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サラシャスリーは大雑把に、サラシャは器用に

 同じころ、経済惑星ギランを擁する、ギラギン星系。


 やはり押されていたオトの分身体と、魔装機兵たちの前に、転移の穴が新たに空き、サラシャの複製体達が次々と出現する。


 そのうちの一人が、念ずる。


『へえ。あたし一人で十分そうね。じゃあ、ちょっと行ってくるわ』


 彼女の傍らに立つもう一人が、応援する。


『スリーちゃん、頑張って!』


 それに続いて、複製体の集団の歓声が続く。


『スリー!スリー!』

『ツーにもサラシャ様にも負けない、宇宙最強のカリスマ、スリー様あああ!』


 スリーと呼ばれた複製体は、それらの思念に笑顔で答える。


『ありがとう、フォー、そして、みんな。じゃあ、サラシャスリー、行ってくるわ!』


 サラシャスリーは、そうして、戦場へと赴く。


----


 オトの分身体は、サラシャスリーの持つ圧倒的な魔力、そしてジービー星系の動きを感知して、脱力したように笑う。


『ダハハハ…。これなら、任せてもよさそうかな』


 が、その期待は、すぐに裏切られる。


『あたしは、ツーのように面倒なことをするつもりはないわ。

 新世界創造、異世界転送!戦場丸ごと、ビッグバンの膨大な魔力に焼かれてきなさい!』


 そして、本当に、敵味方関係なく、異世界に飛ばされて、ビッグバンの灼熱に焼かれてしまったからだ。


 後に残されたのは、オトの分身体と、サラシャスリー、そして、その背後に控えるサラシャの複製体達だけ。


『お、おい…』


 オトが、呆れて思念を漏らすと、サラシャスリーは、笑顔で返した。


『どのみち、オト様の魔装機兵も無力化することが、マスターとサラシャ様のお望みだと思いますので。

 サラシャ様やツーのような器用なことは、やろうと思えばできますけど、面倒ったらありゃしないんですよね。お分かりいただけて?』


 オトは、それを聞いて悟る。


『お前たちは、反乱軍の手の者か。ラーシャ家の者に近い気配を纏っていたので、気付かなかったが』

『反乱は、フィンの魔宙皇国に対して起こしているものです。オト様とは、敵対する理由はありません。

 とはいえ、我々の寝首を掻きかねない戦力をオト様が個人的に所持することは、サラシャ様も、マスターも、お認めにはならないでしょう』


----


 ジービー星系の戦場の決着がついたことを確認したサラシャは、一人で、ザオキカ星系の、オト本体がいる戦場へと向かう。


 既にオトが底力を発揮したことで、戦場の大勢は決していたが、それでもまだ、何人か生き残りがいるようだった。


『でも、私、サラシャが終わらせますわ。局所対消滅』


 生き残っているフィンの複製体達が、素粒子レベルで反粒子をぶつけられて、光へと変わっていく。


 防ごうとして、一部の複製体は、結界を張ったり、魔宙隔離をしたりしようとするが、その攻撃は複製体達を追いかける。


『知ってましたか?マルチバース級の力があれば、たかが同じ世界の中でしかない不連続時空を乗り越えることなど、赤子の手をひねるよりも簡単なことなのですよ』


 複製体達は、絶望の叫びをあげる間もなく、光となって消滅した。


 サラシャは、瞬く間に光へと変わってしまった複製体達を見て呆然としている、オトに思念を飛ばす。


『さて、オト様、既に戦況が変わったことは察知していらっしゃいますね?

 初めまして、私は、サラシャ。私のマスター、リン・アマカケ様に、オト様との交渉の全権を委任されている者です』


 オトは、思念を受け取って、ハッと我に返る。


『交渉、か。しかし、力だけがすべてではないぞ。

 ギラギン星系に送った魔装機兵たちは、お前たちの手によって敵と共に丸ごと消されてしまったが、これについてはいかがお考えか?』

『ええ、確かに、力だけがすべてではありません。ですから、私は力によらない方法でフィンの複製体達を消滅させたのですが、ご覧になっていなかったのですか?』

『ダハハハ、あれは、どう見ても力技だろうに』

『いいえ。本当に力技を使いたければ、サラシャスリーのように、敵味方含めて、丸ごと新世界に飛ばしていますよ。わざわざ対消滅が起こるように素粒子をコントロールするのは、力だけではできません。マルチバース級の力のミクロネームが超ひも級だというのは、伊達ではないのですよ』


 オトは、呆れたように言った。


『私の常識は、ことごとくアテにならないようだね。参ったな。

 だが、私は、自身こそが正統なる魔宙皇国の魔皇だと考えている。

 お前たちにどれだけ力があろうが、反乱軍に屈するわけにはいかないな』

『ですが、オト様には、フィンにすら勝つ力がないではありませんか』

『それでも、だ』


 サラシャは、目をつぶって、ゆっくりと念じた。


『それでは、仕方ありませんね。魔宙パルス』


 オトは、まるで宇宙全体が揺れるような感触を覚えた。


『だが、一瞬揺れただけだ。この技に何ができ…』


 念じかけて、彼は止まった。全宇宙のあらゆる魔装機兵の気配が、次々と消失していくのを感じたからだ。


『お分かりいただけたようですね。

 オト様の肝いりの新型魔装機兵を含む、両皇国の全ての魔装機兵を選択的に機能停止に追い込む、魔力のパルス波です。

 これで、オト様は丸裸です。まだ、続けますか?』


 サラシャが、ニッコリと笑った。

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