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サラシャの深層

 サラシャもまた、気付いたら、見知らぬ湖のほとりに飛ばされていた。


 目の前には、やはり見慣れぬ少女。


 どこか、自分に似た雰囲気の少女。


 でも、ふと、何かを感じて、彼女は言う。


「あなたは、もしかしてサラ・ラーシャですか?」

「どうでしょうね。でも、あなたは、知っているはずです。あなたのマスター、リンにとって、あなたは、サラの代わりでしかないということを」

「そんなことはありませんわ。私の方が、サラよりも美しく、サラよりも強いのですから」

「それは、リンが、あなたをより美化されたサラその人にしようという意図で生み出したからでしょ。でも、いくら強くても、いくら美しくても、そして、いくら聡明だとしても、あなたはサラではない。サラの代わりでしかないのよ」


 サラシャは、戸惑いを覚えつつも、にっこりとほほ笑んで、言う。


「それでも、私は信じています。いつか、マスターが私の方へと振り向いてくれることを」


 少女は、冷たく言い放つ。


「それは甘いんじゃないかしら?それに、もし振り向いてくれたとしても、所詮あなたは、サラの代わりでしかないのよ」


 サラシャは、それを受け流す。


「いいのです。それでも、マスターは、彼の与えうる精一杯の想いとともに、私を創造してくださったのですから」


 そして、ふと思いついたように、言う。


「ところで、あなたは、サラ・ラーシャの形をとっていますが、私の無意識、深層意識ですね?つまりは、私自身の隠された本音、なんですね?」


 少女に、狼狽の色が走る。


「そんなわけないでしょ?私は、あなたの敵よ」


 サラシャは、そんな少女を捕まえて、抱き寄せる。


「いいのですよ。あなたは私、私自身なんでしょう?」


 少女の目から、涙がこぼれる。


「どうして、どうして…」

「私自身にそんな気持ちがあったことを、教えてくれてありがとう。でも、無理しなくていいんですよ」


 少女は、サラシャの胸に顔を埋める。


 震えるその体から、光が発せられていく。


「…正解。そう、私は、あなた。あなたの願望、欲望、秘められた欲望よ。

 でも、あなたは、自分自身の力で、うまく折り合いをつけることができるのね。

 ならば、後は、あなたに託すわ」


 その言葉とともに、少女は完全に光に変わり、その光は、サラシャの中に、吸い込まれていった。


----


 そして、彼女は、戦場に舞い戻った。


 見ると、レイ、ゴーティマ、ラウラ、そして、サラシャフォーなどの、サラシャの複製体達が、それぞれ同士討ちの戦いを始めていた。


『みんな、もしかして…』

『ああ、そうだね』


 思念の発せられた方を見ると、リンがいた。


 リンは、サラシャに伝える。


『心の中では、自分たちの無意識と戦っている。そしてその結果、引き寄せられるようにして、この世界ではお互いに戦っている。

 フィンの魔法の結果みたいだね。フィンを倒せば、この魔法は止まるかもしれない。でも、結局は、彼女たちが自分の力で乗り越えるしかないことだから、このまま待とうと思う。

 私は、みんなを信じているから』


 サラシャは答える。


『そうですね。のんびりラフートでも吹いて』

『それもいいかもな』

『ところで、マスターはどうやって切り抜けたのですか?』

『切り抜けるも何も、目の前に現れたのがサラの幽霊に見えたから、とりあえず愛していると言ってキスしたら、元に戻った感じかな』

『マスターは、さすがですね』


 リンは、ある一点に視線を向けながら、返す。


『そうかな。ところで、サラシャが連れてきた彼、オトの最大の敵は、フィンだったようだな』


 サラシャが、リンの視線の方向を見る。


 そこにはフィンがいて、オトと戦っていた。


 二人の思念が響く。


『そうか、愚かな弟は、この私に対して僻みと妬みがあったのだな。フハハハ。相手にしてやろう。死んでも知らないけどな』

『この!この!この!倒れろ!倒れろ!』


 オトは、何故か泣きながらフィンに襲い掛かっていたが、何らかの底力を引き出しているためか、フィンとほぼ互角に戦っていた。


『とりあえず、オトのことも、今はこのままでいいか』

『そうですね、マスター』


 サラシャが、魔力でラフートを奏でる。

 リンも、戦場を眺めながら、それに続いた。


 サラシャは、独り思う。


(やはり、マスターのラフートの才能は、これから磨くべきところのようですね。でも、そんなマスターのかわいい姿も、素晴らしいです)

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