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見境なし精霊王と呼ばれた俺の成り上がりハーレム戦記 ~力が正義で弱肉強食、戦争内政なんでもこなして惚れたお姫様はみんな俺の嫁~  作者: 浦和篤樹
第四章 内政と貴族との駆け引きが大変でイチャイチャしてる暇がありません

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102 浮かれるお姫様達と次なる説得

「それにしても、無事にコルトン伯爵と宮内省の支持を得られて、本当に喜ばしい限りですね」

「そうですね姉上。なかなか手強かったですが、理解を示してくれた者達がいたことは、勇気づけられる思いです」


 満足げにカップを傾けるフィーナ姫と、顔をほころばせるアイゼ様。

 王族の居住スペースになる館の広く大きなリビングで、その話題が上がるのは果たしてもう何度目か。


 何しろ、宮内省から戻って来てすぐに三人で歓声を上げて、フィーナ姫なんて俺とアイゼ様の手を取ってクルクル回って踊るくらいのはしゃぎっぷりだったからな。

 後から、はしたないって頬を染めたのが、すごく微笑ましかった。


 アイゼ様もソファーに腰掛けたと思ったら、立ったり座ったりを繰り返して全然落ち着かなくて、口元をほころばせて弾んだ声で戦果を語りながら、無意味にグルグルとリビングの中を歩き回ったもんだ。


「でもまあ、ちょっとばかり強引って言うか、脅しっぽかったかなって気がしないでもないですけどね」


 俺も踊り回ったフィーナ姫とハグし合って、恥ずかしがってもがくアイゼ様にもハグして、散々浮かれたんだけどね。

 拳を突き上げて雄叫びを上げたくなるのを何度我慢したことか。

 まず間違いなく、俺が一番浮かれてたと思う。


 アイゼ様の常になくソワソワしっぱなしの様子を、苦笑を浮かべつつ温かく見守ってるクレアさん。

 フィーナ姫がご機嫌なのがよっぽど嬉しいのか、ニコニコ笑顔のレミーさん。

 雄叫びこそ我慢したものの、何度も拳を突き上げる俺に、呆れ顔を隠さないメリザさん。


 そんな視線に気付いて、ちょっと冷静になって振り返ったら、前半はともかく後半は強引で脅しっぽかったかな、と。


「多少話の展開にそういう面があったことは否めぬが、全て事実だ」

「ええ、一切の嘘も誇張もありません。正しく、エメル様を軸に据えなければ、わたし達にもこの国にも未来はありませんから」

 やっぱり浮かれた気分が抜けないのか、重たい事実を指摘するのに、終始笑顔で声のトーンも高い。


「わたしはよくもまあ、あの(・・)コルトン伯爵を納得させたものだと、正直驚きでいっぱいでございますよ。絶対に頑として受け入れず、頑固ジジイぶりを遺憾なく発揮するものとばかり」

 呆れと、苦笑と、賞賛と、色々複雑そうな笑みを浮かべて、メリザさんは温くなった紅茶のカップを下げると、新しく紅茶を淹れ直してくれた。


 王城に勤めて長そうだし、メリザさんは宮内大臣のことをよく知ってるのかな?


「頑固だって聞いてたから、アイゼ様とフィーナ姫と一緒にじっくり作戦を練ってから臨みましたからね。正直、何度か当たらないと納得させられないって思ってましたから、上手く行き過ぎなくらい上手く行きましたよ」


 でしょうねって顔をするメリザさん。

 やっぱり、それが宮内大臣の一般的な評価か。


「ですが、政治はともかく、アイゼスオート殿下、フィーナシャイア殿下のお幸せを考えるのでしたら他に手はない……わたしもそう思いましたから、葛藤はありましたけれど、お三方の作戦に乗ることにしたのです」


 ちなみに、もう一人のお爺さんだと思ってます、って下りは、メリザさんのアイデアだ。

 もちろん、二人が本当にそう思ってるから採用したわけで。

 宮内大臣はそれで、少なからず情にほだされてくれたと思う。


「アイゼ様、次はどなたの説得をされますか? 父であれば、エメル様の事業計画で成果が出ている事に、近頃機嫌が良いようです。可能であれば、収穫の結果が出てからが望ましいのでしょうが、決して勝算は低くないと思われます。私も口添えいたしますので」

「うちの父は仕事柄、頭が固いですから、普通に説得してもうんとは言わないと思うんですよね。情に訴えかけるのも無駄じゃないですけど、それよりもエメル様が王様になったときに、仕事上、どれだけのメリットが提示できるかが説得の鍵になると思います」

 クレアさんとレミーさんの言葉に、ふむとアイゼ様が少し考える。


「そうだな。グーツ伯とはすでに農政改革で何度も話をして、信頼関係を徐々に醸成してきているところだ。せっかく説得に成功したのだ、コルトン伯も同席させ共に説得に当たって貰い、エメルの語った王としての展望を伝えれば、説得は可能かも知れぬな」

「その暁には、農水大臣の席を確約して下されば、恐らく父は頷くと思います」


「クレアさんのお父さんのグーツ伯爵って、実は出世欲があったり野心家だったり?」

「いえ、副大臣では思うように農政や治水の新規事業を進めづらく、そのことに常々不満を抱いていましたので。出世欲や野心と言うよりも、思うさま仕事がしたいだけです。ですからエメル様が農政改革のお話を持ち込まれた時は、大変に喜んでおりました」

 なるほど、お仕事大好き人間ってわけか。


「反王室派の貴族どもに邪魔をされてなかなか人事が定まらぬが、トロルどものせいで農水大臣の席は空席だ。私達に協力して貰えるのであれば、代わりに別の大臣の席を反王室派に渡すことになるが、その席をグーツ伯爵に与えられるよう尽力しよう」

「ありがとうございます」


 こういう椅子取りゲームって言うか、陣取りゲームって言うか、本当に貴族社会っぽいよなぁ。

 俺が王様になったら、その渦中、ど真ん中に居座ることになるわけだけど。

 そういうドロドロとした人間関係って苦手だし、その点だけがちょっと憂鬱だ。


「対して、ロードアルム侯への仕事上のメリットか……」

 アイゼ様が難しい顔で小さく唸る。


「レミーさんのお父さんのロードアルム侯爵って、監察室の室長さんでしたよね?」

「はい、そうです。省や部署を問わず、不正がないか監督、調査、取り締まりをしてます」

「そういった仕事上のメリットか……権限の強化とか?」

 ぱっと思い付くのはそんなところだけど。


 フィーナ姫が、ちょっと考えてから小さく首を横に振った。


「監察室は独立した機関で、元より権限は強く、王族が手がける事業のために立ち上げた部署ですら、監査が入る時は拒むことが許されません。当然、不正が発覚すれば王族も罰せられます。これ以上の強い権限は必要としていないでしょう」

「それは……困ったな」

 だから、アイゼ様が難しい顔をしてたのか。


「レミーさん、お父さんが仕事でなんか愚痴ってたとか、ないです?」

「ん~……同じ王城で勤めてると言っても、顔を合わせることは滅多にありませんし、役職上住む場所も違いますから、接点は多くないんですよね……」

 なるほど、確かにそんなもんかも知れないな。


「強いて言うなら、普段から何かと不正調査の邪魔をされてる事が不服と言えば不服だと思います」

「不正調査の邪魔をされてる?」

 それは聞き捨てならないな。


「あたしも詳しくはないんですけど、不正の証拠を巧妙に隠されてしまったり、監査を入れる事すらも邪魔されたり、不正を暴いても大した罪に問われなかったり、どこかの貴族が裏で糸を引いていて不正をしてる貴族達と結託してるみたいなんです」

 そんな奴がいるのか。


「じゃあその裏で糸を引いてる貴族の不正を暴くのに協力するとか、失脚させるとか、そういうのを確約するとか?」

「それは、可能であれば避けたいところだな」

「アイゼ様?」


「その裏で糸を引いている貴族とは、恐らく法務大臣のハーグダス伯だ。ハーグダス伯はグルンバルドン公爵派で、表向きは静観を決めたグルンバルドン公と今、表立って対立するのは得策ではない」

 法務省って確か、法令の執行や、法を遵守させたり取り締まったりの警察みたいな組織や、裁判関係も包括する、法の番人みたいな省だったはず……。


 そのトップが不正を見逃したり、処罰に手心を加えたりしてるのか!?

 さすが貴族社会、法もクソもあったもんじゃないな。


「それでしたら、エメル様が秘密裏に協力するというのはいかがでしょう?」

 フィーナ姫がカップを置きながら微笑む。


「先日聞いたお話によると、外務大臣の不正の証拠の隠し場所などをエメル様が精霊魔法を駆使して特定されたとか。監察室、つまりロードアルム侯爵が不正を調査したい貴族に対して、同じ要領で集めた不正の証拠の隠し場所を提供し、監査の協力をするのです」

「あっ、なるほど、エメル様が王様になったら、王様自らが貴族の不正を許さないってアピールするわけですね。それなら父も耳を傾けてくれるかも知れません」


 自ら率先して綱紀粛正する、クリーンな政治を目指す王様か。

 悪くないな。


「いかがでしょう、エメル様?」

「いいですね、よからぬ貴族達の権勢を衰えさせるのに役立ちそうですし。俺もそういった不正は嫌いですから」

「決まりだな。グーツ伯とロードアルム侯への説得は、その方向で話を詰めるとしよう。それが終わり次第、クレアとレミーにはグーツ伯とロードアルム侯に内密に相談がある旨を伝えて貰おう」



 数日後、宮内大臣に続いて、グーツ伯爵とロードアルム侯爵をなんとか説得して味方に付けることができた。


 どちらにも、宮内大臣同様に、最初はかなり反対されたけど。

 特にロードアルム侯爵には。


 グーツ伯爵は農政改革の事業計画があったおかげと、治水について、川が氾濫しやすい地域の堤防の築堤(ちくてい)河道掘削(かどうくっさく)、水位や水質の観測所、さらにはダムの建設にも理解を示すと、熱心な協力を約束してくれた。

 元日本人として、治水の重要性は嫌って程理解してるからな。


 だけど、治水の重要性を理解してない、そんな手間と金をかけるより、いい土地があれば力で奪い取ればいい、くらいの発想しか出来ない貴族が多いみたいで、相当にストレスを溜め込んでたみたいだ。


 ロードアルム侯爵は、理由はどうあれ臣下が王家に成り代わることを快く思って貰えなくて、最初は全然取り合って貰えなかった。

 だけど、説得材料としてクリーンな政治を目指す姿勢と、監察室が調べたがってた貴族について不正の証拠の隠し場所を資料として提供して、日を改めてその資料の真偽が確認されたことで、かなりの葛藤の末に協力の約束をしてくれた。


 どちらも、宮内大臣が俺達に付いたことに滅茶苦茶驚かれたけど、俺達の説得材料以外にも……もしかしたらそれ以上に、宮内大臣の説得が利いたんだと思う。

 それがなかったら、もっと手こずってたかも知れない。


 ともあれ、心強い味方が増えてくれて本当に助かったよ。


 それに、実績を残して信頼関係を築けないと、いつ手の平を返されるか分からないから、これで油断せず、一層気を引き締めてかからないとな。



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― 新着の感想 ―
[一言] ダブル結婚に反対する貴族全員の尻を犯すと言えば真正もーほー以外は全員賛成すると思うww
[一言] タイトル変えたら?今のところほぼほぼ頭脳戦みたいな感じで正直つまんない
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