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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第四章 内政と貴族との駆け引きが大変でイチャイチャしてる暇がありません

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110 賢い褒賞のもらい方 2

 爵位で一番下の騎士爵って言っても、貴族は貴族。

 適用される法律は平民向けのものから、貴族向けのものに変わって、色んな権利や保証が与えられて……つまりは、権力を手にすることになる。

 まあ、同時に義務も発生するんだけどさ。


 だから俺の生活は、きっとこれまでとは大きく変わってしまうに違いない。

 ……なんて、本当は爵位なんていらないんだよね。


 だって王様になるんだし?

 それより下の貴族の爵位なんて不要だろう?


 でも、俺に王権を委譲する時、ただの平民に委譲するのか、それとも、たとえ成り上がりの下級貴族だったとしても貴族に委譲するのかで、話は全然違ってくる。ってフィーナ姫に言われて、ああなるほど、って。

 だから王権の委譲が決定するまでは、たとえ名前だけだったとしても、より上の爵位を手に入れる事を考えなくちゃいけなくなって、ちょっと笑っちゃいそうだよ。


 ってわけで、打ち合せ通り、爵位はありがたく貰っておく。


「これでエメル様も貴族の仲間入りですね。では、領地はどういたしましょう?」


 当然の顔をしたフィーナ姫の発言に、一部の貴族達が身を強ばらせた。

 特に反王室派の貴族で、フィーナ姫の言葉の意味にすぐさま気付いた連中は、苦い顔で俺を睨み、不快そうにフィーナ姫に目を向ける。


「私が勅命を下したにも関わらず、第二次王都防衛戦の見学にも兵を出さない、トロルを利用し王家を害さんとする叛意(はんい)ありの貴族どもがいたな。爵位と領地を剥奪し私財は没収。一族郎党はことごとく処刑。領地は直轄地として、そこからエメルに与えるのはどうだろうか」

「まあ、それは名案ですね」


 重々しく提案するアイゼ様に、心から名案とばかりにフィーナ姫が微笑んだ。

 遅ればせながらフィーナ姫が領地のことを切り出した意味を知った反王室派の貴族達が、真っ青になって二人を止める。


「お待ち下さい殿下方!」

「彼らに叛意などありはしません!」


 これは、自分のところの派閥の連中を庇ってるのかな?

 だけど、その言い訳は通じないだろう。


「すでに私の名で国璽を押し、書状を送っているのにか?」

「ですが――」


「国王代理たる王太子の私の勅命に従えぬと言うのであれば、それは王家への、ひいては王国への反逆以外のなんだと言う? 国家存亡の危機に兵を出すことすらせず、反逆の意思ありと見なされる真似をしておいて、何を以て申し開きをするつもりだ」


「それは……」

「しかし……」


「お、お待ち下さい殿下、お怒りはごもっともなれど、国を割ることになりますぞ?」

「よい。どうせ一兵も損なうことなくエメルが勝つのだ。私が考えるべきは、その後、それらの領地を誰に治めさせるかだけだ」


 取り付く島もないアイゼ様の言葉に、会議室がしんと静まり返った。

 これまでは王家に『力』がなかったから、こういう舐めた真似をされても、勝てる算段がなく、国を割るわけにもいかないから、王家が引いて、貴族達が好き勝手するのを黙認するしかなかった。


 でも、今や王家は俺という『力』を手に入れた。


 この会議に参加してる貴族達はみんな、第二次王都防衛戦での俺の戦いっぷりをウォータースクリーンで目撃した連中ばかりだ。

 そう、王家はもはや、反抗的な貴族どもの身勝手な振る舞いを、(ほぞ)を噛むような思いをしながら黙認する必要はなくなったんだ。


 それを理解せず、反抗的な態度を変えないのなら、相応の報いがあって当然だろう。


 フィーナ姫がチラリと俺を見て、目だけで頷いた。

 だから俺も、目だけで頷き返す。


「まあまあアイゼ様。反逆したなら一族郎党を処刑するのは当然ですけど、俺の『力』を信じず舐めた真似――半信半疑だったこともあるでしょう。だから一度だけ、彼らに恭順の意を示すチャンスをあげてはどうですか?」

「ふむ、しかしエメル、王家に逆らった者達に手心を加えて許していては、国を治めることなど出来ぬぞ」


 そう、その通り。

 だけど、本気で爵位と領地を剥奪して一族郎党を処刑しようとしたら、破れかぶれで反乱を起こす貴族が多数出てくるのは確実。

 平時なら俺がドカンとやって回っておしまいでいいんだけど、トロルとの戦争がまだ続いてる状況で、あっちもこっちもで戦いが起きるのは対応が遅れて被害が大きくなってしまう。

 もしそうなるにしても、タイミングはずらしたい。


「だから手心は加えなくていいんですよ。ただ一度だけ心を入れ替え、汚名返上し王家に忠誠を誓う、その機会を与えるだけです。アイゼ様の温情に(すが)ってその機会を生かすか、それでもなお逆らうのか、今一度彼らに選択させましょう」

「そのような機会など、与える必要を感じぬが」


「まあ俺も、アイゼ様とフィーナ姫に敵対して舐めた真似をするような逆賊(・・)に容赦するつもりは欠片もありませんけどね。だから、なお逆らうのなら、そんな貴族どもは今度こそ反乱軍と認定(・・・・・・)して、言い出しっぺの俺が(・・・・・・・・・)責任持って、文字通り一人残らず(・・・・・)全滅させます(・・・・・・)


 駄目ですよアイゼ様、俺達の話の着地点がどこになるのか、真っ青な顔で狼狽えながら固唾を呑んで見守ることしか出来ない貴族どもに、目が笑いそうになってますよ。

 かく言う俺も、噴き出さないように堪えながら、容赦ないシリアスな顔を作るのに苦労してるけど。


「でしたらアイゼスオート殿下、このようにしてはいかがでしょうか」

 宮内大臣、いいタイミングだ。


「勅命に従わなかった貴族達には今の話を通達し、勅命に従わなかった謝罪と叛意を持たず王家に忠誠を誓っている証として、各領の去年の税収に当たる額を上納させ、一連の戦いで命を落とした兵達の遺族への年金と傷痍兵の見舞い金に充てさせるというのは」


 各領の去年の税収ってところで、反王室派の貴族どもがどよめく。

 大貴族であれば、痛いことは痛いだろうけど、家が傾くほどじゃない。

 だけど中小の貴族であれば、家が傾きかねない。

 それほどの金額だ。


 謂わば、来年度は税収がゼロとして、一年間領地経営しなくちゃならないんだから。


 しかも今年は、多くの領地でトロルとの戦争の影響が出て税収が下がるだろう。そこを去年の税収の額にするんだから、余計にだ。

 これを納めさせれば、反王室派の貴族家の力を多少なりと削ぐことが出来るだろう。


 それに応えて、俺も追撃を入れる。


「じゃあついでに、軍縮もさせましょうか。だって国家存亡の危機でも派兵しない兵なんて、無用の長物でしょう? 領地の治安維持が出来るギリギリの数がいれば十分でしょうし。そもそも兵士を養うのも金が掛かるんだから、上納するための金の負担も、兵を減らせば軽くなるでしょう」


「そうだな……いいだろう、エメルがそこまで言うのであれば一度だけチャンスをやるとしよう。グーツ伯、反逆の疑いのある貴族達が正しく各領の去年の税収に当たる額を上納するか、各領の農地を検地せよ」

「殿下の(おお)せのままに」


「イグルレッツ侯、彼らの領軍が領地の規模に見合った規模になるよう、調査し組織を改編させよ」

「はっ、承知いたしました」


「ロードアルム侯、グーツ伯およびイグルレッツ侯と協力し、それらが正しく行われるか、そなたに監査を命じる」

「ははっ、畏まりました」


 (うやうや)しく頭を下げるグーツ伯爵、イグルレッツ侯爵、ロードアルム侯爵。

 もしロードアルム侯爵が監査中に、裏帳簿なんかの不正の証拠を偶然(・・)見付けたとしても、それは俺達の与り知らぬ話だ。


 反王室派の貴族どもが何か言うより先に、アイゼ様がピシャリと反論を遮る。


「エメルの取りなしに感謝するよう、派閥の者達に伝えるがいい。もしそれにも従えぬと言うのであれば、もはやその者達と交わす言葉はない。反乱軍(・・・)の討伐にエメルを差し向けることになる。良いな」

 取りなした俺の顔に泥を塗るなよ、取りなしに応じたアイゼ様に恥を掻かせるなよ、反乱軍として歴史に名を刻みお家断絶の不名誉な死を迎えたくなければ、ってことだな。


「はっ……」

「畏まり……ました……」


 もしこれでも従わないなら……仕方ない、その時は本気で全滅させよう。

 だって俺達が差し伸べた手を叩き落として、アイゼ様とフィーナ姫に牙を剥くって言うなら、それはもう本当に反乱軍と見なすしかないからな。


「して、領地をどうするか、だったな。エメルよ、希望はあるか?」

 まるで今の話はなんでもないことだったみたいな口ぶりで、アイゼ様が話を戻す。

 フィーナ姫も同じように、些事は済んだとばかりに頷いた。


「うーん、そうですね。領地は保留でいいですよ。さっきの話次第では、どこの領地が俺に回ってくることになるのかまだ未定ですし。反乱軍討伐に回ってる時に、ここがいいって領地が出てくるかも知れないですし」

「うむ、そうか。では一旦保留としよう」

 青い顔の反王室派の貴族どもに、つい笑っちゃいそうになるけど、なんとか堪える。


「では、一つ目の功績についての褒賞は、騎士爵を叙爵し、下賜(かし)される領地については保留とする」

 宮内大臣の最終確認が行われて、これでさらに一つ、決定した。


 ここまでは、見事にシナリオ通り。

 ちょっと間が空いちゃったけど、勅命に逆らったことをお咎めなしで済ませるわけにはいかないからな。

 どうせ今の王家には自分達を咎める力なんてないって高をくくって、舐め腐った真似をしてくれた貴族どもには、いい薬になるだろう。


 それでもし心を入れ替えて王家に忠誠を誓うのなら、その貴族達は取りなした俺に大きな借りを作ることになるわけで。

 これは、俺が王様になったときに利いてくるはず。

 と言うわけで、ここまでは俺の褒賞の話はついでみたいなもんだ。


 だから俺の褒賞の話は、ここからが本番だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 騎士3人でもやられるくらい強いトロルを3万倒してもたかだか騎士爵ですか。 せこ!
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