咲き乱れる死の華
魔宙皇国首都惑星、ダヴィリオーニが存在する、メガリオーニ星系の、外縁部にあたる宇宙空間。
フィンと、その複製体からなる大軍が、整列する。
そこへ、サン・キラーが、数十基、転移して出現する。
フィンに、思念による通信が入ってくる。
『大陛下。指示通り、現在皇国軍が運用しているサン・キラーを、全てこの場に集めました。但し、何基か、音信不通のものがあります』
『オトの麾下のものか?』
『はい。やはり、オト・パニラージャ殿下は、大陛下に反旗を翻すものだと思われます』
『そうか…。では、愚かな弟よ、お前を最初の標的にしよう。フハハハ…』
そして、フィンは、複製体の一人につ伝達する。
『サン・キラーの攻撃だけを、パニトーニ銀河の中心惑星、パニンニが存在するパニート星系に向けて空間転移させるのだ。できるか?』
『はい』
『良い、では、やれ』
『了解しました』
サン・キラーの華が開く。光線が死の華の中央部に集められていく。
サン・キラーの光が、発射される。
その射線上に、穴が開いて、光が飲み込まれていく。
『転移、成功です』
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パニート星系の中心恒星、パニート。
そこからやや離れたところから、光が走っていく。
光は、パニートに流れ込む。
パニートは、そのエネルギーによって、赤く変色し、膨張していく。
パニートの周囲の惑星が飲み込まれていく。
パニートは、限界まで膨張し、爆発した。
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工業惑星、タヨト。
オトは、それを感じ取った。
「フィンの奴、サン・キラーの攻撃だけを転移させることで、安全圏からの攻撃を行うとは…」
オトは、きっと唇を噛んだ。
ちなみに、そんなことを知ることもなくパニトーニに向かっていた、皇国最強の監視辺境伯も巻き添えになったのだが、フィンも、オトも、それを知る由はなかった。
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タイヨウ系にいた、レイ、ゴーティマ、ラウラの三人も、その動きを感じ取った。
レイが言う。
「これは、同士討ちかしら?」
対し、ラウラが答える。
「いくらフィンでも、それはしないと思う。あそこは、フィンの弟のオトの本拠地よ。オトは、結構家族思いのところがあるから、フィンに父親と妹を殺されたことで、離反を決意したのかもしれないわね」
ゴーティマは、無言で目をつぶっていたが、ふと目を開けて、言った。
「しかり。言う通りのようだな、ラウラの」
「すると、早いところリンにも伝えないと」
「いや、彼ならきっと何とかしてくれるから、大丈夫よ」
「そんなにすごいのか?レイ・ストーミー」
「レイでいいわ。ええ、彼は、サラよりも強かったから」
「そうか。だが…」
「そうね、彼が戻ってくるまでは、私達で何とかする必要があるわね」
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『フハハハ。感じたぞ、この圧倒的な蹂躙。よくやった』
フィンは、自らの複製体に対して、思念を送る。そして、続ける。
『まずは、この皇国内部に救う寄生虫を粛清したいと思う。標的は、経済惑星ギランが存在する、ギラギン星系、工業惑星タヨトが存在する、ザオキカ星系、食糧源となる湖水惑星スコッツを含む一連の文明惑星群が存在する、ジービー星系、…』
次々と、標的となる星系が挙げられていく。中には、サラにゆかりのある星系が含まれているが、これは偶然ではない。
先代魔皇が、フィンの指揮系統下にある土地には、当時存在を公表されていなかった娘をあまり置いておきたくないと考えていたためである。
実はそれ故に、サラの育ての両親の担当していた魔宙船ルートの決定にあたって、その会社の上層部と皇国高官との間で、裏のやり取りがあったのだが、そのことを知る者たちの殆どは、もうこの宇宙にはいない。
『…以上だ。サン・キラーを全基起動させて、各員、攻撃態勢に入れ』
『了解』
何十基もの死の華が、一斉に開いていく。
まるで、虫を捕らえようとして、口を開ける食虫植物のように。





