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ラウラの深層

 ラウラは、ダヴィリオーニの宇宙魔皇公邸の一室に飛ばされた。


 彼女の前に立っているのは、大人の魔族の男性だった。


 顔は見えないが、生えている二本の立派な角が、彼女にある人を思い起こさせる。


「もしかして、伯父様?」


 彼女の声が漏れる。


 男性は、答える。


「その質問に答える義務はない。

 傍系とはいえ、ラーシャの血を引いているにもかかわらず皇国を裏切った恥さらしには、名乗る必要はない」


 彼女は、返す。


「本当に裏切ったのは、伯父様とサラちゃんを殺したフィンだわ。

 オトも私も、それぞれの仕方で、正しい皇国の姿を伝えようと考えた。

 少なくとも、フィンを倒さない限り、本当の魔宙皇国の再興は叶わない。

 だから、フィンを倒す手段として、必要だったら、反乱軍でも何でも利用する。

 それだけのことよ」


 男性は、呆れたように返す。


「思ってもいないことをペラペラとよくしゃべる。一応は政治的な対応に慣れた、皇族の端くれという訳だ。

 だが、もしもお前が魔宙皇国の最高を願うのであったら、遅くともオトの蜂起を知った時点で、彼に合流すべきであっただろう。

 お前は、お前が可愛がって止まなかったサラ・ラーシャの惹かれていた男性に興味を持った。そしてその男女意識こそが、お前が反乱軍に合流した理由だ。

 違うか?」


 ラウラは、一瞬言葉に詰まるが、返す。


「確かに、サラちゃんが愛したという反乱軍首魁、リン・アマカケには興味はあったわ。

 でも、男女関係としてではない。

 隙あらば、今は亡きサラちゃんに代わって、彼を倒すためよ。サラちゃんが愛し合う故にできなかったことを、彼女のボス、アマノガワ魔帝として尻拭いしようとしているだけよ」

「確かに、彼と出会った当初は、その可能性も、ほんの少しだけ想定していたのは事実だろう。そんな尤もらしい政治的理由よりも、フィンに狙われ、反乱軍認定されたから、という点の方がかなり大きいはずだがな。

 それに今は、もはや彼を倒す気など毛頭ないのも、また事実のはずだ。

 何故なら、お前自身、あの大賊アマカケの末裔に惹かれているからだ。

 違うか?」


 ラウラの語気が増す。


「違うわ!だって、彼にはサラちゃんがいるし、それに…」

「それに?」

「万一彼の心が揺れるとしても、その相手は、サラシャちゃんだわ。だから、私は、彼女たちの従姉妹役として、祝福する立場なのよ」

「そこでも政治的仮面に徹しようとするのだね。

 だが、本音は違う。

 お前は、あの大賊アマカケの末裔に惹かれ、アマノガワ銀河を丸ごと売り渡した、売国奴だ。ビッチだ。

 サラ・ラーシャともども、敵のリーダー、それも、よりによってアマカケの末裔に惹かれるなど、ラーシャの血筋もとことんまで汚れてしまったものだな。

 だが、それでもサラ・ラーシャは、ギリギリのところで皇女の役目に徹していた。

 お前は、それすらできなかった。

 お前のようなものには、生きる資格もない。皇族の恥だ。死ね」


 男性が、魔剣を起動させる。


 ラウラが、悲痛な叫びをあげる。


「伯父様なんでしょ?生きていたのなら、何故隠していたのですか?

 もう、こんなことやめて、一緒にフィンを倒しましょうよ!

 伯父様、私は、あなたの敵ではないのに、どうして、そんなひどいことを言ったりしたりするの?」


 すると、男性は、心底軽蔑したような視線を向ける。


「私は、お前の伯父などではないし、これまでもそんなことはなかった。

 裏切者には、家族などは存在しない。

 恋人すらも、存在しない。

 裏切った上に、そうしてまで狙った男に袖にされているのだから、無様だよな。

 それなのに、まだ見苦しく生きようとしているのか?」


 ラウラは、迫りくる魔剣を、ギリギリで避けてから、自らの魔剣を起動して、言う。


「確かに、あなたは私の伯父様ではないわ。伯父様は、こんなひどいこと言ったりしたりはしなかった。

 あなたは、私の敵ね。あるいは、フィンが伯父様に化けようとした慣れの果てかしら?」

「言っただろう、お前に名乗る義務はない、と」


 マコクの赤白い刃同士が、交わっていく。

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