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オトの死と、全ての清算

 リンが視線を向けている方向にレイが目を向けると、オトが、フィンの起動した魔剣の刃に刺し貫かれているのが目に入った。


『愚かな弟よ、確かにお前は強くなった。だが、私に歯向かったことが運の尽きだったな。フハハハ…』

『やはり、どれだけ力を付けても、私はお前に及ばないというのか、兄さん。無念だ…。

 この思い、僭称者を倒す器の者に託すぞ』


 オトが、力尽きる。


 マコクの力が失われたことで、その体は真空状態に耐え切れなくなり、爆散する。


『フハハハ。やはりこの私は宇宙最強なのだ。宇宙魔皇なのだから』


 フィンの思念の高笑いが戦場に響く。


『…だが、おかしいな』


 ふと、フィンが、異常に気付く。


『私のかわいい複製体達は、どこに消えたのだ?』

『みんな倒したみたいだね。サラシャたちが』


 背後から響くのは、リンの思念。


 フィンの背中に、冷や汗が流れる。


『さあ、終わらせようか』


 気付くと、フィンは、リン、サラシャ、レイ、ゴーティマ、ラウラ、そしてサラシャの複製体たちに包囲されている。


 フィンは、唇を噛む。


『グッ…死なばもろとも。魔重球の上に、魔宙攪乱』


 巨大な魔重球が生み出され、魔宙攪乱によって四方にばらまかれる。


 リンやサラシャ、そしてサラシャの複製体達は平気に見えるが、一段実力が劣るレイ、ゴーティマ、ラウラは、それぞれ引き込まれそうになって抵抗している。


 それを見て、サラシャが念じる。


『とりあえず、全部異世界に飛ばしますね。新世界創造、異世界転送』


 バラバラにされた魔重球が、残らず別世界に飛ばされる。


『おいおい、そんなのあり得ないだろ…』


 フィンが呆然としていると、リンが伝える。


『君にその力がないというだけだ』


 フィンの顔が絶望に歪む。


 だが、客観的に見ても絶望的な状況にあって、最後の抵抗を試みる。


『黙れ黙れ黙れ!深層心理顕現!』

『魔流反射』


 フィンは、自らがかけようとした魔法の術中に陥る。

 しかも、リンたちの分に加え、サラシャの複製体の数分の魔術をかけようとして、それらがことごとく跳ね返ってきたのだから、その効果は絶大というレベルでは済まない。


『や、やめろ、助けてくれ、お前は、なんで、おい、やめろ、サラなのか?父さん?オト?いや、違う、何だ?パニート星系?うわあ、私が殺した奴らの声が、頭に流れてくる。やめてくれ、やめてくれ、フハハハ、私は、私は、宇宙魔皇なのだぞ?』


 何かを追い払おうとして魔剣を起動して、自分自身を切り刻む。


『うわあ、畜生、出ていけ、私の頭の中から、私こそが、宇宙魔皇なのだ、違う、サラ、やめてくれ、オト、違うんだ。父さん…』


 一時的に思念が途絶える。


『ま、魔力が、私の頭に流れてくる?私は最強だ、フハハハ。天才だ。宇宙魔皇だ。フハハハ、フハハハ。違う、違う、父さん、サラ、やめろ、違う、うわああーーっ!』


 再び思念が途切れ、今度は、頭が爆発する。そして、そこから連鎖的に、フィンの全身が爆散した。


 リンは、一人念ずる。


『これで、終わったんだな』


 レイが返す。


『まだよ。オトの麾下にあったサン・キラーが残っているわ。だって…』

『それは、ガーゼインが何とかしてくれるさ。既に取り掛かっているみたいだしね』


 リンは、呑気なものである。


『そうなのね』

『ああ』

『ミルクを飲んで物思いに浸っていようにも、獣頭の万年副ヒロインには、それだけのものがなかったのでしょうね』

『フォーったら、またまたそんな意地悪言っちゃうんですね。うふふ』

『話がぶっ飛びすぎていて分からないわね』

『しかり。大丈夫だろう、だが。言うのだから、リンが』

『そうね。サラシャちゃんも問題があるとは思っていないようだし、多分大丈夫ね』


 サラシャたちがガールズトークに入っていく中、リンは、独り彼女たちから離れ、そっと思う。


(サラ、君の仇は打ったぞ。君が望んでいた世界は、残された私達が実現していくとしよう。

 大丈夫さ。だって、君の力を引き継ぐサラシャたちもかなりの数いるしね。

 そう、思わないかい?)


 リンは、サラの形見のラフートをそっと撫でる。


 その頬を流れる一筋の涙に、ラフートは、優しい色を返す。


 誰でもない、リンにだけ届く、優しい魔力の色。音ではなく、念でもない、魔力の色。


 そこに混じる、一つの不思議な色。


(え?サラシャと付き合う気があるかって?

 大丈夫。サラシャは確かにかわいいけど、私の色々な願望が混じってしまっているからね。

 サラシャは、私の中の君のイメージをやることはできても、君そのものにはなれない。

 だから、私は、君を、君だけを、いつまでも愛することとするさ)


 色は揺らぐ。


(いいのよ、と言われても、実際君が好きなのだから、仕方がないだろ?無理に変える理由もないしね)


 色は、嬉しそうに、しかし、どこか寂しそうに、笑う。


----


 その日のうちにガーゼインから報告が上がり、皇国首都ダヴィリオーニの制圧が、先代魔皇の娘の容姿を引き継いでいるサラシャによって宣言されたことで、戦争は終わった。


 以後、サラシャの複製体達が、残存する旧皇国支持層を鎮圧していくために宇宙全体に散らばっていくのだが、これは別の話である。

次回、いよいよ最終話です。

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