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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第七章 戦争が終わったから精霊魔術師の育成を頑張る

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196 夜のお茶会

 館の裏にある、王族しか入れない庭園に場所を移す。


 とっくに日は沈みきり、さすがに風が冷たくて肌寒い。


 でも、空気が澄んだ初冬の星空は、天の川のように壮大に連なる星々が眩しく美しく、さらに月が煌々と輝いてて、ちょっと詩人になってしまいそうな光景だ。

 しかも、そんな月明かり、星明かりに照らされて、夜の庭園を歩くドレス姿の姫様とフィーナ姫が幻想的に美しくて、思わず溜息が漏れてしまいそうだよ。


 温かい格好で、ちょっとベランダに出てそんな夜空を楽しむ程度ならいいけど、さすがに長くお茶会をすると風邪を引いてしまいそうだから、少し風情がないけどレドとロクに頼んで俺達の周りだけ寒さを感じない程度に温かくして貰えば、夜のお茶会も十分に楽しめる。


 そうしてランタンが掲げられてほんのりと明るくなったガゼボ(あずまや)に、メリザとクレアとレミーが手分けしてティーカップを並べて、紅茶を淹れてくれた。

 時間が時間だけに、お茶菓子はクッキーがちょっとだけ。

 お茶会って言っても、目的は精霊魔法の練習だしね。


「本当に野良の精霊がいますね。王城でこんなにたくさんの数を同時に見たのは初めてですよ」

 俺の視線の先には、月と星明かりに照らされた花壇の上をふわふわと、赤、青、白の三種類の野良の精霊が漂ってる。


 王城にはいないものって思い込んでたからな。

 これまで視界に入らなかったか、入っても気付かなかったか。

 正直驚いたよ。


「そうだな。三体も一緒なのは珍しいが、一体や二体なら、たまに目にするぞ。その時その時で色が違うから、恐らく同じ精霊ではないだろうが」


 姫様がそう言うなら、そうなんだな。

 飽くまでこの庭園だけでこの数だから、他の場所にもいそうだ。


 本当に何が原因なんだろう?


「赤が火の精霊。青が水の精霊、白が光の精霊でしたね」

 確認するフィーナ姫の言葉に、野良の精霊からみんなに視線を戻す。


「その通りです。良かった、フィーナ姫だけじゃなくて、本当にみんな見えてますね。これならみんな魔法が使えそうだ」

 みんな野良の精霊を目で追ってるから、多分いけるだろう。


「順番にいきましょうか。誰からやってみますか?」


 姫様とフィーナ姫が顔を見合わせ、どうしようって感じにクレアとレミーがメリザを振り返る。


「いざやってみるとなると、魔法で何をすればいいのか分からぬな」

 苦笑しながら姫様が、漂う野良の精霊達を目で追う。


「ああ、確かに。じゃあなんか課題って言うか目的って言うか、そういうのを決めた方が良さそうですね」

「そうですね。エメル様、何か決めて戴けますか?」

 カップを置いたフィーナ姫に、期待したように見られる。


 期待されても、俺もこんな時に何をしたら面白いかって、咄嗟には思い付かないな。

 トトス村にいた頃は、農作業や生活で必要な事か、実験ばかりしてたし。

 王都に出てきてからは、大抵が戦闘がらみだったからな。


「うーん、そうですね……」

 カップに口を付けて、ふと思い付く。


「丁度水と火の精霊がいますし、新しいポットに水を出して、温めて、それで紅茶を淹れて飲んでみるって言うのはどうですか?」

「あら、面白そうですね、それ」

「なるほど、自分で出した水で紅茶を飲むとは面白そうだ。三人とも、それでいいだろうか?」


 メリザとクレアとレミーも頷いて、みんな異存はなさそうだ。


「では早速やってみるとしよう。とはいえ、水の精霊は少しばかり遠いな。あの場までポットを持って行った方がいいだろうか?」

「ああ、それなら水の精霊に声をかけるといいですよ。魔法を使いたいから力を貸してくれって。そうしたらこっちに来て手伝ってくれますよ」

「ふむ、そうなのか」


 姫様が好奇心半分、緊張半分、それにちょっぴり気恥ずかそうに、水の精霊に声をかける。


「そこの水の精霊、済まぬが魔法を使うために少し力を貸してくれぬか?」


 姫様の呼びかけに、水の精霊がふよふよと漂いながら、ガゼボまでやってきた。


「アイゼ様の呼びかけに応じて、本当に水の精霊が来ましたね」

「なんだか可愛いかも」


 クレアとレミーが楽しげに、興味津々って感じで眺めて、フィーナ姫もメリザもほっこりしてる。

 姫様も嬉しそうで、そんなみんなを見てるだけで、俺もほっこりして楽しくなってくるよ。


「じゃあ姫様、何をして欲しいか頼んで、精霊力を渡してあげて下さい」

「うむ、分かった」

 緊張してるのか、一度深呼吸する姫様。

 なんかすごく可愛いかも。


「紅茶を飲みたくてな、このポットに水を注いでは貰えぬだろうか」


 少し躊躇いがちに言いながら、片手で陶器のポットを差し出して、もう片手を水の精霊に(かざ)して、精霊力を放出する。

 すると、姫様の精霊力を受け取った水の精霊が、ふよふよとポットの上に移動すると、水差しから水を注ぐように、ちょろちょろと水を生み出して注いだ。

 それが、姫様がイメージした水を出して貰う方法だったんだろう。


「おおっ! エメル、本当に水が出たぞ!」


 姫様、目を輝かせて大興奮で俺を振り返って、ちょっと可愛すぎ!


「魔法、大成功でしたね姫様」

「うむ、これもエメルのおかげだ!」


 声を弾ませて、腰も浮かせて、無邪気な笑顔が萌える!


「む、もう止まってしまったか」


 ポットの中には、底の方に五分の一程の水が溜まっていた。


「今姫様が渡した分で、そのくらいの水を生み出す分くらいだったってことですね。必要な精霊力と効果の大きさは、何度も繰り返して体感で覚える必要がありますから。それにコントロールが向上すると、今と同じだけ精霊力を放出しても、水の精霊が受け取れる精霊力が増えますから、その分、多く水を生み出せるようになりますよ」

「なるほど、練習あるのみか」

「アイゼ、次はわたしにさせて下さい」


 姫様が成功したから、ワクワクが止まらないんだろう。

 いつも落ち着いた、最近は少し大人っぽい雰囲気になってきたフィーナ姫が、今だけは子供みたいに好奇心丸出しだ。


 でも、それもまた可愛くていい!


「ではどうぞ姉上」


 姫様が差し出したポットを受け取って、フィーナ姫が水の精霊の真下に差し出す。


「わたしにも同じように水を出して貰えますか?」


 姫様が渡した精霊力を見てたからか、それより多く、倍くらい精霊力を渡す。

 すると水の精霊が、同じくらいの勢いで、ちょろちょろと水を生み出して注いだ。

 勢いが同じなのは、多分姫様がした時と同じくらいをイメージしたからだろう。


「ああ……わたし、今、魔法を使っているのですね……」


 うんうん、感動してうっとりと注がれる水を眺めるフィーナ姫が愛らしい。


「まるで夢のようです。魔法を使うのは、こんなにも胸がときめいて楽しいものだったのですね」


 今だけは俺より年下の子供に戻っちゃったみたいで、キラキラと目を輝かせてるのが萌える!


 そういう初めて魔法を使えた時の感動なんて、すっかり忘れちゃってたなぁ。


「ああ……もう終わってしまいました」

 放っておいたらいつまでも眺め続けてそうだったフィーナ姫が、ちょっと残念そうに拗ねる。


 すっかり童心に返っちゃって、たまにこういう一面を見せてくれるから、フィーナ姫はたまらないんだよな!


「こうして魔法が成功すると、あれもこれもと色々やってみたくなりますね」

「野良の精霊を見かけたら、色々試して練習するのもいいと思いますよ。ただ夢中になって精霊力を使いすぎると、疲れて動けなくなったり気を失ったりしますから、それだけは注意して、出来れば他の誰かが一緒にいる時だけにして下さい」

「そうですね。加減が分かるまでは、気を付けて誰かが側に居るときだけにしておきます」


 俺が四六時中側で見てられたらいいんだけど、さすがにそういうわけにはいかないからな。


「六人分のお茶をするには、まだちょっと足りないですよね。次はあたしにやらせて下さい!」

 元気よくレミーが手を挙げて、フィーナ姫からポットを受け取る。


「水の精霊さん、あたしもお水が欲しいです。もうちょっとお願いします」

 そう言って精霊力を渡して、水の精霊が水を出し始めると、嬉しくてたまらないって感じに顔がふにゃっとなる。


「水が出てます、水の精霊さんが水を出してくれてますよ、可愛いですね~、楽しいですね~!」


 レミーのリアクションの方がよっぽど可愛くて楽しいよ。


 そうして、三人がかりでポットには水が十分に溜まった。


「じゃあ次は、火の精霊に頼んで、お湯になるよう温めて貰おうか」

「ではそれは私が」

 クレアがポットを受け取る。


「コホン……火の精霊、こちらに来て、手を貸して戴けませんか」


 ふよふよと、今度は火の精霊が近づいてくると、クレアの顔が緊張で強ばる。


「もっとリラックスして大丈夫だから」

「はい。ではいきます。このポットの水を、お湯になるよう温めて貰えますか?」

 やっぱり緊張で強ばった顔でクレアが精霊力を渡す。


「あ……なんだか温かくなってきました……」

 緊張しながらも嬉しそうに表情を崩して、じっと自分の手の中のポットを眺める。


 クレアも魔法が使えて楽しそうだ。

 ただ、子供みたいにはしゃぐのは恥ずかしいのか、我慢してる感じだけど。


「魔法は終わりましたが……これはぬるま湯程度ですね。お湯とまではいかなかったようです」

「やっぱりそこも慣れだから」

「精進あるのみですね」


 うん、真面目に意気込んでるけど、やっぱりどこか楽しそうだ。


「では僭越ながら、続きはわたしめが。こちらをお湯にして戴けますか」

 クレアからポットを受け取って、メリザが火の精霊の方へと差し出す。


 やっぱりクレアの渡した精霊力を参考にしたみたいで、クレアが渡したより大分多めに精霊力を渡した。


「これは……ああ、どんどん温かくなってきているのが伝わってきます。魔法とは面白いものですね。これを極めれば、いつでもどこでもお茶を淹れられそうです」

 火の精霊を見つめる目がほっこりしてて、なんだか頑張ってる孫を応援してるおばあちゃんみたいだ。


「そうだね、水の精霊と火の精霊と契約したら、重たい水を持ち運んだり薪を集めたりしなくても、いつでもどこでもカップと茶葉だけで十分だ」

「それは遠出するときの荷造りと休息が、とても楽になりそうです」


 さすが長年王城でメイドをしてただけあって、最初から視点がメイドの仕事だな。


「エメル様の仰る通り、これは加減を覚える必要がありますね。それなりに温かなお湯になりましたが、お茶を淹れるにはまだ温度が足りていません」


 そこからは、じゃあ私が、いえわたしがと、ポットを取り合いしながら、みんなで順番に温めていく。

 初めて魔法が使えて、よっぽど嬉しくて楽しかったんだろうな。

 みんな立場があるから、自己主張しながらも仲良く代わりばんこにやってるけど、これがトトス村の子供達だったら、そりゃあもう取り合いだ。


 そんな感じでみんなで水を出してお湯にして、それで紅茶を淹れて、全員にカップが行き渡った。


「それでは、戴こう」

 姫様の音頭で、みんなして紅茶を飲む。


「あら、いつもと少し味が違いますね」

「そうですね。しかし、悪くはないかと」

 フィーナ姫と姫様がじっくり味わって確かめるようにカップに口を付ける。


 真面目に味わい品評してるつもりみたいだけど、すっかり口元は緩んじゃってるよ。

 でもそれは、クレアも、レミーも、メリザも同じみたいだ。


「紅茶一杯でも、自分が魔法を使って淹れたとなると、味わい深い気がします」

「そうですね、なんだかいつも以上に美味しく感じちゃいますね」

「こんなに不思議で楽しいお茶会は初めてです。本当に、長生きはするものですね」

 やっぱり、こういう一杯は、特別な一杯だよな。


「慣れると、同じ水でも紅茶を淹れるのに適した水質に調整したり、空気を多く含ませたり、色々出来るようになるよ。他にも、例えばお湯の温め直しとか保温とか、生活の知恵、工夫次第でいくらでも応用出来るようになるから、みんな頑張って」


 みんな自分達で淹れた紅茶を楽しみながら、自分なら何をしたいか、どう工夫したいか、なんて話に花を咲かせる。

 そして、これからもこうして時々みんなで精霊魔法を使いながら、夜のお茶会を楽しもうってことになった。

 今夜の練習は大成功だったみたいだ。



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