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フィンの反撃とレイの深層

 サラシャとオトが、メガリオーニ星系の、リンたちが戦っている宙域に転移すると、既に大勢は決していた。


 サラシャフォーたちがフィンの複製体をことごとく倒し、レイ、ゴーティマ、ラウラの3人がサン・キラーを様々な方法で片付け、残っているのは、リンとフィンの頂上決戦のみであったが、それすらも、一方的な展開といって良かった。


 サラシャが念じる。


『流石ですね、マスター。既に、殆ど終わっているじゃありませんか。

 私は、のんびりラフートを吹いて待つことにしましょう。サラシャフォー、みんな、行くわよ。

 偉大なるマスター、リン・アマカケ様のテーマ』


 宇宙に、ラフートの、音色ならぬ念色とでもいうべき魔力の音楽が流れ、戦場の全ての人々に届いていく。


 苦痛に歪んでいるフィンにも、その音楽は届く。


『ぐう、何だ、この不気味な音楽は』

『サラシャが魔力を込めて吹いてくれているみたいだね。宇宙的なスケール感のある音楽で、個人的には嫌いじゃないかな』

『チッ、何であのサラにそっくりな奴が何人もいるんだよ。しかも、何でみんな揃いも揃ってラフートを口に加えてるんだよ。というか、何で真空空間なのに、音楽が頭に入ってくるんだよ』

『音ではなく魔力を流しているみたいだね。思念を伝える要領で』

『ぐああーーーっ、ふざけるなふざけるなふざけるな!深層心理顕現』


 錯乱気味のフィンが、捨て身の魔法を放つ。


----


 レイは、気付くと、あの頃、サラと過ごした学校の教室にいた。


 目の前に立つのは、黒髪でスレンダーな少女。顔は見えないが、レイはその姿に見覚えがある。


「サラ、なの?」


 レイが問うと、少女は答える。


「私は、サラかもしれないし、サラシャかもしれないし、はたまたサラシャフォーかもしれない。

 あなたを、リンに近づけさせない存在。あなたの正ヒロインへの昇格を阻む存在。あなたを、永遠の二番手にする存在。

 あなたが、本当は否定したくて、しょうがなかった存在よ」

「でも、サラは、私の友達だったわ」

「サラに負けたくないから、無理矢理友達としてあなたの土俵に引きずり込んだだけだったはずよ。そして、サラは、あなたがリンとの間に入ってくるのを、常に嫌っていた。貴方だって、本当は、そんなこと、よく分かっているのでしょう?

 それなのに、サラは友達だったなんて、よく言えるわね」

「確かに私は、サラには殆どの面で勝てなかったわ。でも、少なくとも、スタイルだけは、勝っていたはずよ」


 すると、少女は、レイに近づき、その旨を乱暴に揺らす。


「こんな肉の塊なんて、持っていたってしょうがないじゃないの。実際、戦いが始まってからは、邪魔にしかならなかったはずよ。サラはスマートだったから、戦い方もスマートだったのに、あなたと来たら…」


 少女が、プッと笑う。


 レイは、パチンと、少女の頬を打つ。


「何よ、あなたなんて、いなければよかったのに。あなたさえいなければ、リンは私のものだったのに。何でよ、何で敵になってもなお、愛し合ったり、キスしたりなんかしてるのよ?」


 レイの声が、悲鳴に近い色を帯び始める。


 少女は、落ち着いた口調のまま、こう返す。


「だって、私が一番だから。あなたも、そんなことは、知っているでしょ?あなたは、何をやっても二番にしかなれない、器用貧乏でパッとしないニンゲン族。それに引き換え、私は、あるいは魔宙皇国の皇女かもしれないし、あるいはマルチバース級のマコク使いかもしれない。魔族とのアイノコかもしれないし、もっと純粋な魔力生命体かもしれない。ともかく、どう逆立ちしても、あなたは私には勝てないのよ。永遠に」


 そして、レイの耳元に口を近づけて、ささやく。


「だから、私とあなたとの間に、友情なんてありえなかった。あるのは、あなたの嫉妬だけだった。本当に、気持ち悪かったわ」


 レイの頭の中で、何かがはじける音がした。


「そうなのね。サラは、そんな風に考えていたのね…。

 ええ、そうよ、私は、あなたがうらやましかった。リンを独り占めするあなた、知性においても、戦闘能力においても。私より優れているあなた。

 でも、面と向かってそんな風に言われると、いやになっちゃう。

 あなたなんか、いなければよかったのに」


 レイは、魔剣を最大本数起動させる。10本以上の魔剣が、浮遊して、少女に向けて刃を向ける。


「いいわよね。あなたは敵、皇国の皇女。違っても、億単位で存在する複製体の一人。どっちにしても、あなたのこと、殺しても問題ないわよね。

 だって、私たち、最初から友達なんかじゃなかったんだから」

「よく分かっているじゃないの」


 少女も、魔剣を起動させる。


 二人の魔剣が、愛し合う二人の時とはまた違う悲しさを帯びて、交わる。

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