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2 出来そうなことを探してみよう

 初回なので一時間ごとに三話連続投稿します。

 第二話。


 結果から言えば、デブる心配は全くなかった。


 さすが貧乏農家、腹一杯食べられたためしがない。

 ボソボソの不味くて固いパンを、豆か野菜くずが入った塩味のスープ……スープ? ほんのり塩水? に、浸して柔らかくして食べるのが、一日一食。

 後は、たまに野生の狐や猪なんかの害獣が畑に現れて荒らすから、それを仕留めて、村のみんなで分け合って、たまにお肉が御馳走になるくらい。


 ぐ~……。


「…………」

 そんなんで足りるか!

 飽食日本で生まれ育った今時の若者を舐めんなよ!?


 こんな生活、ちょっとでも不作になったらバタバタ餓死するぞ!

 せっかく希望が持てる第二の人生なのに、彼女とか結婚とか努力する以前の問題だ!

 マジでどうにかしないと……!


 さて、今更だけど、なんで今世のこの世界が異世界だって分かったのか。

 それはズバリ、魔法だ。


「火の精霊さん、薪に火を付けてね」

 お母さんが指を(かまど)の薪とおがくずに向けると、細く長い火がちょろっと伸びて火を付けた。


「今日も水やりを頼む、水の精霊よ」

 隣の家のおじさんが畑に手を(かざ)すと、子供ジョウロで水まきするくらいに、しゃわしゃわと水が降り注いだ。


 誰でも使えるわけじゃないし、使えたとしてもざっとこんなもんだけど。


 魔法を見てから気付いたのが、そこら中に、つまりは大気中に、キラキラと輝くエネルギーっぽい物が満ち溢れていた。

 しかも、ピンポン球くらいの大きさの色とりどりの光の球が、そこらをふよふよと漂っていた。

 そのエネルギーが精霊力、そしてふよふよ漂ってるのが精霊らしい。


 元の世界に精霊力なんてなかったおかげか、俺には意識するまでもなくそこら中に溢れかえってるのをハッキリ感じられた。

 どうやら、その精霊力を感知して、体内の精霊力を外に放出して、精霊にご飯かご褒美をあげるみたいに与えると、精霊がお願いしたことを実現してくれる、っていうギブアンドテイクがこの世界の魔法、精霊魔法のシステムみたいだ。


 お母さん曰く。

「精霊力を感じ取れない人は魔法を使えないの。でも、感じ取れるだけでも駄目よ。精霊が見えるくらいしっかり感知できないと、精霊に魔法を使ってとお願いも出来ないわ」

 ってことらしい。


 つまりだ……。


 たった三歳にして、すでに精霊まで見える俺は精霊魔法を使う適正が飛び抜けて高いってことじゃないか!?


 現に百人足らずの村人の中で精霊魔法を使えるのは、お母さんを含めて六人だけだ。

 兄ちゃんも含めて、子供達の中に精霊力を感知出来てる子はまだいない。


 これはあれだ、スタートダッシュで鍛えたら超強くなれるんじゃないか!?

 しかも畑仕事で精霊魔法を使ってるし、農業改革っぽいことすれば食糧事情を改善出来るかも!

 そんですごい精霊魔法の使い手になってアピールすれば、村の女の子達にキャーキャー言われて、幼馴染ルートで結婚エンドいけそうじゃね!?


 やばい、一石三鳥で超やばい!


「おかーさん、ぼくにもまほーおしえて! キラキラしてるの、どうすればまほーになるの!?」

「まあ、エメルはもう精霊力を感じられるのね、すごいのね……え、精霊も見えるの!? すごいわ! あなた聞いて! エメルは天才よ!」

 親バカお母さん、大はしゃぎ。


 そんなわけで、お母さんや他の五人の精霊魔法を使える村人――専門的には精霊魔術師って言うらしいけど、そこまですごい魔法が使えるわけじゃないから誰もそう呼んでない――に魔法を教えて貰うことにした。


 村の子供達、男の子も女の子もみんなすごいって驚いてくれて、ちょっといい気分。

 だって前世じゃこんな注目集めて褒められたこと、なんにもなかったもんな。

 ってわけで、家の手伝いの他に、精霊魔法の修行が俺の日課に加わった。



 村では精霊魔法をどんなことに使ってるのか。


 火起こし、水やり、収穫した麦や洗濯物の乾燥、畑を耕す。

 目立ったところはこんなもんだった。


 なんか特別なことをしてるってわけじゃなくて、普通に手間を省くために使ってる程度で、魔法が使えないならないで自分でやればいい程度の話だ。

 もっとすごい使い方が出来そうなもんだけど、知識がなくて発想が出ないだけかな?

 どちらにせよ、使いこなせないことには意味がない。


 だから俺も、まずは畑の水やりと、台所で料理の時の火起こしから練習を始めた。

 あと、エフメラの子守でも。


 この世界の精霊には、六種類の属性があるらしい。

 よく四元素って呼ばれる地水火風、これに光と闇を加えた六属性だ。

 当然、使いたい魔法の内容に応じて頼む精霊の属性も変わる。


 例えば、赤ちゃんのベッドの上でくるくる回る奴、あれを適当な物を組み合わせて作って、エフメラを寝かしつけるときに、風の精霊に頼んでくるくる回したり、子守歌っぽいメロディを流したり、光の精霊に頼んでキラキラ光らせたり。


「あー、だぅ~、まぁ、きゃっきゃっ♪」

 何を言ってるか分かんないけど、エフメラに大ウケ。


 それから、水の精霊に頼んで大きな木桶の中で水をグルグル回してエフメラのおしめを洗ったり、暑い日はエフメラの周りの気温を適温まで下げたり、寒い日は火の精霊に頼んでエフメラの周りの気温を上げたり。


 あれ? 畑仕事より、ほとんどエフメラの子守ばっかりしてないか?


「エメルがエフメラの子守してくれるから、大助かりよ」

「畑仕事も早く終わるようになって、家でゆっくりお前達の顔を見られる時間も増えたしな」


 まあいいか、ちょっとこそばゆいけど、お母さんもお父さんも褒めてくれるし、喜んでくれてるし。

 昼はこんな感じで、夜になるとまたちょっと違った使い方をする。


「おいエメル、まぶしくて寝らんないだろ、消せよ」

「あ、にーちゃんごめん」


 光の精霊に頼んで作って貰った明かりが、寝てる兄ちゃんやお父さん、お母さんやエフメラに届かないように、闇の精霊に頼んで闇のカーテンを作って貰う。

 こんな風に、夜は精霊魔法の練習と一緒に、文字の読み書きの練習もした。


 ちなみに計算に関しては、数字さえ覚えてしまえば楽勝だった。

 日本と同じ、単純な表記の十進法でよかったよ。


 そんなこんなで、体内の精霊力が底をついて疲労で寝落ちするまで、毎日毎日魔法を使い続けてみた。

 使えば使うほど、精霊力の感知や放出のコントロールがうまくいくようになって、精霊にお願いする魔法も、少しずつ複雑なことも頼めるようになってきたから、もう精霊魔法が楽しすぎて俺はすっかり夢中だった。





 五歳になって、変なことに気付いた。

 そこらをふよふよと漂ってる精霊の色についてだ。


 地の精霊は黄。

 水の精霊は青。

 火の精霊は赤。

 風の精霊は緑。

 光の精霊は白。

 闇の精霊は黒。


 これで六属性。


 なのに、うっすらと、他になんか違う色っぽい精霊がふよふよと漂ってるのが見えるようになってきた。

 お母さんにも、他の村人にも、村で一番博識って触れ込みの村長にも聞いてみたけど、みんなそんなの知らないって言うし、見えないって言う。

 お母さんはさすがお母さんで、俺の言うことを信じてくれたけど、他の人は誰も信じてくれなかった。


 だから、それについてはもう黙っとくことにした。

 小さな村で異端扱いされたら、すごく生きづらそうだし。

 って言うか、村の女の子達に変人扱いされたら、彼女になってくれなくなるかも知れないし。



 その年の冬、例年にない程厳しい寒波が来た。


 隙間風があまりにも酷くて、家族五人身を寄せ合って、薄っぺらい毛布とも呼べない毛布にくるまって耐え凌ぐ。

 朝起きたら、誰か凍え死んでてもおかしくないくらいの辛さだ。

 って言うか、まだ二歳のエフメラが一番やばくて心配だ。


 貧乏農家だからって以前に、文明、文化が近世に届くかどうかの中世レベルで、まともな暖房器具が存在しない。

 せめて貴族なら暖炉でガンガン薪を焚いて暖を取れるんだろうけど、貧乏農家じゃそれも無理。

 農村で毎年凍死者が出るって話、伊達じゃないって思ったよ。


「あ、思い付いた。風の精霊に頼んで部屋の中の気圧を上げて空気の壁で隙間を塞げば、隙間風が入らなくなるんじゃないかな?」

 おかげで隙間風が入ってこなくなった。


「あ、ついでに火の精霊に頼んで室温も上げればいいよね」

 部屋の中を温かくして貰った。


「……ん? 熱って赤外線だよね。じゃあ光の精霊に頼んでも出来るかも?」

 出来た。


「うーん、まだ上手く光の精霊をコントロール出来ないから、赤外線と一緒に赤色光も強く出ちゃって、ちょっと部屋の中が赤っぽくなっちゃったね。闇の精霊に頼んで、赤色光を打ち消して自然光になるように調整して貰おうか」

 出来た。


「乾燥するのは喉に良くないし、風邪やインフルエンザにかかるといけないから、水の精霊に頼んで湿度も上げて貰おう」

 出来た。


「土間だから、地面からの冷気で底冷えするよね。土の精霊に頼んで、地面からくる冷気をシャットアウトして貰おうか」

 出来た。


「精霊達には朝まで魔法を使い続けられるくらい精霊力をあげておいたから、これで安心してゆっくり眠れるよ」

「…………」

 ぽかんと俺を見てるお父さん、お母さん、兄ちゃん。


「エメにーちゃ、しゅごぉい♪」

 エフメラは全然分かってないようだけど、暖かくなって嬉しそうにキャッキャとはしゃいでるからよし。


「えっと……ごめんなさい? エメルが何を言ってるのか、何をやってるのか、お母さんさっぱり分からないわ」

「ああ、俺にもさっぱり分からないが、六属性の精霊魔法を全て同時に使ってるのか? そんな真似、出来るのか?」

「いいえ、普通は一属性の精霊に一つしかお願い出来ないわ。しかも朝まで? そんな長時間魔法を使い続けるなんて聞いたことがないわ。天才だ天才だとは思っていたけど、たった五歳でここまでなんて……前代未聞よ」


「エメルお前……なんかキモいな」

「兄ちゃんひどい!」


 家族にキモいって言われた!

 普段乱暴者で意地悪な兄ちゃんでも、ちょっとショックなんだけど!?



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