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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第七章 戦争が終わったから精霊魔術師の育成を頑張る

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184 旗幟を変える重鎮



 褒賞に絡んで剥奪した領地を誰に治めさせるのかって、連日話し合いが行われるようになったんだけど、それに先だってビックリする事件があった。



「ブラバートル侯……今、なんと言った?」


 アイゼ様の執務室をわざわざ訪ねてきたアーグラムン公爵派のナンバーツー、厚顔無恥にも散々アイゼ様に嫌味を言ったり(おとし)めようとしたりしてた、あの外務大臣ブラバートル侯爵が言ったのは……。


「は、王家に忠誠を誓いますので、ワシを王室派へと入れて戴けないかとお願いに上がった次第です」


 おいおい冗談だろう!? 何を企んでるんだ!?

 って、思わず叫びそうになっちゃったよ。


「……アーグラムン公の雪辱を果たす、ではなくか?」


 アイゼ様が思いっ切り眉根を寄せて疑惑の目を向けるけど、そうなっちゃうのも当然だよな。

 今までの言動、振り返ってみろって話だよ。


「雪辱を果たすなどとんでもない。確かにワシはアーグラムン公爵に忠義を尽くしましたとも。そのために、決して武力に訴え反乱など起こさないよう、王位の簒奪(さんだつ)を諦めるよう、忠言いたしました」

「なっ……それは本当なのか!?」

「いやいや、ちょっと待てよ! それを信じろと!?」


 いやもう、速攻突っ込んじゃったよ!

 って言うか、そのくらいビックリしたよ!


「これまでの事を考えれば、おいそれと信じて貰えるとは思ってはおりませんが、誓って嘘は言っておりませんとも。それでアーグラムン公爵の勘気を被り、裏切り者として塔に幽閉されたわけですからな」


 思わずアイゼ様と顔を見合わせてしまう。


 確かに外務大臣は塔に幽閉されてた。

 そのおかげで、外務大臣は反乱に加担してないってことで、処刑は免れることになったんだ。


 なんでナンバーツーを……って不思議に思ってたけど、そういうことだったのか!?

 ここはあれだ、キリに事実確認をして貰おう。


『本当です。この者は、そのように忠言して裏切り者扱いされて、今、本気で王室派へ鞍替えしようと考えています』


 おいおい……マジかよ……。


「そなたは何故そのような忠言をしたのだ? 私の知るそなたであれば、どのような手を使ってでも私と姉上を排し、アーグラムン公を王位に就けたはずだが」

「その通りですな。あの時までは」

「あの時?」


 どうしてそこで俺を見るんだ?


「ワシは勝てんと思ったんですよ、そこの無礼な平民……メイワード男爵に」


 あの外務大臣が、俺を見ながら素直に負けを認めるなんて……!


 詳しく聞いたところ、あの第二次王都防衛戦での俺の戦いを見せられて、しかも精霊が人間と変わらず自分の判断で動いてるって知って、心が折れて白旗を揚げたそうだ。

 それで、何度もアーグラムン公爵と面会しては、王位の簒奪を諦めるよう言ったけど聞き入れられなかった。

 しかも最後のご奉公として、アーグラムン公爵に反逆者として処刑されるより、自害して名誉ある死を選ぶようにって、そこまで言ったらしい。


 確かに、反王室派の貴族や役人達に『力』の差を見せつけてやろうとは思ってたし、それで俺達に迂闊に手を出すのはヤバイって思わせられたら、って思ってたよ。

 そして、誰がこの国を治めるのに相応しいか、分からせてやろうってさ。


 それがまさか、あの外務大臣がそこまでするようになるなんて。

 最近妙に大人しかったのは、もしかしてそれが原因だったのか?


「ワシはこれでもワシなりにこの国を愛し、この国の国益を考えてましてな。それが『力』あるアーグラムン公爵が王位に就くことだと思っておったから、アーグラムン公爵に協力していたまでのこと」

『本当です』


「フォレート王国の影響は完全に排除出来んでしょうが、ワシとアーグラムン公爵が手を組めば、それを最小限に抑えられる自信も勝算もありましたしな。我が国のような小国が大国の庇護下に入ることは、決して悪いことばかりではない」

『本当です』


「ところがメイワード男爵が現れてしまった。王家が囲い込み、アーグラムン公爵を上回る『力』を、それもトロルの軍勢を退けるだけの強大な武力のみならず、農政改革と言う多岐に渡る影響力を手に入れたのなら、王家の支配を盤石にすることこそがこの国の国益に適いましょう」

『本当です』


「それに国交のなかったガンドラルド王国と国交を結び、賠償をさせる交渉が本格化するのであれば、外務のトップとして、これほど危険でやり甲斐のある仕事を他人に任せておくなど、あり得ん話でしょう」

『本当です』


 おいおい、駆け引きなしで、本音をぶっちゃけてるってことか。


 アイゼ様が判断付かないって顔でチラッと俺を見るから、正直俺も困惑してるけど、今の話に嘘はないと思うって、頷いてみせる。


「そうか……」


 アイゼ様はしばし悩んだ後、頷いた。


「いいだろう、そなたが王家に忠誠を誓うと言うのであれば、その忠誠を受け取ろう。しかし、これまでのそなたのやりようを考えるに、ただそのまま許し派閥に迎え入れるわけにはいかぬ」

「それは承知しております。忠誠の証として、これまでのワシの行った不正などを償い、賠償金を支払いましょう」

『本当です。ただし表に出しても構わない、賠償金で済ませられる不正の情報のみのようです。全て表沙汰にすれば、処刑は免れないようです』


「また、ワシが握る、反王室派の貴族どもの不正の証拠なども提出しましょう」

『本当です。ただし全てではなく、すでに処刑が決まっているアーグラムン公爵派の貴族の不正など影響を限定して、一部の貴族への切り札となる不正の証拠は隠し握り続けるつもりのようです』


「フォレート王国の貴族どもにも、ちょっとは顔が利きますしな。パイプを失ったフォレート王国の貴族どもの蠢動を、多少は牽制して見せますぞ」

『本当です。ただしパイプを維持したいフォレート王国の貴族達から、足下を見てふんだくり、自分の不正の賠償金を可能な限り補填するつもりのようです』


 うん、さすが。

 かなりどうかと思うけど、そのくらい企んでる方があの外務大臣らしくて、むしろほっとするよ。


「ほう……そこまでするから、爵位もそのままに外務大臣に留任せよと、そう申すわけか」

「お話が早くて助かりますな」


 多分こんなことを狙ってるんじゃないかなって感じにぼかして、キリが読み取った本心をアイゼ様に伝える。

 それを聞いたアイゼ様も、やっぱりその方が納得だったみたいだ。


 アイゼ様が、しばし吟味する。


 これは……裏取引って言うか、司法取引って言うか。

 国のトップに立つって事は、綺麗事だけじゃなくて、こういう清濁併せ呑む判断を下せないと駄目って言うからな。


 それに、この外務大臣くらい厚顔無恥でふてぶてしいくらいじゃないと、トロルどもとの交渉は難しいかも知れない。

 ビビって引いたら、トロルどもがどんな態度に出てくるか分からないし。


 トロルどもを殲滅出来る俺がバックに付いてる以上、ビビって引いたり、いいようにやり込められたりはしないだろう。

 第一、それで万が一があって殺されても、元々敵方だったんだから痛くも惜しくもないしな。


 だから、本人がやりたいって言ってるなら任せるのも手だろう。

 他国への人脈はかなりあるっぽいし。


 もっとも、これまでのアイゼ様への態度を今すぐ許してやる気にはなれないけど。


 わずかの吟味の後、アイゼ様が頷いた。


「いいだろう、その忠誠が誠であると、今後の働きで証明してみせよ」

「はっ、誠心誠意尽くさせて戴きます」



 とまあこんな感じに、なんと敵対派閥のナンバーツーが寝返ってきた。

 あのブラバートル侯爵がってことでその衝撃は大きくて、まだ残ってる別の反王室派の貴族達や中立派の貴族達は、相当動揺したらしい。


 当然、しばらくは監視が付くんだけど、本気で真面目に働きそうなところがな……ちょっと複雑だよ。



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― 新着の感想 ―
むしろ裏表がある人物の方が外交官としては有能だったりしますよね
[一言] Σ(; ゜Д゜)つ★★★★★
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