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軍拡する兄弟

 工業惑星タヨト。


 その広場で、魔剣を起動したオトを見て、魔装機兵は、言う。


「敵性のマコク使いを検知。戦闘モードに入ります。魔黒球」


 そして、魔力を吸い尽くす魔黒球のみならず、結界の刃も無数に飛び出していく。

 それを見て、オトは、満足げに言う。


「これなら、まずまずの出来と言って良いだろう。銀河級上位というところか。学習すれば、更に強くなるに違いない。…魔宙隔離」


 空間的に隔離された魔装機兵は、敵が消失したと思い込み、魔黒球も結界の刃も焼失させた。


 それを見て、オトも魔剣をしまい、隔離を解いて、言う。


「上出来だ。私は、オト・ラーシャ。君のボスだ。君には、そのマコクの力によって、君自身を生成してもらいたい。

 ネズミ算式に、生成された君自身からも君を生成するように。それを、とりあえず35回繰り返してくれ。

 とりあえず、340億もの君がいれば、フィンにも、あの大賊アマカケの末裔にも対抗できよう」

「かしこまりました。但し、それほどの数になりますと、このタヨトでの生成は目立ちます。よって、文明から離れた宇宙空間に転移して、そこで作業を行いたいと考えますが、いかがでしょうか?」


 そう尋ねられ、オトは、しばらく考えてから、言う。


「私がギラン魔王などと共に兼任している、ある銀河魔帝の地位がある。その銀河、パニトーニの一角に、最寄りの文明から百魔力年は離れた暗黒空間がある。そこに転移して、作業に取り組むとよい」

「承知しました」

「後は、マコクの道の高速学習は続けるように。君のその人工知能なら、魔宙級、否、マルチバース級の実力を手にするまで、学習することも可能であろう。期待しているぞ」

「仰せのままに…真魔宙皇国の魔皇大陛下、でいいですね?」

「読んだか。見事だ。では、行け」


 オトは、微笑んだ。

 魔装機兵は、フッと、姿を消した。


 独りになったオトは、声を上げて、笑い出した。


「ダハハハ。やっとだ。これで、やっと、兄さんに勝つ力を手にできる。

 父や妹を殺した兄は、許しがたい。だが、それ以上に、私は、彼に、勝ちたかったのだ。

 幼少期から、ずっと、ずっと、彼には勝てなかった。それが、今、やっと、…ダハハハ」


 笑いながらも、過去の敗北の苦渋と悔しさが思い出されたのか、一筋の涙がしたたり落ちた。


----


 魔宙皇国首都惑星、ダヴィリオーニ。


 自身の複製をひと段落させたフィンは、宇宙の魔力の異常を感知する。


「大賊アマカケの気配が消えた。気配遮断というよりは、まるで、どこか別世界にでも転移してしまったかのような消え方だ。

 それだけではない。我が弟、オト・パニラージャも、妙な動きを見せているようだ。先代の肝いりで開発していた、対マハク用戦力を改造した後、改造したその個体をどこかに転移させたように、消してしまった。

 何やら、不穏な動きがあるな。ことに、オトの動きには、警戒しなければならぬ」


 真魔宙皇国の建国宣言は、この時点ではオトの指揮系統化にある人間にしか伝わってはいなかった。


 このため、フィンは、まだ彼の真意を正確には汲み取れてはいなかったが、いずれにせよ、強力な戦力を独自に調達しようとしているのみならず、魔皇である自分から隠そうとするかのような動きの不穏さには、警戒心を強める必要性を感じたのであった。


 尚、オト自身が自らをラーシャと称するのに対し、フィンが彼をパニラージャと呼ぶ理由は、各々が自分こそ魔皇と考えているからであるのは、言うまでもないことである。


「念のため、皇国最強の監視辺境伯を、大賊アマカケの反乱軍方面ではなく、彼のところに回しておくか。それと、先代が諦めた、サン・キラーのもう一つの運用法も、完成させてもいいかもしれない。それができれば、フハハハ…」


 含みを帯びた彼の笑い声が、不気味に魔皇公邸内に響く。

340億の根拠は、2^35=343億5973万8368です。

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