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ブラックホールに入れなくて

 タイヨウ系のリンたちが、次々と各所へ転移する少し前のこと。


 工業惑星タヨトで、次の攻撃が来るのを待っていたオトは、感じ取る。


「来たか…」


 彼は、浮上し、戦場へと転移する。


----


 ザオキカ星系の、ある宙域。フィンたちが作成した転移の穴から、フィンの複製体の一群が、出現する。


 相対するのは、対マハク使い戦用を想定して開発され、オト自らが改良を施して生まれた、新型魔装機兵。


 数の上では、10倍以上ある彼らが、複製体の一群を覆いつくす。


 魔装機兵たちは、自らの魔剣を起動させ、四方八方から、複製体めがけて飛ばしていく。


 複製体たちは、実力や知識こそフィンと同レベルであっても、実戦経験は殆どない。このため、その一部が、この魔剣の集中攻撃によって倒されていく。


 しかし、大部分は、魔装機兵達との実力の差によって、不利を補い、攻撃を防ぎ切る。

 ある者は魔黒球によって魔剣の刃を吸い尽くし、別の者は結界を張ることによって、魔剣を弾いていく。


 そして、反撃の思念を、各々に念じていく。


『魔宙切断』

『魔熱線』


 複製体を取り囲んでいた魔装機兵の、ある者は時空ごと斬られ、別の者は熱によって蒸発する。

 中には、魔黒球や結界を取り出して何とか身を守る者もいるが、いかんせん魔装機兵たちには、まだフィンや、その複製体ほどの実力はない。

 その結果、徐々に、多数のはずの魔装機兵が、少数の複製体に押され始めていく。


 そんな状況であるところに、オトは転移した。


 そして、全体を見渡して、思う。


(ふむ、これなら、ある程度減らせるな。数が多くて、全体としてみた場合の的が大きいことが幸いだ…)


 そして、念ずる。


『魔宙隔離』


 複製体の大部分が、隔離される。彼らの放つ攻撃は、見えない壁によって跳ね返されて、彼らを自滅させる。


 魔宙隔離に対する正しい対処法は、魔宙融合なのであるが、経験の浅い複製体たちは、閉じ込められたことでパニックに陥り、そのことに気付かない。


 そこに、オトは追い討ちをかける。


『魔宙圧縮』


 隔離された空間が圧縮されていく。


 中の複製体たちのパニックは尋常ではない。


『他の奴らを吸い込ませりゃ、何とかなるだろ。魔重球』


 一人が、魔黒球のような魔力ブラックホールとは異なる、物理的なブラックホールを出現させる。


 が、その技は、広い宇宙空間で発動した場合にのみ、高い実力を持つマコク使いがやっと制御できるという代物であり、隔離・圧縮中の空間では、暴走するしかないものだった。


 静寂の中、動きが徐々に遅くなり、産まれたブラックホールの上に、球状に張り付いて見える複製体たち。

 もはや生死は分からないが、本人たちの頭部と脚部、あるいは右側と左側とに無視できないレベルの大きな重力の差が生じる。

 もし生きていれば血流のアンバランス、神経信号の伝達ラグなどで、狂わんばかりであろう。

 隔離された時空であるため、外部と異なり、クロノシンクロナイザーの影響も及ばない。物理的にはわずかな距離差しかないはずの、右半身と左半身の時間差、頭部と脚部の時間差も、無視できなくなる。


 本人たちは、後戻りできない事象の地平面を越えて、どこまでも落ちていくが、外からは、そして、外の視点でしか観測できない本人たちの主観的な視点では、時間が止まっていく。


 そこに、オトの圧縮が追い打ちをかけて、遂に、空間は、ブラックホールごと消滅した。


(これでだいぶ良くなった。が、まだ生き残りがいるようだな…。狩るか)


 いくら力があっても、パニックに陥った複製体達は、もはや狩られる側、魔物のごとき存在でしかなかった。


----


 しかし、戦況は、オトの分身体しか回されていない、残り二つの星系では、フィン側の一方的優勢に傾いていた。


 その一つ、ジービー星系。


 バックに、湖水惑星スコッツの緑と青が映える戦場で、二つの集団が、様々な色の光を交錯させながら、入り混じっている。


 一方は、黒光りする魔装機兵たち。他方は、フィンの複製体たち。


 数で勝るのは魔装機兵だが、有効打があまり出せず、複製体達の放つ強力な技の前に、次々と蹴散らされている。


 何もなければ、複製体達の勝利は、時間の問題だろう。


 その時だった。

ブラックホールにのまれる描写は、真面目な思考実験のアウトプットです。

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