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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第五章 トロルと決戦で忙しいので密偵令嬢はハーレムにいりません

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129 出発間際の面会者

 トロルどもが浅はかな罠を仕掛けてきたおかげで、国境線まで馬車で移動すると仮定した数日分の余裕が出たわけだけど、そもそも身一つで飛んでいけば事足りるから、俺が改めて準備するようなことは何もない。

 改めて今回のトロルの対応を考慮に入れた、降伏勧告の書状って言うか、最後通牒の書状をアイゼ様がしたためて俺に渡してくれたことで、準備は完了だ。


「男爵様」

 完全武装で荷物を携えて、エレーナがリビングのソファーでくつろいでた俺の前までやってくる。


「もうそんな格好をしてるのか? 出発はまだだぞ?」

「本当にまだ出発しないで平気? 今からだとどれだけ急いで馬車を走らせても、とても期日までに国境まで行けない。早馬を使って強行軍で向かっても、ギリギリ間に合うかどうか」

 いつも淡々とした喋りで、表情筋があんまり仕事をしてないエレーナでも、声と表情にわずかな焦りが出てるな。


「そんな心配しなくて平気だよ。明日の朝一で出れば、十分間に合う予定だから」

「?」


 うん、納得いかない顔で小首を傾げてる。

 移動方法に関しては、明日の朝のお楽しみだ。

 エレーナ、どんな顔で驚くだろうな。

 想像したらつい笑いそうになっちゃって、さらに不可解そうに小首を傾げられてしまった。


 と、そこに困惑顔のパティーナが入ってくる。


「ご主人様。大至急ご主人様に面会したいという方がいらっしゃっています」

「俺に面会?」


 メリザを振り向くと、メリザは小さく首を横に振った。

 どうやら予定にない来客らしい。


「どこの誰だって?」

「はい、デルイット伯爵の次男、ナサイグ・リンガム様だと名乗られています」

 ああ、あの傲慢でメタボな兄を持つ、貴公子然としたイケメンの弟の方か。


「要件は?」

「ご主人様に大至急お知らせしたいことがあると」

 なんだろう……嫌な予感がするな。


「分かった、応接室に通してくれ」


 急遽、男爵としての礼服に着替えさせられ、勲章までジャラジャラぶら下げることになって、しばし待つ。

 よほど重要な客人でないのであれば、アポなしで来訪した相手にすぐさま対応しては軽く見られ、俺とメイワード男爵家の沽券に関わるため少しくらいは待たせるべき、とのメリザのアドバイスだ。

 男爵の礼服も勲章も、要はハッタリなわけだな。


 そういうところが、貴族の面倒なところだよね……。

 でも、せっかく姫様とフィーナ姫がくれた勲章なんだから、ちゃんと付けて周囲にアピールしないとくれた二人に対して申し訳ない、って言われたら、付けないわけにはいかないよなぁ。


 メリザがそろそろいいだろうって言う頃合に、メリザの演技指導に従って、焦らず急がずもったい付けるようにゆっくりと応接室に入ると、見覚えのある爽やかな笑顔を浮かべたイケメンが、ソファーから立ち上がった。


「ご無沙汰しております、メイワード男爵。デルイット伯爵の次男、ナサイグ・リンガムです。遅ればせながら男爵位への叙爵と陞爵(しょうしゃく)並びに珠栄陽花(じゅえいようか)一等勲章、大宝守輝星(だいほうしゅきせい)一等勲章、騎剣(きけん)一等勲章の叙勲おめでとうございます。急ぎ参じたため、お祝いの品を持参せず誠に申し訳ありません。後日改めてお送りいたしますので、この場はご容赦戴ければと思います。また本日は約束も取り付けず、先触れもなしに来訪したご無礼、深くお詫びいたします。それにも関わらず、お忙しい中お時間を割いて戴き、感謝の念に堪えません」


 物腰柔らかく頭を下げて、実に馬鹿丁寧なお祝いと謝罪だ。

 しかも、心からのお祝いと謝罪で、嫌味や含むところは何も感じられない。

 あまりのイケメンっぷりに、思わず気圧されそうなんだけど。


 すでに相手が俺の名前を知ってて、しかも相手から俺の名前を呼んだことから、わざわざ改めて俺の方から名乗る必要はないそうだ。

 ともあれ正面のソファーに座って、ナサイグにもソファーに座るよう勧めた。


 メリザが俺の分の紅茶を淹れて、ぬるくなったナサイグの分も淹れ直したところで、ナサイグがメリザを気にした素振りがあったんで、下がって貰って二人きりになる。


 そして、立場の違いから、本題に入るには俺から尋ねて、相手に言わせる必要があるとかなんとか。

 本当に、貴族の会話の決まり事って、面倒ったらないよ。


「それで早速で悪いですけど、本日はどのような要件でしょう? なんでも俺に大至急知らせたいことがあるとか?」


 普通は前置きに、お互いの近況の話とか、雑談をしてから情報交換したり、前哨戦で駆け引きしたりするそうだけど……。

 お互いにそこまで親しい間柄じゃないし、って言うか、メタボの兄のせいでお互いの家がトラブってるわけだし、それも大至急って前提があるから、前置きの雑談は省略でもいいそうだ。

 本当に、貴族の会話の決まり事って以下同文。


「はい、実は……」

 途端に爽やかな笑顔を崩すナサイグ。


「ここしばらく父と兄が派閥の貴族家と頻繁にやり取りをし、兵を集めているようなのです」

「それってまさか……!?」

「はい。父と兄は、トロルの第三次侵攻部隊に対し、防衛戦力として馳せ参じるためと言っていましたが、どうにもよからぬ事を考えているようです」

 どう考えてもあれだよな、反乱軍の武力蜂起にしか聞こえないんだけど。


「それと、こちらを」

 と、大量の書類がテーブルの上に山と積み上げられたんだけど……。


「この書類は?」

「我がデルイット伯爵領における、父と兄の不正や犯罪の証拠です」

「っ!?」

「どうぞ、お納め下さい」

 ナサイグが書類の山を俺に方に差し出してくる。


「どうしてこんな物を俺に? しかも、父親と兄の不穏な動きの密告まで」

「自分にも思惑があると、先日お話ししたでしょう?」

 つまり企みがある、見返りが欲しい、ってことだよな?


「その思惑ってのは?」

「自分をメイワード男爵家で雇って戴けませんか?」

 雇ってって……またそんな話かよ!?


「……伯爵家の次男坊なら、もっといい就職先があるだろう?」

 つい警戒が表に出てしまって、口調もいつも通りに戻っちゃったけど、ナサイグは全く気にした様子もなく答える。


「自分では父と兄の企みを止められません。自分の忠告には耳を貸して貰えませんし、止めるための力も足りません。なので、このままではデルイット伯爵家は王家に逆らった罪で良くてお取り潰し、悪ければ一族郎党処刑でしょう。もしかしたら、メイワード男爵の魔法で、消し炭すら残らないかも知れません」

 それは……十分あり得るな。


「なので救国の英雄、メイワード男爵のお力をお借りすることで、自分はあの父と兄の企みとは無関係であると証明したいのです」

 つまり、救国の英雄の俺に恩を売ってその対価に保護して欲しい、罪に問われることがないよう口添えして欲しい、その暁には俺に力を貸して働くから、ってことか。


「力のある貴族の保護が欲しいなら、もっと上の、それこそどっかの侯爵とか公爵とかに頼んだ方が確実じゃないか?」

「残念ながら、デルイット伯爵家は独自派閥の領袖(りょうしゅう)であるため、他の派閥の貴族との太いパイプはないのです。しかも側室の産んだしがない次男では、知り合いの貴族すらほとんどいません。そして何より、メイワード男爵の影響力は、今やそこらの侯爵家や公爵家に引けを取らない。ゆくゆくは凌ぐことでしょう」


 これ、どこまで本気だ?

 あのメタボ兄と、その兄と同じタイプの父親と組んで、俺を嵌めようって腹か?

 最近、俺の知らない間に精霊達があちこち動き回ってて、たまに側に居ないときがあるからな……。


 今、キリ居るか?


『お呼びですか我が君』


 ああ良かった、いたいた。

 ナサイグが言ってることの真偽はどうだ?


『……ふむ、どうやら本心からのようです。我が君の考え通り、我が君の保護下に入りたいのでしょう。約束も取り付けず、先触れも出さなかったのは、自身の動きをその父親と兄に知られたくなかったからのようです』


 なるほど……。


「話は分かった。とはいえ、話を聞いただけで鵜呑みには出来ないし、この書類も精査が必要だ」

 そんなことしなくてもキリの見立てだと本当みたいだから、飽くまで手続きを踏む必要があるってだけだけど。


「ええ、もちろん。納得いくまで調べて貰って結構です」

 本人の了解も得たんで、応接室に置かれてるハンドベルを鳴らす。


「お呼びでしょうか、エメル様」

 ほとんど間を置かずにメリザが来てくれる。


 簡単に事情を説明した後、便箋とペンを取って貰って、姫様とフィーナ姫、軍務大臣に、事と次第と後で説明に行く旨を手紙を書いて預ける。

 同様に、ナサイグの証言および書類の精査をするため、監査室のロードアルム侯爵に来て貰って、ナサイグと書類を引き取って貰えるよう手紙を書いて預ける。


 メリザは一礼すると早速下がって、自分で回って届けてくれるみたいだ。

 まあ、うちの使用人達はみんな、どこかの貴族の紐付きだから、この手のお使いは頼めないもんなぁ。


「と言うわけで、リンガム殿にはしばらく軍部と監査室に協力して貰いますから」

「ええ、構いません。それで身の潔白が証明出来るのなら、いくらでも。ですがその暁には……」

「分かったよ、雇おう。役職は……何が出来るか分からないから、その時改めてで」

「ええ、よろしくお願いします」

 ほっとしたように、爽やかな笑顔に戻る。


 それからしばらくして、ロードアルム侯爵の使いって監査室の人達が来て、ナサイグと書類を引き取っていってくれた。


 さて俺も姫様とフィーナ姫、軍務大臣のところを回って、改めて報告しないと。

 ああそれから、農地生産改良室のメンバー達にも十分に気を付けるように言って、農村の様子も見て回るように頼まないと駄目かな?


「全くもう、明日出発して戦争だってこの忙しい時に、余計な仕事を増やしてくれやがって」


 こんな時に身体が二つ……いや、俺にもっとたくさんの契約精霊がいたら、あっちもこっちも全部お任せで安心出来るのに……。

 まあ、無い物ねだりをしても仕方ない。


 ともかく、急いで回って終わらせよう。



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