなったら、可能な限り正直に、その時の状況を説明するに決まってる!


 とはいえ、エレーナの『男爵様が望むのなら、犯罪奴隷として、どんなプレイも性癖も受け止める覚悟がある』とか『男爵様の身体は駄目って言ってない』とかの、誤解を助長しそうな発言については、さすがに一切触れないけど。


 そう、嘘は吐かない。

 ただ、余計な波風が立ちそうなことは省略するだけで!



 裁判が終わって、エレーナは犯罪奴隷の身分に落とされた。


 だから俺への賠償金の支払いが終わるまで、貴族のご令嬢の身分には戻れない。

 そして、その賠償金を支払うために、俺の下で強制労働に従事しないといけない。


 給与のほとんどが賠償金の支払いに充てられるけど、それでも支払いが終わるのは、何十年も先になる予定だ。

 俺の監視下に置くって名目のおかげで、鉱山で死ぬまで働かされるとか、戦争で最前線に出されて肉壁に使われるとか、そういう目に遭わないだけマシだけど、エレーナには凡ゆる自由がなくなった。


 しかも、経歴と名誉に大きな汚点が付いて、傷物になったも同然だ。

 これじゃあたとえ貴族のご令嬢の身分に戻れたとしても、そして年齢的にも、結婚は絶望的に厳しい。


 それでもいいからエレーナを妻に欲しい、って望むくらい、エレーナまたは実家のダークムン男爵家と縁を結ぶことに価値を見出されるか、よほど大恋愛でもしない限り、生涯独身は決まったも同然だ。


 そんな状況に陥れば、普通なら大いに絶望するところだと思うんだけど……。

 エレーナ本人がそれを、全く気にしてないんだよね……。


 気にしてるのはむしろ、罪に対して罰が軽いって方だ。


「犯罪奴隷に落ちた以上、私は男爵様の所有物(・・・)同然。男爵様にこの身を捧げる(・・・・・・・)覚悟はとっくに固まってる」


 それを聞いた時は、普通に騎士としての覚悟だと思ってたんだ。

 だけど、寝室に入り込んできたことを考えると、明らかに別の意味だし。


 むしろそういう展開を期待してるのが丸分かりだし。


 さらに……。


「館の警備はする。でも可能な限り男爵様の護衛をシフトに入れて欲しい。男爵様は私の手で守りたい」


 ……なんてことまでリリアナ達に言ってたらしいんだ。


 しかも寝室に入り込んできた翌日、つまりは今日のことだけど、これまで護衛なんて付いてなかったんだから全然問題なかったのに、農地生産改良室のメンバーや精霊魔術師部隊に訓練を付ける時、わざわざ護衛として付いてきて側に控えてるんだ。


 変に勘ぐられても困るから、みんなには気にしないように言ったら……これは俺の予想に反して本当に全然気にされなかった。


「今エメル室長に何かあったら、農政改革は頓挫しますし、精霊魔術師部隊の戦力増強は頭打ちになりますし、護衛が付いて当然でしょう。むしろ、これまで付いてなかったことの方が不思議です」


 なんてグレッグに言われたくらいで。

 ちなみに、精霊魔術師部隊の大隊長にも同じようなことを言われた。


 それでさ、困るのがさ、エレーナは普段表情筋がほとんど仕事をしてないんだけど、護衛として付いてきながら、ふと目が合った時、表情筋が仕事をして、それはそれは嬉しそうに微笑むんだよ。


 そんなの、思わずドキッとしちゃうだろう!?

 って言うか、普段は無表情な癖に反則だろう!?


 しかも館に戻ったら、いつどこで誰に……ってエレーナしかいないけど、何を聞いたのか、ダークムン男爵がわざわざ俺を訪ねて来たんだよ。


「どうぞ娘をよろしくお願い致します」


 なんて畏まって、深々と頭を下げてきてさ。

 一体俺にどうしろと!?


 ダークムン男爵としては、娘の行く末が心配で仕方ないんだと思う。

 その気持ち、分からないわけじゃないよ?

 でも、その手の挨拶は、裁判が終わった後に済ませてるんだ。


 だから、『年季が明けるまで見限らないで下さい』とか『娘に無体な真似はしないで下さい』とか、そんな意味じゃなくて、明らかに『将来結婚が絶望的な娘を、どうか貰ってやって下さい』って意味だよな!?


 しかも、それに先んじてディエール子爵がサランダを猛プッシュしてきてたせいで、俺が女にだらしなく見えてしまったのかも知れない。

 パティーナの俺を見る目が冷ややかって言うか、微妙に余所余所しく距離を取られてる気がするんだよね……。


 なんかもう、俺達がすでにそういう関係(・・・・・・)ですみたいな、既成事実を積み上げられて、外堀を埋めに掛かられてる気がしてならないんだよ。


 まだなんにもしてないのに!



「つまりエレーナ・ラグドラはダークムン男爵家のため、そして打算や(はかりごと)のためではなく、そなたを一人の男として見て、恋愛感情で迫っていると言うのだな?」

「そう言われると、自分じゃ答えにくいですけど……その通りです」


「では国王になるより魅力的な条件を提示されて、国王になることをやめ、わたしやアイゼからエレーナに乗り換えるわけではないのですね?」

「そんなことしませんよ! 俺の一番と二番は常に姫様とフィーナ姫なんですから!」

 思わず腰を浮かして身を乗り出してしまった俺に、姫様とフィーナ姫の表情がわずかに緩む。


 おおっ、これは信じて貰えたか!?


 と思ったら、そこへクレアの冷ややかな一言が。


「ですがエメル様、乗り換えずとも、側室や愛人にして囲い込むことは考えておられるのではないですか?」

「はあ!?」


 なんてことを言うんだよ!

 せっかくわずかに緩んだ姫様とフィーナ姫の顔がまた硬くなっちゃったじゃないか!


「二人が悲しむような真似をするわけないだろう!?」

「では、もしフィーナ様とアイゼスオート様がお許しになられたら、側室や愛人にしてもいいかな、くらいは思っているのでは?」

 レミーまで俺を疑ってるのか!?


「二人が許してくれたって――!」


 ――あれ? 二人が許してくれるなら、ありなのか?

 ありかなしかで言えば、あり……だよな。


「エメル様の本音が透けて見えましたね」

「――はっ!?」

 レミーの……いや、みんなの冷たい視線が!


「い、いや、今のは違っ……」


 フィーナ姫と姫様が溜息を吐く。


「つまり、一人の女性として魅力的に思い、ほだされているのですね?」

「そ、そんなことは言ってないですよ!?」

「そなたはすぐに顔と態度に出る、バレバレだ」

「うぐっ……!」

 みんなの冷ややかな視線がチクチクと……!


 ……だって仕方ないじゃないか!


 最初は俺だってなんとも思ってなかったよ?

 だけどさ、ハニトラ仕掛けてきた他のご令嬢達とは違ってさ、本気で俺に好意を抱いてくれてるのが伝わってくるんだよ!


 ついこの前までは個人的に話をしたことはほとんどなくて、俺の懐に潜り込んできた密偵令嬢(スパイ)の一人くらいの認識でしかなかったんだ。

 でも、第三次侵攻部隊迎撃作戦や反乱軍の鎮圧で一緒に行動する機会が増えて、長時間の移動で色々と話をする時間もあったから、状況が状況だけに政治的な理想とか信条とか感情とか、お互いに深い話もいっぱいしたんだ。


 今にして思えば、フラグ立ちまくりだろう?

 そこにきて、あんな風に寝室に押しかけられて、好きって、抱いてって迫られたら、そりゃあ女の子として意識しちゃうに決まってるじゃないか!


 しかも自分の立場を考えて、側室でも愛人でもいいから俺に好きになって欲しいだなんて、健気で可愛いって思っちゃうだろう!?

 実際可愛いし、美少女だし!


 そんなの、好きかも……って思っちゃっても仕方ないだろう!?


 だけど、『じゃあ今すぐエレーナを三人目の「俺の嫁」にしよう』ってなるかって言うと、それはまた別の話だ。

 みんなに言ってるように、俺は姫様とフィーナ姫を悲しませるような真似は絶対にしたくない。


 だから、仮に俺とエレーナが相思相愛になったとしても、姫様とフィーナ姫が悲しむならエレーナは受け入れられないんだ。


「俺は――」

「待てエメル」

 姫様が軽く手を挙げて、俺の言葉を遮る。

 とても難しい、複雑な表情で。


「聡いそなたが、どうやらこの件に関しては気付いていないようだが、これは非常にデリケートな話だ。そなたの本心と結論がどこにあるのか、それは分からぬが、言いかけたその言葉を口にする前に、まず私達の言い分を聞いて貰おう」



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